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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

フォトジェニック・ダンサーズ(4)[アイスダンス特集vol.10]

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タニス・ベルビン&ベンジャミン・アゴスト(アメリカ)

 日本でもおなじみのベテランカップル。今年は練習環境を変え、怪我に苦しみながらも最後には世界選手権表彰台に返り咲きました。現在、国別対抗戦出場のため来日中です。
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 上はオリジナルダンスの「Stepping Out」、下はフリーダンスの「トスカ」。


 特に今年のオリジナルダンスは、古きよきアメリカのショータイムを華やかに夢のように再現してくれました。

 「もう文句なしのベストカップルです。そして、ベルビンの笑顔は反則です。(笑)」(能登)

photo/Sunao Noto


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フォトジェニック・ダンサーズ(3)[アイスダンス特集vol.9]

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 国別対抗がはじまってしまいますが、2009世界選手権特集のしめくくりとして、フォトジェニック・ダンサーズを二本おとどけします。

ヴァネッサ・クローン&ポール・ポワリエ(カナダ)

 上はフリーダンスのジャコー・ド・バンドリン「Doce de Coco」、下はオリジナルダンスのスコット・ジョプリン「Solace」「The Entertainer」。

 今年シニアデビューのカナダ期待の新鋭。ジュニア時代は世界ジュニアで二位となりました。_12e3217_5

 今シーズンいきなりスケートカナダで二位に入るなど、バーチュ&モア組を思わせる快進撃を見せたカップルです。

 「若さ溢れて、はつらつとした感じが好印象です。」(能登)

photo/Sunao Noto


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女子シングルフリー終了後、ニコライ・モロゾフコーチの発言について

 女子シングル終了後、安藤美姫らのコーチを務めるニコライ・モロゾフ氏より「日本の連盟が自分の邪魔をしている」という趣旨の発言があったと、一部のメディアにより報道された。
 モロゾフ氏の発言をその場で聞いて、また他の関係者への取材を通して、この件に関して知る限りの情報を記しておきたいと思う。

 まずモロゾフコーチは世界選手権前、ラストスパートをかけるために少しでも長く安藤選手を自分のホーム、ハッケンサックのリンクでで練習させたいと願っていた。しかし、当の安藤選手はなかなか日本からやってこない。この件につき、「なぜはやくミキを自分の元によこさなかったのか?」という不満がたまり、今回の発言につながったものと見られる。モロゾフ氏としてはフリープログラムのシーズン途中の変更もあり、世界選手権前に自分の指導の元で、より多くの滑りこみを安藤選手にさせたかったのだという。実際、安藤選手は、
「日本ではリハビリをしながら、ジャンプの練習や、トランジッションの評価を上げるための練習もしていました。それに加えてアメリカでは、『ただ滑るだけではなく、気持ちを入れて滑ること』『何を表現したいかをお客さんに伝えること』、その大事さを、ニコライに教えてもらったんです。たくさん怒られながら、ですけれど(笑)」と語っている。

 しかし日本側のスタッフにも、すぐには彼女をアメリカに送れない事情があった。
 よく知られているように今シーズン、安藤選手は肩のケガの手術をせず、ハードなリハビリで筋肉を強化することで、競技に耐えられる体作りをした。それはシーズン後半も変わらず続けなければならないことだ。モロゾフコーチの指導は厳しく、もともと練習時間の長い日本選手たちが音をあげるほど。ケガを抱えた安藤選手ならなおさら、アメリカでの練習に耐えられるだけの体作りをまず、日本でしなければならない。そのため、なかなかモロゾフコーチの希望通りの日程で渡米ができなかったのだ。
 コーチ側に若干の誤解はあったようだが、安藤選手はしっかりリハビリを積んだことで、「脚にも肩にも痛みは何もない、コンディション作りも十分できた」と、フィジカル面は万全な状態で世界選手権に臨むことができた。またモロゾフコーチの徹底指導で、スケートへの向き合い方を修正し、あそこまで人に伝わる演技を見せることもできた。

 今回の安藤美姫、復活の銅メダルは、モロゾフコーチ、そしてエージェントやスポンサー、家族、連盟関係者など日本側スタッフ、双方のサポートのたまものだといえるだろう。
 私は一報道者であり、スケーターやコーチに関して、すべての情報を知る立場にはない。しかし得た情報から言えることは、安藤美姫は周囲の人々からほんとうに愛されているな、ということだ。ニコライ・モロゾフは彼女をもう一度花開かせようと必死だ。そのために一刻も早く自分の指導を受けさせいと願った。日本のスタッフも、彼女の身体を気づかい、最善の選択をした。誰もが安藤美姫を支え、彼女のために動くことで、世界選手権のあの演技は生まれたのだ。少なくとも安藤美姫の周囲には、彼女を商品として見るような人は誰もいない。

 どんなに才能のある選手でも、どんなに努力をする選手であっても、ひとりでは勝つことはできない。
 今回は周囲がきちんと選手のことを考え、しっかりした策を練り、適切な指導をした選手がメダルを得た。
 安藤美姫だけでなく、韓国のキム・ヨナもそうだ。コーチのブライアン・オーサー、振付師のデイビッド・ウィルソン、3者鉄壁のトライアングルで素晴らしいプログラムを作り上げ、理想的な練習ができていることが勝利の要因として知られている。しかし彼女の場合は、コーチ、振付師だけではない。スケーティングはアイスダンス元世界チャンピオン、シェイ・リン・ボーンが指導し、よりなめらかな滑りを得ることができた。複数のテクニカルスペシャリスト、フィジカルトレーナーといった専門スタッフも付いている。さらには英語教師もつき、メディア対応の訓練も受けるなど、チームヨナはあらゆる面で勝つための完璧な布陣を敷いている。多くの専門家が全力で才能あるスケーターをサポートすることにより、彼女は世界チャンピオンになるべくしてなったのだ。

 もう、細かな点数の出方などを検証している場合ではない。スケートファンならば、根拠のない噂を元に、いつまでも行きすぎた議論を続けていたくはないし、他国の選手やライバル選手への中傷を繰り返したくはない。日本のメディアも、地道な努力を続けている人々を邪魔するような報道をするべきではない。
 必要なのは勝者をきちんと称賛し、その姿から学ぶべきところを学ぶことだ。

text/Hirono Aoshima 


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フォトジェニック・ダンサーズ(2)[アイスダンス特集vol.8]

Nfe3262 ナタリー・ペシャラ&ファビアン・ブルザ(フランス)
 世界選手権出場は6度目。今年は先輩であるデロベル&シェーンフェルダー不在のなか、フランス一番手の重責を担いました。
 上はオリジナルダンスの「It Don't Mean a Thing」、下はフリーダンスの「La Notte di Favola」。
 さすがフランスカップル、と膝を打ちたくなるほど、衣装も動きのしなやかさもお洒落。こんな雰囲気は無理やり身につけたものではなく、生まれた時からすでにお洒落なふたりなのでは?
 衣装のデザイン性も細部まで高く、こうしたカップルの存在が、アイスダンスという種目を粋なものにしていくんだなあ、と思いました。
Nf2e1325 「ナタリーの笑顔にやられました。ほんとにいいカップルで、撮影しながらふたりの世界に引き込まれそうです」(能登)
 ちなみにコーチのオレグ・ボルコフ氏のスキンヘッドも素敵です。

photo/Sunao Noto


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フォトジェニック・ダンサーズ(1)[アイスダンス特集vol.7]

Fme4048  ぜんぜん更新できないアイスダンス特集。ダンスファンの皆さんに申し訳ないので、フィギュアスケート特集カメラマンが選んだ、フォトジェニックな世界選手権のダンサーたちを紹介します。
「撮影するのは実はダンスが一番楽しいです」とのこと。あまり掲載する機会のないダンサーたちの写真、いろいろお届けいたします。

フェデリカ・フェイエラ&マッシモ・スカリ(イタリア)
「どことなく悲哀が感じられて、ほかのカップルとは違う世界観があり、魅力的な組です」(能登)
 右がオリジナルダンスの「Follow the Fleet」、下はフリーダンス「月光ソナタ」。
 日本でもおなじみ、パスカーレ・カメレンゴ氏の指導でめきめき力をつけてきたふたり。既にオリンピックを二度経験しているベテランですが、今シーズンは初めてヨーロッパ選手権のメダリスト(2位)として登場。
 オリジナルダンスでは大きな転倒があったけれど、フリーは月の光に戯れるふたりのピエロ、そんな世界を美しく作り上げました。

photo/Sunao Noto

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女子シングル総括 吉岡伸彦強化部長のコメント(2)

――前回チャンピオンの浅田選手、表彰台を逃す結果となってしまいました。
吉岡 昨日の結果もあって、今日は攻めるしかなかったため、トリプルアクセル2回ということに。2度目の転倒は残念でしたが、攻めた結果としてのこの順位、仕方がなかったと思います。ずいぶん緊張していたショートの時よりも、今日の方が落ち着いて、きちんと動けていましたし。スピードが無かったと言われれば……そうかもしれませんね。彼女は決してスケーティング技術の面で劣っているわけではないので、プログラム全体を通しての滑りこみが、もっと必要なのでしょう。ひとつひとつのエレメンツができていても、ホールプログラムとして見た時に、それが100%生きているか、4分間での力の配分ができているか。たとえばジョアニー・ロシェットなどは、その部分がきちんと練習できていますよね。ヨナもまた、ファイナルから四大陸にかけての演技の進化を見ていると、滑りこみができている、と感じます。その部分で差がついているのかな……。単純に練習量の問題、というわけでもないと思うのですが。

――浅田選手、修正したルッツを気にしていることが、練習や演技全体に影響していませんか?
吉岡 ルッツも今回、四大陸選手権の時のように、不安で不安でしょうがない、というわけではありませんでした。ルッツが原因で他の部分の練習ができないわけでもない。とにかく、このまま今と同じことをしていたら、来シーズンも同じ結果になってしまう。早めにプログラムを完成させ、早めに仕上げて、細かいところまで注意がいきとどくように、きちんと突き詰めていかなければと思います。オリンピックは、新しいプログラムをどこまで完成できるかの勝負、そう考えれば、それほどスタート時点で大きくヨナに差をつけられているわけではない。これから同じところからスタートして、競争することは十分できる。あちらが今の時点で大きくリードしているわけではない、と考えています。

――今回の結果、バンクーバー五輪にはどうつながって行くでしょうか。
吉岡 来シーズンに向けて、ここでみんな、それぞれ悔しい思いをしています。キム・ヨナがスピンをキックアウトされた(エレメンツの重複でスピンがひとつ無効に)にもかかわらず、10数点も離されてしまった。そこを詰めていくために、スピン、スパイラル、ステップのレベルをきちんと取ったうえで、GOEももらえるように。ファイブコンポーネンツも、8点台が出たヨナとの間をできるだけ埋めていかなければならない。もちろん、ジャンプも跳ばなきゃいけない……もう、全部ですね。やることはいっぱい、困ったものです(笑)。でもこれから一年ありますから、日本選手同士、ライバルとしてお互いに高いレベルで競い合っていけば、来シーズンの結果につながるのではないか、と思います。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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女子シングル総括 吉岡伸彦強化部長のコメント(1)

Mikie4465 ――長かった世界選手権、無事終了です。
吉岡 これで女子シングル3枠、男子シングル3枠、アイスダンスも予選を経ずに1枠獲得。チームとしての最低限の目標は達成できたということで、まずはほっとしています。

