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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

グランプリファイナル2008 女子シングル終了 安藤美姫総合6位「4回転を持つ者」

Mikib_1035s  演技終了後の、笑顔とガッツポーズ。それが、安藤美姫がスケートを続ける意味の、すべてだと思った。
 跳ばないかもしれない4回転ジャンプを、なぜ彼女は「跳びたい」と言い続けるのか?
 自分自身が、「4回転の安藤美姫」であることを、忘れたくないから。自分自身が一番、「安藤美姫の4回転」を見たいからではないだろうか。
 成功したことを、ギネスブックに載るほど喜ばれ、ことあるごとに「4回転の」と、世界初のあの瞬間から言われ続けてきた。
 4回転こそが自分とフィギュアスケートを結びつけるとても大切なもの、そう彼女自身も思ってきてだろう。
 それほど大事なものが、様々な理由で一度は跳べなくなってしまった。もう、5年間も試合での成功が無い。
「トレードマーク」を失ったことで、どんな思いを彼女は味わってきただろうか。もう一度それを取り戻すために、どんなに練習を積んだことだろうか。
 もう一度4回転を跳んで、みんなに喜んでもらいたい――その思いは、大人たちが手を叩いて喜んだささいな動作を、小さな子供が無邪気に繰り返そうとするさまに似ている。その動作が、世界で彼女にしかできない、とんでもなく難しいものだっただけだ。

 ファイナルで彼女が4回転を跳ぶ、と聞いて、私たちは「大丈夫だろうか?」と、心配しながらもわくわくした。世界で唯一の技、成功すれば5年ぶりの技。やっぱり見てみたい! 「ささいな動作」は惜しいところで回転不足で、成功とはいかなかったけれど、必死にやってみせてくれた「小さな子供」に、われわれは拍手を送った。
 他のジャンプも回転不足判定が多く、点数は伸び悩んだが、「ジャンプの調子はサイアク」な状態から、よくここまで持ってきたと思う。
「点数は出なかったけれど、がっかりはしていません。もう何年も、挑戦さえできなかった4回転を入れられたので! 今年は本当に、4回転を跳びたい気持ちが強いんです。今日は回転不足になってしまったけれど、まだ自分にはできるんだってことを見せられて、すごくうれしい。跳ぶかどうか、コーチとはずいぶん長いこと話し合いました。最後にはニコライ、『もう、ミキにまかせる』って言ってくれて(笑)」
 4回転ジャンプをひとつのプログラムで三度成功させたこともあるクワドジャンパー、本田武史さんは、かつてこんなことを語っている。
「4回転を跳んでいるときの気持ち。それは、ちょっと説明できないものです。その瞬間は、まるで自分が空を飛んでいるような気さえする……。でもこのジャンプを、僕はもうすぐ跳べなくなるんです。体力的にも、いつまでも跳べるジャンプじゃない。跳べなくなる、そう思うと、たまらなくさびしいんです」
 世界で唯一、そんな気持ちがわかる女性が安藤美姫。人々に喜んでもらおう、跳ぶ自分を見てもらおうとする無邪気さと、自分にしかできないものを持つ者の過酷さ――。
 フリーを終えた翌日、ホテルの周囲で見かけた普段着の安藤美姫が、あまりにスタイリッシュに美しく、20歳の女の子そのもので、改めて驚いた。4回転さえ跳ばなければ、きっと自由に恋をしたい盛り、遊びたい盛りの年頃だ。
 そんな彼女が、4回転を持つ者として生きてきた。これからも安藤美姫は、4回転を持つ者として生きていく。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima


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グランプリファイナル2008 こぼれ話(2) 熱狂のオウリムヌリ

Rink155  今年2月の四大陸選手権取材で、韓国のお客さんの熱狂ぶりは良く知っていた。でもジュニアグランプリファイナルの間は、それほどの大騒ぎは起きていない。あれ、こんなものだったっけな? と、少し拍子ぬけしていたのだが……。シニアのファイナルが幕を開けた12日、会場の空気は恐ろしいくらい一変してしまった。
 もう、それは試合が始まる前からのこと。アイスダンスオリジナルダンスの開幕前、何事かと思うような大絶叫が、会場いっぱいに沸き起こったのだ。ふとみると客席で観戦していたジェレミー・アボットが、大型スクリーンに映し出されている。ジョニー・ウィアーらが人気者なのは聞いていたけれど、アボットにもこれだけの声が上がるのか……。面白がったテレビカメラは、次々に観戦中の選手たちの姿を映していく。サフチェンコ&ショルコビーにもキャー! ジュニアファイナル優勝のフローレン・アマディオにキャー! そしてユナ・キムをカメラがとらえると、もうとてもスポーツの試合会場とは思えない大絶叫。
 更に面白かったのは、男子シングルの開幕を告げるISUのイメージビデオが流れた時。ビデオに映ったウィアーやジュベールのジャンプにまで、そこで彼らが跳んでいるかのような大歓声が起きるのだ。
 試合が始まれば、小塚崇彦の記事でもふれたように、6分練習に跳びだした選手たちに襲いかかるような歓声の雨あられ……。ユナ・キムフィーバーもすごいが、やはり韓国のスケートファンの中心は、若い女性たち。男子シングル人気は絶大だ。
「韓国のお客さんは素晴らしかったね。今日はお客さんたちのためにベストの演技をしたいって思ったよ」と、振り返るのはジョニー・ウィアー。
 しかしこの雰囲気に押され、6分間練習の6人は、ずいぶん張り切ってジャンプを跳んでしまった。ほとんど周りが見えなくなって暴走気味、「ちょっと落ち着いて!」と声をかけたくなる選手もいたくらいだ。
 このコンサート会場のような雰囲気を、味方につけたかどうか……それぞれのショートプログラムの結果にストレートに現れている。
 そして男子シングルを見ていて、やはりどうしても思いだしてしまったのは、2月の四大陸選手権での高橋大輔。彼はこの雰囲気に後押しされて、世界最高得点の「ロミオとジュリエット」を滑ったのだ。
 彼もまた「お客さんがいてくれて、これだけのことができたと思う」と語っていた。興奮のるつぼの中、奇跡のような演技が、再び見られるかもしれない。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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ジュニアグランプリファイナル2008 ペア終了 高橋&トラン組8位

