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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

モスクワ世界選手権取材を終えて

sp23/10~3/21まで、現地取材を含め、フィギュアスケート世界選手権のレポートをお届けしてきました。
ご挨拶が遅くなりましたが、たくさんの方にこのページをご覧になっていただき、またあたたかいコメントやメールもいただき、本当にありがとうございました。

ご指摘もありましたが、今回のレポートは起こったことを客観的に伝える「報道」とは少し違ったものになってしまったかもしれません。
モスクワにずっといたので、日本で今回の世界選手権がどんなふうに伝えられ、どんなふうに受け止められたのかはよくわかりません。
でも現地で同じ空気を吸っていた人間だからわかること、村主章枝、荒川静香、安藤美姫、高橋大輔、渡辺心、木戸章之、そして本田武史、日本代表の選手たち全員が、ほんとうにぎりぎりのところで戦って、最善を尽くそうともがいてきた姿は、どんな形であれぜひ伝えたい、そう思って記事と写真を送ってきました。

もし少しでも、遠いモスクワで戦っている選手たちの気持ちを身近に感じていただけたとしたら、世界選手権という舞台の興奮をともにしていただけたとしたら、とてもうれしいです。

また、今回日本人選手のレポートが中心で、海外の選手に関してはほとんどお伝えできなかったことが悔やまれます。3人のメダリストが全員初めての表彰台だった男子シングル、地元ロシア対中国の戦いに沸いたペア、ミドルクラスのサバイバルレースも見どころ満載だったアイスダンス、女子シングル海外勢の動向、そして新採点システムに立ち向かう選手やコーチたちの姿。取材し切れなかったこと、取材しながら書ききれなかったことなどもたくさんあります。今後もし国際試合のレポートをお届けする機会がありましたら、魅力的な海外のスケーターの姿も詳しくお届けできればと思っています。

幸い、この「フィギュアスケート世界選手権特集」のコーナーはsports@niftyさんの好意で、トリノ五輪までの期間、このまま続けられることになりました。
今後は「フィギュアスケート特集」として、世界選手権取材で書ききれなかったこと、オリンピックに向けての日本代表選手たちの挑戦、イベント・地方試合のレポート、この競技に関わる皆さんへのインタビューなど、フィギュアスケート関連の記事をほぼ週一回の割合で更新していければと考えています。

フィギュアスケートはオフシーズンに入ってしまいますが、2006年トリノ五輪まで、一年をきりました。
今回の世界選手権でフィギュアスケートの魅力を知った方も、昔からのフィギュアスケートファンの方も、オリンピックまでの一年をより楽しめる、そんなブログになればと思っています。

お時間ありましたら時々訪問していただければうれしいです。

Photo by K.Asakura (エキシビション翌日、モスクワ大学方面から見下ろしたルイジニキスポーツパレス(左))


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世界選手権閉幕 クロージングバンケットの選手たち

mikisizu

 エキシビション終了後、メジズナローズナヤホテルで開催されたバンケットにて。
 ドレスアップした安藤美姫選手と荒川静香選手。安藤選手はカメラマンのデジカメをのぞみこみ、撮れた写真をしっかりチェック。「あーん、美姫ふけてる……」。それは「大人っぽくなった」って言うんだよ!
 荒川選手は急遽サンクトペテルブルクで開催されるアイスショーへの出演が決まり、この日バンケットを中座して電車でサンクトへ移動! お疲れさま。

fumidai 日本チームでただひとりエキシビションに出演した村主章枝選手。バンケットでも晴れやかな笑顔。
 美しいレディたちにかこまれてもにやけたりしてません、高橋大輔選手。
 
Photo by K.Asakura


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世界選手権最終日 エキシビションのスケーターたち

violon 大会最終日のお楽しみはメダリストたちが勢ぞろいするエキシビション!
 今大会も入場券が一番最初に売り切れる人気ぶりだ。
 日本からの出演選手が村主章枝選手ただひとりというのは残念だたtかれど、選手もお客さんもリラックスしたお祭りムード。でも同時に「楽しかった世界選手権もこれで終わり」という寂しさも感じさせる一日だった。
 今回はたぶんテレビで見ることができない、プログラム前半に登場した選手たちを中心にレポートしたい。

*エドウィン・マルトン
 子どもたちによるオープニングスケーティングのあとに出てきたのがスケーターではないこの人。ロシアの作曲家、エドヴィン・マルトン。ディフェンディングチャンピオン・プルシェンコの使う音楽を編曲したり、ともにエキシビションの舞台に立ったりしている人だ。この日はビジョンに写されるプルシェンコ予選の演技に合わせて演奏。彼が棄権しないでこの場所にいたら、スケートと音楽、どんなコラボレーションを見せてくれたのか。残念。

fumieex*村主章枝
 フリーの「カルメン」と同じ「情熱」をテーマにしたエキシビションナンバー「アルビノーニのアダージョ」。情熱がじんわりとではなく、ずしんとこちらに伝わってくる演技だった。フィニッシュのポーズをなかなか解こうとしなかった章枝ちゃん。メダルを取るよりうれしいといったエキシビション出演、2年ぶりに出られた喜びを全身で表してくれた。

lieex
*チェンジャン・リー
 演技前、カメラに向かってにこやかに手を振る余裕あり! キュートなサスペンダーと銀色の縦縞ズボン。踊ってます! 大きな手拍子をもらったサーキュラーステップなど、試合とは違うチェンジャンを楽しませてくれた。演技後にロシアの子供たちからもらった花束、似合ってたよ!

dsex *イザベル・デロベル&オリビエ・ショーンフェルダー
 NHK杯でも見せた紐を小道具に使ったエキシビションナンバー。今大会、アイスダンス一番の成長株、注目株だけあってお客さんの拍手も大きい。黒髪をおろしたデロベルの背中がとてもきれいで、さわりたいくらい。高度なリフトや紐なしではできないムーブメントに、歓声とため息。

oberex*ジュリア・オベルタス&セルゲイ・スラフノフ
 紫のタキシードとピンクのひらひらドレスで登場した二人。結婚行進曲から始まるかわいいかわいいエキシビション! 幸せな花嫁と花婿……と思った瞬間に衣装チェンジ! コミカルで楽しい演劇的なプログラム。いつもクールな印象のオベルタスが演じると、いっそう楽しさアップ。ロシア3番手という自由な立場を、今は存分に楽しんでいる印象。

Photo by M.Morita Photo by K.Asakura(村主章枝のみ)


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試合会場点描~リンク編

staff

 会場の案内や警備にあたるお兄さんお姉さんたち。おそろいのジャンパー(右)やフリースのジャケット(左)を着ています。宙に浮くスケート靴のエッジをデザインしたシンボルマークがかわいい!

fgirl 選手に投げられた花やプレゼントを拾い集めるフラワーガール、フラワーボーイ。日本の大会で活躍する子供たちよりかなり幼く、7~8歳ぐらい。休憩中には無邪気にリンクサイドでジャンプの練習をしていました。全部で20人くらいのうち、男の子はわずか3人。男子シングルの層が厚いロシアでも、競技人口はやはり女子のほうが多いようです。
 特におそろいのユニフォームを着ているわけではなく、それぞれ自前の演技コスチュームを着て登場。
 
fboy 製氷時間にビッグビジョンに流されるイメージビデオがおもしろい! フィギュアスケートのトップアスリートたちを紹介するだけでなく、様々な工夫が凝らされています。選手たちのジャンプシーンばかり立て続けに紹介したと思ったら、シットスピンばかりを連続して流したり、同じ動きのダンスステップを集めてみたり、いろいろな形のお辞儀を紹介したり。
 古今東西の選手の投げキスシーンの連続、ハグシーンの連続なども楽しい。
 なかでも日本のファンにぜひお見せしたかったのが、ちょっとおかしなパフォーマンス特集。このとき、日本の田村岳斗さん(昨年プロ転向)が、昨年の四大陸選手権演技後にモヒカン頭をなでつけて笑いをとったシーンが流れたのです! これには大受け!
 他にもジャンプを集めたパートで太田由希奈選手が、お辞儀を集めたパートで恩田美栄選手の昨シーズンの演技を見ることができました。
 また「歴史的ハプニング集」、とでも銘打ちたいビデオでは、あの伊藤みどりさんがショートプログラムでカメラマン席に跳び込んでしまったシーンも! このシーンが流れると会場中から「ああっ!」という驚きの声が。
yamato 
 フィギュアスケートの大きな国際大会は、ほんとうにその場に流れている空気が違います。スケート好きだったら楽しくてしょうがないし、スケートをあまり知らない人でも思わずわくわくしてしまう場所。
 来シーズン(今年12月)は日本にグランプリファイナルが、そしてその次のシーズンは世界選手権がやってきます。ぜひこの雰囲気をみなさんも!
yukina
Photo by K.Asakura


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試合会場点描~ルイジニキスポーツパレス周辺

totokanban

 スポーツパレス入り口に立つ今大会の大看板。ペアのトトミアニナ・マリニンをフィーチャーしています。
2012
 大会前半にご紹介した2012年夏季五輪誘致の看板。

 会場周辺に集まっていたロシアのフィギュアスケートファンたち。老若男女、まんべんなくいるのが日本のファン層と違います。寒い国の人たちは毛皮が良く似合う……。でも会場内は暖かいので、コートはみんなクロークに預けていました。持ってきた30個のカイロ、いっこも使わなかった。rusian

Photo by K.Asakura


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試合会場点描~お買い物編

shop

 長い日は朝10時から夜11時まで試合がある世界選手権(公式練習を見るために朝6時から会場入りしている人たちも!)。いかに腹ごしらえするかは重要な観戦ポイントです。
 軽い食べ物やお菓子を売るスタンドはあちこちに。
 観戦にちょうどいいのがここで売っていたイクラ、サラミ、ハム、チーズ、サーモンなどが乗ったオープンサンド。ひとつ50~60ルーブル(日本円200~240円)。ただしロシアの物価を考えると法外なお値段。外国人しか買いません。味はまずまずだけど、ちょっとクセがあるので食べられない人はいるかも。イクラは生臭かった……。prets
 大きな焼きたてプレッツェルを売るスタンド。日本ではなかなか売っていないお菓子なので食べたかったけれど、これは大きい! 大きすぎて手は出ませんでした。

 ロシアのフィギュアスケート専門誌、「フィグルーナヤ カターニエ(ストレートに「フィギュアスケート」という意味)」。海外の雑誌にしては紙質と写真がほどほどにいい! 表紙は私服姿のプルシェンコやスルツカヤ、ソコロワが飾っています。magshop

 この他、スポンサー「Canon」のブースでは、訪れた人々をブティルスカヤの大きなポスターの前で撮影、その場でプリントしてくれるサービスも。
 またトリノ五輪記念グッズを販売するブース、投げ込み用のお人形(かわいくない!)やロシア国旗を売るブース、スポンサーであるビール会社「EFES」のブースも。

Photo by K.Asakura 


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世界選手権記念グッズプレゼントのお知らせ

omiyage

 取材チームが現地で買ったおみやげに、今回出場選手のサインを入れて7名の皆さんにプレゼントします。

 公式パンフレット 2名(写真右)
 公式ポスター 3名(写真中)
 シンボルマークがデザインされたフラッグ 1名(写真左)
 シンボルマークの缶バッヂ 1名(写真下)

 サインは女子シングル日本人選手の予定です。

Photo by K.Asakura


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女子シングル フリー7位、総合6位 安藤美姫 たくさんのモスクワみやげ

miki71s とにかくロシアの観客の、自国選手への声援はすごかった。
 ちょっとサッカーのサポーターに似ていて、鳴り物は鳴らす、旗は振る、口笛は吹く。カナダやアメリカも観客の盛り上がりはすごいけれど、ロシアの観客はまた一味違う熱さを持っている。
 試合が終わった午後10時、11時という時間、サポーターたちは列をなし、バナーを振りながら「ロッシーア! ロッシーア!」と大声で合唱しながら帰っていく。そのくらいの熱さなのだ。
 どの国の選手にも「応援がおとなしい」と言われる日本から来た私たちには、やっぱりお国柄の違いと応援のあり様の違いに圧倒されずにはいられない。
 選手たちはもちろん、彼らのパワーを自分の力に変えるすべを知っている。イリーナ・スルツカヤのビールマンスピンは観客の拍手をエネルギーにして形作られたように見えたし、同じポジションのスパイラルは観客の歓声が後押しをして前に進ませているように見えた。
 
 そんな圧倒的なロシアの観客たちが、驚いたことに今日の安藤美姫には、惜しみない拍手を送った!
 滑走順はイリーナ・スルツカヤの直前。今までだったら前に滑った選手のお辞儀が終わるか終わらないかのうちに、強烈なロシアコールが起こってもいいはずの場面だ。でもしばらく続いたのは、スルツカヤではなく、安藤美姫に送られた拍手。ロシアコールもまだ起こらない。キス&クライで小さく手をふってみせた彼女にも、また暖かい拍手。
 まだ荒川静香の存在感と滑りには及ばない。村主章枝のプログラム表現や演技力にも及ばない。それでも今日の安藤美姫の演技からは、うまくなりたい! もっと強くなりたい! そんなまっすぐすぎるくらいまっすぐな思いがほとばしり出ていた。 彼女の存在がリンクの中からぽーんと浮き上がるような、芸術品のようなジャンプ。最後のステップの前、これで最後! と気合いを入れなおすようにリンクに立ち向かう姿。
 日本の、フィギュアスケートを何も知らなかった人々さえも振り返らせた安藤美姫の不思議なパワー。それをきっと、ロシアの観客たちも感じ取ったのだ。
 そしてそれはただまっすぐなだけでなく、もっと複雑な感情をも伝える力を持ち始めていた。今日の「火の鳥」に感じたのは、17歳の女の子の持つ、切なさのようなもの。まだ若い安藤美姫が短い人生の中で経験した、たくさんの悲しみや痛み。それを乗り越えて火の鳥は遠い空に飛んでいく。ほんとうに勝手な感じ方だし、彼女の伝えたかったものとは違うかもしれないけれど、少なくともひとりの観客は、そんな物語を感じることができた。またそんな物語を感じさせるだけの魅力が、安藤美姫の演技にはあった。

 昨年より順位を下げたしまったことは、本当に表面的な数字での結果に過ぎない。
 演技後の共同インタビューで一番いい顔をしてのは安藤美姫だし、一番大人の受け答えをしたのも彼女だ。「来シーズン、四回転は全部の試合で跳びたい」「そのために5コンポーネンツをあげるようにがんばる!」
 以前から記者たちに対しても自分のがんばる気持ちを隠さない人だったが、この時見せた決意の気持ちの大きさは、ほんとうに頼もしいものだった。やっぱり彼女は、誰よりも世界選手権で大きなものを得た。これから1年後に向けて何をすべきか、今回の経験を経てはっきり気がついたし、向かっていくだけの意欲を得たのだ。
 来年の安藤美姫は、絶対にすごい。このモチベーションとこの才能がぶつかりあえば、これはすごいことになる。
 今年順位が上がらなかった足踏みは、大きな飛躍をするためのすべくしてした足踏み。安藤美姫はいい足踏みをした。

Photo by K.Asakura


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女子シングル フリー9位、総合9位 荒川静香 もう一度坂道の上へ

shizuka03 「イーラ!」「ミッシェール!」「カロリーナー!」
 最終グループ6分間の練習滑走。各国応援団の声援に混じって、「がんばれ美姫ちゃーん!」「しーちゃんガンバ!」そんな声も、今日はかき消されずにはっきり聞こえる。日の丸の旗も、こんなに応援団がいたんだ! とびっくりするほど会場のあちこちで振られている。
 いろいろあったが、去年に続き、またふたりの日本人がこの世界選手権女子シングルフリー最終組に入った。クワン、スルツカヤ、コストナー、そして荒川、安藤。おそらくもっとも多くの人が、今年の最終滑走者として予想していた6人。そしてトリノ五輪の最終グループにも、もっとも近いところにいる6人だ。
 男子やペアのようにトップ選手に負傷棄権者が出たわけでもない。今年のティモシー・ゲーブルや去年のスルツカヤのように、ビッグネームが不調で外れてしまったわけでもない。もっとも最終グループにふさわしい、ここに来るべき6人がひとつのリンクの上で今、最後の調整をしている。
 大きな試合の最終グループ滑走前、この独特の張り詰めた雰囲気を感じていると、いつも思うことがある。彼女たちは今ここにいることの大きさ、ここで滑れることの幸福を感じているだろうか? 世界中にいる何千、何万というフィギュアスケートに賭ける少女たちが、もっともあこがれているこの場所に。
「しーちゃんがんばれ!」
 そうだ、もうひとつ、きっと6人の選手がこの瞬間思ってもいないことがある。会場から贈られる声援の後ろには、テレビやネットの中継を通して、ここにはいない何十万、何百万の人々が、祈るような気持ちで彼女たちに声援を送っているだろうこと。姿の見えないスケートファンがあちこちで自分たちを見守っていること。そんなこともきっと、今の彼女たちの心にはない。
 試合に集中している彼女たちにそんなことを伝えたいと思うのは、おかしいだろうか?

 荒川静香は昨日よりは少しリラックスしているように見えた。遠目でよくわからないが微笑んでいるようにも見える。プラトフはしっかり彼女の手を握り、タラソワは笑顔で彼女の肩をもんでいる。泣いても笑っても今シーズンはこれが最後、みんなで楽しみましょう。そんな雰囲気だ。
 大きなサプライズをこのリンクで起こしてくれることを願って、タチアナ・タラソワが荒川静香に贈った衣装。黒い衣装に身を包んだ今日の彼女は、ほんとうにぞくぞくするくらい綺麗だった。表情はいたっておだやか。滑り出すと、黒い風がリンクを駆け抜けていくようだ。
 ほんとうに美しいスケーティングをする選手は、見る人の脳にアルファ波を出させるんじゃないかな、と時々思うけれど、本来の荒川静香の滑りはそんな滑りだ。ずっと滑りだけを見ていたくなるけれど、ジャンプはやはり固唾を飲んで見守る。これが跳べたら、彼女自身も乗ってくれる、彼女のスケーティングをもっともっと堪能できる!
 しかし転倒こそしなかったものの、トウループを始めいくつかのジャンプで回転が抜けるミス。彼女がこだわっていた、やりたがっていたイナバウアーからのジャンプも抜けた。一年前のドルトムントの荒川静香を見た人にとっては、同じ選手を見ているとは思えないようなミスの続く演技だった。
 ただ素晴らしかったのは、何度かジャンプミスが続いてもスピン、ステップなどその他のエレメンツをきっちり見せようとしたことだ。ショートプログラムの時のように、ジャンプのミスに演技が引きずられていない。最後まで気を抜かず、ミスなしでできる部分はきっちり見せたい、そんな気持ちを最後まで保つことができていた。
 得意のキャッチフットスパイラルで見せた笑顔は、赤ちゃんの笑顔のようだった。以前、世界チャンピオンになったばかりのころ、日本で開かれたエキシビションでもこんな顔を見せたことがあったな。あの時の心境を尋ねると「本当に気持ちが良くて、自然にこんな顔になっちゃった」と言ってたっけ。
 ほんの一瞬でもいい。このスパイラルの時一瞬だけでも、モスクワの氷の上で気持ちよさを感じて終わってくれたのなら――またそこから彼女はスケートに取り組んでいけるはずだ。
 ドルトムントで4分間ずっと感じていた気持ちのよさを忘れないでいてくれるなら、またこの気持ちを味わうために、様々なハードな練習に、もう一年ん取り組んでくれるはずだ。
 ロシアのスケートファンも、一年前の荒川静香を覚えていた。またあれを見せてくれよ。演技を終えたディフェンディングチャンピオンに向けて送られたのは、熱狂的ではないけれど、静かな賛辞の拍手だった。
shizuka02

 これで荒川静香も、「世界チャンピオン」「世界女王」という肩書きを降ろすことができた。「任期一年、学級委員と同じですね」とチャンピオンなったばかりのころ彼女は笑っていたが、ちょっと重かったこの肩書きの任期は終わった。また今度「学級委員」になるときのために、しっかりその重さに耐えられる力をつけるための一年が始まる。
 彼女は上がったり下がったり、たくさんの坂道を上り下りしてきた人だ。全日本ジュニア三連覇、長野五輪前年の世界選手権補欠の屈辱、16歳で勝ち取ったオリンピック代表、その後の不調とソルトレイク五輪代表落ち。そして昨年の世界選手権優勝。
 なんのことはない、今回の9位という結果だって、いつもの坂道のくだりのひとつに過ぎないじゃないか。
 もちろんこれから登る坂道は、これまで以上に険しいかもしれない。だけど荒川静香には、この道を上りきるだけのタフな体がある。まずは休んで、大好きなおいしいものをたくさん食べて、パワーをつけて、きっとまたこの坂道を平気な顔して登ってくることだろう。
 彼女が途中であきらめることなく最後の道を登りきった時、また新しい物語が紡がれる。

