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フィギュアスケート特集

佐藤信夫コーチインタビュー〈3〉 村主章枝、無欲の挑戦

fumie1A●村主章枝、無欲の挑戦

 ソルトレイクシティ五輪5位入賞以来、日本のフィギュアスケート界を引っ張ってきた村主章枝。世界選手権出場も今年で5年連続となるが、今シーズンのこれまでの道のりは決して平坦ではなかった。グランプリシリーズの不振(スケートカナダ4位、エリック・ボンパール杯4位)により昨年優勝したグランプリファイナルには出場さえ不可能に。全日本選手権ではジュニアの浅田真央の台頭を許して3位。世界選手権出場切符は全日本選手権で与えられず、2月の四大陸選手権まで持ち越しとなったのだ。

――四大陸選手権は恩田美栄選手とワールド出場切符をかけての一騎打ち、となったわけですが、ふたりともほぼノーミスという素晴らしい試合でしたね。先生から見てあの試合の村主さんはいかがでしたか?
佐藤 かなり順調に行ったと思います。私が彼女を見始めたのは全日本選手権が終わってからですが、それ以降ずっと、あの調子で安定しています。とにかくジャンプが安定していて、練習中からほぼ同じ、いい状態できて、そのまま本番もいけた。すごく理想的な形での優勝だったんじゃないかな。

――ワールドの切符をかけて一対一。そんな土壇場に追い詰められると、彼女はいつも力を発揮しますね。ソルトレイクシティ五輪出場権をかけた01年の全日本もそうでした。こうした強さには、彼女のメンタル面に秘密があると思われますか。
佐藤 うーん、日ごろの彼女の練習や生活ぶりを見ていると、かなりきちきちっと計画性を持ってやらないと気がすまない人に見えるんです。でも実は……そうは見えるけれど、どこか大雑把なところがあるんでしょうね。

――村主さん、大雑把ですか!?
佐藤 私はそう思うんですよ(笑)。それが、ああいった大切な試合になったときに、大雑把さが開き直りに変わってうまくいく。それぐらいしか、理由は思いつきませんね。ほんとだったらもうちょっとね、土壇場になる手前でがんばっておけば、最後にあんなにあがく必要もないんでしょうけれど……。

――昨年、彼女は佐藤先生の元を離れ、しばらくアメリカにトレーニング地を移していました。その点は何か影響はありますか?
佐藤 いや、どこがどう変わった、とは特に感じません。でも向こうでひとりで生活をして、色々な苦労をして、それがとてもプラスにはなったんじゃないでしょうか。

 昨年秋、村主章枝はよりよい練習環境を求めて渡米。シカゴのロシア人コーチ、オレグ・ワシリエフの元でトレーニングを積んだ。長年慣れ親しんだ新横浜のリンクを離れて4ヶ月。しかし満足の行く結果は出ず、ワシリエフコーチの体調不良などもあって、12月の全日本選手権後にはふたたび佐藤コーチとともに練習を始めた。そのとたんの、四大陸選手権ノーミス優勝! 外野としては、ふたりの相性のよさを思わずにはいられない。
 佐藤コーチは世界選手権まで、村主章枝のメインコーチとして指導する約束をしたという。その後のことはまだ未定だそうだが、とりあえず世界選手権、村主選手は佐藤コーチの精神的なサポートを得られる。

――現在、先生と章枝さんは何を中心に世界選手権に向けて練習しているのでしょうか?
佐藤 練習の中心はこれ、というものはないです。ただ今シーズン、彼女が仕上げてきたもの、それを丁寧にまとめてひとつの形にしていくだけですね。改めてこれをテーマにああしましょう、こうしましょう、なんてことは全然ない。今そんなことをしたら、逆に彼女が築いてきたものが壊れちゃいますから。今はそういうことができる時期でもないし、また今の彼女には、その必要もないと思ってます。