――村主章枝選手は久しぶりの出場で9位となりました。
吉岡 女子3人、朝から全員が比較的落ち着いてきちんと動けていたので、3人ともそれほど大崩れすることはないだろうな、と思いました。しかし村主選手は、本番直前、ちょっと気持ちがふわっとしたまま出て行っちゃったかな。ジャンプを安全運転するつもりだったらサルコウをダブルアクセルにするべきでしたが、そのまま行って失敗してしまったのが残念です。でも後半のトリプルフリップも悪くないジャンプを見せてくれましたし、久しぶりの大舞台ですが、自分らしく決めてくれたと思います。

――安藤選手はトリプル-トリプルを回避して、手堅く3位入賞ですね。
吉岡 トリプル-トリプルに行くか、行かないか。ずいぶんコーチとも話をしていたようです。本人は攻めたい、と。ニコライはリスクを減らして完成度を求めよう、と。結局跳ばないことに決めたのですが、これまで日本チームは、守りに入って失敗していることが多い。でも今回は、ふたりの結論がうまくいい結果につながったと思います。もちろん、安藤さんも3番で満足するわけにはいきませんが。彼女の場合は、技術うんぬんよりも、気持ちの問題が大きいのかな。前向きに、きちんと試合に向けて迷いなく行きさえすれば、いい演技ができる。ファイナルの時はそれができませんでしたが、今回は現地に入った時からいい状態で、きちんと準備をしてきたな、と思いました。四大陸に出場しないことで、世界選手権に向かう時間もある程度できたのかな。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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女子シングル終了、村主章枝8位 -来季へのステップ-

Fumiee2652   総合8位――タイムバイオレーション、ジャンプミスなど、いくつかの失敗はあったものの、3年ぶりのワールドで残した結果に、村主章枝は満足しているように見えた。

  ジャンプさえ決まれば、私たちは安心して村主の演技に魅了されることができる。章枝ワールド――見るものを引き込む表情、美しくて安定感のあるスパイラル、工夫が凝らされたスピン――を心から楽しむことができる。先シーズンはいっしょになって肩を落とす試合が多かっただけに、今シーズンのジャンプの復調は、ファンにとってもとても嬉しいプレゼントだった。

「とにかく(ジャンプを)ある程度のレベルに戻すことを目標にしてきたので、ジャンプも安定してきたし、来年はもっといろいろなチャレンジができると思います。(コーチの)ニコライもいろいろプランしているし、構成を変えたり、変わったこともできるだろうし、本当に楽しみ!」
 そう言って村主は目を輝かせた。
 本当はもっと表現したい、自分の演技を見せたいという気持ちがあっただろう。その気持ちを抑えて、ジャンプの成功を優先させてきた。課題をこなすために耐えた一年は、しっかりと実を結んだようだ。そんな彼女の努力をすばらしいと思うし、今シーズンの演技を十分に楽しませてもらった。

「来季は、ザ・ロシア、ザ・ニコライのプログラムを滑りたい! ロシア人らしい、ニコライらしいプログラムを作って欲しいです」
 うれしそうに語る村主を見て、こちらまでうれしくなってしまった。
「魅せることを知っている」、これが村主の一番の武器だ。何よりもジャンプを大切にしてきた今季は、表現者である彼女には物足りない部分もあったかもしれない。しかし、あくまでもこれは村主にとって来季へのステップの一つに過ぎない。ジャンプが入って、なおかつ思う存分に表現ができたなら、彼女は強いだろう。

「来季は3-3を跳びたい! 何年もやってきて、ジャンプが大きな課題。本当にそこが壁だと思っています。プログラムに載せるときに、3-3を持っているグループと3-3を持っていないグループとで、明らかに点数の幅を決められているのを感じます。3-3なしでは、上のレベルでは難しいですから」。彼女の挑戦はとどまることを知らない。
  来年はもっとすごいものが、ぞくぞくするようなパフォーマンスが、見られるのだろうか。「期待してるよ!」そう声をかけたくなる。

  ロシアンなプログラムで、3-3を跳ぶ村主章枝を想像してみる。とてもステキだ! わくわくする。

text/Hiroko Kato photo/Sunao Noto   


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第4回sports@niftyフィギュアスケートアワード 開催のお知らせ

Award10062_3   世界選手権も終わり、今シーズンの主な国際試合は、4月の国別対抗を残すのみ。
 シーズンを通して最も輝いていたフィギュアスケーターを読者投票で決める、sports@niftyフィギュアスケートアワードを今年も開催いたします。

 今回も、「フィギュアスケーター・オブ・ザ・イヤー」「ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤー」「プログラム・オブ・ザ・イヤー」「コーチ・オブ・ザ・イヤー」「コスチューム・オブ・ザ・イヤー」の5つのアワード、そしてフィギュアスケートに関わる人、物、事象などから、自由に賞賛したいものを選ぶ「マイ・フィギュアスケート・オブ・ザ・イヤー」、計6部門で、ファンのみなさんからの投票を募集します。
 フィギアスケート国別対抗戦終了後に、投票を開始予定。詳細は追って本特集内でお知らせ予定です。

――過去3回の各部門受賞者――
フィギュアスケーター・オブ・ザ・イヤー 2006荒川静香 2007安藤美姫 2008浅田真央
ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤー  2006小塚崇彦 2007ミライ・ナガス 2008ミライ・ナガス
プログラム・オブ・ザ・イヤー       2006トゥーランドット(荒川静香) 
                        2007オペラ座の怪人(髙橋大輔)
                        2008白鳥の湖 ヒップホップバージョン(髙橋大輔)
コーチ・オブ・ザ・イヤー          2006ニコライ・モロゾフ 2007ニコライ・モロゾフ 2008ラファエル・アルトゥニアン
コスチューム・オブ・ザ・イヤー      2006荒川静香(トゥーランドット) 
                         2007浅田真央(ノクターン)
                         2008浅田真央(幻想即興曲)


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女子シングル終了、安藤美姫3位 ―ほんとうの美姫、氷上の美姫―

Mikifs2e4344  世界選手権女子シングルフリー。今夜は他の誰でもなく、安藤美姫にスケートの神様はほほ笑んだ、と思った。
 世界選手権初優勝となったユナ・キム。初めてのワールドメダルを手に入れたジョアニー・ロシェット。女子シングルは表彰台の上の誰の表情も晴れやかだったが、2年ぶりにここに帰ってきた安藤美姫が手にしたメダルほど、うれしいものはないだろう。
「去年の棄権、肩のケガのリハビリ……そこからカンバックするのは難しいことでした。スケートを滑ることが、楽しくなくなってしまったこともあって……でもコーチ、家族、友人、みんながサポートをしてくれたおかげで、スケートを続けようって決めることができたんです」
 そんな復活までのドラマを知る、知らないに関わらず、今日のフリーで安藤美姫が表現したことは、多くの人の心に届いた。
 トリプルルッツ-ダブルループ、、そして課題にしていたダブルアクセル‐トリプルトウと立て続けに決めて行くさまは、さすがジャンプの美姫! 昨シーズンのスランプ、世界選手権棄権と、スケート人生で何度目かとなる修羅場をくぐって、今。彼女は自分のジャンプを心から信じている、と思った。
「色々悩んだあと、もう一度スケートをするって決めたら……今シーズンはどの試合でもいい演技ができたし、滑っていてすごく気持ちが良かったんです」
 大きく身体を沈みこませてしっかりとした回転を見せるシットスピン、得意なポジションを取ればぐらりともしない美しいスパイラル。様々なエレメンツを、彼女が今シーズン得た「強い心」が支えている、と思った。強く確信を秘めた視線、手のしなり、顔の動き、どれをとっても女性の持つ強さ、その美しさを全身で伝えてくれるようだ。
「でもね、本当の美姫は、よわっちいんです」
 微笑みながらそう語ってくれた、昨年秋のインタビューでの言葉を、ふと思い出してしまう。確かに安藤美姫のメンタルは、決して強靭ではない。こんなに凄い才能を持っているのに、心は移ろいやすく、少しのことで泣いてばかり。この堂々とした滑りのスタイル、意志の強そうな顔立ちのせいで「強い女」に見られがちな彼女だが、本当は誰よりももろく、「弱っちい」。
 それでも氷の上では強い女でいることを、彼女とニコライ・モロゾフは選んだ。そして今日は、すぐに今の自分がスケートに出てしまう、という彼女が、すべての弱さを押し隠して、誰よりも強い女を演じきった。
 これが、氷の上での安藤美姫。後半に決めたトリプルトウ‐ダブルループ‐ダブルループ、そしてダブルアクセル。
「Great!」
 多くの観客がカタルシスを感じ、知らないうちにそう叫んでいる。最後の力強いストレートラインステップは、まるで美しい戦いの舞のようで、人々は夢中になって手拍子を送った。
 私は彼女のプログラムが終わる前、コンビネーションスピンですでに、手を叩き始めていた。氷上の強い心の安藤美姫、ほんとうは弱っちい安藤美姫、その両方に――取材ノートもペンも投げ出して、こんなふうにフィギュアスケーターに拍手を送ったのは、初めてのことだ。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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女子シングル終了、浅田真央4位 

Maoe3772  こんな真央ちゃんに、いったい誰がしたんだ?
 フリーの演技を見ていて、憤りにも似たものを強く感じてしまった。
 大きな失敗は、ほぼ2度目のトリプルアクセルの転倒だけ。
 冒頭のトリプルアクセルを失敗して以降、ノーミスだった昨年の世界選手権の演技と、技術的にそれほどひどく劣るところはない。それなのに、あの時感じた大きな興奮も、滑っている浅田真央を見る喜びも、何ひとう沸き上がってこないのは、いったいなぜなのだろう。

 指先ひとつひとつにまで、神経がいきとどいていない。休むところがどこにもない精緻なプログラムも、魂がいきわたらなければ、ただ走って、跳んでを繰り返す凡庸なプログラムに見えてしまう。ただただまっすぐ進んでいく、決められた動きを休みなくこなしていく、これは……フィギュアスケーターではなく、マラソン選手を見ているようだな。浅田真央の演技にそんなことを感じてしまった自分に、愕然とした。
 いったい彼女は、魂をどこに置いてきてしまったのだろう? 浅田真央のスケートは、どこに行ってしまったのだろう?
 あやうく口に出そうになった、「こんなの真央ちゃんじゃない!」という言葉。
 しかし、キス&クライで深くうなだれる今の彼女も、確実に浅田真央なのだ。

 15歳でファイナルを制し、17歳で世界選手権を制した、若きスターも浅田真央。自信も、誇りも、輝きも失って、ジュニアに上がって以降、試合では必ず手にしてきたメダルさえも得られなかった今の彼女もまた、浅田真央。これまで何度も「真央ちゃん」の美しさに心を震わせ、高いジャンプに胸躍らせ、がんばりに涙してきた私たちは、今のこの浅田真央をこそ、しっかり受け止めなければならない。

 実際、すべての努力を彼女はしてきたのだ。自分なりの目標を立て、ストイックに立ち向かい、コーチに止められてもこっそり滑るほど、練習の虫。そんな姿勢は、小さなころから現在まで何も変わらない。
 どんなに褒められても奢ることなく、どんなに実力をつけても人に接する態度を変えることはない。彼女ほどのトップアスリートで、街でも、試合会場でも、ミックスゾーンでも、誰にでも感じよく接してくれる人など、そうそういないだろう。
 才能があって、努力も人一倍して、気立てもいい。そんな彼女が今日のフリーのようなスケートを見せてしまう――何か、彼女自身にはどうしようもないところで、うまくいかないことがあるのだろう。