Photo by M.Morita


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女子シングル フリー5位、総合5位 村主章枝 極上のエンターテイメント

fumiefree

「カルメンの運命ではなく、カルメンそのものを演じます」
 そんなファックスが村主章枝から来たのは9月、インタビュー原稿の校了直前だった。
 カルメンそのものではなく、「Fate of Carmen」としてカルメンの運命を実体化して見せたい。そう語ってといたプログラムのテーマを、シーズンインの直前、村主章枝とローリー・ニコルは変えたのだ。
 プログラムテーマの綿密な設定、難しい役作りへの取り組み、具体的には話してくれないがおそらく3回転3回転のコンビネーションを跳ぶためのジャンプ技術の改良、そのための体作り……。
 それだけのことを、村主章枝は今シーズン、遠いアメリカの地でひとりで挑戦してきた。いくら英語が堪能といっても、日本でも一人暮らし経験のない彼女にとって、どれだけ苦しい孤独な挑戦だっただろう。
 その後のグランプリシリーズでの不調、全日本3位という結果、再び新横浜に戻る決断。いろいろな、ほんとうにいろいろなことがあったシーズンだった。

 女子フリー第3グループ。最初の滑走者である村主章枝は、6分練習をともにした他の5人の選手がリンクから上がったあとも、そのまま演技のためにそこに残った。小柄な彼女は、まるで広いリンクにひとり取り残されてしまった小さな子供のようにも見える。これまでの彼女の過酷な道のりを考えると、あそこにいる小さな女の子を「守ってあげなきゃ!」という気持ちでいっぱいになってしまう。でも私たちが差し伸べられる手はどこにもない。彼女はひとりきりのまま、「カルメン」の世界にとびこんでいかなければならない。しかしそれは、村主章枝自身が選んだ世界だ。音楽は、静かなパーカッションのリズムからスタートした。

 昨日失敗したルッツからのコンビネーションをはじめ、ジャンプはほぼ成功。荒川静香や安藤美姫らに比べれば小さいけれど、軽くて確実なジャンプだ。今でこそアーティスティックな滑りが高く評価されている彼女だが、最初は誰よりも高くて元気なトウジャンプを跳ぶ、ジャンパーとして注目された。調子がよければジャンプだって村主章枝のチャームポイントになる。
 スパイラルの時、静かに上がっていく脚の動きがきれいだった。ただ高く長い間上げるのではなく、どう上げたらいいか、どのくらいの時間上げていたらいいのか、そんなことまできちんと考えられたスパイラルだ。これは彼女のこなすエレメンツひとうひとつに言えること。だから村主章枝のプログラムはどこを取っても見逃すことができないのだ。
 心配ないな、私が守らなきゃ、なんて思わなくても、彼女はしっかり強いカルメンだ。私たちはただ、彼女が身を削って作り出したこの世界を堪能すればいい。
 そして最後のストレートラインステップ。滑り出す前にあんな小さかった彼女が、リンクの中央を軽やかに進んでいくにしたがって、どんどんどんどん大きく見えてくる! きっとこれが彼女の見せたかったカルメン。試行錯誤の末、カルメンそのものを演じようと決意して取り組んだ作品。情熱的だけれど、軽やかな心をもって、見ている人たちの心の中に飛び込んでくるカルメン。最後のスタンドスピンが始まる前に、もう観客はは拍手をしていた。
 極上のエンターテイメントをありがとう。そんな気持ちをこめた大きな拍手。
 勝負の行方だけでなく、舞台芸術に勝るとも劣らない「いいものを見る喜び」がフィギュアスケートにはある。それを思い出させてくれたのが、この日の村主章枝の「カルメン」だった。


 ミックスゾーンでは、日本の報道陣だけでなく、ヨーロッパやアメリカのメディアも、村主章枝を追いかけた。テレビのインタビュアーとして、五輪チャンピオン、グェンダル・ペーゼラも彼女にマイクを向けていた。
 インタビュー中、記者たちの質問に答えながら、今日のフリー、世界選手権、今シーズンを振り返っていく彼女の表情が、少しずつ、少しずつ柔らかくなっていくのがうれしかった。
 いろいろあったけれど、よかったね章枝ちゃん。これで次のシーズンも、いい場所からスタートできる。今年もきつかったけれど、来シーズンはもっと厳しい、様々な試練があなたを待っているけれど。
 でもたくさんの大きな壁を乗り越えたその先にあるのは、あなたが大好きな、オリンピックの舞台だ。

Photo by K.Asakura


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女子フリー終了、村主章枝共同インタビュー「スケートをしている時がいちばん幸せ」

fumie01――最終組では滑れませんでしたが、いい演技でしたね。
村主 昨日の失敗をそんなにひきずらずにでき、滑りという点ではまあまあだったと思います。お客さんにもなかなか喜んでいただけたみたいですし。ショート・フリー通して、スケートの滑りという点ではかなりいいものができたような気がします。

――昨日のショートから今日のフリーに向けて、どんなふうに立て直しを図りましたか?
村主 きのうも悪い演技ではなかったと思いますが技術的な失敗を一つしたので、その点を修正して今日の朝と6分練習でも確認して本番に臨みました。

――最後のスピンは盛り上がりましたね。あの時の気持ちは?
村主 お客さんの盛り上がりに応えたいという気持ちもありましたけど、スピンも技術的なポイントはあるので最後までその点をはずさないように気をつけて回ってました。

――世界選手権全体をを振り返ってみると?
村主 すごく難しい状況でした。これまでも大変だった試合は多いけれど、そのなかでも特に難しい部類だったかもしれない。でもとってもいい経験でしたし、引き出しを増やせました。今シーズンもいろんな意味で苦しみと忍耐の年でしたが、来年に次に向けての課題も探せたのでよかったと思います。

――今年新しいテイストのプログラムを滑ったことはいかがでしたか?
村主 新しい挑戦が出来てよかったと思います。大変だったし苦しかったけれど、来年に向けての準備としてはこれもいい経験でした。自分のカラーもある程度分かってきたし、来年必ず生かせると思う。人は何かを得るためにいろいろなことに出会うべくして出会っていると私は思います。「ピンクパンサー」や「カルメン」というプログラムはこのタイミングでやるべきものとしてめぐりあったのだと思うんです。

――これでトリノへ向けても気持ちを新たにできそうですか?
村主 はい。方向性は見えてきたと思います。やっぱりオリンピックイヤーだし、皆さんフィギュアスケートに期待していらっしゃる。それに応えられるように、喜んでいただけるように努力していかないと。

――ずっと取り組んでいる課題についてはどうですか?
村主 全日本あたりまでは自分の体のなかで確立させるのに時間がかかりましたが、最近はだいぶやるべきことが絞れて来ました。もう少しだと思うけれど……でも時間は少ししかないので。心・技・体すべて求められるので良く考えて取り組んでいきたいです。

――これから一年、オリンピックに向けてどんな取り組み方をしていきますか。
村主 プログラム表現という点ではまだまだ課題は多いな、と思います。来シーズンはじっくり曲選びをしたい。私は音楽を選ぶことをとても大事だと思っているので。悩みに悩んで、コーチや振付師、バレエの先生と相談して新しいプログラムは考えたいです。

――コーチの先生やトレーニング地は今後どうする予定ですか?
村主 オレグが悪い先生というわけではないのです(笑)。でも佐藤先生と相談していっしょにやっていくかどうか、これから考えたいです。ただ、リンクの状況が難しい……。そのあたりもいろいろ考慮して決めたいと思います。新横浜のリンクは私のホームリンクというだけでなく、これから続いてくる選手たちも練習する場所なので、何とかなって欲しいなと思うのですが……。

――試合が終わって今一番したいことは?
村主 このあとサンクトペテルブルクでロシアのショウがあるので、それに出演してから一度日本に帰る予定です。その後は早く次のプログラムを作りたいです! 私はやっぱりスケートをしているのが一番幸せなので。

Photo by M.Morita


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女子フリー終了、安藤美姫共同インタビュー「気持ちよく火の鳥になれました」

miki01――今日の試合、自分ではどう評価していますか?
安藤 ジャンプは気持ちよく力を抜いて跳べたので、失敗はあったけどよかったです。でもいい一番悔しいのは最後のほうでステップでつまづいたこと! あとは少し緊張していて、朝の練習の時のようにスケートが滑らなかったのも悔しいです。でも今シーズン最後の試合、たくさんの人に応援してもらって気持ちよく滑れた。満足です。

――気持ちよく滑れたのは何か理由はありますか?
安藤 お母さんに「気持ちよく滑っておいで」って言われて、それだけ意識してたら本当に気持ちよく試合にのぞめたし、気持ちよく滑れたのでよかったです。今日はお母さんもわくわくしてたみたい。髪形もすごくきれいに結ってくれて「私、美容師になれるかも」とか言って(笑)。

――成績の点では6位ということで、去年より少し下がってしまいましたね。
安藤 ここに来る前は8位に入れたら、と思っていたのでそれよりは上でうれしいけれど……やっぱりちょっと悔しい。だけどこれが今の実力です。ただ予選は2位だったし、すごく評価されたと思うので、それだけでもうれしかったです。

――四回転を跳ばないことは、いつ決めましたか?
安藤 6分間の練習が終わったあとに決めました。回転もうまく始まらないし、軸もちゃんと取れなかったので……。このまま跳んでも失敗するから、と思って。やっぱりシーズン最後なので跳びたい気持ちはあった。こっちのリンクで何回か降りて自信になってたので、ちょっと悔しいです。
 でも来年にむけて4回転は100%にして、全試合で入れる覚悟ができてます! そういう覚悟をしたので、今年はやめておきました。

――全試合で4回転を?
安藤 はい。来年は5コンポーネンツをあげて、そっちでも点を取れるようにしたい。そうしたら4回転で失敗しても点数が下がりすぎることもなくなるから。今回はちゃんとスピンやステップもレベルを上げてらえたし、そこは自分の一番練習してきたものなので、評価されてうれしい。いい経験になりました。来年からはプログラムももっと難しいものに出来るかな。

――プログラムとしてはうまく滑れましたか。
安藤 はい。今日はリラックスして、火の鳥になった気分でした。気持ちよく滑れたなあってことしか覚えてないくらい。予選よりよかったと思うし、今日は全神経を使った感じがする! でも疲れは感じてないです。気持ちよさしか感じてないので、よかった!
miki02

――世界選手権二度目でしたが、今年と去年、一番の違いは何ですか?
安藤 去年はジュニアからあがってきて初めて世界選手権に出て、たまたまジャンプが目立って評価されて4位でした。でも今年はちゃんとシニアの安藤美姫という目で評価されたので、これが本当の実力だと思う。それがわかったことが自分のためになったかな。最後の最後、笑顔で終われたので、よかったです!

――試合が終わって、これからしたいことはありますか?
安藤 今は……早くおうちに帰りたいです(笑)。

Photo by M.Morota


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女子シングルショートプログラム。熱戦の前に咲いた花たち

 18日のショートプログラム
 注目のトップ選手達はスケジュールの後ろのほうに登場するとあって、第一、第二グループあたりの会場は全体的にのんびりムード。空席も目立っている。
 しかしこんなグループにも注目すべき選手は多い。地上波放送ではなかなかお目にかかれない個性的な選手達、少し紹介してみたい。(各選手、上がショートプログラム、下が予選の写真)

MAXWELL*フロール・マックスウェル(ルクセンブルク)
「世界選手権を見に行く」言ったら、「予選から見るのならフロール・マックスウェルをチェックしてきて!」というメールがなんと同じ日に2通。スケートファンのあいだで静かに話題になっているスケーターだ。
 彼女の特長はまず顔、手足、指先まですべてを使った豊かな感情表現。そしてやわらかな体を区駆使した軟体技の数々。サーシャ・コーエンや荒川静香、太田由希奈など、体の柔らかさで知られるスケーターは数多い。しかしこのフロールちゃんは、彼女たちの得意とするビールマンスピンや様々なポジションのスパイラルをすべてを装備しているのだ! しかもひとつひとつのクオリティがとてもつもなく高くて、形も美しい。
frrs この日のショートプログラムでもほどけそうにないくらいぐるりと巻いたスワンスピン、どこまでもその姿勢で滑っていけそうなI字ポジションのスパイラル、そして足を後ろではなく横につけてあげる変形のビールマンスピンなど、これでもかと見せてくれた。
 パワーや迫力といったものはまだないけれど、繊細な技を軽やかにこなす姿には、抱きしめたくなるような愛おしさがある。

*チェ・ジウン(韓国)
 彼女も柔らかい体を自在に操るスケーター。カメラマンA氏いわく「アジアのマックスウェルね」。
 スパイラルがとにかくきれいで、軟体技も多彩。ビールマンも脚と手で作るわっかを下から上に持ち上げるような信じられない入り方をしていてびっくり。どんな技を見せてくれるか、最後まで目を離せなかった。CHOI
  日本の天野真さんも指導を手伝っているそうで、今後の成長が楽しみ。
 憧れの選手は村主章枝とサーシャ・コーエンだとか。kor

LIU*ヤン・リュウ(中国)
 中国で長く国内チャンピオンだったダン・ファンを破り、世界選手権に初登場した新星。1月のユニバーシアードでは恩田美栄選手とともに表彰台に上った。
 彼女は鼻筋の通った顔、背格好、雰囲気、手足のさばき方などが日本の浅田舞選手にそっくり! 滑った音楽のためだろうか、浅田舞を少し情熱的にしたような選手だった。
 予選でも中国らしい雄大な曲に乗りながらも、東洋人の持つ繊細さも発揮。もっと体いっぱいから出るパワーを持てばおもしろい選手になるかも。


yan フィギュアスケートの楽しさ華やかさを感じさせてくれた彼女たちだが、残念ながらジャンプに失敗が続き、マックスウェルとチェがショートプログラムで敗退。フリー進出ならず、という結果に終わった。でもまたどこかで、このきれいな滑りを見られますように。

Photo by M.Morita(ショートプログラム)
Photo by K.Asakura(予選)


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オフリンクのチームジャパン

fumieoffショートプログラム終了後、ドローでの村主章枝選手。最終グループ入りは逃してしまったが淡々とした表情。

shizukaoff 投げ込まれたオレンジ色のクマさんを抱いて、ロシア人ファンと記念撮影に応じる荒川静香選手。サインを求めるたくさんのファンにも気さくに応えていた。

mikioff  

 ホテルに向かうバスの時間に間に合わない、と急ぐ安藤美姫選手。たくさんサインを求められたけれど「イズビニーチェ(ごめんなさい)」とロシア語で対応しつつ外へ。

daioff

 フリーから一夜明け、リラックスした表情の高橋大輔選手。日本から駆けつけたファンの元へ遊びにきたついでに、チームメイト応援のための日の丸を借りていた。

Photo by K.Asakura


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女子シングルショートプログラム終了〈3〉 安藤美姫の経験

ando お姉さんふたりが万全の出来ではなかったことを、彼女は知っていただろうか? 日本人3番目に出てきた安藤美姫に、「いい演技を見たい! 美姫ちゃん決めて!」という日本人観客の期待が一身に集まる。
 出だしの3回転ルッツ-3回転ループは成功! 期待通り! コンビネーションのうしろにトリプルをつけて成功したのは、今回安藤美姫とイタリアのコストナーだけだ。
 ここで手をパンパン! と頭の上で打つ、新しい振り付けも入り、観客は大盛り上がり。いいぞ! トリプルフリップも危なげなく決めて、安定感の高さにうなってしまう。そこまではよかったが……。
 新採点に対応したプログラムを、とレベルアップさせたエレメンツが、やはりまだ未完成なのだろうか。スピンは速さはあるが村主ほど「魅せる」スピンになっていない。脚を持つスパイラルに、なぜこのプログラムにこの振りが必要なのか、説得力をもたせられない。17歳にそこまで期待するのは酷かもしれないが、練習や予選ではある程度できていたことだ。やはり精神的なプレッシャーが、演技に入り込む心の余裕を奪っている……と思っていたところに、悔しいダブルアクセルでのぐらつき。
 結局いつもの若く勢いのあるジプシーの姿は見せられないまま、安藤美姫のショートプログラムは終わってしまった。

 キスアンドクライでの彼女は、3人のなかで一番悔しそうな表情を見せた。投げ入れてもらった白いぬいぐるみを観客にふりながらも、泣き出しそうな表情。くうっと顔をしかめたり、下を向いたり。そして彼女の周りで起こっているのは、次に滑るイリーナ・スルツカヤを迎える大音響のロシアコール。昨日の高橋大輔と同じ状況だ。
 スルツカヤ、ソコロワとふたりのロシア人が入った最終グループは、練習滑走の時点からこの騒ぎだった。昨年のドルトムントは女子シングルの有力選手がいない国での世界選手権だったから、安藤美姫にとっては始めての本格的なアウェーの雰囲気。こうした経験こそが、今日の彼女の得たもっとも大きな収穫だろう。
 二度目の世界選手権、きっと誰よりも若い安藤美姫が、誰よりもたくさんのものを得て帰ってくる。たくさん緊張し、たくさん悔しがればいい。この試合は、彼女の長いキャリアの中のひとつに過ぎない。
 大丈夫だよ、美姫ちゃん。まだフリーがある。そしてその先、満足できる演技をする機会が、あなたには山のように残されている。やる気になれば、5年、10年も先までも。

Photo by M.Morita(ショートプログラムすべて)


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女子シングルショートプログラム終了(2)村主章枝--表現者の資質

suguri

 彼女が滑り出した瞬間、日本から来たファンの男の子が「ガンバ!」と声をかけた。その声に応えるかのように、最初のステップの途中、かろやかにポーンと跳ねる。その姿がなんともはじけるようで、あ、この人は大丈夫だ、と思ってしまう。
 しかし得意としている最初のルッツでいきなり転倒……。そうか、村主は荒川と違って、緊張感を表に出さなかっただけなのだ。やはり重圧はそれぞれの身にのしかかり、一番得意なはずのジャンプさえ跳ばせてもらえない。
 しかし彼女は、失敗をその後の演技に引きずらなかった。残りのジャンプは完璧。華麗なポジションに凝ったスピンでは、紫色の手袋がまるでアクセサリーのようだ。最初の転倒が他の演技にまったく影響を与えていないのは立派!
 最後の「女スパイは撃たれちゃったけれど、実は・…・・生きてるのよ!」のマイムはいつにも増して可憐! ロシアのお客さんも大喝采だ。こちらも、ジャンプを失敗した演技のあとだというのに、思わず笑顔で拍手をしてしまった。佐藤信夫コーチからも大きな大きな拍手。
 転倒はあったが、村主章枝は観客を存分に楽しませてくれた。ジャンプをひとつ失敗してもそれができる心の余裕があった。ふだんから「滑るからにはお客さんを楽しませたい」と語っている彼女のエンターティナー精神が本領を発揮したのだ。
 荒川、安藤は転倒はしなかったが、演技に精彩を欠いた。村主は転倒をしたことで順位を下げはしたが、そのプログラムの持つ「観客を喜ばせる」使命はきちんと果たした。スポーツとしてはもちろん荒川、安藤が上だ。しかし今日のショートプログラムを試合ではなくエンターテイメントと捉えたら、間違いなくふたりよりも村主章枝のほうが上質のパフォーマンスを見せたといえるだろう。
 フィギュアがスポーツである以上、それは言っても仕方ないことだ。どんなにいい演技をしてもジャンプが決まらなければ上にはいけない競技なのだから。
 でも私たちは審判ではない。キスアンドクライで下を見ていた村主に、こんな言葉をかけることが許される。
「失敗しちゃったけど、あなたの演技はすごく楽しめたよ」

*ショートプログラム終了後の共同インタビューより
――ショートは10位という結果になりましたが、いかがでしょうか?
村主 失敗をしてしまったので、順位は当然の結果だと思います。でもジャンプ以外の細かいところは四大陸の時より良かったし、練習の成果がその部分では出たかな、と満足しています。
――ジャンプの失敗、やはり気負いがありましたか?
村主 気負いはなかったです。やることはやってきたうえでの失敗なので仕方がない。もうやりようがないです(笑)。また今回の失敗から学べたらいいな、と思います。
――でもジャンプの失敗もあとに引きずりませんでしたね。
村主 失敗ひとつで立て直せたのはやっぱり練習の成果が出せたな、と思います。
――最終グループはロシア選手への応援がすごかったですね。
村主 私にとってはアウェーですが、でも特に影響はないです。アウェーのわりには拍手をいただいてたし、楽しんでもらえたような気がします。明日はもう一回、気持ちを引き締めていきたいです。自分のやるべきことは何かを考えて……がんばりたいと思います。フリーではカルメンの情熱を伝えきれれば!