Tt0025  昨日の大きな失敗を、やはり気にしていたのだろう。フリーの高橋成美とメルビン・トランは、SPよりだいぶ大人っぽいヴァイオリン曲を、いくぶん慎重に滑っていた。
 昨日見せてくれた、失敗が続いても自然に出てしまう明るく健康的な雰囲気が、きょうはちょっと影を潜めている。ソロジャンプもそれぞれが失敗、2度目のスロージャンプも転倒。最後のストレートラインステップでは、お互いの動きに目を配ることなく、ふたりともが自分のペースで動いてしまっていた。
 しかしそうしたミスよりも残念だったのは、特に高橋成美の動きが昨日よりもずいぶん硬かったことだ。昨日は6分練習からしっかり出ていた笑顔も、今日は見られない。いつもよりスピードも出ていなかったのだろう、メルビン・トランにぐっと腕を引っ張られて、本来あるべきポジションに戻っていく場面もあった。
 やはりショートでの大きな失敗、一晩で気持ちを立て直すのは難しかったのだ。この日の一番最初の試合の一番滑走、まだ温まりきっていない会場の雰囲気も、さらにふたりの緊張感を高めてしまったかもしれない。
 でもソロスピンは、ジュニアとしては比較的良く揃っていたし、見せ場のリフトはショート同様、安定していた。「バタフライラバーズ」の曲に合わせ、蝶を思わせるユニークなリフトも素敵だった。不満足な演技だったかもしれないけれど、彼らならではの見せ場はたくさんある。もっと自信を持って滑れるといいな、と思った。
 演技終了後、彼は彼女に目をやったけれど、彼女は彼の目を見られずにいた。今度は二人で、にっこり笑って見つめ合って終わる、そんなシーズンを見てみたい。

 演技後のふたり、そしてミックスゾーンでのふたりを見ていて思ったのは、勝ち気でがんばり屋の高橋成美に対し、メルビン・トランはずいぶん気遣いのできる大人だということ。
 手をつないでミックスゾーンに出てきて、記者たちに相対した時も、「OK?」(トラン)「Yes,OK」(高橋)という言葉を交わしてから、インタビューは始まった。
「はい、彼はいつも優しいんです。1年半、一緒にやってきたけれど、ケンカをしたことは一度もないんですよ。だからすごく好き……好きって、そういう意味じゃないですよ!(ちがーうという大きなジェスチャーを交えながら!)。そうです。お兄さんみたいな感じ(笑)。
 ふたりでファイナルに出られて良かった。でも、ファイナルにふさわしい演技ができなかったのは残念です。
 終わってふたりで話したことは、初めて試合でスロージャンプが決まったこと、それは進歩だね、ということ。でもジャンプの前の迷いと、リフトのグラグラは次への課題だね、ということです」
 演技が終わってから、インタビューまで、時間はほんのわずか。その間に、もうふたりはそこまで話をしていた。ひとりで落ち込まなければならないシングルとは、ずいぶん違うんだな――ペアの取材をしなれていない身としては、ふたりで試練を乗り越えていこうとする姿が、とても新鮮で印象的だ。
 そしてこのふたりが、若いながらもいいパートナーシップを持ったいいコンビだということを知ったことが、今回のファイナルでの一番の収穫だった。今月末の全日本選手権。3月には世界ジュニア選手権もある。ひょっとしたら、4月のワールドチームトロフィーで、日の丸を背負う可能性もある。
「これからの試合……特に世界ジュニアでは、ひとつひとつのエレメンツの確率を上げて、完璧な演技ができるようにしたいです!」
 完璧な演技も、見たい。また、ふたりが一緒に歩んでいき、一緒に落ち込んだり喜んだりする様子も、できるだけ長く見ていきたい。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima


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グランプリファイナル2008 女子シングルSP終了 キム・ヨナ1位、浅田真央2位

Maoa_2261 「ルッツをパンクした演技に、なぜ負けてしまうの!?」
「敵はキム・ヨナだけではないってことですよ。彼女は、いろいろなものと戦わなくちゃいけないんだ」
 浅田真央の演技のことを思い返していたら、プレスルームで交わされていたそんな会話がよみがえってきた。
 明らかにジャンプの出来では下だった選手に、点数で負けてしまうことは、良くある。明らかに力の差がある選手同士なら、ふたつやみっつのジャンプミスの差では、順位はひっくり返らないことだって多い。
 しかしここまで実力の均衡した2選手。片方が大きなミスをしているのに、順位は上という事態。疑問を持ってしまう人は多いだろう。
 プロトコルを見ると、キム・ヨナがクリーンに決めた3回転‐3回転(11.5)とシングルになったルッツ(0.3)の合計点が11.8点。浅田真央の3回転‐3回転は回転不足と判定され、5.2、エッジエラーもつかなかったルッツは6.8、合計12.0点。あとはコンビネーションスピンで0.3、ステップで0.1……と少しずつ少しずつ差をつけられて、キム・ヨナ1位、わずか0.56点差で浅田真央2位となったことがわかる。
 しかし、そんな細かいところをつついてみても、あまり意味がない。人々が議論しているのは、浅田真央に「戦わなくちゃいけないいろいろなもの」があったかどうか、だ。
 それは確かにあった、と思う。でもそれは、この試合に限ったことではないのだ。グランプリシリーズで、まったく同じレベルの演技をしても、自分の国での試合ではずいぶん高い点数をもらえることはある。世界選手権でも、開催国選手にライバルより少しいい点数が出て表彰台のメンバーに影響することだって、ある。
 この試合がそのまま日本でされていたら、絶対に浅田真央が上だっただろう、と言う人々もいるだろうだろう。しかし日本開催でキム・ヨナがミスなし、浅田真央がワンミスで、浅田真央が上、そんな事態だって起こりうるのだ。

