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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

エキシビション終了後、浅田真央選手コメント「部屋の掃除もしなきゃ!」

Mao_f6i4660  ――世界女王となって初の演技、いかがでしたか?
真央 一番になると、すごく最後の方で滑るんですよね。いつも滑る前はエキシビションでも緊張するんですけど、「優勝したし、あんまり恥ずかしい演技はできないな!」って、いつもよりすごく緊張しました。でも今日はお客さんも盛り上がってくれたし、ああ、優勝したんだなーって。気持ちを確認しながら滑りました。

――ジャンプの失敗、ちょっと惜しかったですね。
真央 失敗するかなあ、と思ってたら、ほんとに失敗しちゃいました(笑)。フリーで転んだところは大丈夫です。痛みはもうないし、意外とスムーズに動けました。

――昨日は男子の試合も見に来ていましたね。
真央 男子のフリー、見ました! 女子の方が早く終わる大会は久しぶりだったので、男子の試合をゆっくり見るのも久しぶり。自分が滑るみたいにに緊張して、見ていてすごく力が入っちゃいました。

――これでやっと、世界選手権も終わりました。
真央 はい、エキシビションが終わらないと試合も終わった気がしないんです。だからこれで、すべて終わりきった! って感じ。今思えば、早かったなって思います。日本に帰るのが楽しみです。日本に帰ったら家でエアロとこまちとティアラに会って、あと、部屋の掃除もしなきゃいけない! それからおいしいもの、食べに行きたいです。

――練習はしばらくお休みできますか?
真央 すぐにジャパンオープンが始まるので、あんまり休めないです。でもしばらくはリラックスしながら、ストレスを感じない練習をしたいと思います。

――少し早いですが、来シーズンに向けて、力を入れていきたいところは?
真央 まずジャンプ、特にルッツで加点をもらえるように、質を上げていきたいです。もちろん他のジャンプも。もうひとつ、次のシーズンは表現や表情の面をがんばってみたいです。ローリーにもタチアナにも(振り付け師のローリー・二コルとタチアナ・タラソワ)言われてるんですけど、表情は鏡を見たりして、自分でも研究して。ジャンプの質と表情、そのふたつで上手くなることを目標にしたいです。

――コーチは未定とのことですが、振付師はどうですか?
真央 ローリーとタチアナ、両方にお願いするのはたぶん変わらないと思います。今シーズンは、タチアナの作ってくれたショートの方が難しかったかな。自分のイメージにはない感じ、大人っぽいスローな曲で最初は試合でも苦戦したし。ローリーの作ってくれたフリーはテンポの速い曲で、得意な音楽です。楽にプログラムになじめました。

――これで、オリンピックまであと2年、となりましたが。
真央 2年、まだまだあるので(笑)。オリンピックまでに毎年毎年、上達できるようにがんばって、オリンピックで最高の演技ができるようになれたらいいなーと思います。

――ところで今日のヘアスタイル、素敵ですよ。
真央 あ、これ、この会場でタダでやってもらいました(スカンジナビウム内にあるメイクアップサロンの宣伝ブース。誰でも無料でセットをしてもらえるサービスがあった)。

――彼(某新聞記者)も真央ちゃんと同じところでセットしてもらったんですよ!
真央 え、本当ですか? 記者の人、ふつうはそういうことしないですよね? えー、すごーい(記者の方を興味深げに見て)あっ! もしかして選手だと思われたのかもしれないですよ!

 今シーズンは、世界中どこに行っても浅田真央の人気に驚いた一年だった。
 彼女の愛らしさ、純粋さ、素朴さは、どんな精神文化を持った人にも伝わる魅力なのだと、改めて感じる。共同インタビューでも、質問した記者の方にきちんと顔を向けて話してくれるし、がんばって真央ちゃんの記事書くぞ! という気持ちに、みんなをさせてしまうのだ。
 
photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 
*写真はエキシビションオープニング。リボンを持って登場する浅田真央選手


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女子シングルフリー、安藤美姫途中棄権 「見せられなかったカルメン」

Miki_12e5990  プログラムを大事にするスケーターが好きだ。
 ただ漫然と、与えられた音楽で与えられた振り付けをこなしていくのではなく、コリオグラファーや作曲家が作り上げた世界に真剣に向き合う、そんな姿勢を持つ選手は、必ず「この選手といえば、これ」という名作を残すことになる。
 フィリップ・キャンデロロや村主章枝、アニシナ&ペイゼラなど、人々の記憶に残るプログラムをたくさん持つスケーターは、プログラムに対し常にそんな向き合い方をし、「何を見せるべきか」を真剣に考えて滑り続けたのだろう。

 安藤美姫は、小さなころ門奈コーチが作ってくれた1分のプログラムを、今でも滑ることができるという。シングルジャンプや、易しいスピン、ステップ、かわいらしい振付けをそのまま、今の女性らしい身体で滑って見せて、門奈コーチをずいぶん喜ばせたと聞いている。
 今年、世界選手権直前にショートプログラムを変えたことに対して、「不調の証拠」と捉えた人もいるようだが、それは違う。より、自分の心を入れられるプログラム、より、自分の滑りにフィットするプログラムは何かをしっかり考え、安藤美姫は今季の「サムソンとデリラ」より、先シーズンの「シェラザード」を選んだのだ。
 シニアに上がってからの彼女は、昨年をのぞいてすべてのシーズン、途中でショートまたはフリーのプログラムを変更している。それもほとんどが、シーズン最後の最大の試合の前だ。器用な選手は、もっと早い時期に変更を決断し、余裕を持って世界選手権などに臨もうとするだろう。でも安藤美姫は、なんとかその音楽や世界観に自分をなじませようと最後まで努力し、「やっぱりだめだ……」と思うまで真剣に向き合うのだ。ひたむきな、恋愛に似た付き合い方を、彼女はプログラムとしているように感じる。

 そんな彼女にとって、今季のフリー「カルメン」は、「安藤美姫といえば、カルメン!」と言われる可能性を持ったプログラムだった。「ニコライが、美姫のいいところをほんとうにうまく引き出してくれた」と、門奈コーチもお気に入りの、チャーミングで、強くて、凛々しいカルメン。
 最高の演技を見せた全日本選手権では、そこにいるのは安藤美姫ではなくカルメンで、またビゼーのカルメンそのものではなく、安藤美姫の解釈した彼女なりのカルメンだった。自分の演じたい主人公を、自分で探そうとする彼女が、真剣に丁寧に、彼女らしく作り上げた「カルメン」だ。