 フィギュアスケートは、いや浅田真央は今、ビッグビジネスの渦中にいる。彼女を取り巻く人々の思惑、大人の事情、過度の重圧……。そんなものが、浅田真央の輝きを奪ってはいないだろうか。決して悪意ではなかったとしても、複雑に絡み合った様々なものが無邪気な彼女をを不安にさせ、ビジネスや利権、人々の欲望が、やさしい彼女をすり減らしていないだろうか。

 国民的ヒロインの窮地――彼女をスターにした私たちが、これまで存分に彼女の演技を楽しんできた私たちが、今度は浅田真央を支えなければならない。そのために私たちにできること……ひとつには、過剰気味の情報や、感情的になったファン同士の中傷、根拠のない噂などに惑わされず、しっかりと自分の目だけで浅田真央を見ることだ。そして、真央ちゃんのスケートがほんとうに好きならば、浅田真央を、彼女のスケートを、最後まで信じることだ。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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世界選手権こぼれ話(3)オフリンクの選手たち 男子シングル編その2

3men010120  女子のショートプログラムがまだ始まらないころから、男子選手たちは試合が終わった解放感でいっぱい。会場のあちこちでうろうろしている選手たちを見かけます。
 まずは四大陸選手権でもおなじみ、右からジャスティン・ピーターセン選手(南アフリカ)、ルイス・ヘルナンデス選手(メキシコ)、ケビン・エルビス選手(ブラジル)。実は男子フリー後半、我々の真後ろで大騒ぎしながら見ていたのは彼らなのでした。
Cbp1010126  青い空がよく似合う爽やかな笑顔は、スウェーデンのクリストファー・ベルットソン選手。東京世界選手権の大活躍で、日本ではもおなじみに。今大会は振るわず、スウェーデンの五輪出場枠は残念ながら1枠になってしまったけれど……「バンクーバーで会えるといいね!」
 そしておなじみ、日本男子のおとぼけ3人組。織田信成、小塚崇彦、無良崇人各選手は、スペシャル対談収録のため、会場の隣にあるロサンゼルスコンベンションセンターでフォトセッション中。
「おれ、今日までにIDカード、2回忘れた!」
「僕は衣装のボタン、全部外したままリンクに出そうになった!」
Takatakanobu10129    ……はたして座談会では、日本の未来をしっかり語ってくれたでしょうか?

text/Hirono Aoshima
*3選手のスペシャルフォトセッション&座談会は、『Cutting Edge 2009 SPRING(仮・スキージャーナル刊)』に掲載予定。南里康晴選手VS鈴木明子選手の社会人対談なども収録。ご期待ください!


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SP終了後、安藤美姫選手コメント

Mikie7495 ――ショートプログラム、なかなかいい点数が出ましたね。
美姫 6分練習が始まるアナウンスが聞こえなくて、遅れて入ってしまうアクシデントがあったんですけれど……でも自分なりに気持ちをコントロールできて、一応ノーミスができました。トリプル-トリプルがチートでダウングレードされてしまったことは、自分でもあーあと思ったんですけれど……。トリプル-トリプルは、ずっと前からルッツ-ループ(最難度)でやろうと決めていました。試合に入る前はジャンプの調子が悪くて、ニコライは3-2にしようと言っていたんです。だけどこれが最後の試合じゃない。回転不足を気にするのではなく、自分の滑りをすることを大事にしたかったんです。トライした意味はあると思うし、点数も同じようにダウングレードされたグランプリでは50点台だったので、それに比べればいい点数(64.12)が出たと思います。

――脚にテーピングをしているようですが、何が痛みがありますか?
美姫 いえ、これはテーピングで筋肉を固めているんです。痛みはまったくないけれど、こうしないと筋肉の反応が悪いので。テーピングすることによって、かなり筋肉がふんばれるようになります。

――ケガもなく、体調もよく、コンディションは心配ないようですね。
美姫 やっぱり昨年の世界選手権、ウィズドロー(棄権)してしまった後、体調管理は大切だということがすごくよくわかりました。健康状態が良くないと、100%のパフォーマンスはできない。だから今シーズンはすべての試合でケガもなく、ベストに近い状態で出られているんです。この一年で、ちょっとずつだけれどステップアップできたかな。明日はウィズドローしないように(笑)、がんばります!

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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SP終了後、村主章枝選手コメント

Fumie2e7718 ――久しぶりの世界選手権、やはり緊張はありましたか?
章枝 実はちょっと、6分練習でアクシデントがあったんです。バックで安藤さんと一緒に練習が始まるのを待っていたら、自分の名前が聞こえてきて、あれ? 出て行く前に紹介してくれてるのかな、と思ったら、もう練習が始まっちゃってた! 何だか私たちふたりだけ、放置されてたんです(笑)。こんなこと、長くスケートの試合をしてきて初めてですよ! もちろん動揺はしましたし、練習があっという間に終わってしまったことで、ちょっと緊張気味だったかな……。滑りはあまりのびやかではなかったけれど、まあ、まずまずだったと思います。いい経験にもなりました。明日はもう少しうまくできるんじゃないかな。

――オーバータイムで惜しくもディダクション、この原因は?
章枝 滑り出しの部分、いつもより少し早く動き始めてしまって、それで秒数オーバーしてしまったのかな。他にもスピンのレベルが取れていなかったりなどいろいろあって、その辺りを考えると、まあ、まずまずの出来だったかなあ……。でも現地に入ってから始まるまで時間があったので、調整の部分はぎりぎり間に合っている感じです。コーチも「あまり力を入れすぎないで、冷静に滑ってね」と言ってくれています。明日は6分練習に遅れないようにして(笑)、ずっと練習してきたことを出して、のびのび滑れれば!

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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女子SP終了 吉岡伸彦強化部長のコメント

Mao8575 ――期待の浅田真央選手、3位スタートとなりましたが。
吉岡 ショートプログラムで10点差。これは簡単につめられる点差ではありません。ヨナ・キムがフリーノーミスでは、ちょっと届かないでしょうね。仮にフリーがふたりともパーフェクトであったら、浅田が2、3点差で勝てる計算になっているのですが、大きな差があるわけではないので、フリーで同じような出来具合で勝負したら、厳しいでしょう。しかし浅田選手は、エレメンツの内容でキム選手に負けているわけでは決してない。決して適わない相手ではないのですが、プログラムの完成度、きちんと決めたことをできるかどうかで負けてしまっています。あとはフリー、やるだけのことをやって、相手の出来を待つしかない。相手のミスを期待してはいけないんですけれど。

――3年ぶりのワールドとなった村主選手はいかがでしょうか。
吉岡 久しぶりの世界選手権ということで、少し気持ちがはやっていたでしょうか。タイムアウトの減点(マイナス1)を取られるとは思いませんでした。スピンで8回転を満たしているのにもう一回回ったり、いつもは動かずに聞いている音で動き始めてしまったりで、タイムオーバー。この1点はもったいなかったと思います。それからレイバックスピンのレベル1。彼女は右足のバックエントランスでレイバックスピンに入る。身体にそれほど柔らかさが無く、ビールマンポジションなどでレベルが取れない分、エントランスで工夫しているんです。これがちょっとリスクがあって、失敗しちゃうとくしゃくしゃになってしまいがち。難しいですね。

――安藤選手、コンビネーションジャンプのダウングレードはありましたが、4位につけました。
吉岡 彼女は比較的落ち着いて滑っていましたね。ただやはり、練習と比べると音楽の中で跳ぶジャンプは、やや低い。そのためループのダウングレードを取られてしまいました。他のミスは、最後のレイバックスピンでレベルが取れなかった(レベル2)くらいでしょうか。レベル3に必要な要素のうち、8回転以上の回転などはクリアしているから、加速が認められなかったのかな? それでも本人なりにはパーフェクトに近い出来。よくがんばりました。あとは細かい部分の詰めをさらにしていけば、フリーも期待できます。しかしみなさん、女子の3枠のことは、何も聞いてくれないんですね(笑)。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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女子SP終了、浅田真央3位 ―冷たい月光―

Mao2e8488  ジャンプの調子のすこぶる良い、でも常に顔をこわばらせた公式練習の浅田真央を見て、これは人気絶頂のヒロインが見せる表情なのだろうか、と思った。
「真央ちゃん、ガンバレー」
 そんな声が、今では世界のどこに行ってもとんでくる。本当だったらキム・ヨナやロシェットのように自信に満ちた、コストナーのように晴れやかな表情を、もっと見せてもいいはずだ。引き締まったいい顔だ、いい緊張感を保っているんだ、という見方もあったけれど、公式練習中だけならともかく、演技中にも何かを押し殺したような彼女の表情を見ているのは、やはりつらかった。
 音楽と身体リズム、音楽と身体表現の究極のシンクロニシティとして評価の高いショートプログラムも、今日は静謐すぎて、冷たすぎて、悲しくなってしまうような「月の光」だ。
「特に後半はベストではない演技で……満足はしていません。今シーズンはルッツをアウトサイドで跳ぶ修正をしてきているので、跳びたい、という気持ちが大きい。でも試合ではどうしても力強く向かっていけない、それが原因かな……」
 ディフェンディングチャンピオンとしての重圧か、修正に苦労したジャンプへの不安か、さらには表に出てこない何かか。彼女の月の光を暗い雲で覆ってしまう原因は、いくつかあるのだろう。
 ただ今シーズン、一度だけ、「真央ちゃんらしいな」という表情を氷の上で見られたことがある。グランプリファイナルのフリーの演技が終わった直後、彼女はうれしげに跳びはねながら観客席に手をふったが、その視線の先にいたのは、名古屋の山田満知子コーチや後輩の村上佳菜子選手だった。
 そうだ、この表情。こんな顔を今の浅田真央は、なかなか見せてくれないのだ。かつて無邪気だった彼女の周囲にいた人たちに接し、大きくゆるんだ表情を見て、いつしか重圧の中で失ってしまった「彼女らしさ」を思った。
 もちろん、かつての純粋なものしか知らない子供のような「真央ちゃん」を取り戻してほしいとは思わない。大人になって、自身を取り巻く様々な事情を理解してしまって、そこから新たに作り出す彼女らしさはあるだろう。それを現時点で、浅田真央はまだ手に入れていないのではないだろうか。
 たとえばコストナーのような、出てきただけでぐっと人を惹きつける空気。キム・ヨナの堂々とした、彼女らしさを極限まで見せようという意思。そう、自分のスケートと、自分らしさに対する自信が、今の浅田真央からは感じられないのだ。
 実力の高さも、スケートへの気持ちも、アスリートしてのストイックさも、キム・ヨナやロシェットに一歩もひけをとらない。ただただ、自分の本当に見せたいものはこれ、観客にはこの美しい自分を存分に見てほしい、そんなふてぶてしいまでの気持ちが、今の彼女には足りないだけだ。
 オリンピックまであと一年。世界選手権の結果がどう出ても、一年間で取り組むべき様々な課題を、彼女自身も周囲も設定するだろう。その課題の中に、本当に浅田真央自身が表現したいものを見つけること、これがぜひ入ればいいな、と思う。指導されて得る究極の美しいスケートではなく、平凡であっても浅田真央自身が求めた、浅田真央自身が見せたいと思うスケートを、一年後には見せられるように。
 もしそれができる環境が彼女の周囲に整うならば、大きな挫折がきっかけとなって、浅田真央が彼女らしさを見つけることができるのならば。今年の世界選手権は、惨敗したってかまわないと思う。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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男子シングル、ブライアン・ジュベール3位 ―強さの秘密―