 では、浅田真央はどうしようもない敵、どんなにがんばってもかないっこない敵にぶつかってしまったのか?
 いや、そんなことはない。
 酷であることを承知で言えば、もっといい演技、ホームアドバンテージなど起こさせる隙もない演技をすればいいのだ。それは回転不足対策など技術的なものだけでは、もちろんない。
 もし今日の浅田真央の演技が、涙が出るほど素晴らしいものだったら、この記事でも大きな不満を書いていたと思う。しかし今日の「月の光」は、ジャンプこそうまく決めたが、全体の印象はそれほど強いものではなかった。例えばジャンプの失敗のあったエリック杯SPの方が、全身で月光を浴びるような凄みを帯びていて、パフォーマンスとしてはずっと優れたものだ。NHK杯SPと比べてもそうだが、この日の浅田真央の月夜は、少し静か過ぎた。そのことは、たぶん本人が一番良く分かっているだろう。コーチたちが大喜びだったのに比して、フィニッシュした後の浅田真央に、大きな笑顔はなかった。キス&クライでも表情は不安気で、タラソワコーチらの言葉にやっと少し笑みを漏らすほどだった。
 たぶん、私などが言う以前に、浅田真央自身が、今日のSPが万全なパフォーマンスではなかったことに気づいている。自分はもっとできること、できる演技をすれば決して負けていなかったことを、知ってている。
「最後にあまり笑っていなかったのは……ずっと真剣に滑っていたので、終わった後もそんな気持ちのままだったんです。まだ明日もある、気を引き締めないと! って思いもありました」
 気を引き締めてのぞむフリーを、楽しみにしよう。ロングエッジ判定も、ダウングレードも、「敵」がいればいるほど燃えてしまう、がんばってしまうが浅田真央だ。アウェイのディスアドバンテージという敵にも失望したりはしない。きっと大いに燃えて、立ち向かってくれる。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2008 女子シングルSP終了 中野友加里3位 「ほんとうの『ロマンス』」

Yukari2117  浅田真央か、キム・ヨナか。
 今夜の主役はどちらだったかと問われれば、「どちらでもない。今日は中野友加里の夜だった」と答えたいと思う。

 今シーズンのSP「ロマンス」のことを、実を言えばこの日まで、あまりいいプログラムだとは思っていなかった。
 ここ数年で美しさを増したとはいえ、中野友加里にはまだ少し、プログラムを滑り急いでしまうところがある。「いい演技をしたい」という気持ちが前に前に出てしまう、その結果、かわいい女の子がずいぶん怖い顔で滑っている……ジュニア時代のそんな癖が、今は表情には現れずとも、手足の動きには時折出てしまう。ゆったりとした正統派の音楽とオーソドックスな振り付けで作られる「ロマンス」では、どうしてもそれが隠せていないように思えたのだ。これが、気持ちに余裕を持てるエキシビションナンバーならばいい。しかしフリー以上に前に突っ込みがちなSPには、「ムーランルージュ」や「SAYURI」のような、インパクトあるプログロムがいいのかな、などと勝手に思っていたのだ。

 ところが、今日の「ロマンス」。驚いたことに、これまでは少しずつ感じていた焦りも、緊張感も、まったく伝わってこない。
「もちろん緊張はしていました。でも、ファイナルがかかっていたNHK杯の方が今日よりずっと緊張していたと思います。今日は、この場を楽しんで滑りたい、って思いが持てたかな」
 そんな小さな気持ちひとつで、「ロマンス」は、まったく別のプログラムになってしまった。
 今までは、スケートの流れの中で印象まで流れてしまっていた小さな動き、肩をくっと動かす動作や、左右の手のゆらぎなどが、今日はずいぶんくっきりと目に残る。今までも印象的だったノーマルポジションの6秒スパイラルやドーナツスピンなどは、さらに優しさやたおやかさを伴った、極上のムーブメントになる。
 会場は、ほんの少し前まで、大きな歓声が飛び交う男子シングルの試合で、スタジアムのような雰囲気になっていた。その余韻を、ゆったりと洗い流すような中野友加里の「ロマンス」。そうだ、これこそがフィギュアスケート女子シングルの美しさ――そういいたくなるような、フェミンニンな魅力でいっぱいだ。
 素晴らしい集中力で、プログラムの深い深いところまで入り込んで始まったスタートから、たっぷり余韻を残して長く長くポーズを取ったフィニッシュまで。「ロマンス」は、もうスポーツのコンペティションの一シーンではなく、パフォーミングアーツの作品だった。中野友加里がこんなものを見せられることに気づいていなかったとは、ほんとうに不覚だ。
 彼女のことを良く知る振付師、マリーナズ・ウェアは、「この曲でこの滑りができれば、きっと素敵だわ」、それを承知で、「ロマンス」を彼女に与えたのだろう。「ロマンス」をもっと前から評価できていなかったことに対して、コリオグラファーとパフォーマーに、完敗したと言わなければならない。
「今日はシーズン通して、一番いいショートプログラムでしたから(笑)。でも、3位になれたことにはとても驚いています」
 正念場は、「楽しんで滑りたい」だけではすまない全日本選手権。そこで今夜のような「ロマンス」が見せられるかどうかだろう。
 でもその前、今夜のフリーもまだ、「楽しい」グランプリファイナル。どんな「ジゼル」が氷上に現れるだろうか。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2008 男子シングルSP終了 小塚崇彦1位!「珠玉の『Take Five』」

Takaa_1788  ほんとうに率直に言ってしまえば、男子シングル滑走直前の6分練習、いちばん会場からの拍手や声援が少なかった選手は、小塚崇彦だった。
 とにかく世界のトップスケーター、ウィアーとジュベールへの声援が凄まじい。ヨーロッパチャンピオンのヴェルネルへの拍手も、それなりに。アボットやチャンは彼らほど、知名度も実績も高くないはず? いやいや、アボットは2月の四大陸選手権で5位。いいところを見せている。韓国での試合は初めてのはずのチャンも、7月のアイスショーでファンに顔見せをした。ユナ・キムのバナーが所せましと貼られている会場で、彼らのために韓国のファンが作った凝ったバナーも、あちこちに掲げられていた。
 しかし悔しいことに……韓国のスケートファンは、まだ小塚崇彦を知らなかった。こんな状況を目の当たりにしてしまうと、なんだか悔しい。もう、こうなったらあのスケートを見せてあげなよ! などと思ってしまう。プログラムは、今の彼にこれ以上ないくらいはまった「Take Five」だ。あの素晴らしく粋で緻密なプログラムで、韓国女性たちをとりこにしてしまいなよ! などと思ってしまう。
「今年は世界選手権で最終グループに残り、世界のトップ6で戦うことが目標でした。それが少し早く、12月のこの大会で体験できた。いい練習にもなったと思います」
 今回はそんな気持ちでファイナルにぶつかる、チャレンジャー。だからここは失敗したっていい、失敗しても観客は大いに沸いた、そんな演技を彼ができればいいな。そう思っていた。