 世界選手権フリー、ふくらはぎに負傷を負いながら、演技前の棄権を決断しなかったのは、前世界チャンピオンとして最後まで試合を全うしたい気持ちがあったためだろう。その一方で、大事にしてきたあのプログラムを世界選手権で滑りたい、そんな思いもあったのではないだろうか。
 サルコウの転倒という普段ならありえないミスをして、痛みで演技が続けられなくなたっとき。
 安藤美姫が、大事にしていたカルメンの姿で涙を見せ、カルメンを見せることができずにリンクを去っていったのが悲しい。
 これからオフシーズンに入り、今回の負傷や以前から傷ついていた右肩の手術も控えているため、しばらくは元気な安藤美姫を見られないかもしれない。
 でも、ケガを直して、気持ちも立て直して、また氷の上に立てるようになったとき。もう一度「カルメン」を見せてくれたらうれしい。真剣に向き合った「カルメン」に、いつか安藤美姫自身で、もう一度。命を与えて見せてくれたら、うれしい。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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南里康晴選手、社会人スケーターへ

Yasufukuya_mg_8563  今年で中村学園大学を卒業する南里康晴選手。4月からは辛子明太子の老舗「ふくや」への就職が決まり、社会人選手として競技生活を続けることになっている。試合後のインタビュー取材時には、かわいらしい明太子があしらわれた「ふくやジャージ」も披露。企業所属選手としての意気込みを聞いた(フリー後の共同インタビューより)。

――ふくやさんからオファーがあったのはいつごろですか?
南里 国体が終わった後くらい。2月ですね。

――所属選手に、という話を聞いて、いかがでしたか?
南里 うれしかったですね! 大学の友達みんな、就職活動をしていて、「決まったよ!」なんて電話もよくもらっていたから。僕はそういう活動もせずにスケートの練習を続けていて、4月からは特に何の変化もなく、ただ練習を続けていくのかな、となんとなく思っていました。そこにこうしてサポートしていただけるお話をいただいて、みんなと違う形だけど就職が決まった。友人たちも一緒に喜んでくれました。

――社会人選手として、どのような形で選手生活を送る予定ですか?
南里 まだ詳しいことはわからないですが、オフシーズンは昼ごろまで会社に出て、お手伝いさせてもらって、それから陸上トレーニング→氷上練習、という毎日になると思います。日本に帰って、会社に世界選手権の報告をして、いろいろ話を聞いてくるつもりです。

――もしこの話がなかったら、どんなふうに選手を続けるつもりでしたか?
南里 バイトしながら、スケートを続けるつもりでした。両親には苦労ばかりかけているので、少しでも自分で稼ぎながら続けたい、と。だからこんないい話をいただいて、すぐに首を縦にふったんです(笑)。

 フィギュアスケート選手にスポンサーがついたり、社会人選手として競技が続けられたりすることなど、ほんの数年前には考えられなかったこと。スケートブームでこのスポーツに関する様々なことが、ここ数年で大きく変わったが、こうした朗報は本当にうれしい。
 これまでも荒川静香さんや村主章枝選手、安藤美姫選手らが企業のサポートを受けてきたが、南里選手や昨年から邦和スポーツランド所属の鈴木明子選手らは、新しい形での社会人スケーターの先駆けとなる。
 自らの手でつかみとったサポート環境。年齢的にはベテランの域に達する彼らだが、こうしたシステムを次の世代につなげて行けるかどうか、彼らのがんばりに期待したい。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 

*南里康晴選手へのインタビュー&スペシャル対談は、4月発売予定の別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート~2007-2008メモリアルブック~に掲載予定です


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女子フリー終了後 中野友加里選手コメント 「すべてを出し切った達成感でいっぱい」

Yukarifs_12e7231 ――フリーが終了しましたが、演技終了直後の気持ちと、結果が出た今の気持ちはいかがですか?
友加里 終わった瞬間は、すべてを出し切った達成感でいっぱいでした。もちろん、メダルを取れなかったことは残念です。でも、先生も「上出来、上出来」「何も言う事はない」と。やっぱり、先生や家族の喜ぶ顔が見られてうれしいです。

――ご家族にはもう会えたんですか?
友加里 いえ。でも観客席のどこにいるかはわかるので、顔はよく見えて。

――フリーは最終グループ最終滑走という大変な状況で、最高の演技を見せてくれました。
友加里 最終グループの選手への声援、待っている間にも、ものすごく大きく聞こえました。だからできれば、前の方の順番を引きたかったんですけれど……それは言ってもしょうがないですし! 先生も「何も聞こえない、何も聞こえない」と繰り返し言ってくださって。

――滑ってみると、自分への声援はさらに大きかった?
友加里 お客さんの声が後押ししてくれたし、今日は皆さんの声援がほんとうにはっきり聞こえるほど、落ち着いて滑れました。これだけの声援がもらえて、すごくうれしいです。

――今日のこの滑りは、来季につながりますね。
友加里 はい。でも今日はトリプルアクセルをちょっと怖がって緊張したことで、スピードを抑え気味だったかな。まず反省したいところは、出し切れなかったスピードです。それから全日本選手権から3か月空いてしまって、緊張の持って生き方も難しかった。この経験も、今後に生かせたら。他にも、今日は各国の選手たちのスコアを見ていますし、いろいろ勉強になりました。来季に向けて、他選手にあって私にないものを探して、また練習を積まなければ。

――3回転-3回転の練習も続けていますね。
友加里 今日の朝の練習でも跳んだんですが、ダウングレードの可能性があるから跳ばないでおこうと、先生と決めました。来季はぜひ。また、厳しい戦いになると思いますが……。オフシーズンも準備は怠らないようにしたいです。

 達成感と悔しさがないまぜになって、かえって淡々と話してくれた演技直後の共同インタビュー。2日後、髙橋大輔選手との対談では「4位が一番悔しい!」「むしろ5位より悔しいんですよ!」とふたりで口をそろえて熱く語ってくれた。悔しさをバネにさらに美しくなる、来季の中野友加里により一層の注目を!