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女子シングルショートプログラム終了(1)荒川静香、真の女王への道

arakawa

 荒川5位、安藤7位、村主10位(総合はそれぞれ6位、4位、8位)。
 日本代表3人が3人とも、見えない何かにとらわれてしまったようだ。
 
 日本勢で一番最初に登場した荒川静香のグループは、最終前グループとはとても思えない豪華メンバーだ。荒川、クワンと世界チャンピオンがふたり! しかし他の4人も世界チャンピオンと同じグループで滑ることに臆するメンバーではない。ヨーロッパ選手権表彰台経験者のリアシェンコとポイキヨ、シュベスチャン。グランプリファイナルメダリストのロシェット。誰もが最終グループで滑ってもおかしくないメンバーばかりなのだから、女子シングルの激戦ぶりがよくわかる。
 そんなメンバーでの6分間練習。荒川静香はキャッチフットのスパイラルから脚を下ろさずに跳ぶ、最初の見せ場となるジャンプを、何度も何度も繰り返し跳んでいた。6分練習で、こんなに同じジャンプを何度も練習する荒川は見たことがない。しかし何度くりかえしてもジャンプがうまくいかない。いつもの彼女らしさがないことに、見守る人々は不安になる。
 彼女は緊張している。かつてないほど緊張しているのが、空気を通して伝わってきてしまう。しかし見つめるアシスタントコーチのプラトフは、そんな彼女に「うんうん」と大きくうなづくだけだ。
 彼女は滑り出す前、頼もしくうなづくプラトフの方を見ただろうか? プラトフといえど、とてつもなく緊張しているはずだ。でもそれを一切表に出さず、「大丈夫、安心しろ」という顔をしている。もし荒川静香があのプラトフのうなづきをしっかり目に留めていれば、少しは「大丈夫」な気持ちをもって演技に入れたかもしれないのだが。

 おそらく彼女はプラトフのほうを見ずに滑り出してしまった。ジャンプはフリップのオーバーターンなど、いまひとつながらなんとかすべて着氷。しかし過度の緊張感をかかえたままの演技は精彩を欠き、見せ場のスワンスピンも十分回転できずに終わった。NHK杯やグランプリファイナル、全日本選手権で見せた圧倒的な女王の存在感が今日はない。たぶん今シーズンでいちばん乗れなかったショートプログラムだろう。

 それでもとりあえずは、ミスなく滑れた。迎えたタラソワは大きくうなづき、プラトフは彼女の肩をぽんぽんと叩いた。あれだけウォーミングアップの調子が悪く、あれだけ緊張した顔をしていたら、たぶん以前の荒川静香だったら致命的なジャンプミスをしていたはず。それがなかったのだから、今回、まずはOKだ。
 キスアンドクライでは一瞬、子供のような安堵の表情をうかべ、ちょっとはしゃいだように自分の膝をぽんぽんたたいた。この彼女の表情に、見守る人々はどんなにほっとしたことか! その一瞬のちにはすくっと立ち上がり、観客に大きく手をふってみせた。最後の最後に見せた、女王らしい堂々とした姿。
 あの久しぶりに見せた安堵の表情を見て、ある男性記者は「荒川、帰ってきてくれたな」と思ったという。ほんとうに心がどこかに行ってしまったのではないかと思うほど緊張しきっていた彼女。今シーズンは様々な試合でうまくいかず、周囲の人々を心配させてきた彼女。しかし荒川静香は、女王といってもまだ一年生だ。あの、思いがけず表彰台の一番高いところに立ってきょときょとしていた時から、まだ一年も経っていない。私たちは「世界女王」という称号に、彼女にあまりにも大きなものを要求しすぎていたのかもしれない。まだまだ精神的にも技術的にも成長途上の女王を、プラトフのようにあたたかく見守るべきなのかもしれない。
 外野がどんなに騒ごうと、荒川静香はまだまわりを心配させていい。自分だけの力に頼らず、タラソワ、プラトフをはじめ力づけてくれる人にはどんどん頼っていい。今、与えられているものをすべて自分のパワーに変えて、フリーでは思い切り荒川静香らしい演技を見せて欲しい。
 彼女が本当の女王になるまで、まだまだ時間は残されている。

*ショートプログラム終了後の共同インタビューより
――今日の出来、出た点数はいかがでしたか?
荒川 点数がいいのか悪いのか、いまいちピンとこないんです。今までの自分の点数(パーソナルベスト64.2。今日は59.95)と比べてもどのくらい低いと思えばいいのか分からない。でも結果に悔いはないです。練習が思うように進んでこなかったこその結果だし、それをいまさら考えても何も変わらない。
(ここでやってきたタラソワコーチが、彼女の腰をやさしくさする)
――フリーは最終グループ入りも期待できそうですが。
荒川 そうですね。でもどの場所で滑ることになっても、まずは落ち着いて滑りたいです。
――ジャンプの出来はどうでしたか? 6分間の練習では最初のルッツを何度も何度も跳んでいましたが。
荒川 そう、いつもはあんなに回数を跳ばないですね。やっぱり焦ってました。
 そのせいか、最初のルッツはちょっとスピード抑えて跳んじゃって……。トウをついた瞬間、まずい、スピードがない! と思ったけれど、もうやめるわけにはいかないので(笑)そのまま跳びました。跳び始めたからはいつも言われてるように、ソフトなジャンプじゃなくて力強いジャンプを跳ぼうと心がけて。
――全体的に緊張していた?
荒川 あまりにも硬くなってましたね。フリップはステップアウトしてしまったけど、この会場ではいつも転んでいたジャンプなんです。ここで開かれたロシアカップのショートプログラム、今まで2回ともフリップで失敗してるんですよ(00年、02年)。その時見える景色がいつも同じなので、ルイジニキでのショートのフリップはもう、トラウマになっていて(笑)。でも三度目の正直、フリップは絶対跳びたかったんでなんとかこらえました。
 それから最後のスピンも一昨年のことがあるので(03年ワシントン世界選手権、ジャンプを3つ成功させながら、最後のスピンで足をとられて転倒)緊張しすぎてまわりきれなかった。一昨年は気分よく滑ってきて最後にああなっちゃったんですけど、今年は最初から緊張していてあんなふうに……。
――明日のフリーはどんなふうにのぞみますか?
荒川 フリーはすべてのエレメンツをしっかりこなしたいです。特にスピンは予選のときいい評価をもらえなかった。もう自分だけが満足するんじゃなくて、みんなに文句なくいい演技だった、と認めてもらいたい。でもエレメンツにばかりとらわれず、音楽も良く聞いて、音楽に乗っていきたい。そうすれば結果は出ると思う。
 ここまできたらもう、後ろを振り向かずにいくだけです。

 ここで注目したいのは「自分が満足するだけじゃなく、人にも認めてもらいたい」という彼女のひとことだ。荒川静香は常々「自分の満足する演技」を一番に求めてきた。しかし予選で低いレベル判定をされたことがバネになったのだろうか。「人にも認めてもらえる演技をする」と初めて口に出してくれた。これは表現者としてとても大切なことだ。
 このひとことは、真の女王への道を歩む新たな一歩になる違いない。


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女子シングルショートプログラム 前日の練習風景

fumie18-2

 とにかく絶好調だったのが村主章枝。ジャンプはすべてクリアー。プログラムには入っていないコンビネーションにも挑戦するほどいい調子だった。

shizuka18-2 

いつもどおりの荒川静香。絶好調というわけではないが、淡々といつもの表情で練習。なんでもない顔をして高難度のエレメンツをこなしていた。

miki18-1 フィッティングをかねてショートプログラムの新衣装で登場した安藤美姫。しかしジャンプは不調。どのジャンプもきれいに決まらず、コーチたちも心配顔だが……。

Photo by K.Asakura


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応援バナーいろいろ

b-3 世界選手権会場は例によって、選手たちの名前や応援メッセージが書かれたバナーがいっぱい。
 Miki Ando、Shizuka Arakawaなど、チームジャパンのバナーがずらりと並ぶ一角。

stepb-1 男子シングルで優勝したステファン・ランビエール(スイス)の応援バナー(写真右)。スイスの国旗もあちこちでふられていました。

denkob-2 カロリーナ・コストナー(女子シングル・イタリア)やデンコワ・スタビスキー組(アイスダンス・ブルガリア)のバナー(写真左)。モスクワという場所柄、ヨーロッパ選手の応援団が多いようです。

sasha ロシア女性に一番人気の海外選手、ジョニー・ウィアー(アメリカ)のとなりには、なんと「missing Sasha Abt」(写真右)。「アプトがいなくてさびしいわ」と、昨年一月に引退したアレクサンドル・アプト選手(ロシア)の不在を嘆くメッセージです。

Photo by K.Asakura


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男子フリー終了 フリー18位、総合15位 高橋大輔の試練

takahashi01 高橋大輔の世界選手権が終わった。予選とショートプログラムで決めた4回転ジャンプ失敗、トリプルアクセルこそコンビネーションと単独で2度入ったものの、後半のループ、ルッツ、フリップなどことごとく回転不足や転倒。「悪い時の大輔」がもろに出てしまった演技だった。
「緊張しました。調子は悪くなかったのに、気持ちだけが焦っちゃいましたね……」
 それでも美しいスケーティング、スケート連盟関係者も「世界一」と絶賛するステップワーク、そして日本人離れしたドラマチックな感情表現は健在。彼のスケートを、大観衆とともに生でこの場で見ていられることの幸福を感じてしまう。どうしてあんなふうににきれいに手が動くんだろう? どうしてあんなに激しい視線を放てるんだろう? スローパートで美しいポーズをとって静止した瞬間には、時間がそこで止まってしまうかとさえ思った。
 夏の野辺山合宿で、ダンスの陸上練習をのりのりでこなしていた彼のことを思い出した。女子で世界トップの荒川静香や安藤美姫が照れながらこなす動作も、彼はほんとうに見せる気満々で踊っていた。アスリートである前に天性の表現者としての資質を備えた人なのだ。
 ジャンプはたくさん失敗したけれど、見せ場のストレートラインステップでは、ロシアの観客が彼を後押しするように手拍子を送った。彼もそのリズムに応えるように鮮やかに舞った。
 4回転もトリプルアクセルも跳べる、踊りやスケーティング技術も十分ある。ほんとうにあとは、気持ちだけの人なのだ。

 滑り終えた高橋大輔に観衆はあたたかな拍手を送ったけれど、それは本来彼が得るべき熱狂の拍手ではなかった。そして彼が受け取るはずだった大喝采は、彼がおじぎをしてリンクサイドに退場しようとしたときに起こった。
 高橋大輔にではない、次に滑る地元ロシア人選手、アンドレイ・グリアゼフを迎える拍手だ。リンクをあとにしながら、高橋大輔は少しだけ喝采を送られた主のほうを振り返った。もう、このリンクは彼の居場所ではないのだ。
 グリアゼフへの大喝采のなか、リンクのビッグビジョンには高橋の転倒シーンが映し出された。キスアンドクライで得点を待つ間も、大音響のロシアコールは鳴り止まない。
 そこにいるのは辛いだろう。苦しいだろう。もう満場の観衆は、一瞬にして大輔のことなど忘れてしまったのだ。
 彼の不本意な得点が出た瞬間、また割れんばかりの大歓声が起こった。リンクの上で、ウォームアップ中のグリアゼフが、美しい四回転を決めたのだ。

*フリー終了後の共同インタビュー

――残念な演技でしたが、昨日つった脚の影響はありましたか?
「いえ、途中から思うように足が動かせなくなったけれど、ケガは関係ないです」

――やはり緊張しましたか?
「かなり緊張しました。予選とショートはまだ次の試合もある、と思ってらうまくいったけど、今日これで最後、ちゃんとしなきゃと思ってしまった。
 最初の4回転失敗で『予選とショートで2回入ったのに、なんでフリーで!』って結構あせっちゃって。あれはタイミングを焦って跳べなかったんです。次のトリプルアクセルは入ったけれど3回転-3回転は入ってない。どうしよう? いつ入れよう? ってあちことで頭を使いすぎちゃった。ステップでもちょっとつまづいて、『あ、やばいな』と思ったし、それから急に脚が動かなくなって……。もっと落ち着けばよかったです」

――本田選手棄権でひとりで戦ったことは?
「ひとりは結構辛いです。自分が悪くてももうひとりががんばってくれると、気持ち余裕ができるんだけれど……。でも自分しかいない、自分がやらなきゃっていう状況は辛いです。いつでも本当は自分だけが便りってことは、どんな試合でもいっしょのはずなんですけどね。
 来年の出場枠のことも考えないようにしてたけど……。もう自分ひとりだし、今の順位(ショートプログラム7位)を守ろうと思って、硬くなりすぎたかな。プルシェンコが棄権という話を聞いた時にも、『これでいっこあがる!』とか自分の順位のことばっかり思っちゃった……」

――いまどんな心境ですか?
「落ち込んでいます……。自分なりにがんばってきて調子も上げてこれたけど、最後の最後にいい演技ができなくて……。せっかく予選とショートが良くても、最後が締まらないとダメですね。3本持たせられなかったのが悔しいです」

――今回の失敗を来年にどういかしますか?
「テンションのあげ方をきちんと身に付けたいです。今日は朝から寝坊したり、いろんな準備も少しずつ遅れ気味だったりで、コンディションが整ってなかった。アップの時も周りが気になってしまったし……。前に滑ってる選手の音楽が聞こえたり人の行動が目に入ったりして集中できなかったんです。あせってそわそわしてたけど、自分には『緊張してない、してない』って言い聞かせたりもして……。先生に「焦らないで」って言われたから、まわりにも伝わっちゃってたんでしょうね。こういう時の気持ちの持ち方をもっと考えたいです。
 あとはシーズン最初からやるべきことをきちんとやって、最後のほうはもうちょっと気持ちを楽に持てるように。今年みたいに、やっと1月にシーズンが始まったね、っていうんじゃなくて、10月くらいにはもうできあがってるようにしたいです」

――これから何か新たに取り組んでいきたいことはありますか?
「体をやわらかくしたいです。柔軟性が身につけば踊りももっと踊れるし、今よりもっと楽に踊れるから。僕はストレッチをちゃんとしていないので、ほんとに体が硬いんです。このままだとスピンのレベルも上がらないし、肩が硬いとスケーティングも辛い。やわらかくなればもっと手も上に上がるし、もっと体も大きく見えるのに。僕は三日坊主でいろんなことが続かないけど、柔軟だけはこれから続けていきたいです。
 今はちょっとだけ休んで、全部忘れて。仕切りなおしですね。地道に練習して……オリンピック行けるようにがんばりたいです」

Photo by M.Morita


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女子シングルショート直前! 代表選手3名は? 海外トップ選手たちは?

shirota
 18日午後に迫った女子シングルショートプログラム。3人の代表選手の戦いも、はや中盤にさしかかった。各選手の動向を、城田憲子強化部長とともに探ってみよう。
 まず予選B組2位、両組み合わせた得点順でも3位と好位置につけた安藤美姫選手。
「安藤は動物的ですからね。彼女は氷上を走る豹みたいなもので、行っちゃう時はどこまでも行っちゃう。やる気にさえなれば無敵のスケーターです。スピンやステップも今までと同様のレベル1でやっていては勝てないと思っていたけれど、ここに来て上げてきましたね。
 テレビでも『4回転跳びます!』なんて言っちゃってすっかり元気になったように見えますが、感情の起伏の激しい人だから本当にここまで持ってくるのはまわりも大変だったんですよ(笑)」
 安藤選手は本人も語っているように、ジャンプ以外のエレメンツが苦手。しかし不得意な部分から逃げることなく立ち向かっていく、モチベーションの高さが彼女のいいところ。モスクワ入りしたころはいまいち気持ちが盛り上がっていなかったというが、予選でのエレメンツのレベルアップで「がんばれば認めてもらえる!」というポジティブな気持ちに火がついたようだ。
 行くところまで行った安藤美姫の姿に期待したい。

 本人にとっては不本意な演技ながらも予選A組2位。まず第一段階はクリアしたといっていい村主章枝選手はどうだろうか?
「村主はサルコウとフリップの調子がいまいち。でもフリップは跳べるはずのジャンプなので、心配なのはエッジ系ジャンプだけでしょう。シーズン最初、カナダとフランスのグランプリシリーズでは、体が一段と細くなってしまって心配しました。あんなに細いとフリーの4分はもたない。
 昨年始めたアメリカでの練習は、生活や気持ちの上で家族の応援が得られない状態。親しい振付師のローリー・ニコルがついていれば少しは落ち着いて、ジャンプも跳べる、という状況でした。彼女は環境が変わると難しいのかな? どこでも寝られる、何でも食べられる、という静香みたいな器用さはないから」
 彼女の弱々しさに城田氏は「今までの村主章枝と違う!」と危惧。しかし1月に以前のコーチ、佐藤信夫氏の元に戻り、新横浜で家族とともにすごしながらトレーニングできるようになってからは、本来の彼女らしい滑りを取り戻し、四大陸選手権はみごと優勝。
「彼女は本当に真剣にスケートに打ち込んできました。佐藤先生の元に戻ることで、気持ち的に一本道ができたのではないでしょうか」 

 ディフェンディングチャンピオンながら予選4位と出遅れてしまった荒川静香選手。
「彼女の新しい衣装は『びっくりするの作ったわよ!』というタラソワからのプレゼント。『でも一生懸命やらないならオアズケ』と言っていましたが、ちゃんともらえたようですね。事前にプラトフも『ベストじゃないけどグッド』と言っていましたし、彼女の場合、課題はモチベーションだけ。ただ、『モスクワにジャンプを見てくれる久美子先生を連れて行きたい』と言っていましたから、ジャンプに関しては少し不安はあったようです。それを安定させてモチベーションさえあげれば、本来はスルツカヤだって怖くないはずの選手です」

 日本勢のライバルとなる他国のトップ選手についてはどうだろうか。
「アメリカのミッシエル・クワンは音楽が『ボレロ』、しかも振付けはクリストファー・デイーン(「ボレロ」で84年サラエボオリンピック金メダリストとなったアイスダンサー)ということでプログラムには恵まれているかもしれません。でもフットワークは今までと何も変わらず、新採点システムにほとんど対応できていない。
 サーシャ・コーエンはコーチをロビン・ワグナーからかつてのコーチ、ジョン・ニックスに戻したりとばたばたしているようで、それが上手くいくかどうかは未知数。
 イタリアのコストナーは腰を痛めてしまったようでルッツの3回転がしばらく跳べていなかった。でも表彰台に立てなかったヨーロッパ選手権から2~3週間ありましたし、体を上手く休めていれば、世界選手権はいけるでしょうね。
 とにかくみな、世界のトップ選手。予選からフリーへ、短い大会期間中でもエレメンツのレベルは上げてくるかもしれません。日本のジュニア達も、世界ジュニアで現地に入ってからレベルを上げたくらいですから。最終的にはどうなるかはわかりません」

 海外勢の動向、新採点システムへの対策などを含め、女子シングル日本チームとしては去年より厳しい状況、と城田氏は表情を引き締める。
「全員が万全の状態ではないし、環境の面でロシアは快適な国ではない。でも世界を制するのは今年ではなく、来年でいいんです。ただし3人全員が6位以内には入って欲しい。そして誰か一人は表彰台に乗る! それが日本チームとしての目標です。決して欲張りません。ここであまり上手く行きすぎても、来年大変ですから(笑)。君が代は流れなかったけれど、いい試合だったね、ほんとうは勝てていたのにね、となるのが理想。もちろん、そう思うっていても、優勝してしまう時はしてしまうものですが」
 今年はチャンピオンを出さなくても、それぞれの選手が自分の実力を出しきって、世界に日本の力を見せられればいい。男子シングルの高橋大輔にかかった重圧に比べれば、女子3人へのプレッシャーは軽い。そこに3人が気がついて、気持ちを楽に滑ってくれればいいのだが。