 それがなんと――ジャンプは全てクリーン、プログラムコンポーネンツも全選手中たったひとり、オール7点台。誰もが、本人さえも「あまり考えていなかった」、ショートプログラム首位発進! グランプリシリーズの一戦ではなく、ファイナルで、トップに立ってしまったのだ。
「プログラムが始まる前は、すごく緊張していて……。滑り出す前、信夫先生に背中をたたいてもらうまでは、本当に不安でした。でもジャンプをいくつか跳んだら、とても気持ち良くなってしまった(笑)。そこから最後までは、ずっと気持がよくて!」
 点数まで気持ちのいいことに、2位のアボットにエレメンツスコアで4.5点、総合で5点以上の差をつけてのトップ。ジャンプはすべてGOE+1以上、美しかったルッツからのコンビネーションには+1.6までついている。スピンも、滑りも、一分の隙もないお手本のような2分50秒。特に後半、ストレートラインからサーキュラーへと連続して見せるステップでは、「なんだかこの人のスケート、気持ちがいい?」そう思い始めたお客さんに、これでもかとエッジワークを堪能させてくれる憎い構成だ。滑りだけでなく、まっすぐのびた手足も、姿勢も、何もかもが端正で美しい。珠玉の、「Take Five」だった。
「ジャンプの後にはリラックスして、ステップはもう、いつも以上でした。緊張は、すごくします。でも自分のやってきた練習を信じて、思い切ってできたのがよかったと思う」

 さて、肝心のソウルのお客さんの反応は、どうだったのか? 
 これも正直に言えば、決して「大盛り上がりだった!」とは言えない。ラストの高速のアップライトスピンなどでは大きな拍手をもらえたものの、端正な滑りのパートでは、じっと見守っているお客さんが多かったように思う。
 しかし、これでいいのだろう。お客さんが大きな声を上げ、手を打ち鳴らしたのは、ジュベールの愛嬌たっぷりの氷上駆け足や、ヴェルネルの客席に視線を送りながら踊るダンス。滑り出す前の歓声のわりには、アボットやウィアーの演技中に「キャー!」の声が少なかったように、韓国のお客さんの賛辞の送り方には、ちょっと独特なものがある。
 でも決して、小塚崇彦の背筋の伸びるような演技を、お客さんが評価しなかったわけではないだろう。あの滑りには、見るものの脳にじわじわとしみこむ快さがある。「なんだかよくわからないけれど、素敵」そんなふうに知らず知らずに、スケートに接して日の浅いお客さんの心にもしみこんでいくはずだ。
 もしこれからの後、「滑りの巧さ」こそを第一に評価するファンが韓国にたくさん現れた時、彼らはこの夜の小塚崇彦の「Take Five」に、最大級の賛辞を送りながら言うのではないだろうか。「フィギュアスケートの見方を変えてくれたのは、タカヒコのショートプログラムだった」と。
 見る人のスケート観を変えてしまうほどのものが、この日の「Take Five」にはあった。大げさではなく、そういい切りたい。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2008 女子シングルSP直前 中野友加里選手コメント

Yukari4075_2 ――公式練習ではいい動きを見せてくれました。
友加里 リンクがすごく滑りやすくて、スピードも出るので、いい状態です。この調子を維持して、本番に向かって行けたら。足のケガも、アイシングはしていますが、大丈夫です。

――今回の試合での目標は?
友加里 スピードのある演技をすること。NHK杯の演技は比較的満足いくものだったんですが、ひとつ残念だったのは、スピードが無かったこと。うまくまとめることはできたけれど、何か一つ、勢いが足りなかったな、と思いました。だからその後の練習では、ジャンプを失敗してもスピードを出すことを一番念頭に置いてきたんです。前の試合から時間はなかったけれど、限られた中でいい練習ができたかな。そのうえ、ここのリンクがよく滑るので!

――今年はまだ入っていないトリプルアクセルも、期待していいですか?
友加里 今シーズンはちょっと調整が遅れたこともあって、昨年ほど成功率は上がっていないですし、今のルールはジャンプだけ跳んでも点数が出ない。踊りながら、スピードの変化もつけながら跳ぶ必要があるので、難しいところです。でも私は今回、順位を気にしていないので、向かっていくのみ! 今日の練習で跳んでみた調子も良かったと思います。

――ファイナルという試合については、どんな意識を持っていますか?
友加里 シーズン前半、みんながファイナルに出るためにがんばってきています。そのなかで、トップの6人に入るなど、簡単なことじゃない。ここにいられるだけでもうれしい気持ちです。今シーズンの調子を考えると、まさか出られるとは思ってなかったですし。

――韓国での試合は05年の四大陸選手権以来となりますね。
友加里 あの時は江稜だったので、ソウルは初めて。あとからふりかえって、ソウルはいい試合ができたところ、と思えるように。ひとつのいい思い出ができたらいいなと思います。

text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2008 女子シングルSP直前 安藤美姫選手コメント

Miki00836_2――昨日は硬いと言っていた氷の感触はいかがでしたか?
美姫 やっぱりちょっと硬いと思いました。でも昨日よりは慣れて、リラックスして滑れたので、いいかな。でも調子はサイアクなんです(笑)。ここに来る2日前には、ジャンプが全く跳べなくなっていて……。

――そこまで調子を落としてしまった理由は?
美姫 何日か前に大きく転倒してしまって、その時の痛みがずっとあって……。でも注射など、やれることはやって、動けるようになりました。もしこれが去年までの身体だったら、筋肉も無かったし、こうはいかなかったと思います。春からしてきたトレーニングのおかげで、今、ここに来られたかな。それに会場に入ったら、試合に向かっていこうという気持ちにもなれました。明日は氷を自分の感覚に慣れさせて、もうちょっといい動きができたら、と思います。