Brian2e6419  ダブルアクセルでの転倒――ブライアン・ジュベールらしからぬ失敗に、会場中がどよめいた。演技終了後、ジュベール自身も何が起こったかわからないかのように、しばらく呆然とし、頭を抱えた。

 ジャンプが決まるたびに悲鳴、ステップでは割れるような手拍子、最後のポーズを決める前から立ち上がり総スタンディングオベーション。ショート・プログラム2位のエヴァン・ライサチェクがノーミスの演技を見せ、観客の興奮は最高潮に達していた。順位は暫定1位。そこへ、最終滑走者、ショート・プログラム1位のジュベールの登場だ。鳴り止まない拍手と歓声のうちに、ジュベールの演技は始まった。
 そして、冒頭の4回転。ダイナミックなジャンプに、会場の関心は一気にジュベールの上に集まった。続くトリプルアクセルと3回転トウループのコンビネーション。高い! 観客はまた新しい興奮の渦に巻き込まれる。さすがは優勝候補! ホームのライサチェクが優勝を目前にして、これ以上のドラマがあるだろうか? 単独のトリプルアクセルは手をついたものの、その後に続くジャンプを次々に決めて、怒涛のストレートラインステップシークエンス。ライサチェクか? ジュベールか? 物語の終盤に向けて、会場の空気がひときわ熱くなったその瞬間に起こった、あり得ない転倒だった。

誰もが「ブライアン・ジュベールは強い」という。どの大会でも優勝候補の筆頭に挙げられるし、もちろん、この世界選手権も例外ではなかった。「順当に行けば(優勝は)ブライアンじゃないかな」「ジュベールは強敵」。多くの関係者やライバルの選手たちが彼の名前を挙げた。ジュベール本人も自分が強いことを知っているし、そのことに自信を持っているのは、彼の言動を見れば明らかだ。「僕は強い」、「戦う準備はできている」、「勝ちに来た」、「僕はチャンピオンになれただろう」。迷いのない「強い言葉」は、彼の魅力のひとつだ。

優勝を目前にして逃した今回のワールドは、優勝を確信した後、最終滑走者のジェフリー・バトルによってさらわれた去年のワールドを思い出させた。
「ジェフリーはすばらしい演技をしたけれど、4回転を跳ばなかった」、「ジャンプだけがフィギュアスケートじゃない」。記憶に新しい4回転論争だが、私が強く印象に残っているのはジュベールの次の言葉だ。
「僕はこのことから学んだよ」
 そして、今年、ジュベールは「ジャンプで失敗をしてもフットワークやスピンでカバーできる」と断言できるだけの力をつけて帰ってきた。
「僕はこのことから学んだよ」
 今年の記者会見でも、ジュベールの口から同じ言葉が出ることになった。シーズン前半を不調に過ごして準備が間に合わなかったこと、シーズン後半になってプログラムを変更したこと、2回予定していた4回転を1回にとどめたこと……。勝つために学ぶべきことはたくさんあるようだ。
彼の照準は、来期のバンクーバーオリンピックだ。この失敗から確実に「何か」を学んで、彼は戦いに戻ってくるだろう。ジュベールの強さは、身体的能力の高さだけではない。あくなき勝利の追及、それが彼の強さの秘密だと思う。

photo/Sunao Noto   text/Hiroko Kato


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女子SP終了、安藤美姫4位―妖しき花、不屈の花―

Mikie7455  ほんとうに調子のいい安藤美姫のジャンプを見ることは、スケートファンの至福だ。
 今日もダウングレードは残念だったが、彼女にしかできないトリプルルッツ-トリプルループ。わあっと声を上げたくなる、芸術品のようなトリプルフリップ。そして、動きのあまりの切れ味に、胸の奥の方がすーっとするようなダブルアクセル。ジャンプの女神のトップコンディションの跳躍を見られて、ああ、フィギュアスケートを見に来たんだな、そんな喜びに浸ることができた。
 しかしショートプログラム「チェアマンズワルツ」は、前半にジャンプをかため、後半はじっくりと見せるパート、という構成。普通のジャンパーだったら、ここから先、滑る方も見る方もしんどくなるはずだろう。
 しかし安藤美姫の場合、「チェアマンズワルツ」はここからがまた見どころだ。映画「SAYURI」のストーリーとは関係なく、一輪の花が咲いて散っていくまでを表現したという振り付け。ただ美しいだけでなく、ただ儚いだけでなく、花という存在の不可思議さや妖しさが、彼女の持つ空気感や均整のとれた手足の美しさ、ビビッドな色づかいの衣装で表現されていく。
「ホームリンクでは、一時期まったくジャンプの練習ができない状態で……そのぶん、今回はステップやスピンを一生懸命練習してきました。それで、ジャンプ以外の部分にも集中できたのかな?」
 音楽がドラマチックに盛り上がるわけではなく、ストレートに美しいだけもない世界。ほんとうに表現することが難しい音楽、世界のはずだ。それを、現代屈指のジャンパーが、後半はジャンプの力に一切頼らずに表して見せる。静かな妖しさにひたりきった人々は、音楽が鳴りやむと、目を覚ましたように次々と立ち上がっていく――。
「今日は演技することをすごく楽しめました。たくさんの日本人の方もいて、オーディエンスからは声援を送ってもらえて……すごくハッピーでした!」
 19歳で世界女王となってから、2年。安藤美姫は優勝した世界選手権以来、本当に満足できる試合を見せていない。ファイナルや世界選手権のメダルにも手が届かず、競技結果だけ見れば、選手として下降線を描いているようにも見えるだろう。
 しかしこの2年で、ジャンプは4回転がコンスタントに跳べるレベルまで戻し、表現ではプログラムの内側に入り込み、ひとつの世界を構築できるまでになった。世界女王になったころよりも、実は確実にスケーターとしてのレベルを上げてきている。あとは、この力に見合った結果を出すだけだ。
「去年はフリーで棄権という情けないことをしてしまって……。でも今回は体調を整えて、この試合に臨んでいます。気持ちもすごく穏やかで、リラックスしていると思う。去年の悔しさが自分にプラスになって、スケートに対して強い気持ちを持てるようになったかな? 今日は3回転-3回転でダウングレードされてしまったけれど、それでも逃げずに! 明日も強い気持ちを持って、3-3を跳びたいです」
 取り戻したジャンプ、手に入れた表現、そして強い気持ち。SP4位、コンディションは上々。あとはこの「強い気持ち」に、スケートの神様が応えてくれるかどうか。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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男子シングル総評 吉岡伸彦強化部長&小林芳子チームリーダー

Takas10124 (小林芳子チームリーダー)
 小塚選手、リンクを降りての第一声は「ようやったー!」、って自分自身にむけて(笑)。ほんとうはもっともっと点数を取れる選手かもしれません。でも、この最終グループで滑ってここまでできたことは、収穫。来年は4回転にもチャレンジしてくるでしょうしね。今回、男子シングルは24位までの選手が全員、トリプルアクセルをフリーで入れているんです。もう、アクセルは跳べて当たり前のジャンプ。このなかで4回転を持っていれば、大きな武器になるでしょう。
 無良選手は初めての世界選手権としては、上出来。あの大きなアクセルもちゃんと2回跳べましたし、彼は「トリプルアクセルの無良」ってニックネームがついてもいんじゃないかしら(笑)。彼はちょうど一年前、最後の世界ジュニアでずいぶん苦しみました。そこからよくここまでがんばって、シニアにすんなり上がれてきたものだな、と感心しています。課題の5コンポーネンツは、これから伸びていく選手でしょう。まずはここで経験を積んで、名前を売って帰ることもできましたね。
 織田選手はやはり4回転の成功! しかもいきなり4回転-3回転。彼は降りさえすれば、すぐに後ろのジャンプ付けられるんですよ。ジュニア時代、トリプルアクセルが跳べた年もそうでした。キッチナーの世界ジュニア(05年)で、彼だけが練習グループの中でトリプルアクセルが跳べなかったのに、公式練習中に目で覚えて跳べるようになると、すぐにコンビネーションにしてしまった。4回転もこれからは、きっとコンスタントに跳んでくれると思います。
 まさに3人のチームワークで取った3枠。ふだんから3人はとてもいい雰囲気です。小塚選手と無良選手は中京大学のナショナルトレーニングセンターでいつも一緒だし、織田君はあのキャラですから、誰とでも仲良くできる。素晴らしいチームでしたね。
 
(吉岡伸彦フィギュア強化部長)
 今回の試合でわかったことは、総合得点で250点くらい出さなければ金メダルには届かないということ。そのためにはフリーで4回転は必須ですし、場合によってはショートとフリー、両方で必要になるかもしれません。また、5コンポーネンツに関しては、日本人はどうしても8点近く出すのは難しい。それよりも技術の部分で高いところを目指すことが、今まで戦ってきた日本のやり方かな、と思っています。
 そうなるとやはり、髙橋、織田から、まだ若い無良まで、この先のことを考えても、やはり4回転は大事。トップを目指すスケーターが4回転に挑まずに済む時代は、そう長くは続かないと思います。たまたま、去年と今年、そうした選手の優勝が続いただけ。スケーターはアスリートですし、より高いところを目指していく。それは当然の流れになると思います。

text/Hirono Aoshima
*写真はフリーから一夜明けて、取材のためメディアセンターを訪れた無良崇人選手、小塚崇彦選手


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男子シングル終了、デニス・テン8位 ―奇跡のデビュー―

Denise4460  フィギュアスケートの試合では、時々とんでもないことが起こる。
 今大会でいえば、男子シングルフリー。カザフスタンからやってきた15歳の新鋭、デニス・テンの演技がそうだ。
 不勉強ながら彼のことは、今シーズンのジュニアグランプリで活躍するまで知らなかった。しかし韓国でのジュニアファイナル、5位ながら印象に残る演技で、「この子はこれから来るかもしれないね」と記者たちの間で話題になったことをよく覚えている。続く四大陸選手権でも9位といい位置につけたが、世界選手権のお客さんには、まだほとんど名前を知られていない選手だっただろう。
 滑走グループも2グループ目ということで、まだまだ場内はまったりムード。アジア系の小さな選手が出てきても、身を乗り出して演技を見つめる、という雰囲気はない。
 ところがいきなり、トリプルアクセル‐トリプルトウのコンビネーション成功! たたみかけるように単独のトリプルアクセルも成功! えっ? と誰もが思う。いきなりすごいぞ、この子。しかも、滑りもいいじゃないか! まだ若くて、黒髪のアジア人で、小柄。そんな選手がアクセルを連発したと思ったら、ラフマニノフのピアノコンチェルトにぴたりとはまる、繊細な滑りで魅了してくる。あれあれ、スピンもうまいぞ? シットスピンのポジションをしっかり形作って、素晴らしい回転速度で回るじゃないか。さらにジャンプは3-2-2! コンビネーションの3つ目は、片手を上げるターノジャンプ! 
 喜んだお客さんたちは、「YES!」と大きな声を上げる。
 たぶんほんの数分前までは、彼のことなど何も知らなかった人々、それが今は、みんなが彼に夢中だ。続くジャンプも次々と美しく決め、もう怖いものなし。ここでさらにお客さんたちを興奮させたのは、後半のドーナツスピンやビールマンスピン。なんなんだ、この子は? こんな技まで持っているのか! 
 もう間違いなく、会場中のお客さんがデニス・テンのファンになってしまった。まだ15歳の無名の男の子が、これだけたくさんのお客さんのアドレナリンを出させ、興奮のるつぼに落とし込んでいる。大げさではなく、彼の演技に、彼を見守る人々の興奮のエネルギーの大きさに、夢を見ているような心地になってしまった。最後のストレートラインステップでは、人々はもう叫びっぱなし、手拍子も割れんばかり!
 素晴らしいフィニッシュのポーズ、地を揺るがすような大スタンディングオベーション、そしてテンがちょっと不器用にして見せた、氷へのキス。これは……とてつもないデビューだ。順位はショートプログラム17位、フリー6位で総合8位。初出場として立派な成績だが、そんな数字などどうでもよくなってしまうほど、すごい瞬間に立ち会ってしまったと思う。素質のある選手が、大舞台と大観衆に育てられ、華ひらく瞬間――。
 15歳のデニス・テンがこれからどんな選手に育つかは、わからない。しかし彼の世界選手権デビューを目撃した人々みんなが、彼がこの次に見せてくれるパフォーマンス、1年後、5年後のパフォーマンスを心から楽しみにしていることは確かだ。
 キス&クライでまだ呆然としている彼に向けて、客席の女性から大きな声がとんだ。
「We love you Ten!」

