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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

全日本選手権開幕直前 ジュニアチャンピオンに注目!(1) 「無良崇人の挑戦」  

Img_6238  ついに2007年の全日本選手権が開幕。男子24名、女子30名、ダンス1組の日本のトップスケーターたちがエントリーしているが、並みいるシニア選手の中、男女各3名のジュニアの選手たちが、特別推薦で国内最高峰の競技会に挑戦する。
 シニアの選手たちはシーズン後半の国際大会派遣や来シーズンの強化選手指定をめぐり大きな緊張を強いられているが、世界ジュニアなどの代表も決まっているジュニア勢は、いたってのびのび。この場に立てる喜びを精一杯表してくれるだろう。
 まず紹介したいのは、今年初めて全日本ジュニアチャンピオンとなった無良崇人選手。全日本ジュニア直前に練習地を慣れ親しんだ東京・神宮から名古屋に移す(現在は岡山と名古屋で練習)という大きな決断をした。
 新しいコーチ、長久保裕氏に話を聞いてみよう。
 
――無良選手、念願の全日本ジュニア優勝、おめでとうございます。フリーはちょっとだけ、残念だったでしょうか。
長久保 ほんとに、ごめんなさい、です(笑)。何とか逃げ切れてよかったな、と思います。

――長久保先生のところに移られたのはいつごろ?
長久保 今までもちょくちょくね、相談されたらジャンプを見る機会はあったんです。でも2週間くらい前かな(取材日は全日本ジュニア2日目。11月25日)。ジュニアグランプリの2戦目が終わって、重松直樹先生から相談されて……おれは別にかまわないよ、ということで引き受けたんです。

――無良選手にとっては大きな決断ですね。シーズン途中、コーチとともに練習環境も大きく変えるという。
長久保 そうですね、とりあえず学校はお休みをもらって。名古屋(邦和スポーツランド)でこの2週間はずーっと練習してきました。下宿は成瀬葉里子先生のところで。

――2週間という短い期間で、どんな練習を?
長久保 試合前のこの時期、ジャンプを本格的に直し始めて、元のジャンプを壊してしまってはいけない。だから最初のうちはあまり手をつけずにいたんです。でもどうしてもね……。ついつい、手をかけちゃった(笑)。特にアクセルですが、直しているうちにすごくいいジャンプが跳べる時と、以前までのジャンプをやっちゃう時と、両方があって、ごちゃごちゃした状態に今はなっています。だから今日もひとつ目のトリプルアクセルは新しい跳び方がでいいジャンプだったんですが、二つ目のアクセル(転倒)は、ちょっと元に戻っちゃった。

――今までのアクセルと新しいアクセル。これは、どこが違うのでしょうか?
長久保 他のジャンプも同じですが、彼はまだまだ、力で跳ぶことが多すぎますね。だからプログラムの後半、どうしてもバテるんです。ジャンプは力だけじゃなくて、リズムも使えるんだよ、と、これをもうちょっと覚えさせたいと思っています。もちろんシチュエーションによっては、力で跳ばざるを得ないこともあります。バテてきたときには、もうリズムで跳ぶ余裕もなくなり、何が何でも力で跳ぶしかない。そういうのは彼、上手なんです(笑)。でもここにさらにリズム、タイミングで跳べるテクニックを加えていけば、もっと強い。今、直し始めているところですが、簡単ではないですよ。彼自身の体がタイミングを感じ取れるようにならないと、なかなか直るものではない。

――ではこのタイミングで跳ぶ、ということを覚えたら……無良選手のジャンプも変わりますね。
長久保 うん、もっと流れが出てくると思うんですよ。今まではジャンプを降りても、そこで流れが止まってしまっていた。だからどうしても、セカンドジャンプを力任せで跳ぶしかなかった。今は途中経過なので、リズムをつかめばよく回っていいジャンプになるんですが、回りすぎて回転が余ってしまうことも多いんです。この調整もなかなか難しいのですが……こうした過程を経ていかないと、4回転にもたどりつきませんからね。でも少しずつ、ちょっとずつ、進歩してくれてるな、と感じています。