――公式練習では、「ジゼル」ではない曲をかけていましたが……。プログラムの曲を変えたんですね。
美姫 はい、スケートアメリカの後から迷っていて。中野選手も「ジゼル」で、あのときは自分が後から滑ったので、「また同じ曲?」という雰囲気が会場にあったような気がしたんです。それで印象が薄れることもあるのかな、と感じて、とりあえずチャイナカップの評価も見てみようと思いました。そうしたらやっぱりチャイナの方が評価は高くて……。同じ曲が続くのは難しいのかなあ、という思いで、変えてみることにしました。今までもシーズン途中での曲変更は多かったけれど、うまくイメージがつかめないから元の曲に戻す、という感じのネガティブな理由が多かったかもしれない。でも今回は違うかな。違う曲で、もっといい印象を持ってもらいたい、そんなプラスの意味での曲変更です。

――新しい音楽は、またニコライコーチと一緒に決めたもの?
美姫 はい、チャイナカップの前に。いっしょにCDショップに行って、ヴァイオリンの曲がいいんじゃないかってことで決めました。曲名は……知らないです(笑)。なんとか第3番?(サン・サーンスの交響曲第3番でした)。聞いたことがない曲だったけれど、いろいろ聞いた中で一番心に残った曲でした。自分のフィーリングに合う曲だと思います。

――新しい音楽ではどんな表現を見せてくれますか?
美姫 今度の音楽はストーリー性がないし、テーマも特にないんです。自分にまだ自信も持てていないし……だからフリーの4分だけでも、気持ちを強く前に出せたらと思っています。

――ジャンプ構成についても聞かせてください。今年はダブルアクセル-トリプルトウをどの試合でも入れていますね。
美姫 構成はふたつ考えています。4回転を入れるとしたら、コンビネーションはトリプルトウ-トリプルループ。4回転を入れない場合はダブルアクセル-トリプルトウを入れます。ダブルアクセル-トリプルトウは見ている人の印象もすごく強いってことを考えて。4回転を跳ぶかどうかは……ショートの後に決めようってニコライは言っています。

text/Hirono Aoshima


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グランプリファイナル2008 女子シングルSP直前 浅田真央選手コメント

Mao0837_2   今年は日本から3人の選手が参戦、最も注目を集めているのが女子シングルだ。各選手、公式練習も無事にこなし、いい緊張感を保っている様子。韓国入りしてからの心境を、11日の共同インタビューから探っていこう。

――到着して2日目の公式練習、いかがでしたか?
真央 昨日はすごくドタバタ(飛行機の到着遅れなど)で、あんまり集中して練習できなくて……。でも今日はしっかり集中して、氷の感触も確かめました。氷はすごく良かったです。

――真央選手自身の調子も良さそうですね。
真央 はい、特にルッツが何でこんなに高く上がるのかな、って、自分でもびっくりするほど(笑)。ルッツの調子は日本で練習していた時よりいいです。NHK杯の時はまだちょっとジャンプが不安定でしたけど、今はすごく安定していると思います。NHK杯が終わってからはなるべく練習に集中して、それからケガをしないように注意してきたので!

――NHK杯後、タラソワコーチからはどんな指導がありましたか?
真央 NHK杯の後はタチアナ先生のアシスタントの先生が日本でついていてくれました。タチアナ先生からのいろいろなアドバイスを電話で聞いて、それを伝えてくれる感じ。言われたことは、「まずは疲れを取りなさい」、それから「練習では集中しなさい」ということ。あとはジャンプの技術的なこと、フリップではしっかりトウを突いて跳びなさい、みたいなことをアシスタントの先生にも指導してもらいました。

――注目のフリー、ジャンプ構成は決まっていますか?
真央 NHK杯と同じ構成でやりたいと思っています。もし明日調子が悪くなったら変えるかも? だけど今のところはNHK杯と同じようにやるつもりです。

――ということは、トリプルアクセルも、2回?
真央 はい、フリーの朝の練習の後、決めます。体力的には大丈夫です。NHK杯の時にはアクセル2回入れても、滑りきることができたから。

――トレーナーさんがアイシング用の氷を持っていますが、どこか足を痛めましたか?
真央 あ、ただのマメです。足の小指、靴を替えた時にできたんですけど、もうぜんぜん大丈夫です。

――今回はキム・ヨナ選手とのシーズン初顔合わせということで、注目も集まっていますね。
真央 今日も一緒に練習したんですけど、キム・ヨナ選手はすごくスピード感があって……。自分もいい刺激をもらえたと思います。

――ずばり、今大会の目標は?
真央 一番は、優勝です(笑)。でも試合が始まったら、考えるのはプログラムに入っているエレメンツを全部ミスなくこなすこと。ミスなくジャンプを跳ぶことが目標になると思います。

――ファイナルには一度優勝していますから、今回目標を達成すれば3年ぶりということになりますね。
真央 あの年、15歳でファイナルに出たときは……ファイナルという大会がどういうものか知らなかったし、特に考えてもいなかったんです(笑)。今思えば、すごい大会で勝ったんですよね……。

――韓国のこの会場は、今年の四大陸選手権で優勝した会場でもありますね。
真央 はい! いつも、前にいい試合ができた場所だと、気分的にプラスになるんです。だからこのリンクで試合ができるのは、すごくいいと思います。

――試合が終わったら、プルコギや焼き肉が待っていますしね!
真央 あ、それは試合が終わらなくても食べます! もう、毎日食べてます(笑)。

text/Hirono Aoshima


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ジュニアグランプリファイナル2008 女子シングルSP終了 村上佳菜子2位 「She is so cute!」