――ではただひたすら、プログラムを滑り込んでいくだけ?
佐藤 そうですね。それもトレーニング的な方法で調子を上げていく、改善していくのではなく、とにかく今のいい調子を維持する、そんな方向でやっています。

――あの四大陸でのいい演技をワールドでもう一度できるように、そのために整えていく。
佐藤 そういうことです。

――四大陸での鬼気迫るような演技、そして今日の練習を見せていただいて……私は章枝さん、かなり期待できると思ってしまうのですが……。これはワールドもいけるのではないかと。
佐藤 ほんっとうに正直に言って……わかりません(笑)。もう、これだけ調子よく来てるんですから、そうなるのが当たり前だと、僕も思いたいですよ。でも試合の会場に入った時にね、様々な形で無言のプレッシャーが選手にはかかる。何がプレッシャーとしてひとりの選手の上にのしかかってくるのか、また、それがどの程度のものなのか――その都度違うわけですから、必ず練習と同じものができるとは言い切れないんです。村主に可能性はあると思います。だけど、だいじょうぶ、行けますよ、とは……やはり断言はできない。

――何が起こるかはわからない。でも少しでもいい結果を出すために、彼女にとって今の課題はなんでしょうか?
佐藤 今の彼女は、本番をノーミスで滑ることだけですね。ノーミスできちっとこなすこと、それが彼女にとっての最大の課題であり、それができたときにはまあ、少しは期待できるかな。でもわかりません、やはり世界のトップの何人かと同じ舞台に立った時に、私にとってベストの彼女が、他の人の目にどう映るのか……。それは周りの雰囲気でも大きく変わってくることですから。

――選手にかかるプレッシャーとは別の要素、その試合に流れる空気みたいなものも、試合結果を左右すると。
佐藤 記録で簡単に計れるものならば、ここまでタイムが出れば何とかなるかな、と言えるかもしれませんが……。フィギュアスケートは速さとか、記録とか、そういった明確な基準がないものです。どんなに素晴らしい演技だったと思っても、このグループに入ったら意外と目立たなかったね、ということもありますよね。逆に、あんなガサガサした演技でまだまだなのにな、なんて僕が思っていても、試合ではひとりだけ目立って良かったとか、そういうこともよくあることでしょう。

――では先生は、メダルを取りましょう、何番を取りましょう、という目標はあまり重視していない?
佐藤 いついかなる場合でも……自分が選手の時もコーチになってからも、この試合で何番になろうとか、この人とこの人がいるから君は何番だとか、そういうことは考えたことがないです。そんなことを考えたら、自分を見失っちゃうから。生徒に対しても、また自分に対しても、余計なプレッシャーはかけないほうがいい。やっぱり無欲で、自分自身がどこまでできるか、自分のすべきことをしっかりやるようにしないと。
 もちろん、目標はどのへん、とは考えます。でもそれは、できればうれしいな、という程度でしかない。我々の競技は、レースじゃない。隣のレーンを走ってる人との駆け引きはないわけですから、人がどんな演技をしようと、そんなことは関係ない。ただ自分の演技をする以外に道はないんですから。

 できる限り無欲に、村主章枝に自分のできることだけに集中させたい。
 それは、佐藤コーチが彼女の今大会での可能性の高さに大きな期待をしている、またそう思ってしまう自分に、抑えようと言い聞かせている……そんな言葉のようにも聞こえた。(続く)


Photo by  K Asakura //写真は03年、旭川で開催されたNHK杯にて。この日のフリープログラムで村主選手はトップに立ち、NHK杯初優勝

*コメントいろいろありがとうございました。少し間隔をあけてみましたが、いかがでしょうか?


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受信: Mar 13, 2005 11:52:24 PM

いよいよ始まりますね。
村主さんの調子が良さげ?

「試合は会議室でやっているんじゃない! リンクで行われてるんだ!」(踊る大走査線の青島)と、ライターの青島さんが言ったかどうかは別にして、迫力あるレポート、期待しています。

投稿者: ほりごたつ (Mar 13, 2005 1:28:07 AM)