デニス・テン フリー終了後コメント
「人生最高のパフォーマンスでした。とてもうれしかった。最後の方、ステップの間はかなり疲れていたけれど、もううれし涙を止めることができなくて……。今日の氷に感謝したいです。
 お客さんたちが立ち上がったときは、いい意味でショックでした。昨日のショートで、僕はライサチェクのパフォーマンスを見て、思わず立ち上がっていたんです。そのとき、スケートでスタンディングオベーションを受けるってどんなにいいだろう、って思ったばかりだったから。
 それから僕は、(今大会で出場枠を得たので)カザフスタンからオリンピックに出る最初のスケーターになりそうです!」

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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男子シングル終了、無良崇人15位 ―100%彼自身―

Takahitoe4804  無良崇人の一挙手一投足から、今夜はほんとうに目が離せなかった。
 大きく決めた2度のトリプルアクセル。
 この一年でずいぶん上手になったスピン。
 力強さも軽さもあって、メリハリの利いたサーキュラーステップ。
 パワーが地の底から沸き上がって来るような、雄々しいストレートラインステップ。
 そんな生き生きとしたエレメンツだけでなく、大きく転倒したサルコウさえも、なんだかさわやかな印象がある。若さと力強さの転倒、などといったらおかしいだろうか。なんだか失敗さえも、今日の彼の、全力でぶつかったプログラムを形作るもののひとつだと思えてしまうのだ。
 それくらい、今日の「古事記」には無良崇人の気合いも魂もこもっていた。それが、うれしくて仕方がない。
「これが今の、自分の精一杯です。あまり緊張しないように心がけていたので、本当に緊張はしませんでした。先生にも『サルコウ、もったいなかったね』と言われたけれど、『よく動いてたよ』とほめてもらえた」
 精一杯の演技は、まだまだ表現技術が足りないとしても、ストレートに見る人の胸に飛び込んでくる。プログラムを通して、18歳の無良崇人の生き様や思い、それが今日はまぶしすぎるほどまっすぐに感じられた。たとえば2度目のトリプルアクセルを跳ぶ直前、彼は一瞬、胸に両手をあてている。
「まずふたつ目のアクセルを失敗したくない気持ちがありました。それからあの時間帯が、滑っていて一番しんどい。『おちつけ!』という気持ちで胸を押さえたんだと思います」
 そしてトリプルアクセル、トリプルルッツ、ループと後半のジャンプを着氷し、最後にダブルアクセルのコンビネーションを降りた時の、あの表情!
「まだ見ていないけれど、自分で見ても相当すごい顔、してるんじゃないですか(笑)。ダブルアクセルは一番苦手なジャンプ。最後の最後、もう降りるのが精一杯で、決まった瞬間には思わず『あっ』って声を出してしまってた。それくらいもう、余裕がなかったんです」
 4分30秒。プログラムの隅から隅まで、今日の「古事記」にはくっきりと彼自身の姿が投影されている。これがスポーツではなくパフォーミングアートだったら、またフィギュアスケートのそうした面を大事にするとしたら、彼は自分自身をきっちり押し隠して「古事記」の世界観を見せなければならないのだろう。
 でも今、氷の上にいるのは100%無良崇人。ジャンプを成功する姿も、転倒する姿も、彼自身以外の何者でもない。今はそれでいいと思うし、懸命に駆け抜けたシニア一年目の最後の試合、そんな彼がたっぷりと見られて、ほんとうに良かった。
「次につながる、いい試合だったと思います。アクセル2回を決められる自信がついた、という成果もあった。ぴりぴりした世界選手権の雰囲気の中、どう自分をベストの状態に持っていけるかの、いい勉強もした。スケーティングやスピードにもうちょっと磨きをかけて、5コンポーネンツを伸ばしたいという課題も見つかりました。来シーズン試合をすることが、もう楽しみになってくる、そんな世界選手権だったと思います。次はもう少し上を目指して、練習してきます! 一年がんばったら今日の自分からどれだけ差を付けることができるか、今から楽しみです」

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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男子シングル終了、織田信成7位 ―跳んでこそ―

Nobunari2e4960  男子フリーの後半戦、私たちの席の真後ろで、ある国の男子選手が友人たちといっしょに観戦をしていた。彼は試合が終わったばかりの疲れも見せず、「ヒューヒュー!」「イェーイ!」「ワーオ!」などと大きな歓声をあげ、大きな拍手をしつつ上位選手たちの演技を見ている。彼があんまり熱心なものだから、何だかこちらまで、過剰にエキサイティングしてしまうようだった。
 織田信成の、初めての4回転。いや4回転-3回転も、網膜に焼きついて離れないほど刺激的な一瞬だったのだが、後ろの席の彼の、興奮してもうなんだかよく分からないような「ウギャアア!」という叫び声も一緒になって記憶することになってしまった。
 やはり同じスポーツをしている者同士だからだろうか、今夜5人目の4回転ジャンパー、しかも3回転をつけたコンビネーションを見せた男に対する彼の賛辞は、とどまるところを知らない。続くトリプルアクセルのステップアウトには、心底がっかりしたような声を上げ、2度目のトリプルアクセルには、助走の時点で「カモーン!」、着氷すると「イエーイ!」。もう最初から最後まで叫びっぱなし、興奮しっぱなしの4分30秒だった。
「氷もすごく滑りやすい氷だったし、他の大会の前と比べても練習での4回転の成功率も高かった。練習での出来も自信になっていたし、絶対ここで決めてやる! という気持ちでした」(織田信成)
 やはりこれが、4回転の力なのだ、と改めて思う。冒頭で跳んで見せれば、そのプログラムはその時点で4回転の入ったプログラムとして、一気に違う色に輝き始める。見ている私たちにも、この日の「ワルソーコンチェルト」は、今まで見てきたプログラムとは全く違うものに見えていた。
 そして冒頭で跳んで見せれば、そのジャンパーはその瞬間から誰の目にも4回転ジャンパーとして映り、より多くの興奮を与えてくれる選手として、観客は彼から目が離せなくなる。
 さらには織田信成自身が、この瞬間から4回転ジャンパーとして、初めて人前に立ったことになる。着氷した瞬間の、嬉しそうな顔! その気持ちのままに滑るプログラムは、最初から最後までスピリチュアルな美しさがきらきらと漂っているようだった。
 そうか、これが試合で跳ぶということ。練習では何度も見せてもらった織田信成の4回転、試合で跳べるということはこんなにも意味があり、こんなにも難しいことだったのだ。
 思えば長い道のりだった。シーズン前、練習で4-3-3だって跳べている、といううわさを人に聞き、本人からも聞き、シーズンに入ったらすぐに彼の4回転が見られるものと思ってしまった。織田信成自身も、そのつもりだっただろう。練習でこれだけ跳べているものが、ここまで試合で入らないものだとは……。
「四大陸のころは、特につらかったですね。シーズン前半に結果を出すことを念頭に置いて夏をがんばってきたので、前半を終えてホッとしてしまった。そこからの練習がきちんとできなくて……それが四大陸の結果にも出てしまって」
 四大陸のころには、彼の4回転を見るのはまだまだ先のことかもしれない、などとこちらも思ってしまうほど。そうやって苦しみ続ける彼を見ていると、せっかく一年のブランクを経て試合に戻ってきたというのに、本当の織田信成はまだ戻ってきていないような気にさえなってしまった。
 でも、この一発。ひとつの4回転は、きっとすべての突破口となる。一度跳んだことで、あれだけ高確率で跳べている彼が、もう試合で外すことはないように見えるし、本当の心からの信成スマイルも、氷上に戻って来る。そして彼の挑戦は、さらに上の段階に上って行く。
「今回、この世界選手権で決めたのと決めなかったのとでは、大きな違いだと思います。来シーズンは今日のことを自信にして、もっといい4回転が跳べれば! 今はフリーに入れていますけど、コーチと話し合ってショートプログラムにも入れられるかどうか、探っていきたいと思います」
 記者たちの質問に答えている間、彼の頬にはまだくっきりと、涙の跡が残っていた。
 本当の意味で織田信成は戻ってきたのだな、と思った。跳んでこそ、笑ってこそ、泣いてこそ、織田信成だ。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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ペア終了、川口悠子&スミルノフ3位!

Yuko2409  ひょっとしてペアの選手は全員、お寿司か何かにあたったのでは? 
 そんな冗談がとぶほど、フリーはどの組も、特に上位選手たちは精彩を欠いてしまった。
 残念ながらディフェンディングチャンピオンのサフチェンコ組まで、ミスは最小限だったもののチャンピオンらしい勢いが無い。こうなると期待が集まるのは、最終滑走の川口&スミルノフ組だ。お客さんは昨日の「白鳥」を覚えている。美しいロシアンスタイルをロシア人男性と日本出身の女性が見せることに、興味を持った人も多いだろう。彼らならば最後に、立ち上がりたくなるような演技を見せてくれるかも……。
 実際、トップコンディションの川口組ならば、それができたかもしれない。ふたりが醸し出す空気も、滑りだしの凛々しく涼やかな動きも、もう十分一流ペアのものだ。さらに彼らには、成功率の高い4回転スローがある。たとえ優勝してもまぐれとは言わせない、それだけの力をペア結成3年目にして彼らはつけてしまった。しかし……。
「悔しいのはメダルの色よりも……4回転が跳べなかったことです。今の成功確率は、70%くらい。特にロサンゼルスに入ってからは、ずっと練習で片足で降りられていて。跳ぶための準備は、できていたのに……」
 4回転の大きな転倒は残念だった。しかし同時に感じたのは「ここで挑戦してくるのか!」という驚き。SP2位、メダルを確実に取りたいと思ったら、大技を回避してプログラムをきれいにまとめる選択もあったはずだ。
「実はタマラ(タマラ・モスコヴィナコーチ)も、今回は3回転にさせたかったって、さっきポロッと言っていました(笑)。確かに3回転にしておけば、今日ほど乱れず、クリーンにフリーは滑れたでしょう。それでも私は、4回転にこだわりたかったんです」
 そんな姿勢に、いかにも彼女は日本人だな、と思った。オリンピックでどうしても跳びたい、と、五輪史上初のトリプルアクセルに挑み、成功した伊藤みどり。同じくスロートリプルアクセルを成功させた井上怜奈。さらには、4回転成功を狙う安藤美姫。川口悠子も彼女たちと同じ、強い意志を持った日本女性だ。05年、彼女がまだアメリカでペアをしていたころ、当時のパートナーを選んだ理由のひとつとして「スローが上手だから」と話してくれたことも思い出す。それから4年、さらに強力なパートナーを得て、試合でもコンスタントに4回転を成功させるようになった川口組。そして、その次は……。
「オリンピックでは絶対、私の一番の4回転を見せたい。そのための経験のひとつとして、今回の失敗は受け止めたいと思います」
 美しく崇高な挑戦。ぜひ応援したい、という気持ちとともに、4年前のインタビューでもう一つ印象に残った彼女の言葉を思い出してしまう。「べレズナヤ&シハルリドゼのスケートが好き。彼女たちにあこがれて、タマラコーチについたんです」
 川口悠子がメダル候補としてこれから大きな話題を集めるとき、どうしても注目されるのは、ロシア代表であることや、スロー4回転を持っていることだろう。しかしもうひとつ、できれば彼女たちの個性とペアとしての格の大きさを、人々が注目してくれれば、と思う。
 世界選手権のフリーは残念ながらミスが多く、本来の魅力の半分しか見せられなかった。しかし動きの端々に見る優雅さは、彼女が憧れるべレズナヤ組を彷彿とさせるもの。さらに正統派の美しさだけでなく、ふたりだけが持つ演劇性の高さや若々しさ、女性のかわいらしさとそれを包み込む男性の優しさ。そんな個性が、格の高さにまで昇華する可能性を、ふたりは持っていると思う。
 話題性があるだけでなく、ペアとして、フィギュアスケーターとして素敵。オリンピックでは絶対に、その演技を見逃せない存在。五輪シーズン、彼女たちがそんなペアであることを、より多くの人に知ってもらえたらと思う。