Kanako4180  「かわいい!」「She is so cute!」
 村上佳菜子がスタートのポーズをとってほほ笑んだとき。「女子は、北米VS日本の戦いね」などと言っていたアメリカ人記者が、私とまったく同じ一言をつぶやいたのを聞いて、ちょっとうれしくなってしまった。
 今の村上佳菜子の笑顔とコケティッシュなマイムは、ある意味無敵だ。他に応援する選手がいる人だって微笑ませてしまうし、彼女の演技の最後の最後まで、目を離せなくしてしまう。
 山田満知子コーチは「大人の選手になるのはまだまだこれから」だと言うけれど、何とかして今の彼女のかわいらしさをシニアになっても残せないものか、と思ってしまう。それが無理ならば、少しでも長く「大人の選手」になるまでに時間がかかればいい、などとさえ思ってしまう。
 しかしそんなイノセンスな魅力とともに彼女が見せたのは、驚くほど安定感のあるスパイラルやスピン。また、ぐっと気合いを入れて跳ぶジャンプの前の、厳しい表情。「ジャンプひとつがダウングレードされてしまったのは残念だったけれど」、ルッツもフリップからのコンビネーションもそつなく決めて見せた。かわいいだけでは勝てない試合、2試合を、確かに彼女は勝ち抜いてここにきたのだな、と思った。
「グランプリじゃなくて、ファイナル。しかもシニアと一緒の試合は、すごく違う感じがします。でもとても勉強になるので、ちゃんとこの場を学習して、日本に帰りたいと思います」
 そんな殊勝なことを言ったかと思ったら、キス&クライでは子供そのもののはしゃぎっぷりも見せる。
 無邪気さと、強さ。両方がかたよりなく、そして意識することなく自然に出ているのが、今の「so cute」な村上佳菜子だ。どちらの魅力も失うことなく、逆にじわじわと、高めあうように。
 そんな彼女なら、これから身につけるだろう「大人の魅力」も、今の無邪気さを失うことなく付け加えていけるかもしれない。so cuteな佳菜子も、大人の佳菜子も、両方を同時に見せてくれる、そんな選手になるのだったら……これは、一刻も早く見てみたい。

photo/Sunao Noto  text/Hirono Aoshima 

*関連記事;ジュニアグランプリファイナル開幕! 山田満知子コーチインタビュー


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ジュニアグランプリファイナル2008 女子シングルSP終了 藤澤亮子7位

Yukiko_4293  どちらかというと、緊張しているのは村上佳菜子の方かな、と思った。
 ジュニア女子のSP最終グループ、ウォームアップ。4人の選手の中で一番せわしなく、落ち着かない表情で動いていたのが村上佳菜子。一方の藤澤亮子はスピンの確認を中心にじっくりと、自分のペースで6分を過ごしているように見えた。しかし振り返ってみれば、緊張でいっぱいの中学1年生は、得意なエレメンツをこなすことで精一杯落ち着こうとしていたのかもしれない。
「でもやっぱり、緊張しちゃいました。滑る前、控室で同じ日本の子(村上佳菜子選手)がすごくいい演技をしたのを見ちゃったので……そこで、緊張しちゃったんです」
 ライバルのいい演技を見る、たったそれだけのことが、ここまで大きく影響するのが、スケーターの繊細さ、スケートの怖さだ。手も足も大きく開いたかわいらしいスタートのポーズではなんとか笑って見せたのに、最初のトリプルフリップでは転倒、次のルッツもシングルになってしまう。
「今シーズンはどの試合も、SPはパーフェクトじゃなかったんです。だからショートは特に、自信がなかったのかな……」
 フラワーガールたちと変わらない大きさで、ぱーんとかわいらしくおでこを出した女の子。こんな小さな子がこんなに転んでしまうのを見るのはかわいそう……。ファイナルまで進んできた選手に対して、多くの観客は一瞬、そんなことを思ってしまったかもしれない。
 しかし藤澤亮子のショートプログラム、うまくいかなかったのは2本のジャンプだけだった。3つのスピンはすべてレベル4! ステップとスパイラルもそれぞれレベル3を獲得。出場選手中、一番小さくて一番若い彼女が見せたのは、もっとも難度の高いエレメンツの数々だ。表情は曇ったままだったけれど、渾身のステップでは、良く訓練された動きをこれでもかと見せていた。深く反ったレイバックスピンが感じさせたのも、子供の動きのかわいらしさではなく、完成された氷上の動きの美しさだ。これでジャンプが入って、陽気な音楽にも負けない迫力とスピードが伴えば、どんなに素晴らしいプログラムだっただろう――ジャンプの失敗以外もしっかり見ていた観客は、息をのんだはずだ。
「ショートは失敗しちゃったけど……フリーの方が自信があるので、思い切って滑りたいと思います。今日はパンクしちゃったけれど、ルッツは自信のあるジャンプ。ジャンプもスピンも、フリーでは丁寧にしっかり決めたいです」
 スケート靴をはいたテディベアを手にしたままのインタビュー。しかし記者たちの前では気丈に質問に答え、涙は見せなかった。泣き崩れたのは、我々の前を去った後。日本のチームリーダーたちに付き添われながら、うなだれた小さな背中が震えているのが見えた時――人前では泣かない、藤澤亮子の芯の強さ、負けん気の強さを見たような気がした。

photo/Sunao Noto  text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2008 こぼれ話(1) 嵐の前に

Tape0831_2  今年2月の四大陸選手権に引き続き、会場は高陽・オウリヌムリ。
 しかし前回は見られなかったあるものが、会場周辺に設置されていた。それは、アイスリンクと記者会見場の間、選手たちが行き来する場所をしっかり確保するために張り巡らされたテープ(写真上)。四大陸選手権の際には、3位までに入った人気選手たちを追いかけ、写真やサインをねだるファンたちで大変なにぎわいに。アイスダンスのヴァーチュー&モア組など、ガードマンがいるにもかかわらず大勢のファンにもみくちゃにされてしまい、なかなか会見場にたどり着けなかったほどだ。

Taremaku0834_3今回は、四大陸に出場しなかったキム・ヨナ選手も登場する。会場内も、外も、いったいどんな騒ぎになってしまうのか……。

 写真下は会場周辺で見られた出場選手たちの垂れ幕。全種目の人気選手の写真があしらわれていたが、いちばん目立つ場所に掲げられていたのはこれ。キム・ヨナ&浅田真央バージョンでした。

text/Hirono Aoshima


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高橋成美&メルビン・トラン SP終了後共同インタビュー

Tt0855_2 *最初は不満足な出来に顔を曇らせていたふたりだが、記者の質問にはハキハキと歯切れ良く答えてくれた。特に高橋選手はトラン選手の通訳を自主的に買ってでて、自分にされた質問も必ず訳して彼にも答えさせようとする。ふたりでひとつのペアだよ、そんな気持ちがまっすぐ伝わってくるようだった