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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男子フリー終了 小塚崇彦8位、総合8位「初陣の香気」

Taka_f6i2984_2 「絶対3枠を取ってきます!」
 小塚崇彦が四大陸選手権後、力強くそう宣言してくれた時。
 今は、そう言い切ってくれる気持ちさえあれば、それでいいな、と思った。
 自ら口に出してまで宣言してくれたのだから、たとえ3枠を、2番手である小塚崇彦のせいで逃してしまったとしても、彼の健闘をたたえよう、と。
 今シーズンのグランプリシリーズや四大陸選手権での成績を考えて、そんなことを思ってしまっていたことを、今は彼に謝らなければならない。
 小塚崇彦は、宣言通り男子の3枠を掴み取ってきた。そして、彼自身と日本男子の、さらなる可能性を世界に見せつけてくれた。

 小塚崇彦、イエティボリでの4分30秒。まずいつものように、60×30メートルの隅々までが自分の場所だと確かめるように、大きく、素晴らしいスピードでリンクを一周する。
 最初のジャンプは惜しくも3回転-1回転。でも続くトリプルアクセルに、3回転トウをつけて3回転-3回転を挽回!
「3-3のコンビネーションは、できれば最初に決めたかった。それが抜けてしまったので、やむを得ずトリプルアクセルに3をつけました。昨日、3-3が3-2になってしまったことで、今日は絶対3-3! って気持ちがあって。どこで跳ぶか、もう、迷ってる場合じゃなかったです」
 ほとんど練習していなかったというアクセルからの3-3に続き、もう一本のトリプルアクセルも成功! これはすごい! 体も昨日のSPに引き続き、のびのび動いている。
 小塚崇彦は、表情や手の振り付けなどではなく、ブレードに感情をこめて滑るタイプのスケーターだ。まだまだ笑顔は硬いし、氷上で物語を語ったり、風景を描いたりしたりする術も、まだ知らない。でも、今は派手な表現ができなくても、ここまで自在に氷をつかむスケートがあれば――これから自分の表現手法やスタイルを見つけた時、スケートで見せたいものが見つかったとき、どんなにダイナミックな演技ができるかを、ジャッジもよく知っている。期待の表れは、高いスコアにもしっかり表れた。
「でも今日は、コンビネーションをどこで跳ぶかを変えたので、ジャンプの構成を考えなおすことに気持ちが行ってしまった。そのことで、身体の呼吸が少し乱れたかもしれないです。演技への集中が最後の方、少し途切れてしまった……」
 そんな戸惑いなど、見ていて気付かないほどスケートは良く滑っていたはずだが、ジャンプは3-2-2、続いて今シーズンずっと失敗していたトリプルループと決めて、いいぞ、このまま! と思った矢先。トリプルサルコウ転倒。続くトリプルルッツも転倒……。
 あまりにも、初陣ながらSPで好位置につけた選手らしい試合展開、だったかもしれない。
 タカヒコいいぞ、行け、と、昨日彼を覚えたお客さんもみんなが彼の滑りを喜んで、残るジャンプもあと少し、もうちょっとだ! と思った矢先の、ふたつの転倒。
 あまりにも若い、これからの選手らしい失敗だ。
 演技を終えると、小塚崇彦は天を仰いで、キッと唇を噛みしめた。その姿がまた、あまりにも「これからの若者」らしくて、スカンジナビウムの観客たちは微笑みながら、心から暖かな拍手を彼に送った。

「ます、2本転倒したことがすごくくやしいです」
 演技後、ミックスゾーンにやってきた小塚崇彦は、報道陣を前にまず深々と、本当に深く頭を下げて、「ありがとうございました」と静かに言った。そのあとに、苦手でも何でもないジャンプを転倒した悔しさをゆっくりと口にした。
 彼自身が、一番悔しいだろう。でも、彼には悪いが、会場のお客さんも、記者も、彼自身ほどはこの転倒を悔しがってはいないのだ。それはもちろん、年齢的にも資質的にも、明らかに小塚崇彦はこれからさらに伸びるスケーターだし、この悔しさを挽回するチャンスがいくらでもあることを知っているからだ。
「世界選手権、簡単じゃないってこと、すごく実感しました」
 そう、このくらいの苦い思いこそが、きっと次に繋がる力になる。
 それに、ふたつも転倒があったというのに、134.24という得点、8位という順位。
 これは、クリーンに滑ればトップスケーターに仲間入りできる結果だったということ。来年の出場枠3も、彼の活躍のおかげで見事にキープした。
 小塚崇彦、これから行けるじゃないか! たくさんの人が日本男子のこれからに、明るさを感じたはずだ。
 今持てる力は見せられて、ジャッジからの評価も得て。
 でもふたつの転倒で、悔しさと大舞台の怖さも知って。
 小塚崇彦はイエティボリで、得られるはずのもの、すべてを得た。
 19歳。最高の、世界選手権初出場だ。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 

*小塚崇彦選手へのインタビュー&スペシャル対談は、4月発売予定の月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムックに掲載予定です


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世界選手権2008―戦いすんで

Snfp1000659  エキシビション終了後。
 取材を受けにプレスセンターに来ていた日本の南里康晴選手、小塚崇彦選手が、地元スタッフの皆さんにせがまれて、今大会イメージポスターの前で記念撮影。すべてが終わってホッとしていたのだろう。ポスターにフィーチャーされたクリストファー・ベルットソン選手のポーズを真似して見せて、イエティボリのスタッフたちは大喜び。そこにやってきたのが、当のベルットソン選手! さらに取材を終えた高橋大輔選手、中野友加里選手も加わり、みんなそろってこのポーズ!Ydp1000656

 下はスペシャル対談に応じてくれた髙橋大輔&中野友加里の同い年コンビ。仲の良いふたりのトーク&笑顔のオフショットは4月発売「月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムック」にて! 

text/Hirono Aoshima 


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最後の宴 エキシビション練習レポート

Exp_12e2564  4つのカテゴリー、すべての勝者が決まり、今日はついに世界選手権最終日。

 5位までに入った選手たちは朝10時から再びメインリンクに集まり、最後の宴、エキシビションの練習に励んでいた。

 やはりお疲れ気味なのは、昨日試合を終えたばかりの男子シングルの選手たち。 初めてのメダルを獲得したジョニー・ウィアー選手などは、お気に入りのロシアチームジャージ姿でご機嫌の様子だったが、残念な結果に終わった高橋大輔選手、ステファン・ランビエール選手らは、少しだけ元気がないように見えた。 しかし個人の練習が一段落し、全員で滑るフィナーレの練習に入ると、どの選手たちも写真のような楽しげな笑顔に。