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男子SP終了、サミュエル・コンテスティ6位 ―新風を纏うベテラン―

Conte9821  イタリア代表、サミュエル・コンテスティは今年26歳。ヨーロッパ選手権の現・銀メダリスト。
 そんなベテラン選手の演技を、今回初めて生で観ることになるとは思わなかった。23歳まではフランスの選手、その後、イタリア代表へと移籍したため、まるまる2シーズン大きな国際大会に出場していない。その間、彼はいったいどんな練習を積んできたのだろうか。
 4年ぶりに出場し、いきなり銀メダルで脚光を浴びた今年のヨーロッパ選手権。テレビで彼を見た時は「こんなふうに頭角を現す選手がいるのか!」と、ほんとうに驚いた。そして今大会、生で演技を見ることを楽しみにしてきた選手のひとりだ。
 そんなふうに自分への注目が高まっていることは、コンテスティ自信もわかっていただろう。
「世界選手権の場で、ものすごく大きなストレスを感じていたんだ。僕だけでなく僕らのチーム、みんなが」
 ヨーロッパ選手権、四大陸選手権や国内選手権で思わぬ大活躍をした選手が、世界選手権となると前評判の高さゆえに大きなプレッシャーを感じ、大失敗をしてしまうことはよくある。実に4年ぶりに出場するコンテスティだって、重圧につぶれてしまう可能性は大きかったはずだ。しかしそんな彼が見せてくれたショートプログラムの、素晴らしかったこと!
 アコーディオンの奏でる物憂げなメロディに乗って、上品な道化師のように氷上をたゆたう。独特の空気をまず作り出した後に、3回転-3回転は高くしっかりした回転で見せ、続くふたつのトリプルも難なく。プログラムの世界にきっちりジャンプをはめ込んで、さすがヨーロピアンの銀メダリスト! と期待していた人々ををうならせてしまった。
 ジャンプを終えた後半も、アコーディオンの旋律にぴたりと合ったスピン、サーキュラーステップと、それぞれのエレメンツの巧さをしっかり見せてくれる。印象的な振付けも、サスペンダーつきの衣装も、どれをとっても小粋なプログラムを雰囲気たっぷりに滑りこなして、場内は大きな拍手!
 技も、表現も間違いなくトップスケーターのもの。そんな26歳の選手をこの目で初めて見る……なんだか不思議でうれしい体験だ。
「目標は、プログラムの最後の最後まで強さを保つこと。それが今回はできて、すごくハッピーです!」
 男子シングル、トップ選手が多く抜けてしまったぶん、新しい魅力と可能性を持った選手が次々と出てきている。それがチャンや小塚崇彦のような若手だけでなく、コンテスティやアボットのようなベテランにもいることが、また面白い。
「とにかく、ここまで支えてくれた家族に感謝をしたいです。妻と、コーチたちのしてくれたサポートすべてに感謝を。本当に、彼らこそが僕を支えてくれたんです」
 若手もベテランも、ここまでたどり着いたそれぞれの選手に、それぞれの道のりや人知れぬ努力があるだろう。すべてを越えて、さらに世界選手権の激戦に立ち向かい、男子シングルを面白くしてくれる選手たち。彼ら全員に、ありがとうを言いたい。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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SP終了後、無良崇人選手コメント

Takahiko0196 ――ショートプログラム、振り返ってみていかがですか?
無良 まずトリプルアクセル、跳べはしたものの、上半身が空中に残ってしまったのでちょっと怖かったですね。脚に上体がついてきてない感じで、先生も手をつくかと思ったみたいです。

――そのアクセルが無事入ったことで、少し安心しましたか。
無良 いや、ジャンプは3つ目まで終わらないと気が抜けないんです、僕の場合。先生もアクセルやばい、と思ったと。でもルッツはいい感じで跳べてたね、と。

――ジャンプ以外の見せ場も今年は増えてきましたね。
無良 先生も、今日は全体的に動きは良かったと言ってくれました。去年まではプログラムを滑る練習が比較的少なかったんです。今年はこれまで以上に、滑りこむ練習をしてきたたかな。

――リンクがNHLサイズで細長い、その影響はありましたか?
無良 中京のリンクでは氷の上にコーンを置いて練習してきました。それでも実際にフェンスがあると、狭いな、と感じますね。試合が始まるまでに慣れるための時間があったのは良かったかな。

――最近はオールバックだったヘアスタイル、今日はナチュラルでしたね。
無良 振り付けを少し変えて、頭を動かす動作が増えたので……髪の毛を固めてない方がふわっとなって感じが出るかな、と思ったんです。

――本番でも落ち着いて演技できていましたが、緊張感を抑える秘訣は?
無良 最近、J-POPを聴くようになったんです。GReeeeNの「歩み」とか、レミオロメンの「Sakura」とか。試合前に聞いて、日本語の歌詞に励まされてます。

――周囲の人からのアドバイスなどはありましたか?
無良 先生にも連盟の人にも言われたんですが、「のびのびとやってきなさい」と。その言葉が印象に残っています。明日ものびのびと滑れたら!

――初めての世界選手権ですが、お父さん(無良隆志コーチ)の順位を超えたいという気持ちは?
無良 それは今のところありません。まずはやることをやらないと、順位はついてこない。まずはやらなきゃ! と。父への電話も……する予定だったけど忘れてました(笑)。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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男子SP終了 吉岡伸彦強化部長のコメント

Nobue0489 ――ショートプログラムが終わり、小塚5位、織田7位となりましたが。
吉岡 5と7で足せば12。簡単ではないけれど、3枠に向けて十分可能性はありますね。明日またがんばります! 

――3人それぞれにまずまずのスタート、でしょうか。
吉岡 今日は3人とも、それぞれに緊張していた部分がありました。無良選手は6分練習の途中まで硬かったけれど、途中から硬さもとれて、彼なりにきちんとできましたね。織田選手はもう、スタート前まで緊張しすぎです(笑)。でも曲がかかってからはいい動きができていた。だからジャンプの転倒はなんとももったいない……。クレーンカメラを動かすためにリンクフェンスが一部切れているんですが、その部分がよく見えなかったらしいデスネ。練習ではいつもまっすぐ真ん中で跳んでいるジャンプ、今日は少し斜めに行ってしまいましたし……。でも織田君も、明日は気持ちを切り替えて、きちっとやってくれるでしょう。

――小塚選手は、日本勢最上位の5位でした。
吉岡 彼は3人の中ではいちばんリラックスできていました。ただ、フリップで慎重になってしまったのかな。ふだんはもう少しきちんと跳べています。やっぱり3人とも、それぞれきちんとできたけれど、もう少しずつできただろうな……という感じもあります。欲を言えばもう少し上の順位を、という気持ちもあるかもしれない。でも、世界選手権という場で、大きなミスもなくこの結果。明日もまたそれぞれががんばってくれれば、日本チームとしての目標も達成できると思います。

――チームとしての目標、どのくらいの成績で3枠を、と考えていますか。
吉岡 3枠、そう簡単に取れるものではない。6+7でも、3+4でも、もちろん1+2でも、取れるものならばどんな順位でも、と思っています。それぞれがきちんとやるべきことができれば、可能性は十分ありますしね。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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世界選手権こぼれ話(2) ロスアンゼルスの世界選手権

Scenter10069  ロスアンゼルス、本日の最高気温は20度。しかしそれ以上に日差しが強く、空は抜けるような青!
 街を歩く人たちにはTシャツにショートパンツ、なんて姿も見られ、春というより初夏に近い陽気だ。こんなに暖かいところでの世界選手権取材は初めて。いつものように厚いコートやカイロは持ってきたものの、これは余計な荷物だったな、などと思っていたところ……。
 会場のステイプルズセンター、リンク内は国際大会とは思えない寒さ! カイロだけでなく、ひざかけもマフラーも欲しいほどの室内温度だ。普通、大きな国際大会ともなれば、客席は暖房がきいているものだけれど……。今までで一番暖かい街での世界選手権。今までで一番寒い会場での世界選手権。初夏の街、分厚いコートを片手に、ホテルからリンクまで15分の道のりを毎日歩いています。