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アイスダンス渡辺・木戸組 3度目の世界選手権

watanabekido日本からただ一組参加のアイスダンスカップル渡辺心・木戸章之組が健闘している。ほぼミスのない滑りでオリジナルダンス15位。
 フリーでは初の滑走順第3グループ(OD11位~15位)入りも決まった。
 渡辺は71年生まれ、木戸は75年生まれというベテランだが、トリノ五輪は出場が決まれば初めての五輪となる。アイスダンスの世界選手権日本人最高位は84年オタワ大会、佐藤紀子・高橋忠之組の13位。日本のアイスダンスの記録を塗り替える可能性も出て来た。
 コンパルソリー、OD終了後の声を聞いてみよう。

●コンパルソリー終了後の共同インタビュー
――世界選手権最初の試合、いかがでしたか?
渡辺 ほぼ満足です。最後ちょっとミスっちゃってフェンスにぶつかりそうになったけど。点数はこの時点ではこんなものかな。失敗しなければもっと出たかも?
木戸 スピード出しすぎちゃったんですね。でも全体の出来は今まででいちばんよかった。

――笑顔も出てましたね。
渡辺 ほっとしました。まだ始まったばっかりなのに(笑)。

――四大陸でいい点数が出ていましたが、その影響もありますか?
木戸 グランプリシリーズに比べれば、四大陸は点数が出やすかったですね。下位の選手が普通の試合よりたくさん出るので、僕たちも上位にいけた。試合によって点数の出方って違います。だからパーソナルベストも出たらうれしいけれど、そんなに気にしてはいません。

――四大陸以降、どのあたりを変えていきましたか?
渡辺 エレメンツをきれいに見せられるような練習が中心です。
木戸 僕は38度の熱を出したりしてたんで、無理のない範囲でエレメンツを細かく練習しました。あんまり病気しないタイプなんで、8度を越すって珍しいんですよ。おまけにふらふらしてたら、脚を捻っちゃって。

――大丈夫だったんですか?
木戸 ごく軽いけがです。全日本の時に比べれば・・・・・・
渡辺 ぜんぜん軽い(笑)。それにふらふらしつつもできる練習はやってくれてましたから。

――今大会の目標は?
渡辺 去年よりひとつでも二つでも順位を上げたいです。ヨーロッパ選手権を見てると、ミドルクラスのダンサーの位置づけがぐしゃぐしゃなんですよ。たくさんいるこのクラスのカップルが、試合ごとにいつも順位が入れ替わってる。そのなかのどこへ入っていけるか。この集団の真中か、上あたりに行けたら。
木戸 0.1とか0.01の差で順位が入れ替わっていくので、このあたりのクラスは順位があってないようなものなんです。

――その激戦区を勝ち抜いていくには?
木戸 エレメンツをしっかりやって、0.01でも点数が欲しいですね。
渡辺 それもそうだけど、目立ちたい! 
木戸 そう。ごそっといるミドルクラスの中でいかにめだつか、ですね。上位の組は、演技全体の質が派手だと思います。少しでもそれに近づけたら。
渡辺 目だって、見てる人に楽しんでもらえるように滑りたいです!

nabekido18
●オリジナルダンス終了後の共同インタビュー
――今日の出来はいかがでしたか?
木戸 よかったです。コンパルソリーで思ったよりいい成績が取れちゃったけど、そのことも気にしないで自分達でできることが全部できました。
渡辺 それなりの点数も出たし!
木戸 今のところコンパルソリー、オリジナルダンスとも試合になると楽に滑れてるんですよ。
渡辺 実は練習のあいだはいまいちなんですけど・・・・・・。これはロシアの空気アレルギーなんじゃないかな(笑)。
木戸 モスクワ、街のあちこちから煙がもくもく出てますからね(笑)。

――今のところ順位もいいポジションにつけてますね。
木戸 もしかしたら第3グループ入れるかな?(この時点では未定。終了後確定!) 
渡辺 フリーでは初めてかも!
木戸 ずっと第3グループで滑れるようにって願かけしてきたので。うちのリンクは曲かけのCDを入れるところが4つあるんです。四大陸の前はいつも4番のところに入れていたら、4番になって表彰台を逃しちゃった。でも今度はずっと3番のところにCD入れてました。他の人のCDが入ってても取り出して3番に入れてたので(笑)・・・・・・第3グループ、大丈夫だと思います!

――成績がともなってきたことは、自分達でも実感していますか?
木戸 以前はオリジナルダンスとフリーダンス、通して滑るのがやっとでした。試合になればコンパルソリーが終ると気が抜けてたし。でも今はコンパルソリー終ると、「さあ、これから」って気もちになってる。自分の中の合格ラインが上がってきましたね。

――明日はいよいよフリーダンスですね。
渡辺 明日も自分達の力を出せれば。
木戸 四大陸ではフリーでミスしちゃったんで、今度はミスしないように。でもミスを気にして小さくはならないように。思いきりやりたいと思います。

――ロシアは楽しんでいますか?
木戸 はい。建物とかすごいですよね、レーニンとかスターリンの時代の建物が、どーんとしてて。あと、ロシア料理も楽しんでます。赤キャベツの酢漬けとか、卵サラダとか、あとボルシチも美味しい。
渡辺 私はロシアはあんまり(笑)。

 オリジナルダンス終了後、客席で熱心に最終グループの演技に見入るふたりの姿があった。フリーはヴィヴァルディ、グリーグ、ベートーヴェンなどのクラシック音楽を現代風にアレンジしたプログラム。どこまで順位を伸ばせるか、またふたりの演技がどこまで私たちを引き込んでくれるか、楽しみに待ちたい。

Photo by K.Asakura


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安藤美姫、ドローで大活躍?

mikidr 選手達の滑走順を決めるドロー。16日の女子予選を受けてのショートプログラムドローで、ちょっと面白い光景が見られた。

 日本の試合では必ず選手自身が自分の滑走順をひくが(数字の書かれたボールを袋の中から選ぶ)、国際試合ではそうでもないようだ。選手本人はドローに出席せず、代理でチームリーダーやコーチ、チームメイトが引くことも多い。たとえば今回、カナダはシンシア・ファヌフがチームメイトのジョアニー・ロシェットの分まで引いたし、ロシアチームの男子シングルでは、一番若いセルゲイ・ドブリンがプルシェンコやグリアチェフの分まで引いた。男子予選、ドブリン自身はなかなかいい順番を引いたのだが、大先輩プルシェンコの番になると、なんと選手達がもっとも嫌う1番滑走をひいてしまったのだ! ドブリンは無事だったのだろうか?
 さて今回の女子シングルショートプログラムドロー、安藤美姫と同じ組で予選一位となったサーシャ・コーエンの番になっても、代わりにひくチームリーダーや関係者が見当たらない。さて、誰がサーシャの分を引くのか?
「OK! Miki!」
miki3 え、私? ときょとんとするMiki Ando。たまたま司会者のすぐそばに座っていた安藤選手に白羽の矢が立ったのだ。にこやかな司会者に呼ばれるままに、安藤は抽選へ。
「あ、あいつサーシャの分ひいたよ!」
 後ろで見ていた日本チーム関係者は大爆笑。
 そう、来ていないサーシャ・コーエンの代わりに、チームメイトでもないMiki Andoが彼女の滑走順をひいたのだ。
 こんな役割はもちろん断る事だってできる。今回はロシアのスルツカヤが、来ていないソコロワのドローを指名されたが、「No Thank You」と笑いながら断った。

 ドローは続き、まさかの最終滑走落ちをしたミッシエル・クワンの番に。しかしまたもやクワンの関係者が誰もいない。ということは……。
「Hey Miki!」
 というわけで、サーシャ・コーエンの滑走順も、ミッシエル・クワンの滑走順も、決めたのは安藤美姫選手です。この滑走順が吉と出るか、凶と出るか? どっちに転んでも、クワン達は事の真相を知らないだろうな。

Photo by K.Asakura


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高橋大輔、フリー直前!

daiyosen
 ショートプログラム後に一日間があり、昨日は女子の予選を観戦するなどリラックスした表情を見せた高橋大輔選手。トップスケーターとしてすっかり認知されたようで、スタンドで女子選手に声援を送る合間に、ロシアの女の子からサインをせがまれることも。

 会場で高橋大輔の試合を固唾を飲んで見守っていた元男子シングル選手に、彼に対するコメントをもらった。

――高橋選手、世界選手権はなかなかいい調子できていますが、グランプリシリーズや全日本では信じられないミスの連発でした。こうした好不調の波の激しさには何か原因があるんでしょうか?
「フィギュアスケートの選手は年間を通して10ぐらいの試合に出ますが、全部に全力投球はできません。重要な大会はどれか、照準を合わせその試合に向けて目標を立てる、といった取り組み方をします。彼の場合は3月の世界選手権にしっかり合わせて練習してきたため、いい演技ができたんでしょう。
 でもこのレベルの選手だと10のうち、7~8試合は満足の行く滑りができないとおかしい。確かに彼の場合は波が激しすぎますね(笑)。ただ彼は、新採点にあわせてすごく難しい内容のプログラムを滑っているし、今は試合の数もかつてに比べると増えている。その点で選手にとっては身体的にも精神的にも負担が大きくて、いい演技を見せることが難しい時代なのかもしれません。これは高橋選手だけに限ったことではないのですが」

――ではその状況のなかで、世界選手権という大切な試合で力を発揮できているということは……。
「今回のようにどうしても勝たなきゃいけない試合に勝てるのは偉い! と思います。やはりほんとに実力のある選手ということですね」

――ショートプログラム7位ということでフリーに臨みますが、さらに上を狙っていくには何が彼に必要になるでしょうか?
「やっぱり演技全体がもっと大きくならないと! まだ少し気持ちがおどおどしている、自信がない、という部分が演技に出てしまっています。もっと『俺がリンクを支配する!』という気持ちが必要。それを得るためには、まず来シーズン、日本のチャンピオンにならないとね」

Photo by M.Morita


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試合会場点描

mainrink 世界選手権会場となっているリンク、ルイジニキスポーツ宮殿(右)。古い古い建物だけれど、雰囲気は華やか。お客さんのテンションもは日増しに高まっています。
yukimiti

subink1 こちらは練習に使われているサブリンク、マーラヤ・アリーナ(左)。スケートファンにはどこかで見たことのあるリンクのはず。そう、毎年グランプリシリーズロシアカップが開かれていたアリーナです。メインリンクからは林の中の雪道を5~6分かけて歩きます。時々つながれていない大きな黒い犬がうろうろしているので怖い! 
 
rusiia とにかく盛り上がりがすごいロシアのお客さん。ロシア人選手が出てくるたびに「ロゥシーア! ロゥシーア!」と大声援。でもどうして「ジェーニャ!」とか「イーラ!」とか選手の名前を呼んであげないんだろう? と思うこともありますが、これもお国柄の違い。
 ただ気になるのは観客に配られている赤い風船。これが演技前、演技中、シチュエーションをかまわず破裂して「パーン!」という大きな音が響きます。日本のアイスダンスカップル、渡辺心・木戸章之組の滑走中にも聞こえました。「おもちゃのピストルでも鳴ったんでしょうか?」とびっくりしていた木戸選手。演技前、選手がコンセントレーションに入っている最中にこれが起こると、ちょっとかわいそう。
omiyageya
 パンフレットや大会記念品、応援用グッズ、そしてマトリョーシカなどが並ぶお土産コーナー。ここでプレゼントを調達して帰ります。

Photo by K.Asakura


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荒川静香、まさかの予選4位

ARAKAWA 黒いジュリエット。
 タラソワの言う「ビッグサプライズ」とはこれだったのだ。
 背中に大きな、胸には小さな十字架をいくつも抱いた黒い衣装。
 今の荒川静香には怖いくらい似合いすぎている。ジュリエットの背負う運命の残酷さそのものをまとっているように見えて、ウォーミングアップとして軽く滑っている姿を見るだけで哀しくなってしまうのだ。
 タラソワにしっかり両手を握られて、演技スタート。
 最初のあとずさりのスケーティングも、何気ない手のふりも、この衣装で演じると、すべてに重い意味をはらんだ動きのように見えるから不思議だ。

 しかしその衣装にふさわしい演技を、今日の荒川静香はできなかった。最初のコンビネーションや、フリップ、ループは成功させたものの、なんとなく危なっかしく、いつもの安定感がない。彼女が本来持っているはずの迫力、運命に戦っていくジュリエットのような力強さもない。
 心配していたところに、大きなミスが来た。ルッツ転倒。続くダブルアクセルもステッピングアウト。「100回やれば99回成功する」と彼女自身が言うダブルアクセルでこのミス。一体何が起こってしまったのだろうか?
 しかし最後のストレートラインステップはがんばった。何かに抗おうとするジュリエットの姿が、白いリンクの上に確かにいた。
 「がんばった」? こんな言葉は、ディフェンディングチャンピオンにかける言葉なのだろうか。

 試合後のミックスゾーン。タチアナ・タラソワが日本の報道陣に向かい、熱心に語っていたのが印象的だった。「彼女はミスをしたわ。でもスピンは良かった。ステップもとてもよかった」「でもあのレベル判定(スパイラルステップシークエンスやコンビネーションスピンのレベル1)には納得できない。これからコーラー(テクニカルスペシャリスト)に話を聞きにいこうと思っている」shizukagold
 隣ではアシスタントコーチのプラトフが、やさしく日本チームのジャンパーを彼女に着せ、いたわるように肩を抱いていた。ロシアのテレビ局のカメラも荒川に向けられるが「シーチャンはこれからだ」そんな言葉を笑顔で語る。「大丈夫、何の心配もない」それは報道陣にではなく、横にいる愛弟子に向けての言葉のようだ。日本、ロシア、アメリカなど、各国の報道陣が群がるなか、卵を守る親鳥のように荒川静香に寄り添うふたり。バックヤードでは佐藤久美子コーチも心配そうに見守っているいる。
 ディフェンディングチャンピオンとして彼女にのしかかる重圧は大変なものだろう。最終的には誰も手助けすることはできない。彼女自身が解決するしかない。
 しかし荒川静香は幾重にも守られている。
 ソルトレイク五輪のシーズン、マスコミにも関係者にもほとんど振り返られることのなかった状況を乗り越えて、彼女はいまこの場所に立っている。大きくなったのはプレッシャーだけではない。理解者も、応援する人々も、守ってくれる人々も荒川静香のまわりには増えたはずだ。
 彼女の世界選手権は、きっとこのままでは終わらない。

Photo by M.Morita(上・演技写真)
Photo by K.Asakura(下)


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村主章枝予選2位「でも出来は50点です」

SUGURI 滑走直前、6分練習の調子は決してよくはなかった。苦手なサルコウなどエッジジャンプだけでなく、いつもは弾けるように跳ぶトゥジャンプもなんどもパンクしている。
 リンクサイドで見つめる佐藤信夫コーチも心配げだ。

 これから元銅メダリスト村主章枝が滑るというのに、ロシアの観客の反応は静か。まだ予選ということもあり、自国選手の演技以外は無関心そうな観客が多いのだ。ひょっとしたら格別フィギュアスケートが好きではない観客も混じっているのかもしれない。よし、彼らを村主章枝のスケートでうならせてやれ、と思ってしまう。
 スタートのポーズはいつも通り、観客の心をここで一気に引き込むドラマチックなもの。
 パーカッションのリズムだけで滑る前半。無機質で感情を抑えた、しかし何かが起こることを感じさせる演技を見せた後、曲が「カルメン」の旋律に変わったと同時に、秘めていた哀しみや憂いが一気にほとばしる。黒いパンツの衣装に包まれた細い体が、楽器のように何か見えないものを奏でている。
 つくづくこのプログラムは新採点を研究した、というより新採点をうまく活かした作品だな、と思う。この大会、あまりにも「これはエレメンツのレベルを上げるためにしています」というような動きを、とってつけたようにこなす選手が多い。
fumieb
 しかし村主章枝+ローリー・ニコルの「カルメン」は、足をつかむスパイラルがそこに当然あるべきものとしてある。レベルの上がるスパイラルやスピンをあとから追加するのではなく、プログラムの中にしっくりはまるよう、最初から構成されているのだ。作品としてのプログラムが競技のルールに壊されてしまわないよう、逆に新採点に適応したエレメンツがプログラムの中でうまく浮き立つよう、きちんと考えられている。
 ルッツとサルコウがダブルになるなど、今日はジャンプの細かなミスが目立った。その影響か、プログラム全体に、少し大事に滑りすぎてしまったような印象もある。会場は村主の滑りに大騒ぎ、とはいかなかった。 しかし大きな声で応援した日本人観客の方に滑りよって手を振る姿には、彼女の精神的な余裕を感じた。
 プログラムに恵まれた。それを滑りきる力もある。村主章枝、フリーではさらにいいパフォーマンスが期待できそうだ。

予選終了後の共同インタビューより

――今日の出来は何点ぐらいですか?
村主 うーん、50点ぐらいかなあ。目標は順位などではないですから。まず滑りがすごく良くなかったです。見る人が見るととても危なっかしかったと思う。私自身も滑っていてけっこう怖いところがあったので……。滑りの悪さは、ショートでは直したいです。

――残りのショートとフリーに向けての課題は?
村主 一貫して課題は同じかな、という気がします。まず精神的な弱さ。私の弱さは、試合のような特別な場に置かれるとどうしても出てしまいます。その影響が今日も少しあった・・・・・・。でもそれよりも、ずっと掲げている技術面での課題、これができあがっていないのが、今回一番問題だったと思います。

――ずっと秘密にしている課題ですね。その課題達成は、来年の大きな舞台までに間に合いますか?
村主 間に合わせます!

――でも予選で出遅れた昨年の世界選手権に比べれば……。
村主 そうですね。去年はここにのぞんで来るまでの過程で、ほんとうに調子が悪くて。それを考えたら順調に来てるのかな。母とも「今年は今までやってきたことが出せるといいね」って話してました。それでも精神的な、いちばん悪い部分が試合になると出てしまうけれど・・・・・・。この課題は最後の最後までついてくるのかな?