 フィナーレでは選手たちが揃ってシンクロナイズドスケーティングに挑戦することが多いのだが、スウェーデンはなんといっても、シンクロの本場。世界チャンピオンチーム、チームサプライズの指導者による本格的な指導が始まった。 写真はたくさんの選手が手をつないで数本のラインを作り、風車のようにくるくる回る陣形「ウィール」の練習風景。世界のトップスケーターたちといえど、最初は足並みがそろわず、ラインはうねうねと不格好に動いてしまう。

「あなたたちがやると、まるでスパゲティみたいね!」と、指導者の女性は大笑い。「こんなふうにやるのよ!」チームサプライズの面々がお手本を見せると「おおっ!」とトップスケーターたちもしきりに感心していた。 練習はさらに進み、今大会のシンボルである濃いピンクのリボンを皆が一本ずつ持ち、得意のスパイラルやリフトを見せながら、リンクを横切るパートに。

 開会式でチームサプライズが華麗に操っていたこのリボン、実は扱いがなかなか難しい! 器用そうな選手でも、くるくるとかわいらしく回したり、鮮やかになびかせたりとはいかないようだ。特にリボンの扱いにこだわって練習していたのは、ジョニー・ウィアー選手と、髙橋大輔、浅田真央、中野友加里の3選手。日本勢は3人で輪になって、しきりにリボンの振り方を研究していた。 もしフィナーレで美しいリボンさばきが見られたら、本当に短い時間の特訓の成果だと思ってください。

photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima 


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男子フリー終了 南里康晴17位、総合19位「たどり着いた場所、待っている場所」

Yasu_f6i2515_2  初めての世界選手権、フリーでの演技終了後。 南里康晴はいつになく饒舌だった。

「6分間練習の調子が良かったので、アクセルへの不安はそれほどなくて。でも『昨日みたいなことになったら……』という気持ちはやっぱりありました。そういう状態で2本のアクセルが決まったので、今度は気持ちにゆるみが出てきてしまった。アクセル2本、きれいに入ったのは今シーズン初めてです。それでうれしくなって(笑)、ゆるんで、他のジャンプでステップアウト。また焦って、またその後、立て直して……」

 ひとつひとつのジャンプ、その時のひとつひとつの気持ちを、口に出して確認せずにはいられなかったのだろう。そこにいるのは、昨日までの落ち着いた南里康晴ではない。今日は、大きな試合を精一杯やり遂げた高揚感でいっぱいだ。

 しっかり氷をつかんで跳ぶ二本のトリプルアクセルも、たくさんのターンと大きな体の動きでホセの雄々しさを表現するステップも、呼吸を制御しながら複雑なポジションで回るスピンも。すべてを彼は、この場所に立つために、必死になって身につけてきた。全日本選手権で3位までに入って、世界選手権代表権を獲得するため。そのためだけに一年間、すべての気力を氷にぶつけてきたのだ。

 世界選手権に出るために得たたくさんのものを、こうして世界選手権で見せられる喜び。彼は全身で感じながら「カルメン」を滑りきった。ミスは少なくなかったが、今期のベストスコアも更新できた。

「会場の雰囲気も良くて、変なプレッシャーを感じず、伸び伸び楽しめました。全日本は楽しむよりも『やらなきゃ!』の気持ちが大きくて辛かったけれど、世界選手権は違う。楽しめる場所でした」

 しかし来シーズン、彼がもう一度ここに立つためには、またさらに多くのものを得なければならない。今回出場のならなかった織田信成は、海外でいい練習を積み、着実に進化しているという。今シーズン、最後まで南里康晴と競ったベテラン、中庭健介だって黙ってはいない。後輩の柴田嶺や無良崇人も、さらに伸びる可能性を持っている。彼が楽しんだこの場所に、「次は俺だ!」と、たくさんの優秀な選手たちが次に立つことを狙っているのだ。

「そうですね。来シーズンも、自分にとって試練の一年になると思います。今年のように自分のやるべきことを全部やっても、相手の方が上だったら……負けてもしょうがないという気持ちになるかもしれない。でも、黙って追い越されるわけないは行かないです。逆に自分が上を追い越せるように、努力するしかない。大きな試練だけれど、それを乗り越えたら、この舞台が待っていてくれるって、わかりましたから。頑張りがいが、あります!」

 南里康晴の「カルメン」は、最後の瞬間、ホセが自らの命を絶つイメージだと聞いたことがある。でも今日、氷上のホセは最後のポーズで差し伸べた手を、荒い呼吸に苦しみながら、長い時間、宙に保った。伸ばされた手は、しっかりと守る人々の目に焼き付いた。

 あの手は、誰に差し伸べようとしていたのだろうか? 何を得ようとしていたのだろうか? 恋に破れたホセではなく、世界選手権で何かを得た南里康晴が、さらに先にいる誰かの後姿をつかもうと、さらに欲しい何かを得ようとしている姿に見えた。

photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima 

*南里康晴選手へのインタビューは、4月発売予定の月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムックに掲載予定です


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男子フリー終了 髙橋大輔6位、総合4位 「諸刃の剣」

Dai_f6i3505_2  なぜ、こんなに強くなったの? 
 なぜ、今回負けてしまったの? 
 まったく異なるふたつの問いかけに、今、髙橋大輔が答えるとしたら、その答えはまったく同じになるだろう。
「勝ちたかったから」

「勝ちたい!」
 そう思う気持ちが、彼を強くした。
 トリノ五輪の前後、国際試合の表彰台に手が届き始めたころから、彼は「すべての試合で優勝する」ことを常に目標にしてきたという。「たとえプルシェンコがいたとしても」そう付け加えた時もあった。もう、誰にも負けたくないから、練習にも集中したし、4回転ジャンプも跳べるようになった。強さの源は、試合の結果やライバルを強く意識する、熱い闘争心だったのだ。
 しかし今回は、勝ちたい気持ちが彼の足元をすくった。「絶対優勝したかった。その思いが大きすぎて……気持ちばかりが前へ、前へと先走ってしまった」。彼は泣いたあとの顔をゆがめて、歯噛みした。

 試合前のインタビューでも前面に出された、積極的にライバルの存在を口にし、自らを高めようとする髙橋大輔の闘争心が私は好きだ。「自分の演技をしたい」ではなく、「戦って、勝つ!」という気持ちを堂々と口に出す彼は、アスリートらしいし、男らしい。
 しかし今回は、他者を気にしすぎて、必要以上に緊張して、本来の力が発揮できなくなってしまった。「勝ちたい気持ち」は、諸刃の剣なのだ。
 こんなことになってしまうのなら……多くの選手が言うように、人を気にせず、結果を気にせず、「自分の納得する演技」を目指した方がいいのだろうか? たとえばランビエールの言うように「勝つためではなく、自分の芸術を見せること」を一番に考えたり。日本の女子選手たちが言うように、「人に勝つのではなく自分に勝つ」ことを考えたり。髙橋大輔にも、意識改革が必要なのだろうか?