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男子SP終了、小塚崇彦5位 ―今シーズンの収穫―

Takahikoe1040 「とりあえずご飯食べて、寝て、起きたらシャワー浴びて。他の種目の試合を見て、身体動かして、落ち着いて。最後に部屋で忘れ物をしないようにチェックして、部屋の片づけして、電気を消して、ホテルを出てきました。あ、最後の最後にもう一回、信夫先生と忘れ物確認をして(笑)。それが試合前にやること、ひととおりです」
 無良崇人とは違うスタイルで、世界選手権2度目の小塚崇彦もまた、落ち着いていた。
 そんな彼のショートプログラム、ジャンプやスピンの美しさや精度については、もう言わなくてもいいだろう。それよりもすっかりおなじみなった「テイク・ファイブ」。シーズン最大の舞台で、さらに一段と味わいを増して見せてくれたのがうれしい。
 スタート時点で「うん」とうなずく表情からすでに、見る人をぐっと引き込む。すーっと滑るスケート、その滑りがごく自然に止まり、ふっと美しいポーズを取る、その流れ。ジャンプの後、ステップの直前、エレメンツを引き立たせる動きが入ることで、質の良い技も見る人の心にさらに深く残る。
 エレメンツ、つなぎ、表情、空気……そんなものが一体となった「小塚のテイクファイブ」は、このスタンダードナンバーを身体の動きに変換するとこうなるのか、と、ダンスの小品として評価したくなるようなプログラムにまでなってしまった。
「今シーズンは、自分がコレをして、アレをしてって決めたことを目いっぱい練習して、それが試合で出せてきました。今日もいつもの試合どおりにできたと思います」
 スタンディングオべーションも、当たり前のように起きた今日の「テイク・ファイブ」。しかし公式練習での「テイク・ファイブ」は、さらに凄かったのだ! あの淡白で無表情だった小塚崇彦から、色気を感じるような「テイク・ファイブ」。その色気がスケーティングに乗り、リンク全体にふりまかれるような「テイク・ファイブ」。何のストレスも無い状態ならば、そこまでの表現ができるスケーターに、今年の小塚崇彦はなってしまった。そうなってくると楽しみなのは、フリーの「ロミオとジュリエット」だ。
「明日は4回転はやらないってことに決めていて……。でも後半のトリプルアクセルは、あります。4を抜いたからってアクセルを含めてノーミスでできるわけではないので。ジャンプの時はジャンプに集中して、他の部分もひとつひとつ集中を途切らさないようにしたいです。オリンピックの3枠は……終わるまでは分からないですね。まだまだ、見えてきたようで、見えていない」
 26日のフリー、彼の関心は、どうしても順位、それに伴って得られるバンクーバー五輪出場枠に行ってしまう。メディアからの質問も、どうしてもその点に集中しがちだ。もちろん、それもとても大切なことなのだが……。
 でも私の最大の関心は、彼の順位でもジャンプでの出来でもなく、公式練習で見せているような極上の「ロミオとジュリエット」を、シーズン最大の舞台で見られるかどうか、だ。
 スケートアメリカ優勝、ファイナル2位といったメダルの輝きとともに、今年の小塚崇彦最大の収穫は、彼の代名詞になるほどのプログラムを得られたことだ。その「ロミオ」を、最後の最後、いつまでも語り継がれるような名演で締めくくってほしいのだ。
 スポーツの楽しみ方としては、王道ではないかもしれない。でも、今の小塚崇彦の楽しみ方としては、これが一番ではないだろうか。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshim


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男子SP終了、無良崇人13位 ―堂々たる初陣―

Takahito0145  初出場とは思えないほどリラックスしている――少なくとも外野からは、SPでの無良崇人はそんなふうに見えた。
 じっくりと、誘い込むような動きから始まるオープニング。どの会場でも、決まれば絶対に大歓声が沸き上がる、大きなトリプルアクセル。3回転-3回転もステップからの3回転も、決めるべきジャンプはきちっと決めて見せたし、ただのつなぎの部分でも拍手が起きるほど、印象的な振り付けを丁寧にこなした。
 心も身体も、うまくコントロールしているな……見ている側にも初陣を見守るドキドキ感はなく、ひとつひとつのエレメンツをじっくり楽しみながら見ていられる。
「でも、初めてのシニアの大きな試合。いつもはテレビで見てるような試合ですから、緊張はしました。会場に入ったら、お客さんが多くて圧倒されたし……。6分練習を待っている間が一番緊張しましたね。でも、ここまですごく練習してきたんだから、と開き直って、やらなきゃ! と思った。練習で何をやったかを思い出しながら気持ちを整えて……。だから滑り出してからは、緊張はなかったんです」
 ほっとしたような表情。でも、この点数と順位に、満足はしていない。
「自分としてはまずまず、90点の出来。その割には点数が伸びなかったことはショックです。たぶん持っているものは全部だしたから、テクニカルスコアはこれでOKだと思う。でも初出場なので5コンポーネンツの方が……。こっちは、試合を重ねて伸ばしていくしかないと思います。これからはグランプリシリーズでも、ちゃんと成績を残していかないと」
 さすがに強豪ひしめく全日本を勝ち抜き、高校生で世界選手権代表となっただけのことはある。エースがケガをして急きょ駆り出されたピンチヒッターでもなく、数合わせで上から順番に選ばれた選手でもない。シニア一年目で彼自身がきちんと評価を上げ、自ら掴み取った代表の座だ。そしてこれからもこの場所にい続けたいのなら、無良崇人はさらに大きな努力を続けなければならない。気持ちも身体も、しっかりして当然。日本代表の一員としての、自覚を持って当然。そのくらいの誇りと責任を持って、彼らは日の丸を背負っているのか――急成長した無良崇人の演技を見て、しみじみ思った。
「フリーではこのままの勢いで、練習したことを出しきれたら。ミスなく滑りきることを目標にしたいです。順位の目標だった10位以内、ですか? フリーでがんばったら、達成できるかな」
 でも、もう少し楽しんでもいいよ、と今日の彼の落ち着きぶりを見て、声をかけたくなってしまった。オリンピックの枠のことは、先輩ふたりに任せておけばいい。そのうち彼にも、エースとして大きな大きな重圧がかかる時がきっと来る。それまではもっと弾けて、自分を思い切り出して、氷の上ではやんちゃをしてもいいくらいだ。
 いい時の無良崇人は、フィギュアスケートの枠からはみ出るくらいのエネルギッシュな演技をする。世界選手権の雰囲気にすっかり慣れることで、フリーではそんな演技が見られればいいな、と思う。
 やるべきことはしっかりやって、自身は納得の演技ができた。でもいきなり最終グループ、などという大きな重圧は掛かっていない。心強い先輩たちも、すぐそばにいてくれる。
 フリーで彼が好演技を見せるための条件はそろった。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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男子シングルSP -会心の2位、喝采の1位-

Evan_0579_2    今シーズンのワールド男子シングルは少しばかり物足りないのではないか? 昨年秋以降、フィギュアスケートファンならば、そんな考えが一度は頭をよぎったのではないかと思う。
 ジェフリー・バトル、ステファン・ランビエール、髙橋大輔、ジョニー・ウィアー。銀メダルのブライアン・ジュベールを除いて、昨季のワールド1位~5位までのうち4人が不在。いずれもが実力と華を兼ね備えた選手だけに、少なからず男子シングルに一抹の味気なさを感じたのも無理はないだろう。

 しかし、そのような心配は無用だったようだ。25日に行われた男子ショートプログラムでは、第6グループのサミュエル・コンテスティ(イタリア)が78.50という高得点をマークし、ヨーロッパ選手権第2位の実力を証明。
 それに続く第7グループでは、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフ、カナダのボーン・チパー、日本の無良崇人が、好演技で観客をわかせる。
 その後の第8、9,10グループも、日本期待の織田信成、小塚崇人、全米選手権第2位の新星ブランドン・ムロズ、チェコの実力者トマシュ・ベルネル、今季活躍のジェレミー・アボット、パトリック・チャンらが続々と登場、雄を競い合った。

 なかでも、今回最も印象に残ったのは、1位のブライアン・ジュベールと2位のエヴァン・ライサチェクだ。
 ロスアンゼルスはライサチェクのホームタウン。「家族や友人の住む街」「(会場の)ステイプルズセンターは特別な場所」と、地元開催への思い入れはひとしお。観客側も地元選手の登場をひときわ大きな歓声で迎えた。
 演技前の強くまっすぐな視線と静かな表情は、気合を感じさせるに十分。終始丁寧な動きで、今シーズンずっと苦しんできたプログラムを、会心の演技で自分のものにしてみせた。滑走後の場内は総スタンディングオベーション。最高の盛り上がりとなった。

Bj2e0669_2 その興奮冷めやらぬリンクへ滑り出て行ったのが、ジュベールだ。地元の選手が賞賛の嵐を受けるなか、返ってそれを楽しむかのようなそぶりを見せる。
 その自信は観客にすぐに伝わり、期待に変わる。曲が始まるや否や、ジュベールが手足を動かす前に沸く客席。4回転はお手つきになったものの、最初から最後まで歓声と手拍子はやまず、喝采のうちに演技を終えた。
「4回転はミスしたけれど、すべてのエレメントを100%にするように練習し続けてきたからね。スピンやフットワークを一生懸命練習した。だから、大きなミスがあっても高いスコアを出せるんだ」
 実は公式練習でも、他の選手が一様に緊張の面持ちを見せるプラクティスリンクで、ジュベールは笑顔を見せていた。今シーズンずっとブレードの不調やケガで苦しんだ後に、強い気持ちとハードな練習で調子を上げてきたことへの自信の表れだったに違いない。

 王者の風格を漂わせるジュベール、地元の後押しを力に変えるライサチェク、ノーミスの演技で3位につけたパトリック・チャンとそれに迫る選手たち。
今年の世界チャンピオンとともに、新たに「トップ選手」と呼ばれるにふさわしい選手たちが生まれる。

photo/Sunao Noto   text/Hiroko Kato 


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世界選手権こぼれ話(1)オフリンクの選手たち 男子シングル編

Mens10102  昨シーズン最終グループを滑った6人のうち、4人が引退、ケガなどでエントリーしていない今大会。男子シングルはいったいどうなってしまうのか? などと危ぶまれていたのが嘘のように、今年の男子はおもしろくてたまりません。
 熱戦のレポートの前に、選手たちのオフアイスの表情を少しだけお届けします。

 まずはショートプログラムを終えたばかり、ドロー会場での小塚崇彦、無良崇人、織田信成3選手。
 どんな試合でもどんなメンバーでも、3人仲良く席に並んでいる日本の男子選手(08年の四大陸ではこんな感じ)。
Pat0105  織田選手は最終前グループの3番滑走というクジを引き、「ええとこ引いた!」とご機嫌。3人ともこの表情なら、フリーはリラックスして臨んでくれるかも? 3選手のインタビューは『PASSION2009 フィギュアスケート男子シングルフォトブック』に掲載されています。

 記者会見後にカメラに目線をくれたパトリック・チャン選手と、フランスメディアのインタビューに答えるブライアン・ジュベール選手。試合前には、4回転をめぐりコメントを応酬しあった、などと伝えられたふたり。記者会見では、「僕たちの戦う場所は氷の上だから」とジュベール選手。

text/Hirono Aoshima
Brian0107


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ペアSP 川口悠子&スミルノフ組2位 二羽の白鳥

Yuko9397_2   川口悠子とスミルノフは素敵なペアだ。彼女たちの「ある愛の歌」などはとても美しいプログラムだったし、日本出身ということをさしおいても大好きなペアだと思う。
 でも、今日の「白鳥」ほど、ふたりの演技に心が震え、涙が出そうになったことは、かつてなかった。