――四大陸選手権の時は、その精神的な課題をクリアしての優勝だったのでは?
村主 あの時も同じでしたが、今日ほど大きくは表に出てこなかったですね。やっぱり克服するには、ひとつひとつ場を踏んで経験をつんでいくしかない。そういう意味では、今シーズン最初のころはミスが多い試合ばかりだったので、徐々に徐々に、よくなっていると思います。

――ショート以降は今日のことは忘れてのぞんでいく感じですか?
村主 いえ、経験は生かさないともったいないので、今日のことを忘れるということはないです。悪い結果はきちんと受け止めていかないと。失敗から学ぶことは大きいので生かしたいです。

――佐藤信夫コーチについてのぞんだ世界選手権ということで、いい影響はありますか?
村主 やっぱり佐藤先生と一緒だと落ち着いて滑ることができるので……。もう一度コーチを引き受けていただいてよかった。

――すごく体が細くなってるように見えますが、スタミナは大丈夫ですか?
村主 それはコスチュームのせいかも(笑)。いかにきれいに見せるかを考えて作った衣装なので、そう見えるのかもしれないです。目の錯覚なんですけど。スタミナ切れの心配はないです。

Photo by M.Morita(上・演技写真)
Photo by K.Asakura(下・「RUSSIA LOVE YOU」地元のファンからもうれしい応援バナーが)


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安藤美姫、「火の鳥2005」で予選2位通過

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 落ち着いた、だが鮮烈なワインレッドに、ところどころあしらわれた緑。袖口は細かに裂かれ、火の鳥の燃えさかる羽を思わせる。去年より少しゴージャスな衣装に身を包み、予選Bグループ15番目の滑走者、安藤美姫は現れた。
「美姫がんばー!」客席から声を掛けたのは高橋大輔。6分練習が始まり、彼女がジャンプを成功させると「うめえ!」とひとこと。これから何年も先まで、それぞれレベルの高い別の場所で戦っていくだろうふたりが、惜しみない声援を送り合う。

 名前がコールされ滑り出す前の安藤美姫は、少しナーバスに見えた。いつも必ずしているリンクサイドでの屈伸が、今日はとりわけ深く、長い。足を曲げてしゃがみこんだ姿勢のまま、なかなか立ち上がろうとしない。そんな彼女の右手を、佐藤久美子コーチがそっと握った。
 滑り出しは快調。3回転-3回転-2回転も入れられるコンビネーションジャンプが3ルッツ-2トウループでとまり、固唾を飲んで待った4回転サルコウは最初から3回転を跳んだが、手堅い構成のジャンプはほぼノーミス。最後のアクセルを決めると日本チームの関係者からは「良し!」という声が上がった。ただ、3フリップー2トウループでぐらつくなど、安藤美姫本来の、勢いのあるジャンプではなかったかもしれない。
 新しい衣装は、動くと袖が揺れてとてもきれい。彼女が手をふりかざすたび、赤い袖が空気の流れに彩を与えているようにも見える。衣装も力を貸したのかもしれないが、中盤のスローパートが特に繊細さにあふれ、スピンも速くはないが形の美しさで拍手をもらった。
 ただ最後のステップは、始まりこそ勢いがあって良かったが、後半は疲れを見せてしまったのが残念。話題になっていたシャルロットスパイラルからのトウループジャンプも、成功はしたが、調子が良ければもっと見栄えのする技のはずだ。
 とはいえ全体的に激しいだけではなく、とてもエレガントな火の鳥を見せてくれた。彼女の目指した「大人の火の鳥」までいけたかどうかはわからないが、17歳という成長中の女性のエレガントさがそのまま滑りに現れている。
「彼女はまだ若い。伸び代はいくらでもありますから、フリーまでの後二日で、まだまだ成長しますよ」とは強化部長城田憲子氏の言葉。
 キス&クライに落ち着いた彼女は、いつものあどけないファニーフェイスで手を振った。客席に知っている人の顔を見つけて喜んだり、はにかんだり、表情は普通の17歳。雑誌のグラビアなどを飾る彼女は「大人っぽい」と良く言われるが、こんな表情を見せる高校生に、世間の人々は何か違う虚像を重ね合わせようとはしていないだろうか?
 自分のできる演技、等身大の「火の鳥2005」を演じた安藤美姫。明後日、フリーでの「等身大」がどこまで大きくなっているか、楽しみだ。

予選終了後の共同インタビューより

――予選を滑ってみてどうですか?
安藤 終ってうれしいです。できは、まあまあ(笑)。足(左足首)の状態も思わしくなくて、プログラム通しての練習ができてなくて不安でした。100%じゃなかった。実際滑ってみたら動きがかたくて、ジャンプも切れが良くなくて。ジャンプも3回転-3回転のところ、朝の演習でしっかり軸がとれていないと思ったので、後ろをダブルにしました。

――気持ちの上ではどうでしたか?
安藤 世界選手権も2回目ってことで、もうただ出られてうれしいだけじゃなくて・・・・・・気もちが少しシニアになったのかな? でもロシアのお客さんからもたくさん拍手がもらえて、楽しんで滑れたのが良かったです。(ここで緊張がほどけたためかちょっと涙ぐみ、スケート連盟関係者から囃し立てられる)

――「火の鳥」で滑ったことはどうでしたか?
安藤 気持ち良く滑れました。それが前のプログラムとの違い。鳥だし、勝手に飛んでってくれる気がしてすごくやりやすいんです。

――改めて「火の鳥」を踊るにあたって研究したことは?
安藤 バレエのビデオを見たり、バレエの先生にいろいろ聞いたり。その先生は今もイギリスのロイヤルバレエで勉強してる人で、自分もまだ学んでるっていう意識があるから、先生っぽくない人で気が合うんです。そんな先生に見てもらったりしていいプログラムになりました。

――試合会場の雰囲気はどうですか?
安藤 ロシアはすごく好きな国だし、お客さんの雰囲気も良くてやりやすいです。バレエがすごく盛んな国なので、「火の鳥」はロシアの人々も受け入れてくれるんじゃないかな。
城田 エレメンツのレベル、上がってたわよ! 
安藤 ほんとうですか! もうそれで満足です!
城田 今までほとんどレベル1だったのに、スピンもステップもレベル2になってる。キャメルスピンだけまだ1だけど。
安藤 それでいいです。うれしい! やった!(両手を軽く万歳)。でも自分ではバージョンアップしてるかどうかってわからないんですよ。
城田 でも今日はスピードはなかったね。もうちょっと練習しようよ。あとは「4」だね。
安藤 え、レベル4にするの?
城田 違うわよ、4回転!(一同爆笑)。でもあなたは、レベル4にしようと思うくらいがんばればちょうどいいんじゃない?

――予選で四回転を、という気持ちは頭になかったですか?
安藤 今日はスピンやステップをレベル2にしたかったので、4回転じゃなくてそっちに集中してがんばりました。レベル2になってすごくうれしいです。もうこれでいいです、満足です。
城田 そんなこと言わないでレベル3にしようよ。
安藤 そんなの疲れて死んじゃいます! 美姫はスピンとかステップとか苦手でスパイラルも体が硬いから苦手で。ジャンプよりそっちのほうが体力使うんですよ。だからしーちゃん(荒川静香選手)とかスルツカヤはすごいと思います。

――新しい衣装、素敵でしたね。
安藤 はい!(うれしそう) 気に入ってます。これは自分で形とか雰囲気を考えて、デザイナーの方に意見を言って作ってもらいました。色もお母さんと一緒に決めて。

――袖のひらひらがきれいでしたよ
安藤 ここ! 美姫が考えたんです! あと色は少し緑色が入ってるんですけど、緑は私を引き立ててくれる色って言われていてとても好きな色。それを入れてくれたデザイナーさんとはとても気が合って、いい衣装になったと思います。でも衣装だけ大人っぽくなっちゃった!
城田 ショートも新しい衣装だよね。すごくかーわいいの。
安藤 ショートも新しい気もちで。シーズン最後の試合、せっかく世界選手権に出られたんだから、情熱的に! 滑りたいです。

 この日は日本の報道陣だけでなく、地元ロシアのテレビ局やアメリカのメディアなどもミックスゾーンにてインタビュー。英語での受け答えはまだできないが、「けがはどこ?」と聞かれ、テーピングした左足首をとんとんと叩いてみせた姿がかわいらしかった。

Photo by M.Morita


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男子シングルショートプログラム 高橋大輔、孤軍奮闘

daisuke 
 まさか大輔まで!?
 一瞬、みなが凍りついた。ショートプログラムをほぼノーミスで滑り終え、「やった!」と思った直後、高橋大輔は痛そうに脚を抑え、リンクの上にうずくまりかけたのだ。ひとりでリンクサイドに戻ってはきたものの、脚はかばうようにひきずりながら。キスアンドクライでも氷で脚を冷やす姿が大きくビジョンに映された。
 演技は素晴らしかった。慎重に行くならば3回転-3回転にすることもできるコンビネーションを、きっちり4回転-3回転で決め、トリプルアクセルも成功! 見せ場のステップも感情がはじけんばかりの迫力で、会場は拍手の嵐。最後の変形スピンも美しく決めた。
 実は滑走前の会場の雰囲気は、決して彼に味方をしてはいなかった。予選とは比べ物にならない観客の数。前に滑っていたのはロシアでも大人気のジョニー・ウィアー。高橋が滑り出す直前まで、金切り声のようなジョニーコールが響き渡っていたのだ。日本の応援団からの「がんばってー!」という必死の声援も、それに比べたらなんともか弱い。
 そんな会場も、彼が滑り出し、中盤のステップにさしかかったころには、がぜん高橋応援モードに切り替わり始めた。ステップの最後で少しつまづいたのは残念。しかし「つまづいたのもステップのうちだよ!」と記者たちが言うように、全体の演技の雰囲気を壊すほどのものではなかった。
 ロシアの女性たちからは滑走前には影も形もなかった「ターカハシ!」コールがわきあがる。きっと彼女たちは、生まれて初めて「タカハシ」という名前を口にしたに違いない。そうさせるほど、高橋大輔は観客の心をつかんだ。
 ロシアのスケートファンは、高橋大輔を知った。フリーの滑走前には今日とはまるきり違う雰囲気が生まれているのではないだろうか。

 ミックスゾーンに集まった記者たちも興奮気味だった。「すごいな! 男だね」「4回転ー3回転、ほんとに入れたんだ!」「ひょっとしてこれは、フリー最終グループ入りもある?」「いや、最終より一つ前のグループで滑ったほうがプレッシャーはかからないよ」などと盛り上がる盛り上がる。
 しかし心配なのは痛そうに抑えていた脚。「脚はつっただけみたいですよ」そんな情報がスケート連盟関係者からはもたらされ、とりあえず安堵の雰囲気にはなった。ケアをしているのか、なかなかミックスゾーンに姿を見せない。しかし心配もつかの間、こちらがほっとするくらい晴れやかな顔で現れた彼の話を聞いてみよう。

――脚がつっていたそうですが、大丈夫ですか?
高橋 はい。テーピングで固めてた部分が最初の6分練習の前につりそうになっちゃって。でも「つりきる」までは行ってなかったので、先生には言わないで、とりあえず最後までもたそうと思って滑りました。もう日本人は僕ひとりだし、ここで滑るのやめちゃうっていうのは、世界選手権に来られなかったほかの選手に対しても・・・・・・。それに来年の枠のこともあるし、自分のために、と思って。

――じゃあ気持ちで乗り切ることができた?
高橋 でも最後までずっと「つりそう」状態が続いてて、なんだか嫌な感触。ジャンプもダメかも? と思った。でもとりあえず全部降りたんで良かったです。ステップはバランス崩したけど、こけなかったのは良かった。スピンも思ったより良くできて。

――ジャンプはその状態で4回転に挑んだんですね?
高橋 とにかく経験をつみたかったんで、失敗してもいーや! と思って跳びました。3-3にする考えはまったくなかったです。変に慎重になって逃げちゃうと、逆に失敗することもあるし。朝の練習でも、今日はいけるな、と思った。調子は上がってきてたので失敗する気はまったくなかったですし。絶対成功する、って自信過剰くらいになってた。そうしたら脚がこうなっちゃったんですけど(笑)。調子がいい、体のキレがいいとつりそうになることが多い。つったのも調子が良かった証拠ですね。

――最後のステップもその状態のまま?
高橋 ストレートラインステップの前、リンク際に来た時、先生たちもそばに来たんで「脚つったんだけど―!」って叫びました(笑)。そしたらなんか言われたけどよく聞こえなかった。
城田強化部長 「最後までやるのよー! 」って言ったのよ。私と長光先生で、まったく同じこと言っちゃった。明日は一日休みがあるから、ショートだけとにかく滑りきれば、ドクターに何とかしてもらえると思った。でも今日はほんとに偉かったわよ。あれだけのメンバーの中で滑ること自体大変なのに。

――そんなふうに演技中にリンクの外の人と会話が成立するってよくあるんですか?
高橋 ないです(笑)。いつも向こうがなにか言ってることはあるけれど。

――演技は満足ですか?
高橋 去年のショートよりは内容的に良かったです。でも、ちょっと悔しい。脚がつってなかったらステップももっと見せられたかも! ベストコンディションで滑りたかったのに、なかなか完璧にやらせてもらえないもんですね。ストレートラインはまあまあだけど、中盤のサーキュラーはまだ踊りきれてない!

 大勢の報道陣を前に、実に堂々とした受け答えの高橋大輔。昨日の「テレビカメラがあると緊張する」と笑っていた彼とは、また別の青年がそこにいた。

Photo by K.Asakura


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予選前日、女子シングルアメリカ勢は?

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日本女子3人とスルツカヤの練習が終わるまで、リンクを離れなかったミッシェル・クワン(写真左)。
一方、エッジケースで「うさぎさん」をして遊ぶサーシャ・コーエン。彼女は自分の練習が終わると、すぐ帰りました(写真右)

sashausagi
Photo by K.Asakura


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女子シングル代表3選手 本番前、最後の共同インタビュー[3]荒川静香選手

shizuka6●荒川静香選手「ロシアのデザート、おいしかった!」

――朝の練習では、髪を本番のようにきれいに結ってましたね。
荒川 本番で髪をあげた時にピンが抜けないかどうか試そうと思って。ピンが落ちたら危ないので、試してみました。今髪が短いので、バレッタもうまくとまらないし。ジャンプしたりスピンしたりしたらどうか。40分滑って落ちなければ大丈夫かな、と。

――新しい髪形で、衣装も新しく?
荒川 はい、フリーの衣装、タラソワからのごほうび(笑)。「ロシアに行ったらいいものがあるわよ。ビッグサプライズよ」って言われてたんですけど、衣装だったんです。私、知らなくて。でも一回もまだリンクの上で着ていない、調整中なので予選で着られるかどうかは不明です。

――今シーズン、フリーの衣装は3着目ですね? どれが一番気に入ってますか?
荒川 どれもみんな雰囲気が違っていて、どれも気に入っています。最初のピンクの衣装が一番ジュリエットっぽいかな? でもあれ、紐とかフリルとか付属品が多くて重いんです。好きな衣装なので、機会があったらショーなどで着たいんですけど。ファイナルで着た白い衣装もあのあと直したんですが、結局それ以来着てませんね。新しい衣装が間に合わなかったら白い衣装を着ることにします。

――ロシアでおいしいものは食べましたか?
荒川 タラソワたちとロシア料理を食べにいきました。詩人の名前の付いたレストラン、ガイドさんに連れていってもらったんですけど・・・・・・。スープ! ロシアの水餃子! デザート! おいしかった。デザートはピラミッドみたいなクレームブリュレで、飴がドームみたいにかかってる。その上から火で焼くんです。これはタチアナが、「美味しいから食べなさい」って。去年は甘いもの食べちゃ駄目! だったんですよ。今年は逆に、ちゃんと食べてるか心配されてるみたい。アイスクリームの封印も無しです。ロシアカップの時にロシアのアイスは美味しいって聞いて試合が終るまで我慢したんですけど、うまくいかなくて。だから今回は食べてから試合することにしました。

――予選の滑走順が出ましたが、いかがですか?
荒川 順番はいつも気にしないんですけど、誰の次に滑るか、誰の前に滑るかは気にします。スタイルがいい人のそばはちょっと(笑)。前にボルチコワ(ロシア。今回の世界選手権は不参加)の後に滑ったら自分がどんなに手足が短いか気が付いて。

――全体的な調子はどうですか?
荒川 中の中くらいかな。ジャンプは100%じゃないけれど、調子は上がってきています。靴もワンサイズ上げて緩いものにしたんですけど、それでもあんまりフィットしてない。もう何を履いてもそうなっちゃいますが、痛みはない。その点は、助かってます。でも気にしだすと気にしちゃいますし、靴のことは考えないことにします。

shizuka3――フリーの完成度はいかがですか?
荒川 まだ完璧じゃないです。もう、シーズン終っちゃうのに。自分でしっくりこない部分がまだいくつかある。ジャンプを跳ぶ場所とかスパイラルとの組み合せとか、いろいろやってみたんですけど・・・・・・。今年はスパイラルやイナバウアーの体勢から入るジャンプが多くて、体力的にもきついです。入らない時はジャンプも入らないし、セットになった他のエレメンツも入らない、なんてこともある。
 それにプログラムって「この曲のここでこれをやりたい!」っていうのがあるから、他の部分との調整が大変です。たとえばこの部分でイナバウアーを入れたい、とか。私もタラソワもこのプログラムはイナバウアーから入りたいと思ってるし、それははずしたくないので、どう見せるか一番迷いました。イナバウアーの後にスリーターンで流してしまうよりジャンプを跳んだほうが見栄えがするな、とか。

――まだ満足できる段階ではない?
荒川 去年のプログラムより体にかかかる負荷が遥かに大きいので、満足できるレベルで滑りこなせるまでは来ていません。通して滑る練習も、去年より多くなかったし。去年はもっとまとまっていました。今年は追い込みの仕方がまだまだ。これからシーズンが始まる、というぐらいの感じ。でも出来るところから入るしかないですよね。

――去年と今年、世界選手権に対する気持ちの変化はありますか?
荒川 去年はほんとに、脚が痛いのが気がかりで(肉離れ)。今年は痛みはないので、いかにプログラムをうまく滑りこなせるのかに気が向いています。去年はそれでも、自分がやってきたことを信じて、不安なく滑れたんですね。今年はまた新たな気持ちでのぞみたいです。

――タラソワ先生から言われていることは?
荒川 それはもう、いつもの「Just do it!」それだけです。「やらないとだめよ。忘れると殺すわよ!」って(笑)。

Photo by K.Asakura


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女子シングル代表3選手 本番前、最後の共同インタビュー[2]安藤美姫

mik3d――シーズン後半にプログラムを変えましたね。
安藤 今年のフリー「ギター協奏曲」も好きだったけど、「火の鳥」のほうが忘れられなくて……。スケートアメリカの後も「ギター協奏曲」だと心から滑れないって思いました。NHK杯のあとも・・・・・。それで変えることにしたんです。

――今年はどんな「火の鳥」を見せてくれますか?
安藤 去年はまだまだ成長過程だったので、火の鳥も成長する火の鳥を、自分に当てはめて滑れるようリーアン(振付師 リーアン・ミラー)が作ってくれたんです。でも今年は少し成長して強い不死鳥になったあ火の鳥を演じたいです。

――練習を見ていても、去年とは全然違いますよ。
安藤 ほんとですか! うれしいです。でも自分では成長したかどうか、あんまりわからないです。去年はこの「火の鳥」でジュニアの試合からずっと調子が良かったので、いいイメージのあるプログラム。でも今年もう一度やるなら、去年と全然違わないと評価されないよって先生にも言われました。力強い、おとなの火の鳥になれたら。「火の鳥」はほんとに好きな曲だから、滑っていて全然気分が違うんです。

――それだけ好きな曲なら、オリンピックでもう一度滑るということは考えませんでしたか?
安藤 オリンピックのことはあんまり考えてないけど・・・・・・来年はもうちょっとスケートが上手になって、もっと大人っぽくなって、もっと大きなテーマのプログラムが滑れたらいいと思います。

miki1――ギター協奏曲にもう一度来年挑戦することは?
安藤 それは絶対にないです! 曲も重い感じだし・・・・・・聞くだけなら好きなんですけど・、滑ると考えすぎちゃって動きが小さくなっちゃうんです。それに曲がかかると落ち込んじゃう! これはまずいなって思った。その点で本当に好きにはなれなかった。今まではこういう曲って滑ってこなかったので。小さい頃から元気のいい曲で滑ってきて、大人っぽい重い曲ははじめてだったんです。

――「火の鳥」は具体的にはどんなところを変えてきましたか?
安藤 フリーのステップはがんばってレベルが上がるよう練習したし、スローパートも柔らかく踊れるように。

――ジャンプの調子はどうですか?
安藤 ふつうです。よくもなく、悪くもなく。

――昨日の夜の公式練習では眠そうにしてましたね。時差ぼけですか?
安藤 時差の影響はないけれど、いつも寝てる時間なので、眠すぎて(笑)。あとちょっと不安だったんです。去年の野辺山でもあの時間に練習して、集中できなくて怪我したので。でもがんばれば大丈夫、と思って練習しました。

――朝なら得意なんですね。
安藤 いえ、朝も眠いです(笑)

――4回転を入れるかどうかは?
安藤 予選で跳ぶかは今はわからないです。明日の朝練習をしてから決めます。回転軸はいい調子で取れているので、本選に行けたら跳びたいです。

――クワンやコーエンが得意としているシャルロットスパイラル、これを今回演技に入れていますね。しかもそのあとにジャンプを跳んでる!
安藤 あれは新横浜で友達と遊びでやってたんです。でも本番に入れてもいいかな、っていうぐらい出来るようになった。あれをやってジャンプを跳んで、レベルが上がるならやろうかなって。

――難しそうですよね
安藤 慣れたら簡単です(笑)。

――「火の鳥」、衣装はやっぱり変えますか?
安藤 はい。色は同じ赤なんですけど、少し暗い赤です。

――世界選手権二度目ですが、気持ちは去年とは違いますか?
安藤 去年と同じ(笑)。あんまりかわりません。今年もふたりのお姉さん任せです。まだ自分だけジュニアっぽいから・・・・・・。ひとりで気持ちを楽に楽しんでます。

――外国選手との交流もするようになったのでは?
安藤 あ、ミッシエル(ミシェル・クワン)が「こんにちは」って言ってくれたのがうれしかったです。「ハロー」って(笑)

――ライバルと思われてるなあっていう意識は?
安藤 ぜんぜんしません(笑)。

――去年は荒川選手にくっついていましたが、今年は?
安藤 今年もしーちゃんにくっついています。いつもいっしょにいてくれるし、食事とかも「いっしょに食べよ」って誘ってくれるのですごくうれしい。

――昨日は買い物に出掛けたみたいですね。
安藤 はい。お母さんと赤の広場の隣のモールに。小さい箱に火の鳥が描いてあるの、ひとつ買いました。「火の鳥」ってロシアのおとぎ話なんですよね。すっごい羽ばたいてる絵だったので!