 今回の彼のコメントで一番印象的だったのは、ずっと調子の悪かった4回転ジャンプをなぜ一本にしなかったのか、という質問への答えだ。今大会、上位陣で4回転ジャンプをクリーンに決めたのは髙橋とジュベールだけ。2本以上決めた者は、誰もいなかった。ジュベールでさえ安全策を取り、トライしたクワドは一本。ジャンプ以外にも高い加点が得られる髙橋ならば、4回転もトリプルアクセルも一本に抑え、クリーンにプログラムをまとめたら、確実にメダルには手が届いていただろう。モロゾフコーチも、4回転は一本にすることをすすめたという。
 しかしシーズン最初に、「勝つために」設定した目標通り、2本のクワドを跳ぶことを、彼は選択した。その理由は「逃げたくなかったから」。
 ここまでの「負けたくない!」気持ち、むき出しの闘争心。本当に素晴らしいと思う。
 もう、こうなったら、彼はこのままで、いいのではないか。ライバルを認め、ライバルを強く意識する。勝つためならば何でもする。やはりそれが、髙橋大輔の強さだ。この強さをとことんまで磨き抜けば、いつかきっと、彼の諸刃の剣をも使いこなせるようにしてくれる。

 フィギュアスケートは、やはりスポーツだ。髙橋大輔自身も、「今、男子シングルはものすごく面白いですよ。トップクラスに個性の強い選手がたくさんいて、それぞれの力が、近い」。それぞれの違った魅力を楽しんでほしい、そして、誰が勝つかわからない試合の行方を楽しんでほしい、と、彼は大会前のインタビューで語った。
 彼の言うとおりだ。フィギュアスケートは、勝負がつくからこそ面白い。強く美しい選手たちが、「勝ちたい!」思いでぶつける、技と美を楽しみたい。自分の芸術を見せるためでなく、勝つために本気になる男たちを見たい。
 バトル、ジュベール、ウィアー、髙橋大輔、ランビエール、ヴェルネル、ライサチェク。そしてこれから伸びてくる、たくさんの選手たち。男子シングルがたまらなく面白かった時代の選手たちとして、確実に後の時代に語り継がれる男たちだ。彼らの意地と誇りをかけた戦いは、バンクーバーまで、まだまだ続いていく。
 髙橋大輔には、技も、美も、強い心も、すべてで先頭を切って。この時代を駆け抜けていってほしい。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 

*髙橋大輔選手へのインタビューは、発売中の週刊ザテレビジョンに掲載されています。4月発売予定の月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムックにも掲載予定です


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男子シングルSP終了、髙橋大輔3位 「白鳥の湖」、終演

Daimma_5154s  間違いなく今シーズンのフィギュアスケートシーンを代表するプログラム、ヒップホップ「白鳥の湖」。
 その、試合では最後となる滑りを生で見ることができる幸せを、髙橋大輔をよく知る日本のファンは、噛み締めていた。でもそれは私たちだけではなく、スカンジナビウムに集ったたくさんのお客さんも、同じだった。

 北米や日本で開かれる世界選手権とヨーロッパ開催の世界選手権の大きな違いは、客席でありとあらゆる国の国旗がたくさん揺れていることだ。アジアやアメリカではどうしても、やって来られる国の人々は限られている。でもスウェーデンなら、フランスからも、イタリアからも、ドイツからも、もっと小さな国々からも、たくさんの人々が集う事が出来る。そして集まったスケートファンは、各国の旗を盛んに振り、自国選手や近しい国の選手に大きな大きな声援を送る。もちろん、とびきりお客さんが力を入れて応援するのは、ヨーロッパ各国の選手たちだ。
 これは、髙橋大輔にとっては予想以上に厳しい、アウェイの戦いになりそうだ――ペアや女子の試合を見て、そう感じた人は多い。これは、一つのミスでも足元をすくわれる、完璧にやり遂げなければ、並みいるヨーロッパのライバルたちに勝てないだろう、と。

 しかし髙橋大輔に限っては、そんな心配は杞憂だったのかもしれない。
 ヒップホップ「白鳥の湖」――ちょっと気合を入れてフィギュアスケートに注目している人ならば、誰もが知っている名作になってしまったこの作品が、今日スカンジナビウムで「上演」されることを、多くの人が知っていた。彼の演技が始まろうというとき、明らかに「あれが来るぞ!」という期待に満ちた雰囲気が、すでにできあがっていた。
 そして、トリプルアクセルのハンドダウンという失敗がありながらも、リミッターが解除されたように激しい後半のステップシークエンスや、氷の上にいることを忘れさせる自由自在な彼のダンスに、スタンドを埋め尽くしたすべての人が大喜び! 
 拍手や歓声の大きさだけでなく、ミスがありながらも3位という得点の高さに、ジャッジもまた彼の「白鳥の湖」を楽しんでくれたことがわかった。ここは、髙橋大輔にとってアウェイなどではなかったのだ。会場もジャッジも、高橋大輔の味方で、彼のファン。そして試合が始まる前からこの場所を彼の舞台にしていたのは、他の誰でもなく髙橋大輔と、彼の「白鳥の湖」。他の何でもなく、今年、この素晴らしいプログラムをひとつひとつの試合で滑り続け、スケートファンを楽しませ続けてきたことだ。