 滑走は、カナダのデュベ&デビソン、ウクライナのボロソジャール&モロゾフ、ドイツのサフチェンコ&ショルコビーと、いずれも世界一流のペアたちと同じ組。しかしこの中に入っても、川口組の動きは大きく、キレがあった。これはいい状態で練習を積んできたんだな、と、一目でわかる動きだ。
「国籍を得て正式にロシア代表になって……最初のうちはがんばらなきゃ、がんばらなきゃ、と思うばかり。気持ちが空回りしている部分はありました。でも、今はとにかく滑りたい。この『白鳥』のプログラムをもらったこともきっかけになって、スケートへの取り組み方もかわりました。今は気持ちも落ち着いていて、滑ることに集中しているんです」
 ふたりの「白鳥」は、鳥の羽ばたきなどを優雅に表現するだけでなく、音楽の持つ優しさ、清廉さをそのままスケートの動きで表したもの。二羽の白鳥が寄り添って羽ばたくシーンだけでなく、ふたりが音も立てずにすーっと離れていく、そんな動きさえも美しい。エレメンツもどれも完璧で、中国ペアなどに比べればスロージャンプやツイストのスケールはないけれど、そのぶんコンパクトに美しく、小さな宝石を氷上にちりばめていくようだ。
 クラシックの伝統の最右翼に位置する曲。そして、モダンなアレンジなど何もせず、ストレートに音楽の美しさと主題を表した振り付け。ここまでロシアの伝統にのっとったプログラムを、日本の女の子がロシア代表として、滑ってしまえるのだな、と感心する。
 そしてそれ以上に、遠くから見ていても伝わってくる、川口悠子の表情の晴れやかさ、強い意志の宿る動きの力強さ! ただ、ロシア人としてロシアのスケートをするだけでない。この強さは、ペアが好きという気持ちを海を渡ってでも表そうとした、川口悠子自身の持つ強さだ。
 プログラム後半には、観客も、彼らふたりも、そろって演技に入り込んでしまった「白鳥」。音楽が鳴り終わっても放心気味の川口悠子を、ステイプルズセンターは大きなスタンディングオベーションで包む。
「スピンで小さなミスがあったので、完璧ではなかったと思います。でも今日うれしかったのは、ふたりで滑れたこと。そして、白鳥になれたこと。お客さんが立ってくれたのもうれしかった。明日はもっと頑張りたいです!」
 興奮して立ちあがったお客さんの中には、こんな会話を交わす人たちもいた。
「女の子の方は……ロシア人なの?」
「ユウコ! ジャパニーズだよ!」
 ここまでの演技を見せてくれた選手のことを、お客さんはもっと知りたい、と思ったのだ。
 そしてお客さんたちが称賛しつつ口にする、「ジャパニーズ!」という言葉。
 異国の地でここまでの選手になった川口悠子のことを、日本人としてこんなに誇らしく思ったことはない。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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大会初日(24日) 女子シングル公式練習レポート

Mao_12e8907  先週のうちにLA入りしていた安藤美姫、村主章枝は今日はお休み。浅田真央のみがフィンランドのポイキオ、レピストらとともに40分の公式練習に臨んだ。
 日本のメディア、ファンのみならず、たくさんのスケート関係者、ファンが「真央ちゃん」を見に集合する中、トリプルアクセルに何度も挑戦し、ほとんど着氷! きれいに3回半まわるたびに「わあっ!」という歓声が起きていた。コンビネーションなどその他のジャンプもほぼ完璧。じゅうぶん「調子がいい」といえる公式練習だっただろう。
 ただ、表情は少し強張り気味、身体もちょっと重たそう。緊張もあるだろうし、まだ時差の影響も残っているのかもしれない。レピストやポイキオら、フィンランド勢があまりに軽々とした滑りを見せるので、比べて少し重いように見えてしまったのかもしれない。
 浅田真央の場合、たとえジャンプの調子が悪くても、コーチと話をする時、練習を終えた時、少しでも笑顔が出た方が、「これなら大丈夫だな」と、安心できるような気がするのだが。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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アイスダンスコンパルソリー終了、リード&リード組18位

 今年の世界選手権、コンパルソリーの課題はパソ・ドブレ。音楽も派手で衣装も華やかなこの課題、いつもは地味めなコンパルソリーの試合の雰囲気が、ちょっと違ったような気がした。
 存在感のあるカップルは、より艶やかに。しかし実力の上でまだまだのカップルは、スパニッシュの勇壮な雰囲気にのみ込まれそうにもなってしまう。
 その中に登場した長身の姉弟カップル、リード&リード組は、鮮やかな赤と黒の衣装もよく似合う。髪型もメイクも思い切り挑発的に。でもスパニッシュな雰囲気はうわべだけにとどまらず、少し慎重な動きながらも切れのいいパソ・ドブレを見せてくれた。
「今日はちょっと動きがスロー。でも、大丈夫です、良かったと思う」(キャシー)
 濃いメイク、似合いますね。
「はい、赤と黒、たくさんたくさん使って。髪型はいつも通りお母さんが(笑)」
 クリスの膝の調子はどうですか?
「膝はダイジョーブです。明日も大丈夫です」(クリス)
「明日はないよ!(オリジナルダンスは明後日)」(キャシー)
 全日本の時は85%といっていた膝の調子、今は何%くらいですか。
「今は99%!」(クリス)
「リアリー? ほんとう?」(キャシー)
「ほんとに!」(クリス)
 この調子を維持して、フリーまで頑張ってください。
「はい、フリーは新しいドレス。四大陸のプラクティスで着ただけだから、まだみんな見てない!」(キャシー)
「衣装、すごいですよ!」(クリス)
 ジョークを交えつつ、インタビューのほとんどは日本語で! 2度目の世界選手権、アイスダンサーとして、また日本チームの一員として、どんどん経験値を積んでいるふたりだ。

text/Hirono Aoshima 


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世界選手権2009 男子シングル開幕直前  パトリック・チャンと世界のライバルたち 吉岡伸彦強化部長コメント

――世界選手権に向けて、日本男子の2枚看板、どこまで戦えるでしょうか。
吉岡 四大陸選手権で、ふたりは3番4番に入った。ヨーロッパ選手権はジュベールとコンテスティが220点以上で、5位までが220点前後で並んでいる状況です。そのくらいの点数ならば、ふたりとも、四大陸のような演技をしても普通に出せる。当然ふたりとも10番以内に入れると思いますし、きちんと滑りさえすれば順位を足して13(3枠獲得の境界線)は十分可能なところだと思います。単純にふたつの大会の点数を比べても、ふたりは世界で5、6番くらいに位置するんじゃないかな。四大陸で悔しかったことをバネに、さらにがんばってほしいですね。

――四大陸選手権では、若いパトリック・チャン選手が、大きなライバルとして立ちはだかりましたが。
吉岡 そうですね、彼はスピン、ステップともに高いレベルが取れて、GOEでも稼げる。ジャンプも4回転はありませんが、プログラムに入れているものは基本的にはずさず、GOEプラスもつく。それだけのエレメンツをやりながら、スケーティングスキル、トランジッション、音楽表現ですべて点数が出る……。あとは4回転トウループが欲しいところでしょうが、今の段階でもすごく完成度の高い選手です。それが、あの点数につながっている。日本の選手たちは、彼の今のレベルに並び、さらに4回転を跳べるぞ、という状態にしなければならないわけです。さらに今は、高いレベルを取れてGOEももらえるエレメンツを、みんながプログラムに組み込む時代。それができるのは、パトリックひとりではないでしょう。誰もが高いレベルで演技する中で、織田、小塚が抜け出すには何か大きな武器が必要になりますよね。

――四大陸選手権を戦って、各国の選手たちに関してはどう感じられましたか?
吉岡 ともかくカナダが、男子も女子もものすごい勢いですね。このままではいけない、きちんと対策を立てて臨まなければ、地元開催ですしカナダにぶっちぎられかねない。あと1年、日本はどう戦うか、きちんと考えていきたいと思います。日本も男女とも、力のある選手がそろっているし、高いレベルで競い合って高め合っていけますから。さらに彼らがお互いに刺激し合える環境を、合宿などを含めてなるべく作ってあげられたらと思っています。具体的な計画はこれからですが。

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大会初日(24日) 男子シングル公式練習レポート

 ひとりやふたりならともかく、ひとつの国から3人も世界大会レベルで戦える選手をそろえるのは、とても難しいことだ。勢いがあって3枠を取った国でも、送り込む3人すべてが人目を引くような選手になることなど、めったにない。ましてやエースの髙橋大輔を欠いたチームでは……。
 ところがSP前日、公式練習のリンクに立った日本勢3人は、これ以上ないほどの臨戦体制だった。4回転からのコンビネーションなどを跳び、「これを本番でやれたら、優勝しちゃうんじゃないのか?」と、報道陣を驚かせた織田信成。
 4回転への挑戦は見送ったが、振り付けのひとつひとつを凛とした表情でこなし、できる練習はすべてやってきたという自信が垣間見えた小塚崇彦。
 そして、「古事記」のメロディに乗って勢い良く動く姿は、初陣の若武者そのもの。緊張感は漲っているものの、力強く堂々とした滑りは、とても世界選手権初出場に見えない無良崇人。トレードマークの大きなトリプルアクセルも、たくさんのギャラリーの注目を集めていた。
 日本男子3人は、今まさに3本の矢。3人が3人とも「お、いいね!」とうれしくなってしまう滑りを見せてくれている。ここまで粒ぞろいのスケーターがひとつの国から揃うとは。そしてそれが日本の男子シングルだとは! 今大会はきっと、「日本男子、すごいじゃないか」――そう、世界のファンが唸る大会になりそうだ。

text/Hirono Aoshima


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世界選手権2009 男子シングル開幕直前 小塚崇彦、織田信成――吉岡伸彦強化部長の評価

Takahikoe4337 ――前哨戦となる四大陸選手権。男子シングルでは織田と小塚がメダル争い、という形になりましたが。
吉岡 フリーではふたりとも、「失敗できない!」という気持ちが少し強かったかな。丁寧に慎重に滑ろうとしてしまい、押して押して! という勢いが足りなかったような気がします。もしショートプログラムをきちんとやっておけば、こんなに慎重になる必要はなかったと思うのですが……。それでもショートに比べれば、特に織田は落ち着いていたな、と思います。ショートの際は、音楽も何がかかっているのか分からないくらいバラバラになっていましたから。フリーではきちんと音楽を聴いて、落ちついて表現できていた。ショートと同じ失敗をしなかったことは評価できると思います。彼も一年のブランクがあって、毎年大きな試合に出ていた頃には感じなかった難しさが今年はあります。とにかく試合を積み重ねながら克服していくしかないですね。

――小塚選手はフリーで順位を落としましたが、3位入賞という結果に。
吉岡 勢いは、ファイナルの時の方がありましたね。あの時はまわりが失敗したこともありましたが。しかしある程度試合ごとに波があるのは仕方のないことです。すべての試合で100%、高いテンションを維持するのは無理。ファイナル、全日本で緊張して、四大陸でも高いレベルを保ち、世界選手権でも……と4つも高い山はさすがに作れませんよ。最終的に世界選手権に合わせて、きちんともっていければいい。わざと調子を落とす、というわけではないけれど、小さな波があるのは当然、と思っています。

――ふたりともがチャレンジし、四大陸でも成功はならなかった4回転ジャンプに関してはいかがでしょうか。
吉岡 4回転、私は来年のオリンピックで必要になるものだと思っています。ただ今回の試合では、パトリック・チャンによって、4回転が無くても250点以上が出せることが証明されてしまった。これもひとつの方向かな? と思ってしまいたくなりますが……。でもそれだけではオリンピックでは勝てないでしょう。それに日本の選手の伝統でもありますから、技術でやはり他の国の上に立ちたい。小塚も織田も4回転は避けて通れないと思っています。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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世界選手権2009特集、始まります

Oc10077  今年の世界選手権はアメリカ、ロサンゼルスにて開催。
 成田空港事故の影響でniftyフィギュアスケート特集の取材チームはLA入りが遅れましたが、本日より現地レポートをお届けいたします。
 今年は遂に、プレオリンピックイヤー。五輪の出場枠をかけ、またオリンピック前に少しでも評価を上げるため、選手たちも全力投球! 4年間のうちでもっとも盛り上がる世界選手権です。
 
 大会終了後には今年で4度目となるsports@niftyフィギュアスケートアワードも実施予定です。
投票したい選手を探しつつ、世界選手権観戦をお楽しみください。

text/Hirono Aoshima(写真はオープニングセレモニー。氷上に出現した超巨大スクリーンに次々と映し出される世界選手権の名場面)


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