*後ほど荒川静香選手のインタビューも掲載します

Photo by K.Asakura


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女子シングル代表3選手 本番前、最後の共同インタビュー[1]村主章枝

fumie1 15日午後。ドローにて女子予選の滑走順が決まった直後、日本の取材陣に向けて3選手の共同インタビューが行われた。
 ふつうは3人も選手がいると、最も期待の寄せられる誰かに取材は偏るものだろう。しかし今回の3人の場合、どの選手にも記者達が食らいついて離れない勢い。最も緊張の面持ちを見せた村主、終始笑顔だった安藤、風格さえ感じさせる落ち着きぶりの荒川。三者三様のインタビューをまとめてみた。

●村主章枝選手「四大陸優勝ははじまりに過ぎない」

――滑走順が決まりましたね
村主 はい。気もちはいつも通りです。大会期間中で抽選が一番緊張しますね(笑)。

――現在の調子は?
村主 まあまあかな(笑)毎日毎日自分で目指していること、ほんとうに難しいことばかりですけれど、これが最近は一回一回の練習でまとまってきているような気がします。でもスポーツは結果がすべて。準備万端でも本番はどうなるか分からないので、最後まで気をゆるめずにのぞみたいです。ジャンプの状態は「普通」ですね。

――優勝した四大陸選手権から現在までは?
村主 四大陸の結果は、ほんのプロローグでしかないと思っています。ゴールはここではないんだ、と思ってやっていました。だから世界選手権に向けては、四大陸のときよりきちんとした練習をつんできています。韓国から帰ってからもずいぶん滑り込みました。ただモスクワに来てから時差の影響がちょっと……。その点で、ちょっと心配かな。

――昨日本田武史選手が棄権したことはどう感じていますか?
村主 去年に続き今回も怪我を抱えてしまって大変だったと思います。そんな時は「スケートをやりたい」「本当に続けたい」という気もちで乗り切っていって欲しいと思う。ずっと一緒にやってきた、一選手としてそう思います。私も怪我が多かったので、彼の痛み、苦しみはよくわかります。最後は自分の「スケートを愛する心」でなんとか乗り切ってがんばって欲しいです。

――ロシア、そしてこの試合会場はどうですか?
村主 昨日の男子予選をみたんですが、会場はもうちょっとお客さんが入ってくれるとうれしいかな(笑)。本選がはじまらないとわからないけれど。ただ一日目のオープニングセレモニー(ボリショイバレエ団などが登場)を見て、やっぱりロシアは凄い! と思いました。この国の持つ芸術の伝統に圧倒されて。国の大きさを感じましたね。

Photo by K.Asakura


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荒川静香選手近況

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 大会ポスターやプログラムの表紙にも登場。公式練習に注目が集まるなど、ここモスクワではやはりディフェンディングチャンピオン、荒川静香に向けられる視線が熱い。
 公式練習の好調ぶりも伝えられる日本のエースは、全日本選手権終了後から現在まで、どんなふうにスケートに取り組んできたのか。荒川選手の近況を、関係者へのインタビューのもとにまとめてみたい。

 1月はアイスショーへの出演のため一度スイスに渡ったが、その後は新横浜で佐藤久美子コーチとトレーニング。佐藤信夫コーチのインタビューにあった通り村主章枝、安藤美姫らと同じリンクでの練習となった。「今の彼女はたとえまわりに誰かいようとも、自分に集中できる選手。まわりを見て刺激を受けることはあるかもしれませんが、マイナスにはならなかったでしょう」(関係者)
 2月下旬にはアメリカ・コネチカットにわたり、タラソワコーチの元、約2週間トレーニング。一日わずか3時間(朝1時間半、午後1時間半)という短期集中型の練習、そのぶん他のリンクでは考えられない中身の濃さ、厳しさ。ここで一気に彼女も本番モードに突入したようだ。(アメリカでの生活ぶりは荒川静香公式ホームページwww.arakawa-shizuka.comにて彼女自身の文章で語られている)。
 アメリカでは昨年同様、タラソワコーチとともにスターズ・オン・アイスを鑑賞。トレーニング以外にも、アメリカで刺激を受けることは多かった。またスイス、コネチカット、モスクワと、合宿・遠征先には常に母親・佐知さんが同行。洗濯や手料理など身の回りのサポーター、また彼女の精神的な支えとして最高のシャペロンがついている。
 3月上旬、他選手よりひとあしはやくモスクワ入りし、現在まで現地で調整中。
 気持ち的には高まっているようだが、相変わらず淡々としているとか。しかし「昨年以上にいいスケートを見せて自分を表現できれば」という意欲は見られるという。やはり彼女にとって、試合は「自分自身との戦いの場」。
 これまでにたくさんの経験を積み、試合に向けての体調や気持ちの持っていき方を良く心得るようになった点も大きい。精神的にも余裕が生まれ、試合に集中できる。また演技にもいっそうの味わいが生まれるだろう。経験こそが彼女の大きな強みとなっている
 また今シーズンはさんざんスケート靴がフィットせず、足をいためるなど苦労した荒川静香だが、現在、靴のトラブルは特にない模様。また、本人の希望により佐藤久美子氏を日本でのコーチとして迎えたが、これによりジャンプの安定感を得られるようにもなったと。現在はタラソワコーチが音楽表現を、久美子コーチがジャンプの調子を整える役割を担う。全体の監督的な立場に立つのはタラソワコーチ。昨年は性格的に淡白な荒川が本来持っている良さ、これをタラソワがうまく引き出し、あの結果に繋がった。今シーズンはずっとつきあってきた二人、彼女の性格も分かってきたタラソワが、今年の世界選手権ではどうでるか、楽しみにしたいところだ。

 勝負の行方には固執しない、自分の演技ができれば満足。そんなう発言を常にしている荒川静香だが、ディフェンディングチャンピオンとしてのぞむ今回、その気持ちはどう移り変わるだろうか。
 自分の演技は出来たけれど、チャンピオンの座は明け渡してしまった・・・・・・そんな場合、また「私は満足です」というかもしれない。けれどそこに、たった数パーセントであっても悔しさは生れるにちがいない。彼女が真のトップアスリートであるならば。そしてそんな気持ちを持った時、彼女がどちらを向いて、どんな気持ちで来シーズンに向かうのか。今年の結果が良くとも悪くとも、彼女の方向性、そしてトリノへ向けてモチベーションのあり方が、世界選手権後には見えてくるだろう。今後の荒川静香に注目したい。

*写真は昨年のグランプリファイナルエキシビション Photo by M.Morita


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安藤美姫、荒川静香も男子シングルを応援

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 日本の女子選手らも男子シングル予選を応援。ブルーグレーのジャンパー姿の安藤美姫選手は日本選手だけでなく、仲良しの海外選手も応援。他選手を応援する姿は日本でのいつもの試合とかわらないが、中国のチェンジャン・リー選手には「加油!(がんばれ!)」としっかり中国語!

Photo by K.Asakura


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ペアで活躍した日本人選手

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 ロシア対中国の争いが楽しみなペア。残念ながら今回、日本からの代表選手派遣はいないが、他国代表として活躍している日本人選手に声援を送りたい。
 まずジョン・ボールドゥイン・ジュニアを組んでアメリカ代表として出場する井上怜奈選手(写真左)。アルベールビル五輪にペアで、リレハンメル五輪では女子シングルで日本代表として二度の五輪出場経験をもつ。ボールドウィン選手と組んでからはアメリカのリジョナル(地区大会)から毎年ひとつひとつ勝ち進み、昨シーズンはついに全米チャンピオンに。この5月には米国籍を取得できる見込みで、もしトリノ出場が決まったら実に12年ぶりの五輪となる。
utako もうひとりはジーン・セバスチャン・フェクトーと組んでカナダ代表として出場している若松詩子選手(写真右)。彼女はつい最近、01年のスケートアメリカに女子シングル日本代表として出場。ペアをはじめて短期間の間にカナダ代表の座を得、今回はじめて世界選手権に登場した。彼女は残念ながら「日本国籍を大事にしたい」ということでオリンピック出場は断念。しかし新天地で「小さなころからやりたかった」というペアに挑戦でき、世界選手権という大きな舞台にも登場。今後の彼女の選ぶ道にも注目したい。

*井上怜奈、若松詩子両選手へのインタビューを後日掲載します

Photo by K.Asakura


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モスクワの街、試合会場

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 モスクワの街は今「2012年モスクワ五輪招致運動」のポスターや看板、のぼりで華やかに彩られている。特に目立つのは市街地のそこかしこに建つ大きなパネル。マラソン、ハードル、競泳、シンクロなど様々な夏季競技のアスリートたちの躍動的な写真に「2012」の文字とシンボルマークがあしらわれている。もちろんあの五輪のマークも。
 多くの選手達が泊まるウクライナホテルから試合会場「ルージニキスポーツアリーナ」まで、バスで15分間の道程にも、このパネルが立ち並ぶ。夏季と冬季の違いはあれど、同じ五輪のマークを見ながら行く試合会場までの道のりに、選手たちはそれぞれ何を思うのだろうか。
 写真はルイジニキスポーツアリーナ入り口。「IMGINE IT NOW」と五輪招致を前面に出したゲートが立っている。
 
buti 試合会場で目立つのは、ビッグスポンサーCANONの広告。ソルトレイク五輪を最後に引退した女子シングルのロシア代表選手、マリア・ブティルスカヤがイメージキャラクター! 美しいスケーティング姿が試合会場正面にもたくさん!

shizuka試合の合間に会場のビッグビジョンに流されるISU(国際スケート連盟)の紹介ビデオ。クワン、プルシェンコ、ヤグディンらそうそうたる面々のなかに、日本の荒川静香選手の勇姿も。

 会場入りする佐藤信夫、佐藤久美子コーチ。防寒対策万全です。
nobuo
Photo by K.Asakura


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本田、高橋、日本男子シングルの今後

DSC_0037 明暗が別れる形になった男子シングル日本代表のふたり。
 来年のオリンピックがもし1枠になったら? 本田武史3度目のオリンピックはあるのか? これからの躍進が期待される日本男子シングルには厳しいスタートとなったプレシーズンの世界選手権。本田選手の不調には新採点システムの影響があるのでは、という声がスケート連盟関係者からは上がっている。
「非常にシビアな採点システム。ジャンプは跳ばなければ点数がもらえない、というこのシステムは、本田のような選手には非常に不利です。つまり、4回転という大技は持っているけれど、本番でうまくいくかどうかはいちかばちか、というタイプの選手には」
 では有利になるのはどんな選手か。たとえばジュニアの世界選手権を制した織田信成は、流れのあるスケーティング、という強みはあるが、それ以上にジャンプが確実なのだ。4回転はもたないものの、トリプルアクセルまでは試合でほぼ確実に決められる。加えてスピン、ステップなど新採点で要求されるレベルの高いものをきっちりプログラムに入れ、点数をもらうことができている。
「本田には4回転がそこまで確実ではないという弱みがある。また、『本田武史なのだからセカンドマークはもらえるだろう』という意識が残っている。でも今の採点システムは違う。彼の頭の中ではまだ6点満点法が残っているんです」
 だがかつて銅メダルまで獲得した選手が新採点法を前に足踏みしている中、日本の次世代は着実に違う意識の元、育ち始めている。前述の織田、先日紹介した南里、岸本、小塚……。
「彼らは本田と違って激しい競争の世代を勝ち抜いてきています。今の女子シングルと同じです。海外に出る前に国内の選手に勝たなければならない、という過酷な状況で、いい選手が育たないわけはありません。加えて彼らには、人に勝つ前に自分自身に勝たなければ、という意識もある」
 その世代の筆頭に、いま位置しているのが高橋大輔だ。
「しかし高橋は、確実性が乏しい、いちかばちか、という点では本田と同じです。代表二人がふたりともこれではきつい。ひとりは大技はなくとも確実にジャンプが跳べる、新採点に対応した選手を代表に選びたいところです。メダルまで行く可能性はなくとも安定していい位置につけられる選手、うまくいけばメダルも取れそうだけれど失敗も考えられる選手。この2タイプの組み合わせが理想的です」
 若手が育つ中、新採点への対応が遅れた本田武史にもう、活躍のチャンスはないのか? このまま若手の台頭を許し、競技生活に幕を引くのか?
 それを決めるのは他の誰でもない彼自身だ。約10年間、フィギュアスケートをがんばる日本のすべての男の子の目標だったはずだ。彼がこのまま終るとは思いたくない。本田武史の今シーズンは終ったが、まだ彼には来シーズン、オリンピックシーズンが残されている。
 もう「日本のために」「枠を取るために」などと考える必要はない。来シーズン、きっと力を付けた若手達が自分の力で自分の立つ舞台をもぎ取っていくだろう。
「あなた自身のために滑りなさい」
 予選滑走直前、滑ることを決めた彼に城田強化部長が言ったというこの言葉が、来シーズンの彼にはそのまま贈られるだろう。
 オリンピックシーズン、「このリンクに立てて幸せでしょうがない」
 そんな言葉をもう一度言って欲しい。それがどのリンクであっても。

Photo by M,Morita (今期、四大陸選手権でシニアデビューした岸本一美選手)


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高橋大輔予選6位通過

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 本田武史選手の棄権から約20分後。予選B組第二グループの6分間練習に姿をあらわした高橋大輔。すでに本田選手の棄権は耳に入っているはずだが、クリーンな4回転を何度か見せるなど、調子はよさそうに見える。滑りも相変わらず美しく、「あれ、いきなりきれいなスケートの選手が出て来たな」と思ったら高橋選手だった、というくらい。
 しかし本田選手が棄権してしまった分、見ているこちらの緊張は倍増だ。リンクサイドには城田強化部長と長光歌子コーチがさらに緊張した面持ちで立つ。そんな時響いたのが、
「大ちゃんがんばれー」
 聞き覚えのある声。緊張していた日本の関係者が思わずニコリとしてしまったその声を、高橋本人は聞いただろうか。声の主の姿は見えなかったが、ここにいる日本人なら誰もがわかる。女子シングル代表、安藤美姫の声援だ。女子の練習が夕方となるこの日、彼女は母親ととともにクレムリンに観光に出掛ける予定と聞いていたが、チームメイトの応援にしっかり駆けつけていたのだ。
 高橋大輔は力強いチアガールを背中にしょって「アランフェス協奏曲」を滑り出した。
 最初の4回転トウループ、OK! トリプルアクセルからのコンビネーションも成功。少し大事に滑ってるようにも見えたが、ステップや滑りはさすが。何より「えらい!」と思ったのは、一つサルコウジャンプを大きく崩し、「これは……」と周囲が凍り付いた後も、気もちを立て直しすぐに次のコンビネーションジャンプ(3ルッツ2トウ)を決めたことだ。今まではひとつのジャンプで失敗したことをきっかけに、気持ちの糸を切らし、その後のプログラムをすべて崩してしまうことが多かった。大丈夫、今日の大輔は強い! 思わず拳を握り締めたくなるコンビネーションだった。
 さらにさすが高橋大輔、と思ったのは、フリー滑走中、私たちの目を一度も自分からそらさせなかったこと。この会場には大きなビジョンがリンクの上に4つ、とても見やすい位置に設置されている。だから自分の体だけに観客の視線を吸い寄せることの出来ない選手の演技のときは、ついついビッグビジョンに目を遣ってしまいがちなのだ。
 ファンの声援も大きかった。日本のファンだけでなく、わざわざ予選から見に来る熱心な地元ロシアのファン、海外からのファンなどからも大きな拍手と歓声。
 滑り終えたあとには今まで聞かなかった応援ラッパの音が響く(このラッパが次に鳴ったのはプルシェンコ登場の時だった)。客席から彼のためだけに吹かれたラッパ、彼の時だけされた拍手。記者席のすぐ下、選手たちの観戦席ではハイスコアを要求する手拍子まで始まった。結果はまずまずの6位。本人は「とりあえずやれた!」という表情。リンクの外では長光コーチが目を潤ませ、城田強化部長は笑顔。 
 直後にミックスゾーンで語られた彼自身の声を聞いてみよう。

「細かなミスは思ったより多く出てしまったんですけど……自分にとってはもっと上の演技ができたはずかな? でも結構緊張していたので、今はその解放感でうれしいです」
――緊張しましたか?
「昨日まではそうでもなかったです。ほんとにこれから世界選手権なのかな、って感じで。でも今日になったら凄く緊張してた。そんななかでも調子は良くなってたし、落ち着いていたので、これはいけるかな? と思って」
――本田選手棄権については知っていましたか?
「外国の人が『タケシが滑らない』って言ってるのは聞こえて……。何かあったのかな? と思った。でもとりあえず気にしないように集中して。自分のことでいっぱいいっぱいだったし」
――4回転、きれいに入りましたね。
「朝の練習では全然だめだったので……。ずっと4回転は調子が悪くて、不安で不安で。でもとりあえず降りられて(着氷できて)よかったです。今シーズン一番4回転を練習してきたので、それが自信になったんだと思います。今日はさらに、たとえ練習で跳べてなくてもいけるんだ、というのがわかった」
――ステップも決めましたね
「ほんとはジャンプのことしか考えてなかったんですけど……(笑)。ステップの前にお客さんから「がんばれー」って言われたのが聞こえたのでがんばりました。でも最後のステップでは鼻水どろーんと出てきちゃって(笑)。恥ずかしかったです。こうやって吹いたんですけど」
――わからなかったですよ(笑)。日本以外のお客さんの乗りも良かったですね。
「はい! それはびっくりしました。いい気もちで滑れました!」
――明日のショートに向けてはどうですか?
「あんまり欲を出さずに、練習してきたことを出せたらいいと思います。この調子でいきたいです」
――本田選手は棄権で、明日から日本選手は高橋さん一人ですが。
「けっこうプレッシャーですよね。ひとりで2枠取るってちょっときついんで。(本田選手がアクシデントによる棄権とみなされた場合、高橋選手10位以内で2枠獲得。本田選手が予選落ちとみなされた場合、高橋選手8位以内で2枠獲得→その後前者と判明)。自分一人で何枠とれるかは結果として……それとは別に自分のやってきたことを演技に出したいです。

「だめだあ、カメラがまわってると緊張してうまくしゃべれない」とおどけてみせることもあった高橋選手。全日本選手権では決してみられなかった笑顔がさわやかだった。

Photo by M.morita 後ろでは城田強化部長と長光コーチが見守る(本田武史選手も)


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男子予選開幕 本田武史選手、負傷棄権

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 とにかく滑り出して一発目の四回転トウループ。トウを付いたその瞬間にもう痛みに耐えられないという顔を見せ、ジャンプは体が開ききってしまった。そのまま崩れるように倒れ、起き上がろうとしない。昨日の練習で負傷したという左足をかばようにしてフェンスぎりぎりの所にうずくまっている。
 あわてて駆け寄ったのは城田強化部長とスケート連盟の加藤修トレーナー、続いて大会のドクター。本田選手は車椅子に乗せられ、足をおさえ顔を歪めた姿で、2年ぶり待ちに待った世界選手権のリンクを後にした。
 日本のスケートファンにとっての世界選手権がこんな形で開幕するとは誰が予想しただろうか。

 日本スケート連盟の説明によれば、本田選手は滑走30分前に痛み止めを注射。脚がうまく動かない、と本人は話していたという。棄権直後は余りの痛みのため靴が自分で脱げず、連盟スタッフが脱がせたほど。
 しかし城田強化部長は手厳しい。
「選手だったら、怪我を抱えながらも『やる!』と一度決めたらやるしかないのです。彼は中途半端だった」
 予選開幕前、スケート連盟としてはこの状態の彼に棄権をすすめたが、彼自身の意志で参加を決意。しかし滑り始めたとたんの棄権。
「昨年の田村岳斗は直前の6分練習で足を痛めましたが、最後まで滑りきりました。本田にはそれだけの気力もないのに、棄権する勇気も持たず滑り始めてしまった」
 滑り始める直前、彼はなんども「僕は大丈夫です」「大丈夫です」という言葉を何度も繰り返したという。自分を奮い立たせるように。
 二年ぶりにやっと戻ってきた世界選手権の舞台。どうしても立ちたかったという彼の気もちも、まずは察したい。