――楽しみですね! さらに名古屋では、若松詩子先生の指導も受けているとか。
長久保 はい。振付の方は、彼女に任せっぱなしです。このまま全日本まで……がんばらせてみたいと思います! もうがんばらせるしかないですね。そして彼が今ままで「何となくやってきた」スケートに、目標を持たせたい。それも、僕が持たせるのではなく、彼自身の考えた目標を持たせたい。その目標に向かって、自分で練習すべきことも、見つけていけるように。

photo/Takayuki Honma   text/Hirono Aoshima 


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小塚崇彦健闘! ロシアカップ5位 小塚嗣彦コーチインタビュー

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グランプリシリーズはあっという間に第5戦まで終了。ロシアカップでは中野友加里が2位に入り、2年ぶりにファイナル進出を決めるうれしいニュースが舞い込んできた。男子シングルでは、同じ佐藤信夫門の小塚崇彦も大健闘! ウィアー、バトル、ランビエールと強豪ぞろいの中、フリー4位の総合5位に。しかもフリーの技術点は74.83点と、参加12選手中、最高得点をマーク。
全日本ジュニア選手権で仙台を訪れていた小塚嗣彦コーチに、早速話を聞いた。

――小塚選手、ロシアカップフリーで大健闘のニュースが伝わってきました。
小塚 そのようですね。まだ順位しか聞いていなくて、みなさんにいろいろ様子を教えていただいていたところです。

――スケートアメリカでは8位と少し振るわなかったようですが、落ち込んだ様子などは?
小塚 敗軍の将のように落ち込むことは特になかったな。「もうちょっとこれを、こうすればなんとかなるんだ……」などと、いろいろ考えてぶつぶつ言っていたようです。直接は聞いていませんが、思うところはあったようで。アメリカから帰ってきて、次の試合までは2週間しかない。この間は、がんばっていましたね。とはいっても、親父から見れば……まだまだ取り組み方が甘い! 競技というものはもっと厳しいものなんだぞ、と言ってやりたい気持ちです。やってできないヤツじゃない、それは感じているんです。だからこそ、今のがんばりもまだまだ、「彼は良くやっている」とは思えない! もっともっと自分に厳しくしてくれること、それができたとき、どこまでのものを見せてくれるかを期待しています。

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――あたたかくも厳しい喝が入りましたが、最近は小塚選手、大学の近くで一人ぐらしをしているとか。
小塚 そうなんです。私は名古屋から中京大学に通っているので、リンクで会って、別々の家に帰っています。ひとりの部屋で、ご飯を炊いて、おかずはすぐ近くのデパ地下で買ってきて……いろいろがんばっているようですよ。

――私生活でも少し大人に。スケートの面でもブロック大会で4回転にチャレンジするなど、次のステップを見据えているようですね。
小塚 4回転、練習ではちょこちょこ降りていますね。でもまだまだ、それじゃあダメ! トウループだけでなく、これから2種類も3種類も跳べるようにならないといけない。そのためにも、普段の練習からもっと厳しいところに自分を置いて、自分自身を追いつめていってほしいですね。

どの方向に話題を持っていっても、「まだまだ!」「甘い!」の言葉に戻ってきてしまう小塚嗣彦コーチ。厳しいお父さんに「良くやったな」と言われるのは、小塚崇彦にとってスタンディングオーベーションより難しいことなのかもしれない。
次に彼の演技が見られるのは全日本選手権。更なる成長を待とう。

Photo/Masayuki Kojima(上)   Text/Hirono Aoshima
*写真上は07年中部選手権のフリー、写真下はクールマイヨールでの小塚嗣彦・佐藤信夫両コーチ。氷河をバックに微笑む偉大なるオリンピアンふたり
*小塚崇彦選手のインタビューは近日発売予定の『Cutting Edge2008』に掲載されます


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チームジャパン in  クールマイヨール!