 昨年あたりから、髙橋大輔は世界のトップスケーターとして、誰もが認める存在になっていた。
 しかし彼の存在を世界のスケートファンにはっきりと印象付けたのは、今年のショートプログラム「白鳥の湖」だろう。
 素晴らしいのは、このプログラムを生み出したニコライ・モロゾフのアイディアと想像力。そして「最初は乗り気じゃなかった」のに、完璧にひとつの作品に作り上げた髙橋大輔の技術と心と努力だ。
 07-08シーズン、世界中、どのアイスリンクでも、どんな観客にかこまれても、「白鳥の湖」は必ず人々を熱狂の渦に巻き込んだ。今シーズンの国際試合、国内試合、合わせて6試合、すべてでそれをやり遂げたことに、最大の賛辞を髙橋大輔に贈りたい。
 そしてもう二度と、試合の場で「白鳥の湖」を見ることが、私たちにはできないことが、たまらなくさびしい。
 こんなプログラムが、かつて氷上に存在しただろうか?
 
photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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男子シングルSP終了、南里康晴20位 22歳の初陣

Yasumma_3849s  公式練習でも、滑走順の抽選でも、オフアイスでも。
 イエティボリで会う南里康晴は、いつも穏やかな表情で、落ち着いて見えた。
「世界選手権、スゥエーデン……絶対に行きますよ」
 夏の日本代表合宿のころから、ひたすら目標にしていた場所に来て、もっと高揚していても、もっとそわそわしていてもいいはずなのに。いたって普通に、普段どおりに、飄々とした雰囲気で北欧の街にいる彼を見るのは、なんだか不思議だ。まるで世界選手権ではなく、福岡の街を歩いているように、興奮するでもなく、不安に陥るでもなく、いつもの南里康晴がそこにいる。

 ショートプログラム後も、「もちろん少しは緊張しましたよ。でも、全日本のフリーの時のようなガチガチではなかったです」と、落ち着いたもの。同じ滑走グループに、ベルットソンとシュルタイス、ふたりのスェーデン人がいて、客席は6分練習から大歓声が場外にも聞こえるほどのお祭り騒ぎだった。そんな雰囲気さえも、「盛り上がりぶりに、最初は『すごいなあ』と驚いたけれど、滑っているうちに『気持ちいいなあ』と思えてきました。滑っている間も、声援に後押ししてもらった気もします」と振り返る。
 初めての世界選手権とはいっても、彼も大学4年生、22歳。ジュニアでもシニアでも、国際試合を何度も経験し、歩みは遅くとも、立ち止まったり後戻りしたりすることなく、ひたむきにフィギュアスケートに打ち込んで、今、ここに立っている男だ。
 唯一、「跳ぶ瞬間、きのうの真央のアクセルが頭をよぎって」、得意のトリプルアクセルがシングルになるミスは痛かった。しかし、「アクセルが抜けた瞬間、リンクサイドの先生の顔をちらって見ました。そうしたら先生も『ああっ』て顔をしてた(笑)。でも、この先はちゃんとやらないと! って気持ちにすっと切り変われたから……最後までスピンもステップも、しっかりできたと思います」
 やはり南里康晴、落ち付いている。この精神状態なら、もしもアクセルのアクシデントがなければ、かなりのいい結果が出たのではないか、と思った。
 そしてフリーも、この調子ならば期待できるのではないか、と思う。
 SP「月光」のサーキュラーステップでは、クラシック曲ながら手拍子が自然に、静かに、客席から湧きあがった。初めての大きな舞台でも自分を見失わず、彼がやるべきことをショートプログラムでやりとげた証しだ。
 明日のフリー、「カルメン」では、さらに落ち着いて、大観衆の熱狂を、さらに心地よく感じて。
 ひとつずつ階段を上ってたどり着いた世界選手権という舞台を、彼ならばきっと楽しんでくれると思う。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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男子シングルSP終了、小塚崇彦8位  滑りの申し子

Kodukamma_5564s  やっと、見たかった小塚崇彦が見られた! 
 そんな満足感でいっぱいにさせてくれたSP、「キャラバン」だった。 
 滑り出しから、誰よりもスムーズで素晴らしい一歩を、彼のスケート靴は、すーっと踏み出す。
 タカヒコ・コヅカ? 知らないなあ、と思っていたお客さんも、きっとこの一歩目で「おっ?」と目を見張らずにはいなかっただろう。それほど、滑りそのものに人の目を奪う力が小塚崇彦にはあるし、今日の彼の滑りはことさらだった。
 ジャンプも、3回転-3回転が3-2になってしまったけれど、トリプルアクセル、トリプルフリップとともにOK。特に3つ目のフリップをタシーンと軽く、力強く決めた後は、右手で小さくこぶしを作り、笑顔の佐藤久美子コーチの前を「やった!」という氷上で駆け抜けていく。
 スピンもさすが、佐藤チームで鍛えられたスピードと安定感。ひょっとしたら、勘のいいお客さんだったら、彼のスケートやスピンを見て、昨日最後に滑った女の子とおなじコーチのもとで育って選手だ、と気づいたのではないだろうか。少し古いファンならば、さらにコリオグラファーの名前にユカ・サトウの名を見て、膝を打ったかもしれない。
 そんなことを思うほど、今日の小塚崇彦の若くてしなやかな身体には、スケートを愛した先人たちの技術の結晶が、しっかり息づいていた。そしてとびきりクオリティ高いスケート技術を携えて、今、氷上を疾走しているのは、彼の若くて無垢な魂だ。磨き抜かれた古き良きものと、まぶしいほどの若いエネルギーが結びついて、初めて生まれるかけがえのないもの。それがこの日、小塚崇彦が氷上で見せてくれたものだ。
 最後は、超高速のアップライトスピンで客席をわかせ、大喝采の中、堂々のフィニッシュ。
 これがあの、「滑走順にびびって」歯をガチガチ言わせていた青年だろうか?