――いくつか思わぬミスがありましたが、原因はなんだったのでしょう?
メルビン (ことさら大きくため息をついておどけて見せてから)リフトの後の転倒は、スケート靴のトウが氷にひっかかってしまったんです。ただの偶然です。スピンのでの転倒は……彼女のひじがトウループの時に僕の左目に当たったことで、ちょっとめまいがして。それで、ころんじゃいました。今日は自分の滑りに不満が大きいです。

――やはり初めてのグランプリシリーズ、緊張はありましたか?
成美 いえ、どの試合も一つ一つが大事です。ファイナルだから、という気持ちはなく、いつもと同じようにベストを尽くしたかった。ベストを尽くせば上に行けるし、尽くせなかったらダメ。それはどの試合でも一緒だと思っています。ただ……今回はシニアと一緒の試合なのでドイツのペア(サフチェンコ&ショルコビー)と会えたのはうれしかった!

――昨シーズンに比べると、ずいぶん生き生きとしたパフォーマンスを見せてくれるようになりましたね。
成美 そう言ってもらえるとうれしいです。今年はたくさんスケーティング、ストローキングの練習をしたんです(腰を落として、ストロークのポーズを取りながら)。たくさん! それでふたりのユニゾンが出来上がってきたし、スピードも出てきた。踊る余裕も出てきたんだと思います。
メルビン そう、今年の春は特にストローキングに力を入れました。そのおかげだと思います。

――高橋さん、彼にあなたのことをどう思うか聞いてもらえますか?
成美 え? (一瞬照れた表情を見せた後、決然と)How do you think about me? 素晴らしい、って言ってます。素晴らしくて、リフトも簡単にできていいパートナーです、って。たぶん私が小さいからだと思うんですけど(笑)。私と滑れてとてもうれしいそうです。

――ふたりでペアを滑って行くこれから。目標はありますか?
成美&メルビン もちろん世界一です!

 高橋&トラン組は、年末の全日本選手権への初出場も決まっている。「去年からの進歩をみんなに見せられたらと思います」(高橋)とのことだが、久しぶりの日本代表ペア、本当に早く、日本のファンに見てもらいたい。

text/Hirono Aoshima


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ジュニアグランプリファイナル2008 ペアSP終了 高橋&トラン組8位

 川口悠子&マルクンツォフ以来、8年ぶりのペア日本代表が、ジュニアグランプリファイナルの舞台に立った。
 高橋成美は、千葉県出身の高校1年生、メルビン・トランはカナダ出身の大学1年生。父と母が東南アジア生まれだというトランが東洋系の顔立ちなので、国際ペアとはいえ、日本代表としての親近感がぐっと沸くふたりだ。
 練習拠点をカナダに置いていることもあり、生で演技を見るのは、昨年の全日本ジュニア以来。しかし久しぶりに見たふたりの演技が、別人のように生き生きしているのに驚いた。6分練習では「これがあの、まだ手探りで滑っていた高橋組?」と目を疑うほど、楽しげに踊っている。なるほど、昨シーズンの世界ジュニア15位から、今年はグランプリファイナリストへと躍進しただけのことはある。どうしてこんなに踊れるようになったの? 演技後に、その秘密を聞くのが楽しみになる成長ぶりだった。

 しかしこの日のショートプログラムは、ちょっと残念な出来。
「やっちゃいましたね」(高橋)
「今日は『二人一緒』じゃなかったと思う」(トラン)
 それぞれが反省するように、短いショートプログラムで、転倒がなんと3回。スロージャンプの女性の失敗だけでなく、リフトをおろした直後やスピンなど、普通は転びそうにないところでまで男性が体勢を崩してしまった。
「グランプリファイナルだから緊張した……わけではないんです」(トラン)
 そう本人たちはいうが、やはり「ここまで来たぞ」という気負いはあったのだろう。演技終了後には、ふたりそろってしばし呆然の表情を見せていた。
 しかし、5組も出場したロシアペアたちが大人びた演技を見せるなか、弾けるようにリンクを駆け回る東洋人のふたりは、他のどのペアにもない健康的な明るさを持っていた。スポーティで爽やかで、それを自分たちのカラーとして自信を持って押し出してきている。これだけ失敗をしてしまって、ずいぶん自分に腹を立てているような高橋成美の気の強さも、記者たちには好ましく感じられた。
「明日はもう全部忘れて、思いっきり滑りたいです!」(高橋)
 高橋&トラン組、明日のフリーこそ見逃せないぞ、そう思わせてくれる演技とインタビューだった。

text/Hirono Aoshima


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ジュニアグランプリファイナル 女子シングルSP直前 藤澤亮子選手コメント

Yukiko73_morita_s_2  今年、ジュニアグランプリシリーズ(チェコ大会)に初出場、初優勝! 
 しかも4月生まれということで、浅田真央らより1学年早い、中学1年生による快挙。一気に期待が高まっているのが、藤澤亮子選手だ。全日本ジュニア選手権でのコメントを聞いてみよう。

――グランプリシリーズでは大活躍。でも全日本ジュニアはちょっと残念(8位)でしたね。
亮子 フリーはアクセルの失敗があったので、グランプリより良くなかったです。世界ジュニアのことは考えず、ひとつひとつの試合を大事にやっていこうと思ったんですけど……。

――全日本ジュニアは2回目の出場。去年とはやはり違いましたか?
亮子 はい、去年はノービスでいい成績だったからご褒美で出られた試合でした。だから思いっきり滑れたけれど……。今年は一人のジュニアとして出場するから、大切に滑らなきゃ、と思って、ショートでは緊張しました。それでフリップ失敗をしてしまって……。知ってる人もたくさんいたし、やっぱりなんとなく緊張しました(笑)。

――ショートが残念でしたが、フリーはいい演技でした。
亮子 朝の練習では調子が悪くなかったので、フリーは緊張せずにできました。でもアクセルを失敗しちゃったのは……公式練習が始まってからフリーは2回こけたんですけど、2回ともアクセル。それでちょっとびびってたんだと思います。一番簡単なジャンプなのに……。