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モスクワ到着

airport取材チームは昨日モスクワに到着しました。

モスクワは雪。
モスクワ中心部から35キロのシュレメチェヴォ空港にも「welcome dear guests and competitors of world figure skating championships!」の横断幕が。
その向こうに立つ色とりどりののぼりは、2012年のモスクワオリンピック誘致の運動。
モスクワ市内でもあちこちに大きな誘致パネルが見られた。

posterプレスセンターのあるホテルウクライナは、大会の公式ポスターやシンボルマーク旗がたくさん貼られ、とても華やか。
ポスターには荒川静香、エフゲニー・プルシェンコ、トトミアニナ&マリニン、ナフカ&カスタマロフと、ディフェンディングチャンピオンたちがデザインされている。チャンピオンたちは全組現役、全選手が今大会も優勝候補。そして荒川選手以外は全員地元のロシア勢だが、果たして・・・・・・。

fumieホテルでは佐藤信夫コーチらとともに村主章枝選手に遭遇。いい笑顔を見せてくれた。


Photo by  K Asakura


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男子シングル日本勢展望 

takeshim●男子シングル日本勢展望 日本スケート連盟城田憲子強化部長インタビューから

 女子シングルに話題と期待が集まりがちな今大会。
 しかしぜひ注目して欲しいのが、男子シングル日本代表、ふたりの滑りである。
「男子は本田武史、高橋大輔ともかなり調子を上げてきていますよ」と城田氏。
 本田武史はご存知の通り、中学時代から世界選手権に出場し、02、03年には銅メダルも獲得した日本のエース。しかし昨シーズンはケガのため、世界選手権代表メンバーからはずれていた。ケガから復帰した今シーズンも、過去制したことのあるNHK杯で7位と、復調をアピールする試合は出来ていない。昨年の全日本選手権こそ貫禄を見せて優勝したものの、世界選手権でかつてのようなメダル争いに加われるのか? 危ぶまれる声も出ている。
「しかし今の彼は、まわりがびっくりするくらいまじめに練習に打ち込んでいるようです。昨年の世界選手権代表から外されたこと、彼は辛かっただろうし、私たちを恨んだかもしれません。私たちも彼を出さないと決断することは辛かった。でも彼もこの一年で様々なことを悩み、気持ちを整理した末に、『自分にはやっぱりスケートしかない、スケートで成功したい』と気づいたんでしょう」
 ケガでの不調ばかりでなく、世界選手権代表からもれた悔しさ。しかしその経験が結果的に彼を奮起させたのでは、城田氏は言う。
「今の彼は滑ることでまわりの人に恩返ししたい、なんて言ってるみたいです。実際そんな気もちでがんばっていて、ダグ・リー(本田武史のコーチ。カナダ人)は『タケシはすごくいいよ。どんどん良くなってきてる。見たらびっくりするよ』なんて言うくらい。でもあの子は練習だけならいつも世界チャンピオン、本番に弱い『プラクティスチャンピオンだから』と笑うと、ダグは『もうそんなことないよ!』と。とにかく彼はいつものプラクティスチャンピオンのレベルまでは調子を戻してきた。あとは、真のチャンピオンにふさわしい演技ができるかどうかが課題でしょう」
 本田自身も「体もリラックスしてきて、いい方向に向いてきた。体のシャープさが戻ればステップも今まで通りできると思う。それに、以前は感覚だけを頼りに跳んでいたジャンプ。これも今は、軸が傾いても意識して取り戻せる力が付いてきた。そしてなにより『絶対跳んでやろう!』という強い気持ちがある。あとはどこまで自分を信じられるかが課題」と意欲的な発言をしている。
 全日本選手権後、記者に囲まれた彼が「この時期に怪我のことを悩まずにいるのははじめて。こうして滑れることが幸せでしょうがない。去年一年の分、今年は取り戻したい」と心底うれしそうに言っていたことを思い出す。
 自信と貫禄を取り戻した時の本田武史の演技は、一握りの一流スケーターだけが持つ輝きを放つ。彼自身が滑ることの幸せを感じつつ世界選手権の舞台に立ったとき、もう一度私たちはあの輝きを目にするだろう。

daisukem 02年、日本人としてはじめて世界ジュニアチャンピオンとなり、「日本男子シングルは本田だけじゃない」と誰もが期待を寄せた若手、高橋大輔。昨年は世界選手権初出場ながら11位と健闘。しかし豊かな才能を持ちつつもメンタル面の弱さから、今シーズンはグランプリシリーズ(トロフィーエリックボンパール11位)、全日本選手権(6位)でジャンプが決まらず絶不調。しかし今年に入ってからはユニバーシアード優勝、四大陸選手権3位。やっと火が入ってきたかに見える彼だが……。
「高橋大輔も、ここに来て調子を上げてきています。彼はジャンプを安定させるため、全日本選手権後はずっと地元に近い大阪周辺で練習を積んできました。大阪、広島、そして安藤美姫のいる名古屋のリンクでも。練習の中心はプログラム各要素のレベルをチェックし、上げていくことです。そのためにテクニカルスペシャリストである、天野真さんの力も借りています」
 テクニカルスペシャリストとは、選手の跳んだジャンプ、スピン、ステップなど各要素を「*回転ジャンプ」「レベル*のステップ」と判定していく役割を担う専門家のこと。新ジャッジシステムのスタートを受け、新たに審判団に配置されるようになった。現役を退いて月日の経っていない選手たちが難関の試験を突破してこの仕事をする資格を得ている。長野五輪にペア代表で出場した天野真氏は、いまのところ日本人でただ一人のテクニカルスペシャリスト。男子シングルの未来を担う高橋大輔二度目の世界選手権に向け、国内のリンク、専門家がおしみない協力体制を組んでいるようだ。
「彼はショートプログラムを国体以降、今年の『剣の舞』から去年の『MI2』に戻しましたが、世界選手権では新しい衣装で滑るのでお楽しみに。
 高橋大輔――彼は本物です。3回転半も4回転もすべて完璧に跳べたら、プルシェンコだってびっくりするハイレベルなパフォーマンスになるでしょう。見ている人をほんとうにぞくぞくさせてくれるスケーターです。彼が彼の出来ることをすべてやったら、フィギュアスケート界をひっくり返す、それだけの力がありますよ」
 今シーズン、日本国内の試合ではいいところを見せられなかった彼だが、全日本選手権後のエキシビション「メダリスト・オン・アイス」では乗りに乗った演技を見せ、ジャンプも完璧。「何故それを試合で見せてくれない?」と多くの人のため息を誘った。滑りの質、スピード、演技、表情、何をとっても世界チャンピオンレベル。あのエキシビションでの輝きをモスクワのリンクで見られたら……誰もが高橋大輔のまだ見ぬベストに期待している。

 女子選手に勝るとも劣らない実力と可能性を持つ男子シングル日本代表の二人。このふたりはそれぞれが最良の演技を見せることとは別に、ある使命を背負って今大会にのぞんでいる。
 今大会はトリノ五輪前最後の世界選手権。今年の成績次第で、各国のオリンピック代表選手枠が決まるのだ。現在女子が3枠を持っており、おそらく来年の3枠も堅いチームジャパンだが、できれば男子も今ある2枠をもう一枠増やしたいところなのだ。
「いえ、男子の3枠獲得は『できれば』ではなく、必須条件です。去年は本田不在の中、田村岳斗と高橋大輔が健闘し、ひょっとしたら1枠になってしまうか、という予想を覆し、2枠キープしてみせた(高橋11位、田村21位)。今年はそのいい流れを繋いでいくためにも、本田高橋の二人で3枠をとらなければ! そのつもりでがんばれ、と言ってあります。ほんとうは二人のうちどちらかにはメダルを取って欲しいところだけれど、欲張ったことは言いません。それよりはオリンピックの3枠が欲しい」
 城田氏が、そして関係者やファンがそこまで男子3枠獲得を強く願うのはなぜか? それは、先日の世界ジュニア選手権で優勝した織田信成をはじめ、五輪出場を夢見る若手選手が、男子にも山のように控えているためだ。
 カナダ留学でエンターティナーとしての魅力を身に付けジュニアチャンピオンとなった織田信成、織田とともに世界ジュニアに出場し6位に入った南里康晴。誰よりも美しく安定したトリプルアクセルが武器の岸本一美、スケーティングの美しさが光る16歳の小塚崇彦、男子選手ながらビールマンスピンを持ち、優雅な演技で魅了する柴田嶺。昨年NHK杯に出場した小林宏一や、浅田姉妹とともに山田満知子コーチの元でトレーニングを積む前川忠義も、独自の世界を持った「魅せる」スケーターだ。そして彼ら若手より少し年齢は上だが、高橋大輔と最後まで世界選手権出場を争った中庭健介も、芸術性とジャンプのバランスの取れた選手。どの選手も世界の舞台に披露したい逸材だ。
「もうすぐ男子シングルも女子と同じくらい層の厚い、黄金時代が来るともいますよ」
 城田氏がそう語ったのは昨年だったが、すでにその時代の足音は聞こえ始めているようだ。
「今年は大輔に3枠を取ってきてもらって、来年はその出場権を僕がいただく!」
 そう語っていた選手もいた。
 本田、高橋も彼らの成長にうかうかしてはいられない。自身のトリノ五輪出場のためにも、出場枠は増やしておきたいところだ。

*日本男子が出場選手枠3を獲得するための条件は、高橋大輔と本田武史の順位が足して13位内であること。3位と10位、6位と7位などならばぎりぎりOK。2位と12位、5位と9位など合計が14以上ならば2枠のまま

*取材チームは本日無事モスクワに到着しました。明日からいよいよ試合開始。まずは男子シングル予選からスタートです

Photo by M.Morita


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佐藤信夫コーチインタビュー〈4〉 村主章枝とともに、ふたたび

fumie2a●村主章枝とともに、ふたたび

 2月末、新横浜での練習を見て何よりも感じたのは、村主章枝の精神的な充実だ。荒川、安藤と世界選手権代表2名が先に決まってしまった、四大陸選手権で勝つしか出場への道はない。そんな試練を乗り越えて代表の座をつかみとった今。大きな舞台に立てる喜びと、あとはやるしかない! という強い決意のようなものが、彼女の滑る「カルメン」からは漂っていた。
 演技のキレの良さには定評があったが、「カルメン」の切れ味はさらにいっそう増している。音楽がかかったとたんにその世界に没頭する、気持ちの入れ方が他の選手とはまるで違う。最初のポーズからして、見ている者に身震いさせてしまう。さらに、どんなに強い女の感情をむき出しにしても、どこかにあどけなさが残る、という彼女独自のカルメンの魅力も際立ち始めていた。
 佐藤コーチの元に戻り、彼女の中で何かが吹っ切れたのかもしれない。練習を見て、そんなことを感じた。

――章枝さんも佐藤先生のところにやって来て、長くなりますね。
佐藤 いや、そんなには長くはないですよ。2000年のシーズンからでしょう? 00年のシーズンに初めて僕は彼女を全日本に出して、結果的には3位で世界選手権代表には選ばれなかった。でもその翌年のバンクーバーの世界選手権には、初めていっしょに行ったんです。行けなかった世界選手権が2000年で、シーズンはその前の年からだから……ややこしいね、スケートは(笑)。99年に彼女が来たのかな、今年は2005年? 

――それでも6年も経ってますよ。長いじゃないですか!
佐藤 6年に……なるんですか。

――短く感じられましたか。あっという間でしたか?
佐藤 そうですね、はい(笑)。やっぱり無我夢中でやってきましたたから。

――今回女子に注目が高まっているので、初めてテレビでフィギュアスケートを見る、村主章枝を見るという人もいると思うのですが……先生から見て、村主さんの演技の魅力はどんなところでしょうか?
佐藤 魅力……うーん、そういうふうに見られればいいんですけれど(笑)。やっぱりいつも「もうちょっと何とかならないの?」「もうちょっとどうにかしてよ」という目で見てるものですから。みなさんから「村主さん、ここが素晴らしいね」なんて言われてみれば「そうかな、、うん、素晴らしいな」なんて気づいたりもします。やはりみなさんたちの方が、選手を先入観なく見られると思いますよ。我々だったらどうしても、「この子にはこうなって欲しい」という思い入れがすごくある。だからあんまり冷静には見られないです。

――ではコーチと選手という関係では、村主さんぐらい大人になると、若い選手に比べれば多少やりやすい面はありますか?
佐藤 いや、それでもやっぱり「何でそういうことになるの、君は?」なんて、彼女に関してもわからないことはいっぱいです。彼女もまだ若くて、気持ちが大きく揺れ動くことはしょっちゅうあるから。

 村主章枝が自分のところに戻ってきたことをうれしく思うか、そんな不躾な質問もしてみたが、佐藤コーチはただだまって、にこりとするだけだった。まだトリノオリンピックに彼女が行けるのか、それが佐藤コーチと一緒なのかどうかはわからない。だが、きっともう一度ふたりであの場所へ……外には出さない気持ちが、佐藤コーチにはあるのだろう。
「それはやっぱりね……。彼女は、努力をしてきてますから」

fumie3m ところで今シーズン後半、新横浜プリンスホテルスケートセンターには、日本を代表する3人の選手が、奇しくも集まってしまった。名古屋から新幹線で通いながら佐藤信夫氏に師事する安藤美姫、アメリカから帰国し、再び新横浜をホームリンクに選んだ村主章枝、そしてメインコーチはロシア人のタチアナ・タラソワだが、日本滞在時には佐藤久美子コーチの指導を受けることになった荒川静香。この3名である。取材時、荒川静香はタラソワコーチのいるアメリカ・コネチカットに移動していたが、今年はじめの数週間は、3名がまさに同じリンクに揃い踏みし、火花を散らしながら練習する時期があった。この状況は選手たちに、どんな影響を与えたのだろうか?

――3人のナショナルチームメンバーが新横浜に集まってしまった。荒川静香さんも先生の奥様、佐藤久美子コーチについているわけですから、3人が3人とも「佐藤チーム」ということに……。これはちょっと珍しいことですよね。
佐藤 はい。正直に言って……ものすごく難しい状況です。もうどうにもならないほど難しいことで、コントロールする我々の方は、とてつもなく大変です。

――彼女にこれを教えて、彼女にはこれ教えて……と。
佐藤 そう。そうしているうちにどこかで分裂してしまいそうになる。普通はそうなることの方が多いでしょうね。だから一般的には、ここまでレベルの高い選手は同じリンクにいないものです。ソルトレイクの前も、そういうことがありましたが……(佐藤信夫コーチの元に村主章枝選手、佐藤久美子コーチの元に荒川静香選手が師事。ふたりは五輪出場最後の一人をかけた練習を同じリンクでいしていた)。危険、とさえいえる状況です。

――危険……。
佐藤 指導する私たちにとっては難しいし、彼女たちは精神的にきつい。でももし選手たちがこのハードな環境を乗り越えてくれれば、ものすごくいい結果に繋がるでしょうね。レベルの高い3人が毎日毎日同じ場所にいて、猛烈に競っていけることは、やっぱり何にも変えられない素晴らしい環境ですから。

――同じ氷の上であんなふうに毎日滑っていて、やはりお互い気にしていないようでも……。
佐藤 見てますね、ちゃんと。

――それがいい刺激になるんですね。
佐藤 それはもう、どんなに立派な指導の言葉よりも、はるかに刺激があります。あの3人が滑り出したら、一緒に練習してる他の連中がそばにも寄れないような雰囲気がさーっと生まれてしまう。どうしても他の子はよけちゃう。オーバーな言い方をしたら、毎日毎日が試合のようなぴりぴりした空気になっています。でもそれを、みんなが耐えて練習に励んでくれれば、最高の環境だと思うんです。ほんとに素晴らしい、恵まれた環境。それを私達も選手も、逆境とは考えず、味方につけるしかないですよね。

 あまりにもシビアで、同時にあまりにも恵まれた環境で練習に励んだ3選手。彼女たち3人は、誰が表彰台に乗ってもおかしくない、日本フィギュアスケート史上最強の代表メンバーであることは確かだ。
 それぞれの課題を抱えながら3人が何を成し遂げるのか――モスクワ世界選手権の行方を見守りたい。


(写真上:ホームリンク新横浜スケートセンターでの村主章枝選手。佐藤コーチとのマンツーマンレッスンを終えて)
Photo by  K.Asakura
(写真下:佐藤信夫コーチ、佐藤久美子コーチ門下の3人の日本代表。そろって表彰台に立った03年全日本選手権。この当時、荒川静香選手はアメリカのリチャード・キャラハンコーチに師事していた)
Photo by  M.Morita

●女子シングル試合日程(日本時間)

3/16
16.00 予選 (フリー)

3/18
19.30 ショートプログラム

3/19
19.30 フリースケーティング
23.15 表彰式


フジテレビ、関西テレビ系列で放映あり。
CS J SPORTSではフリースケーティングを生放送。


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佐藤信夫コーチインタビュー〈3〉 村主章枝、無欲の挑戦

fumie1A●村主章枝、無欲の挑戦

 ソルトレイクシティ五輪5位入賞以来、日本のフィギュアスケート界を引っ張ってきた村主章枝。世界選手権出場も今年で5年連続となるが、今シーズンのこれまでの道のりは決して平坦ではなかった。グランプリシリーズの不振(スケートカナダ4位、エリック・ボンパール杯4位)により昨年優勝したグランプリファイナルには出場さえ不可能に。全日本選手権ではジュニアの浅田真央の台頭を許して3位。世界選手権出場切符は全日本選手権で与えられず、2月の四大陸選手権まで持ち越しとなったのだ。

――四大陸選手権は恩田美栄選手とワールド出場切符をかけての一騎打ち、となったわけですが、ふたりともほぼノーミスという素晴らしい試合でしたね。先生から見てあの試合の村主さんはいかがでしたか?
佐藤 かなり順調に行ったと思います。私が彼女を見始めたのは全日本選手権が終わってからですが、それ以降ずっと、あの調子で安定しています。とにかくジャンプが安定していて、練習中からほぼ同じ、いい状態できて、そのまま本番もいけた。すごく理想的な形での優勝だったんじゃないかな。

――ワールドの切符をかけて一対一。そんな土壇場に追い詰められると、彼女はいつも力を発揮しますね。ソルトレイクシティ五輪出場権をかけた01年の全日本もそうでした。こうした強さには、彼女のメンタル面に秘密があると思われますか。
佐藤 うーん、日ごろの彼女の練習や生活ぶりを見ていると、かなりきちきちっと計画性を持ってやらないと気がすまない人に見えるんです。でも実は……そうは見えるけれど、どこか大雑把なところがあるんでしょうね。

――村主さん、大雑把ですか!?
佐藤 私はそう思うんですよ(笑)。それが、ああいった大切な試合になったときに、大雑把さが開き直りに変わってうまくいく。それぐらいしか、理由は思いつきませんね。ほんとだったらもうちょっとね、土壇場になる手前でがんばっておけば、最後にあんなにあがく必要もないんでしょうけれど……。

――昨年、彼女は佐藤先生の元を離れ、しばらくアメリカにトレーニング地を移していました。その点は何か影響はありますか?
佐藤 いや、どこがどう変わった、とは特に感じません。でも向こうでひとりで生活をして、色々な苦労をして、それがとてもプラスにはなったんじゃないでしょうか。

 昨年秋、村主章枝はよりよい練習環境を求めて渡米。シカゴのロシア人コーチ、オレグ・ワシリエフの元でトレーニングを積んだ。長年慣れ親しんだ新横浜のリンクを離れて4ヶ月。しかし満足の行く結果は出ず、ワシリエフコーチの体調不良などもあって、12月の全日本選手権後にはふたたび佐藤コーチとともに練習を始めた。そのとたんの、四大陸選手権ノーミス優勝! 外野としては、ふたりの相性のよさを思わずにはいられない。
 佐藤コーチは世界選手権まで、村主章枝のメインコーチとして指導する約束をしたという。その後のことはまだ未定だそうだが、とりあえず世界選手権、村主選手は佐藤コーチの精神的なサポートを得られる。

――現在、先生と章枝さんは何を中心に世界選手権に向けて練習しているのでしょうか?
佐藤 練習の中心はこれ、というものはないです。ただ今シーズン、彼女が仕上げてきたもの、それを丁寧にまとめてひとつの形にしていくだけですね。改めてこれをテーマにああしましょう、こうしましょう、なんてことは全然ない。今そんなことをしたら、逆に彼女が築いてきたものが壊れちゃいますから。今はそういうことができる時期でもないし、また今の彼女には、その必要もないと思ってます。

――ではただひたすら、プログラムを滑り込んでいくだけ?
佐藤 そうですね。それもトレーニング的な方法で調子を上げていく、改善していくのではなく、とにかく今のいい調子を維持する、そんな方向でやっています。

――あの四大陸でのいい演技をワールドでもう一度できるように、そのために整えていく。
佐藤 そういうことです。

――四大陸での鬼気迫るような演技、そして今日の練習を見せていただいて……私は章枝さん、かなり期待できると思ってしまうのですが……。これはワールドもいけるのではないかと。
佐藤 ほんっとうに正直に言って……わかりません(笑)。もう、これだけ調子よく来てるんですから、そうなるのが当たり前だと、僕も思いたいですよ。でも試合の会場に入った時にね、様々な形で無言のプレッシャーが選手にはかかる。何がプレッシャーとしてひとりの選手の上にのしかかってくるのか、また、それがどの程度のものなのか――その都度違うわけですから、必ず練習と同じものができるとは言い切れないんです。村主に可能性はあると思います。だけど、だいじょうぶ、行けますよ、とは……やはり断言はできない。

――何が起こるかはわからない。でも少しでもいい結果を出すために、彼女にとって今の課題はなんでしょうか?
佐藤 今の彼女は、本番をノーミスで滑ることだけですね。ノーミスできちっとこなすこと、それが彼女にとっての最大の課題であり、それができたときにはまあ、少しは期待できるかな。でもわかりません、やはり世界のトップの何人かと同じ舞台に立った時に、私にとってベストの彼女が、他の人の目にどう映るのか……。それは周りの雰囲気でも大きく変わってくることですから。

――選手にかかるプレッシャーとは別の要素、その試合に流れる空気みたいなものも、試合結果を左右すると。
佐藤 記録で簡単に計れるものならば、ここまでタイムが出れば何とかなるかな、と言えるかもしれませんが……。フィギュアスケートは速さとか、記録とか、そういった明確な基準がないものです。どんなに素晴らしい演技だったと思っても、このグループに入ったら意外と目立たなかったね、ということもありますよね。逆に、あんなガサガサした演技でまだまだなのにな、なんて僕が思っていても、試合ではひとりだけ目立って良かったとか、そういうこともよくあることでしょう。

――では先生は、メダルを取りましょう、何番を取りましょう、という目標はあまり重視していない?
佐藤 いついかなる場合でも……自分が選手の時もコーチになってからも、この試合で何番になろうとか、この人とこの人がいるから君は何番だとか、そういうことは考えたことがないです。そんなことを考えたら、自分を見失っちゃうから。生徒に対しても、また自分に対しても、余計なプレッシャーはかけないほうがいい。やっぱり無欲で、自分自身がどこまでできるか、自分のすべきことをしっかりやるようにしないと。
 もちろん、目標はどのへん、とは考えます。でもそれは、できればうれしいな、という程度でしかない。我々の競技は、レースじゃない。隣のレーンを走ってる人との駆け引きはないわけですから、人がどんな演技をしようと、そんなことは関係ない。ただ自分の演技をする以外に道はないんですから。

 できる限り無欲に、村主章枝に自分のできることだけに集中させたい。
 それは、佐藤コーチが彼女の今大会での可能性の高さに大きな期待をしている、またそう思ってしまう自分に、抑えようと言い聞かせている……そんな言葉のようにも聞こえた。(続く)


Photo by  K Asakura //写真は03年、旭川で開催されたNHK杯にて。この日のフリープログラムで村主選手はトップに立ち、NHK杯初優勝

*コメントいろいろありがとうございました。少し間隔をあけてみましたが、いかがでしょうか?