「今日はなんでか知らないけれど、今まで味わったことのないほどの滑りのなめらかさを、6分練習の時に感じていたんです。その滑りの感覚のおかげで、張りつめた気持ちもやわらいでいって……出ていく時には『がんばっていくぞ!』って気持ちになってました」
 滑りの申し子のような小塚崇彦が、「今まで味わったことのないほどの」自分のスケートのなめらかさに驚いている? そんなことは、あの佐藤有香さんでさえ、年に一度か二度、あるかないかのたぐいまれな感覚だ。ひょっとしたら私たちは、とんでもない瞬間に立ち会ってしまったのではないだろうか? それはそのままスケーティングスキル7.04という、高い得点にも現れていた。
「7点台が出てますか? (ポイント表に目を向けながら)あ、ほんとだ、すごい!! でも今日の出来のことは、今夜しっかり寝て、もう忘れて……。明日はもう一度、一からスタートしたいと思います」

 世界選手権に新人賞のようなものはない。でも、その大会を機に一気に躍進していく若い選手が、毎年必ず現れる。98年のプルシェンコだったり、06年の織田信成だったり……。今年はきっと、小塚崇彦!
 世界のスケートファンが、彼との出会いを忘れない大会に――きっと今日のフリー、タカヒコ・コヅカはしてくれる。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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第3回Sports@niftyフィギュアスケートアワードのお知らせ

Awap1000553_2  Sports@niftyフィギュアスケート特集では、昨年、一昨年に続き、フィギュアスケートファンの投票だけで選出されるSports@niftyフィギュアスケートアワードを開催します。

 これまでと同じ、「フィギュアスケーター・オブ・ザ・イヤー」「ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤー」「プログラム・オブ・ザ・イヤー」「コーチ・オブ・ザ・イヤー」「コスチューム・オブ・ザ・イヤー」の5つのアワードに加え、今年は新たな部門も開設。
 フィギュアスケート世界選手権終了後に、投票を開始予定、詳細は追って本特集内でお知らせいたします。

過去2回の各部門受賞者
フィギュアスケーター・オブ・ザ・イヤー 2006荒川静香 2007安藤美姫
ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤー  2006小塚崇彦 2007ミライ・ナガス
プログラム・オブ・ザ・イヤー       2006トゥーランドット(荒川静香) 2007オペラ座の怪人(髙橋大輔)
コーチ・オブ・ザ・イヤー          2006ニコライ・モロゾフ 2007ニコライ・モロゾフ 
コスチューム・オブ・ザ・イヤー      2006荒川静香(トゥーランドット) 2007浅田真央(ノクターン)


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「きれい系が続いたあとに、僕ですか」 男子SP直前! 髙橋大輔選手コメント

Daisuke_12e3678_2 (日本の記者たちの前に、海外メディアの取材を受けて)

髙橋 もう英語、しゃべりたくないです(笑)。

――では、日本語で(笑)。

髙橋 でも、こうして海外の人にも取材してもらえてありがたいですよね。英語、勉強しなきゃなあ、と思ってます。

――滑走順が決まりましたね。

髙橋 ジョニー、ジェフときれい系が続いて、僕で若干むさくるしくなりますかね。どうしよう(笑)。まあ、あまり気にせず。ジェフの後だと、彼への歓声が多い中で滑らなきゃいけないのは分かってます。彼は世界のどんな場所でも歓声が大きいですし。それは承知の上で、気にせずに! あと後ろがジュベールなので、僕のあと、確実に4回転を入れて来ると思いますし。ジャンプ以外のところで見せていかなきゃ! でもステファンは4回転も、ステップも他の部分でも見せられるので、彼がパーフェクトに決めたら、きわどいかな。ジャンプやスピン以外のところでもアピールしないと。

――リンクの雰囲気はどうでしょう? お客さんが近い方がのれる、と言っていましたが。

髙橋 僕は好きです。ここのリンク! こういう感じが(手で、客席の傾斜の具合を示して)。雰囲気的にいい感じだと思います。氷はまだプラクティスリンクでしか滑っていないので、メインリンクの具合は分からないんですが。  いつものように、ライバル選手の名前を次々に、なんのてらいもなくあげてくれた髙橋選手。「自分の演技」ではなく、相手がいる戦いに挑む気満々だ。SP前日の公式練習で滑った「白鳥の湖」でも、自信に充ちあふれていたいい動きを見せる。 ペアや女子の結果を見ても、明らかに彼にとってはアウェイの戦い。しかしここで勝てたら、彼は本物のチャンピオンだ。

*髙橋大輔選手へのインタビューは、発売中の週刊ザテレビジョンに掲載されています。4月発売予定の月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムックにも掲載予定です

photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima 


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「スウェーデン、物価高すぎです」 男子SP直前! 南里康晴選手コメント

Nanri_12e3609 ――滑走順も決まり、いよいよですね。
南里 はい。自分のやるべきことをしっかりやって、あとの日本選手につなげられたら、と思います。

――後半グループの4番目。この滑走順については?
南里 順番のことは、そこまで考えていません。どの順番で滑りたい、という気持ちもなかったので。

――落ち付いていますね(誰かさんに比べたら)。
南里 まだ試合って感じがしないんですよ。たぶん明日くらいから、気持ちも上がって来ると思います。今日はリラックスしながら練習しようと思ってます。

――今回は振り付け師のパスカーレ・カメレンゴ(アイスダンス・ファイエラ&スカリ組のコーチ)さんも来ていますね。
南里 「よく来たね、ここに!」みたいなことを言われました(笑)。練習見に行くよ! って言うんですが、まだ来てくれていないので、今日あたりは見に来てくれるのかな?

――ショートプログラムは、カメレンゴさんの名作、「月光」ですね。
南里 今シーズン最後のショートなので。今までやってきたことすべてをぶつけて、思いきって滑りたいと思います。

――スウェーデン、イエティボリに来たことは、楽しんでいますか?
南里 昨日の練習をオフにして、街に行きました。買い物をしようと思って行ったんですけど……高すぎて何も買えなかったですよ!

 淡々と、いつもの調子でインタビューに答える南里選手。この、いちばん日本男子らしいシャイな彼が、氷の上でどんな情熱をほとばしらせてくれるのか? 今夜のショートプログラムは、日本男子の後輩たちをも痺れさせたマスターピース「月光」。必見です。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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女子フリー終了 中野友加里4位、総合4位 スカンジナビウムの恋人

Yukarimmb_9881s_2  中野友加里は、イエティボリ世界選手権のメダリストだと私は思う。
 そう言うことが許されないのならば、この日一番観客に愛されたのは中野友加里だ、といい切りたい。

 キム・ヨナ、浅田真央のふたりに続く最終グループ最終滑走。ふたりのスターはともにミスの少ない素晴らしい演技を見せ、スカンジナビウムのお客さんは大喜びだった。
 でも、フィギュアスケートのファンは、貪欲だ。気に入っている選手だけでなく、出場する選手すべてに分け隔てない拍手を送ってくれる観客は多いが、それは同時に、勝ち負けを楽しむ以上にできるだけたくさんのいい演技を見たい、という貪欲さに繋がる。
 この日のお客さんも、最終滑走者の中野友加里に、それを要求していた。いい演技を見たなあ、でも、もうひとりいるぞ。まだすごい演技を見られるかもしれないぞ、と。
 