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 フィギュアスケート日本チームのメンバーは、7月19日よりイタリアはピエモンテ州アオスタ県クールマイヨール市のフォーラム・スポーツ・センターにて、特別強化合宿を敢行中。
 イタリア・フランス国境にそびえるモンブランが目の前という素晴らしい自然環境の中、日々トレーニング、氷上練習に励んでいる。チャレンジ中のジャンプを高地で完成させようと奮闘したり、ライバルたちの新しいプログラムに真剣に見入ったり……。
 しかしオフの時間にはクールマイヨール市街に繰り出し、ジェラートやピエモンテ名物グリッシーノをほおばり、ケーブルカーに乗ってモンブランからの絶景を楽しむなど、それぞれにリフレッシュもしている様子。
 また世界のトップ選手が合宿に訪れるというここ、フォーラム・スポーツ・センター。地元の子どもたちの間でもフィギュアスケートは大人気で、日本選手たちは記念写真やサインを求められることも。
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 明日はそんな子どもたちも楽しみにしているアイスショー、「ジャパン・オン・アイス」が開催される。初めて海外で行われるチームジャパンのエキシビション。陽気なイタリアのお客さんたちの前で、どんなショーを見せてくれるだろうか。

 クールマイヨール合宿でのインタビューは「フィギュアスケート日本女子シングルオフィシャルファンブック(仮)」(9月下旬 マガジンハウス刊)、「Cutting Edge2008 日本男子フィギュアスケートオフィシャルファンブック」(10月下旬刊)に掲載されます。

photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima


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織田信成 四大陸選手権男子シングル優勝! 織田憲子コーチインタビュー(2)

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――そんな素直な彼の性格が、一生懸命スケートに向かう姿勢につながっているのかもしれないですね。
織田 ほんとうにまじめで几帳面な選手だと私から見ても思います。それが勝負の上でプラスかどうかはわからないけれど、今はその性格が、スケートががんばれる、という良い方向に行っているようです。彼にとって幸せなのは、なんといっても練習するべき課題がたくさんあること。みなさんと違って体も大きいほうじゃない。だから体のラインもそうですが、今ある良い部分を持ち味にして、もっと生かせるようにしなければいけない。ジャンプやスピンで良いものができるならば、それをもっと高めようと努力できる。本人もスケートが大好きですし、ここ数年は取り組むべき課題をみつけて努力することができているようです。

――表現の部分、それから得意のスピン、ジャンプなどをどんどん伸ばしていこうというわけですね。
織田 そうですね。でも長所ばかりを伸ばして苦手な部分は練習しない、というわけでもない。長所を伸ばしてどんどんうまくなっていけば、苦手な部分も「やらなくちゃ!」と思うようになってきます。長所を味方につけて、励みにして、短所にも取り組む力にする、そんな練習ができればと思っています。

――よく泣き、よく笑う性格もみんなから愛されていますが、リンクを離れると普段はどんな男の子でしょうか?
織田 ほんとにあのまんま、大阪の男の子ですよ。吉本大好き、漫才大好き(笑)。それからお友達がいっぱいいるのが彼のいちばん大きな財産かな。スケート仲間でも、柴田嶺君とはジュニアのときに初めて試合で一緒になってから、以来ずっと仲良しですね。お友達をはじめ、いろいろなみなさんに応援していただいてること。これが彼にとって大きな力になっていると思います。

――まだシニア一年目、これからが楽しみな織田選手ですが、コーチとして今後はどのような選手に育ってほしいと思われますか?
織田 ほんとうにスケートが好きで、自分の意思でやっているのだから……やはりいつまでたっても語り継がれるような選手になってほしいですね。「織田信成という選手がいて、これが素晴らしかったんだ」と。何かひとつでも選手として秀でた部分があれば、ずっと人々の記憶に残り続ける。そういう選手に育てられたら、と思っています。