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佐藤信夫コーチインタビュー〈2〉安藤美姫、4回転にかける情熱

miki3m●安藤美姫、4回転にかける情熱
04-05年シーズン、トリノオリンピックを前にしたプレ五輪シーズンということで、フィギュアスケートへの注目がにわかに高まった。特に報道が華やかだったのが、世界の舞台で勝てる、メダルの狙える選手がひしめく女子シングル。しかし安藤美姫への注目のされ方は、今までのフィギュアスケート選手とは少し違うようだ。テレビ番組、CM、雑誌と、まるでアイドルのような取り上げ方をされていることを、彼女自身と佐藤コーチはどう受け止めているのだろうか?

――今シーズンの安藤さんは、ものすごく人気が集まってしまって、あちこちで注目もされていますよね。彼女自身は変わっていないかもしれないけれど、周りがずいぶん変わってしまった。この点、佐藤先生としてはいかがでしょうか。
佐藤 うーん、これはもう、どうしようもない(笑)。僕には手の施しようがないです。ほんとはもうちょっと、そっとしてやって欲しいな、と思うこともあります。こういうのを有名税って言うんだよ、なんて人は言いますが、彼女もうまく潜り抜けていくしかないのかな。でも僕の正直な気持ちとしては……ちょっと困ってるってところかな。やっぱり彼女がこの状況に舞い上がってしまったら、困ります。
――彼女自身はどう受け止めているんでしょうか。もともと取材嫌いのところがありましたが、やはりとまどっている、嫌がっている様子はありますか?
佐藤 僕はあまりそういう話はしないですから、彼女がどう思ってるかはわかりかねますが……。
――難しいですか、あの世代の女の子は?
佐藤 難しいですね(笑)。あの年齢の子の気持ちはなかなか。もうちょっと上の子だったら、男の子だったらやりやすいというわけではないですが、でも女の子はあまりにも簡単にほいほいほいと気持ちが変わるから(笑)。

 娘である佐藤有香をはじめ、多くの選手を育ててきた名伯楽も、63歳。17歳の少女の気持ちを推し量ることは、スケートを教えること以上に難しいようだ。しかし、ころころと猫の目のように変わる彼女の心境にふりまわされながらも、父のような暖かな視線が、新横浜のリンクではいつも安藤美姫を見守っている。

 安藤美姫が注目されるきっかけとなったのは、女子として世界で初めて成功させた、4回転ジャンプ。しかし03年全日本ジュニアや全日本選手権などで成功させたこのジャンプを、今シーズンはまだ一度も公式戦で見せていない。シーズン最大の舞台となる世界選手権、果たして彼女は4回転に挑むのか、誰もが注目をしているところだが……。

――世界選手権での4回転……これはやはり、そのときの安藤さんの調子を見て、挑戦するかどうか決めていくのでしょうか?
佐藤 そうですね。新聞などでは、安藤は4回転を封印しちゃった、なんて書かれているのをよく見かけますが、そんなことは絶対に、ない。チャンスがあるならば、やはり僕もどうしても挑戦させたいし、本人もやりたがっている。どこまでも前向きに取り組んでいきたいと思ってやっています。実際、去年などよりはるかに質のいい4回転が出来上がってきていますから。
――4回転の質が上がる……この短い間に?
佐藤 できています。去年のNHK杯のころは、跳べるけれどもわずかに回転が足りない、というレベルだった。しかしその回転不足のジャンプというのが、今年からの新ルールでは、やればやるほど点数が下がっちゃう、となったわけです。よく挑戦した、とほめられるどころか、逆に結果は残らない。そのために、しばらく4回転を遠ざけたことは確かにありました。
――それを安藤さんは、とても悔しがっていましたよね。
佐藤 彼女はものすごく反発しましたよ。でも完璧にできないと絶対に跳ばせてもらえない、試合で挑戦させてもらえない、ということを悟ったんです。それで「だったら完璧にやってやる!」と思うようになった。その気持ちが功を奏したのか、彼女の4回転はいま、ほんとうに素晴らしいものになってきています。
――新ルールという壁が、彼女にとって逆にバネになったわけですね!
佐藤 先シーズンまでだったら、完璧じゃなくても彼女のレベルの4回転ならばみんなが「わあっ!」とほめてくれて、ISUも成功を公式に認めるコメントまで出したわけです。それが今シーズンになったら一転、減点だと言う。そんなのおかしい、と僕も思うんです。でもそれがISU(国際スケート連盟)の方針ということだったらしょうがない。そのことを、本人に対しては冷たく言ってきました。
――「しょうがないんだよ、ルールなんだから」と。それを彼女は納得して、新ルールに挑んだわけですね。
佐藤 それはもう、立派な打ち込み方でした。僕が見ていても、ほんとうに、唖然とするくらい……。
――彼女のチャレンジの成果がでるかどうか……。世界選手権がいっそう楽しみになりました。でも実際に4回転を跳ぶのかどうか、それは全てその日の調子次第なのでしょうか? それとも調子はいいけれど、ショートプログラムまでに良い順位にいるから、ここは手堅く行った方がいい、と守りに入ることもあるのでしょうか?
佐藤 コーチとしてはそうした駆け引きは考えなくちゃいけないことだと思います。でも本音は、とにかく挑戦させたい。何が何でも。しかしだからといって無謀であっていいかというと、そうはいかない。そこはやっぱり難しいところですね。「あんたいったい、どっちなんだ?」と言われちゃうかもしれませんが……。
――いえ、微妙な部分ですよね。勝てそうか、調子はどうか、様々なその時の条件を掛け合わせて、4回転を跳ぶかどうかを決めなければならない。
佐藤 ただね、人間ってずっと付き合っていると、言葉を使わなくても相手が何を考えてるか感じ取ってしまいますからね。僕が最初から「4回転はやらせない」と思っていたら、彼女から完全に可能性を剥ぎ取ってしまう。だから僕自身が、どこまでも挑戦する意欲を持ち続けなくちゃいけないと思うんです。

 4回転は安藤美姫の夢であると同時に、佐藤信夫コーチの夢でもある。そんなふたりの思いが、静かに伝わってくるインタビューだった。ふたりの夢は世界選手権の場で、花開くのだろうか? 世間の注目は集まるが、しかし佐藤コーチの視線は、すでにその先を見据えているようである。

――4回転への挑戦を視野に入れつつ、今は体の許す限り世界選手権までの数週間、彼女の足りない部分を伸ばしていく。彼女にとってはかなりきつい時期になりますね。
佐藤 やはり苦しんで苦しんで、最後の足掻きをすることになるでしょうね。それが、本番でどう出るかわからないけれど……。でもそうやって苦しめば、ひとつ試合が終わった時に、またパッと大きく成長するんじゃないでしょうか。
――成長するのは、試合が終わったあとですか?
佐藤 そう、そのときの試合では、結果として出てこないかも知れません。でもひとつの試合が終わったあとに、もがいてきたものがひょこっと身についている。そして来シーズンには、確実にどこかが変わっていることになります。そのためにも、今のもがきが大事だということにになります。
――では世界選手権というよりも、次の、来年の大きな舞台につなげるために、今彼女はがんばっている?
佐藤 そうですね、それじゃあ今年の世界選手権はどうなんだ、と言われそうですけれど、でも結果的にはそうです。よくオリンピックも、一度経験すると変わるって言いますね。彼女の二度目の世界選手権も、そんな試合、彼女が成長するための試合になればいいと思っています。

 トリノ五輪で、彼女は表彰台に、メダルに手が届くか――。そんな話題に関しては、佐藤コーチは静かに笑うだけだった。今回の世界選手権に関しても、またしかり。
 私達はとかく、メダルの色、点数といった結果にばかり気をとられてしまいがちだ。しかし今の安藤美姫には、メダルの色とは関係なく、私たちの心をひきつける演技を見せる力がある。
 結果以上に、安藤美姫が大舞台で、次につながる何を得るのか……佐藤コーチとともに期待したい。


Photo by M.Morita /03年、ジュニアグランプリシリーズ岡谷大会。ショートプログラム後のキス&クライにて、安藤選手とともに点数を待つ。左は日本スケート連盟強化部・鈴木民生氏

*明日は村主章枝選手に関するインタビューを掲載します


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佐藤信夫コーチインタビュー〈1〉安藤美姫、2度目の世界選手権へ向けて

miki1M世界選手権開幕直前。日本代表選手たちの「いま」を知るために、関係者の声をお届けします。
まずは女子シングル代表の安藤美姫、村主章枝両選手を指導する佐藤信夫コーチ(新横浜プリンスフィギュアスケートクラブ)。期待を集める2選手の現在の様子を、2月下旬新横浜にてお聞きしました。


●安藤美姫、2度目の世界選手権へ向けて

 ジュニアからシニアにカテゴリーが移って1年目となる04-05シーズン。安藤美姫は初出場したグランプリシリーズで表彰台(スケートアメリカ3位、NHK杯2位)、グランプリファイナル進出(4位)、全日本選手権2連覇という輝かしい成績を残した。
 しかし充分な結果は残しつつも、新採点システムの下、セカンドマーク(PCS・総構成点(芸術点))が思うように伸びない、トレードマークである4回転ジャンプにチャレンジできない、そんな苦しみも味わった前半戦だった。
 2度目の出場、そして前回4位入賞という実績を持ってのぞむ世界選手権。直前の安藤選手の表情を佐藤信夫コーチが語った。

――荒川選手の途中棄権などもありましたが、シニア1年目で全日本2連覇。安藤さんのこの結果をどう評価されていらっしゃいますか?
佐藤 運が良かった点もあると思います。でも昨年は色々な出来事が続いた中、それをのりこえてあそこまで行けた。彼女にとって非常に価値のある優勝だったと思っています。
――この一年で安藤選手のスケートの伸びた部分、逆にまだまだという部分はどこでしょうか?
佐藤 やはり先シーズンあたりは、まだ子ども子ども、ジュニアジュニアしていた。それが今年は、かなりシニアの選手らしくなってきたんじゃないでしょうか。多少滑ってる「雰囲気」が変わってきた、そこがやはり一番の成長ですね。
――では、まだまだの部分は?
佐藤 ジャンプなどの細かい技術ではなく、全体の雰囲気。それはつまりスケーティングそのもの、ということですが、そういう「滑り」の部分ですね。ここに来てかなり出来てきたとは思いますが、それをもう一息。もう一息レベルを高めて、本格的に世界のトップグループできっちり戦えるようにならなくては。
――つまり先生からみて今年の彼女の「伸びた部分」と「まだまだの部分」は同じだと。
佐藤 そうです。以前の彼女は、これといったステップらしいステップが踏めるわけじゃなかったし、スケートがよく滑るわけでもなかった。それなのにたまたま、四回転も跳べるすごいジャンプ能力を持ってるために、皆さんに注目されてしまって……。そこで一番戸惑っていたのは、安藤本人だと思うんですが。
――「自分はまだジャンプが跳べるだけなのに、なんでこんなに注目されちゃうの?」と。
佐藤 いや、彼女はそういうことすらわからず、ただ戸惑っていたと思いますよ。ふつう、選手は様々な経験を積んで、「先生に言われたことをここまでこなした、がんばってきた、だから今、ここまで上がってきたんだ」というふうに、自分の努力を確かめながらトップ選手になっていきます。それが彼女の場合は、いきなりジャンプだけでポーンと上まで上げられてしまった。彼女としても「いったいどうなってるの?」というのが本音だったでしょう。でもそれが、少しずつですが中身が伴ってきた。今はかなりジャンプ以外の部分も充実してきています。あと、もう一息かな。

miki2a 1月の国体まで滑っていた今シーズンのフリープログラム「ギター協奏曲」。それを世界選手権では、昨シーズンのプログラム「火の鳥」に戻すことが、先日報道された。「ギター協奏曲」の漠然とした世界観を表現しきれない、と悩んでいた彼女だったが、果たして昨年のプロフラムを滑ることが得策なのか? そのあたりのコメントを佐藤コーチは控えたが、練習を見た限りでは彼女自身が「好きなプログラム」という「火の鳥」の滑りに、かなりの期待が持てそうである。

――今日の練習で久しぶりに安藤さんの「火の鳥」見ましたが、去年とはまた全然違う火の鳥! ですね。これはほんとに去年と同じプログラムなのかな、と思うほど、いい味が出ている。
佐藤 やっぱりそれだけ、成長はしてます。でも世界の大ベテランを相手にした時には、まだまだもうちょっと、です。
――スピンのポジション、ステップなど、かなり手は入れていますね。
佐藤 去年と今年では彼女の滑りも全然違いますからね。去年と同じ振りつけでは、まずリンクの中に納まらない。
――彼女のスケールが大きくなった?
佐藤 そう。体も大きくなってるでしょうし、それ以上にスケートの伸び、滑りそのものが変わってきています。去年と同じ歩数で同じステップを踏んだら、リンクを飛び出します(笑)。そこは変えざるを得ないですね。
――新しい「火の鳥」で、最後の滑り込みをしていく時期だと思うのですが、安藤さんはいま、腰の痛みを抱えていると聞きます。そこがちょっと心配なのですが。
佐藤 実はそれが一番の問題です。腰痛があるから、選手としての極限の極限まで練習に取り組むことが、ちょっとできないでいる。本当だったらもっともっと追い込んで、足腰立たなくなるまで滑り込んでいかなくちゃいけないところ。それが今、できないのが残念です
――腰痛でほんとうに満足のいくところまでの練習はできていない。そのことが、彼女のジャンプの調子などに影響するでしょうか?
佐藤 いや、ジャンプはやっぱり、あの子の一番のいいところですから。その気になったら腰が痛くてもまとめていっちゃう。できてしまうでしょう。いちばん影響が出る練習は、具体的に言えばレイバックスピンなどです。そのあたりを集中して練習させるには、ちょっと腰が心配ですよね。
 スピン、ステップ、スケーティング……。彼女のそういった部分を磨くことが、自分にできる一番の仕事かな、と思って、彼女が僕のところに来てから今日までずっと、中心に据えて練習させてきたのですが。

 心配される腰の状態は、彼女の最大の武器であるジャンプに支障が出るほどではない。しかし痛みがあるために課題のジャンプ以外の部分を煮詰めきれていないことが、現在の佐藤コーチの悩みであるようだ。
 しかしそれをさしひいても、安藤美姫の「新・火の鳥」には期待していい。練習を見た限りでは、スローパートを中心に、見違えるように動きがのびやかに、しなやかになっている。体のひねりひとつ、手の動きひとつとっても、視線が吸い付いてしまうような動きというものがあるが、その域まであと一歩まで来ているように見えた。そして何より、「火の鳥」は今の彼女にとても似合うプログラムになっているのだ。
 もし昨年の安藤美姫の「火の鳥」のビデオを持っている人がいたら、世界選手権前にぜひチェックしてみて欲しい。一年で彼女がどれだけのものを身につけたか、よくわかるはずだ。(続く)

(写真上:04年全日本選手権、フリースケーティング滑走前。安藤選手を送り出す佐藤信夫コーチ。右は佐藤久美子コーチ)
Photo by M.Morita

(写真下:04年世界ジュニア選手権。ショートプログラム後のキス&クライ。ジュニア最後となったこの試合で優勝し、初出場で世界選手権にのぞんだ。右は白井春人日本スケート連盟強化スタッフ)
Photo by K.Asakuraa


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世界フィギュアスケート選手権とは

shizuka0A
 毎年3月に開催されるフィギュアスケートの最も大きく、最も重要な国際大会。競技種目は男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスの4つ。各種目の優勝者は世界チャンピオンと呼ばれ、オリンピックチャンピオンとはまた違う、大きな称号となる。
 前年の成績により各国は各種目に3人(3組)まで選手を派遣でき、今年の日本の出場枠は、男子シングル2、女子シングル3、アイスダンス1。
 今大会は来年に迫ったトリノオリンピック前、最後の世界選手権として大きな注目が集まっている。また今年の成績は、そのまま来年の世界選手権、そしてオリンピックの出場枠につながるため、各国は万全の調子を整え、最高のメンバーをそろえてくるはず。期待の女子シングルのみならず、どの種目も見逃せない大会となりそうだ。

日本からの出場選手は以下の通り。
〈男子シングル〉
 本田武史(IMG) 02、03年3位 2年ぶり9回目
 高橋大輔(関西大学)昨年11位 2年連続2回目
〈女子シングル〉
 荒川静香(プリンスホテル) 昨年優勝 3年連続4回目
 安藤美姫(中京大中京高校) 昨年4位 2年連続2回目
 村主章枝(ダイナシティ) 昨年7位、02、03年3位 5年連続7回目
〈アイスダンス〉
 渡辺心・木戸章之組(新横浜プリンスクラブ) 昨年17位 3年連続3回目


*プレ企画として本日から4日間、安藤美姫選手らを指導する佐藤信夫コーチのインタビューを掲載します。お楽しみください。

Photo by K.Asakura /昨年女子シングル優勝の荒川静香選手。04年全日本選手権での演技


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世界フィギュアスケート選手権特集が始まります

こんにちは、Sports@niftyです。

今回、Sports@niftyでは注目の世界フィギュアスケート選手権を特集いたします。連覇がかかる荒川静香選手など、日本女子フィギュアスケート界で今注目を集める安藤美姫選手、村主章枝選手などの情報を余すとこなくお伝えいたします。

そして、今回の特集の目玉はその情報の新鮮さ!ライターである青嶋ひろの氏を初め現地モスクワからココログを利用して、世界フィギュアスケート選手権の新鮮な情報をダイレクトにお届けします。もちろん、コメント、トラックバックも大歓迎です。お気軽に感想やご意見をお寄せください。


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