 その期待に、中野友加里は見事にこたえてくれた。
 彼女は、浅田真央やキム・ヨナほどの高い知名度はない。地元で大きなスポーツの試合をやっているから、ちょっと見に行こうか、というお客さんのなかには、ユカリ・ナカノを知らない人も多かっただろう。
 そんな選手が、浅田真央が見せてくれなかったトリプルアクセルを、まず見せてくれた! すごいじゃないか! 
 この時点で、もっといい演技を見たいと思っていたお客さんも、ひょっとしたら浅田・キムの演技でもう満足していたお客さんも、すべての観客の視線と興味を、中野友加里はその小さな体に集めてしまった。まだすごい選手がいるじゃないか! と。
 そして続くのは、たぶん今大会に参加した女子選手の中で、最も美しく、回転とともに人の心にさざ波を起こさせるようなスピン。3-2-2のコンビネーションもトリプルルッツも、すべてがクリーンだった7つのジャンプ(判定では回転不足がいくつかあったが、ほとんどのお客さんはノーミスの演技として楽しんだ!)。そしてなんといっても、可憐に、また艶やかに、巧みなスパイラルやスケーティングを引き立てる、中野友加里の豊かで愛らしい表情。
 見たかったものすべてを最後の最後にこうして見せられて、たぶんスカンジナビウムにやってきたお客さんのうち少なからぬ人数が、今日、中野友加里に恋をしたと思う。
 特に最後の最後、このプログラムをここで見たことを力強く印象付ける、速い速いドーナツスピンを見せられた瞬間――何かがはじけるように彼女に恋に落ちた人は多いのではないかと思う。
 ユナ・キムの、極められた優美さ。浅田真央の、音との脅威的な一体感。そんな、ちょっと手の届かないところで輝いているスケートにため息をつく感覚とはまた違う、見ていて思わず恋に落ちてしまうような、そういう種類の魅力が、今夜の中野友加里のスケートにはあふれていた。

 もうストレートに言ってしまうが、ほんとうに、ほんとうに心の底から、今日の中野友加里のフリーには感動した。記者席で見ている自分はこの演技にスタンディングオベーションができないことが、これほど悔しいと思ったことは、いまだかつてなかった。
 きっと、中野友加里のスケート人生すべてを振り返っても、間違いなく一番の演技だった思う。6人の最終滑走者の中でも、最も自分の力を発揮し、納得のいく演技をしたスケーターだったと思う。
 だからこそ、絶対に! 彼女が表彰台の上に立っているところを見たかった!
 ジャッジの採点に対して……これほど不服を感じたことはないし、これほど悔しいと思ったこともない。

 結果のことは、これ以上言っても仕方ないだろう。
 今はただ、中野友加里のこれまでのすべての努力が、今日の演技に結実したことを喜びたい。
 会場のたくさんのお客さんが点数と結果にブーイングをしてくれて、いっしょに中野友加里を愛してくれたことを喜びたい。
 そして、次からは間違いなくメダリスト候補として世界の舞台で戦っていくだろう中野友加里が、彼女の地道な努力をさらに続け、その果てに、文句ない栄冠を手にする日が来ることを、心の底から祈りたい。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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「正直びびってます」男子SP直前! 小塚崇彦選手コメント

Koduka_12e3647_2  男子ショートプログラムの滑走順が決まった直後、記者の質問に答えてくれた日本の3選手。
 改めて、取材すべき日本男子が3人もいることがとてもうれしい。どうしても注目は髙橋大輔選手に集中するけれど、3者3様、個性豊かな日本男子のスケートと戦いぶりを、ファンの皆さんにもぜひ楽しんでほしい。まずは3人中、最年少。初出場でSP最終グループ入りと、とんでもないスタートを切ることになった小塚崇彦選手の声をどうぞ!

――滑走順(最終グループ4番。おなじグループで、髙橋、バトル、ジュベールが滑る)が決まって、頭をかいていましたね。
小塚 まさかあそこに入るとは思っていなかったので……。まだ、歯がカタカタ言っています。正直びびってます(笑)。

――でもまだ、すぐには始まりませんよ(抽選はSPの2日前)。
小塚 もう、すぐに始まるんじゃないかって気になっちゃってます……。抽選がすすんでいって、リストに選手の名前が埋まっていって、まわり(高橋、南里選手や日本チームのスタッフ)が「これは絶対、崇彦後ろ(最終グループ)だよ!」って言いだしてから、もう緊張しだして……。ほんとに最終グループって決まってしまって「ああー、あそこに自分が入るのか……」って。でも落ち着いて、気持ちを立て直して試合に向かいたいです。

――このグループで滑ることは、予想していませんでしたか?
小塚 来る前は、もっと前のグループで滑るはずだったんですよ。(小塚選手は、世界ランキング順で並べれば参加選手中13位で、上位12人で滑走順を引く最終2グループには入らない予定だった。それがアメリカのエヴァン・ライサチェク選手の欠場で12位に繰り上がり、急きょ最終12人入り)。でも、こういうグループで滑れることは、とてもうれしいことなので。

――歯がカタカタ言うほどの緊張感、どう対処していきますか?
小塚 とりあえず今日の夜、練習をして、良く寝て、良く食べて、気持ちを落ち着かせて。

――コーチの佐藤先生たちはこの滑走順、どんな感想を持っているでしょう。
小塚 先生はまだ知らないんです。いったいなんて言われるか……。でも伊東さん(伊東秀仁強化部長)いわく「相手にとって不足なし!」だと。
伊東 お前がそう思わないとだめなんだぞ(笑)。
小塚 もう開き直るというか(笑)、時間をかけてこの気持ちを変えていくしかないと思います。当たって砕けろじゃないけど、思いきっていきたいです。このメンバーと公式練習で一緒に練習できることもいい機会だし。

――順位など、目標は何か定めていますか?
小塚 今は順位どころじゃないですよ! 滑走順のことでいっぱいいっぱいです!

 本当に「びびってます」という様子だった小塚選手には悪いけれど、記者も、日本チームスタッフも、コーチたちも、みんなこの滑走順、喜んでいるはずだ。これは日本のホープが成長するための、またとないチャンス! 韓国でもお客さんの大声援に「びびって」しまったという小塚選手。ここで一発、男らしいところを見せてほしい!

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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女子フリー終了 浅田真央選手コメント「食べたいもの、全部食べます」