――ファイナルではアクセルも決めて、グランプリ以上にいい演技ができるといいですね。
亮子 はい、これからもっと、自信が持てるような練習をしていきたいです。全日本ジュニアは脚の調子も良くなくて、あまり自信を持って試合ができませんでした。少し前に右足首を痛くしちゃって……。でもグランプリの時は海外だし、知らない人も多くて、自分を見てほしいって気持ちが大きくて緊張もなかったし……それが大きかったかな? ファイナルでも自信を持って演技がしたいです。

――今、自分の演技で好きなところはありますか?
亮子 練習で元気に滑れるところ(笑)。表現はまだあまりできないので、これから練習したいです。今滑ってる曲も、これから滑る曲も、その曲に合った踊りが踊れるよ選手になればいいと思います。

――目指している選手はいますか?
亮子 ジャンプはやっぱり真央ちゃん! スピンやスパイラルはキム・ヨナ選手が好きです。

――コーチの先生は河野由美先生、また、同じ先生のもとで練習してる選手に南里康晴さんがいますね。
亮子 はい、由美先生は選手の気持ちを盛り上げてくれるし、すごく楽しい先生です。南里君は憧れの先輩。ジャンプもすごくきれいです。練習でもいつでもいい演技なんですよ。それに私がいつも元気がない時に声をかけてくれたりもします。

 河野由美コーチによれば、「亮子が頑張ることで、ヤスもいい影響を受けています。ちびっこにはまだまだ負けられないぞ、って(笑)」とのこと。国際大会で大活躍する選手二人をかかえて、コーチも大忙しだ。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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ジュニアグランプリファイナル開幕! 山田満知子コーチインタビュー

Kanako_3479s  史上初めてグランプリシリーズとジュニアグランプリシリーズが同時開催される今年。
 日本からは女子シングルで村上佳菜子、藤澤亮子(ゆきこ)、ふたりの注目選手が出場する。
 ふたりとも、昨シーズンまではノービス。ジュニアに上がってすぐのファイナル進出は、浅田真央、安藤美姫、中野友加里、西野友毬に続く快挙だ。
 名古屋出身、中学2年生の村上佳菜子選手は、伊藤みどり、浅田真央らを育てた山田満知子コーチの門下生。
 11月に行われた全日本ジュニアにて聞いた、山田コーチのコメントを紹介したい。

――村上選手はジュニアグランプリシリーズイギリス大会で優勝、スペイン大会で3位。素晴らしい成績でファイナル行きを決めましたね。
山田 ファイナルはねえ、いつも通り元気よく、楽しく滑れたら(笑)。たまたま今回のグランプリは良かっただけですから。日本にも、見ててわくわくするようなジュニアの選手、まだまだたくさんいるでしょう。みんなこれから、ジャンプの確実性を身につけて、個性を出していくところかな。今、ルールがこうだからといって、みんな似たようなスケーターにならないように。みんなで個性を出していきたい時期ですね。同じことやってたら、外国に負けちゃいますから。

――山田先生の考える、現時点での佳菜子選手の魅力とは?
山田 真央とはまた違う魅力があるでしょう? 真央の方がきーっと勝ち気で、貪欲なところがあります。カナにはまだ、そういうところがない。自分が試合で失敗しても、競争相手に「がんばれー!」なんて言ってるくらいですから(笑)。がっつかない、貪欲さがない。勝ちたい気持ちも、人を押しのけてでも上にいきたい気持ちもない。でもそれが、カナの滑りのいいところに繋がってるかな。だからシニアに混じって滑ったら、やっぱりまだかわいい(笑)。柔軟性も真央に比べれば、もう少し欲しいかな。でもカナも、真央に負けずにがんばりますよ!

――あのコケティッシュな魅力は、なかなか日本人にはない。かといって海外選手に似た選手がいるかというと、そうでもないですよね。
山田 そうでしょう? 日本人はすぐに外国人選手の真似をしたがります。でも海外から見れば、日本人が「えっ?」て思うようなことが評価されたりもするんですよ。みどりのスケートも、カミカゼ、タイフウなんていって喜ばれた。カナもグランプリでは、大柄な外国人が多い中、小さな身体であの滑りを見せて「ウォー!」って歓声をもらえたんです。今はそんなカラーで覚えてもらって、ジャンプを確実に跳んで。あとはジャッジの好き嫌いです。カナのスケートが好きっていう皆さんに、選んでもらえればいいんじゃないかな。

――全日本ジュニアでも3位。12月の全日本選手権への特別参加も決まりました。
山田 そうね。でも大きいお姉さんたちとは滑りの質もまだ全然違いますよ。まだまだ全日本のレベルには到達していないですし、これから時間もかかるでしょう。でもカナはカナらしく、「ここは挑戦!」みたいな顔して出られたらいいですね。上への挑戦も大変だけれど、下からも……。うちのチームもどんどん下から選手が出てきています(山田コーチの指導するグランプリ東海クラブからは松原彩華、渡辺真央、佐藤未生らが全日本ジュニアに出場。うち、渡辺、佐藤はノービスからの特別推薦)。老人の先生にはもう、手一杯(笑)。もうちょっとゆっくりしたいのに、また忙しくなっちゃった。でもどうか皆さん見捨てないで、ジュニアやノービスの滑りも見てくださいね。

 今回は村上佳菜子選手の応援に、先輩の伊藤みどりさんも駆けつけている。
「佳菜子は天然。大きな試合できっとわけがわからなくなって、ボロボロやると思いますよ!」などと言いつつ、後輩たちの活躍がとてもうれしそうだった。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima *写真は先週末、鈴木明子選手に次いで2位に入った愛知県大会にて


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グランプリファイナル2008特集、はじまります

Seoul00813_5                                                                     

  Sports@niftyフィギュアスケート特集海外レポートは、今シーズンもグランプリファイナルからスタート。
 現地・韓国より、撮りおろし写真と選手たちの生の声をお届けいたします。
 今年はなんといっても、ジュニアグランプリファイナルとの同時開催が大きな話題。
 シニアでおなじみの4選手だけでなく、ジュニアで進出を果たした村上佳菜子、藤澤亮子、高橋成美&メルビン・トラン組(すべて初出場!)にも、ぜひ注目してください。

text/Hirono Aoshima


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