――良いところのたくさんある選手ですが、織田信成といえば「これ」、後々まで残るものは、彼の場合、何でしょうか?
織田 彼はまだまだ若く、未完成の選手です。まだまだの選手ですし、これからまだまだ経験も積んでいくはず。だからきっと、「織田信成と言えばこれ」を見つけていくのは、これからですよね。そして何年たっても記憶に残るような本当にいいところがあるのならば、それをより良く伸ばしてあげたい。それが私たちコーチの役割だと思います。

Photo by M.Morita
*写真はグランプリファイナルエキシビションでの「スーパーマリオブラザーズ」。昨シーズンからショートプログラムで滑っておなじみのこのナンバー、衣装はもうちょっとマリオっぽいデザインも考えたと言う。「でもあんまりスタイルのいいマリオもおかしいかと思って(笑)」と織田信成選手


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織田信成 四大陸選手権男子シングル優勝! 織田憲子コーチインタビュー(1)

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 トリノ以後躍進が期待される選手たちが多数参加した四大陸選手権。
 男子シングルでは、五輪代表は惜しくも逃したが、高橋大輔とともにこれからの日本男子を引っ張っていくだろう織田信成選手が見事優勝した。 
 フリーでは序盤にアクセルで転倒し、フェンスにぶつかるというアクシデントも。しかし最後まで滑り続け、ショートプログラムのリードをキープした。日本人男子の四大陸チャンピオンは本田武史選手に続いて二人目。シニアのISUチャンピオンシップ大会、初出場初優勝は日本男子初という快挙だ。

 織田信成といえば軽やかなジャンプと柔軟性を生かしたスピンが高く評価されているが、ひとつひとつのムーブメントの美しさ、そしてその動きが映えるプロポーションの良さなども大きな武器。
 世界選手権に向け、織田信成の魅力をより味わうために。織田憲子コーチの話に耳を傾けてみたい。


――織田選手、決して大柄な選手ではないけれど、体のラインがきれいですね。脚の長さなど、まるで少女漫画のヒーローのような体型、とよく言われています。
織田 バレエダンサーなどを見ていても、素晴らしい踊り手はやっぱり体のラインがきれいに見えますよね。体を形作る線がシャープで、ぼやけてない。フィギュアスケートは氷の上でひとりきりですから、バレエ以上に「立っているだけできれい」、そう言われるスタイルの美しさは強みになると思うんです。だから体のラインを美しくみせる、この点は、いつも考えて指導してきました。ジャンプのためには筋肉をつけないといけないけれど、つけすぎて線が崩れてもだめ。体重の増減も気にして、ちゃんと毎日体重計に乗っています。体脂肪にも気を使って、理想的な数字を崩さないように、がんばってキープさせているんですよ。

――ということは、あのスタイルは持って生まれたものでもあるけれど、努力して作られたものでもある?
織田 最近の選手は素敵なスタイルの人が多いですが、彼にとってもスタイルがひとつの長所であるならば、より生かせるように。より良いラインを作っていければ、大きくアピールできるはずです。そのためには、氷上での練習だけでなく、陸に上がってからも大きな努力が必要になるのですが。

――織田選手は比較的早くから、本格的な陸上トレーニングに取り組んでいると聞きました。
織田 フィギュアスケートの選手に合ったトレーニングメニューを、専門の方に作ってもらってそれをこなし、バレエのレッスンにも通って……。たとえばヒップなど、お肉がつくとすぐに下に落ちて、ラインは崩れてしまいますよね。若いうちはそれでもまだぷりぷりしているけれど、20代になるとヒップも落ちやすくなってしまう。でも年を重ねても、お尻ひとつとってもいいラインがキープできるように、今から崩さないためのパターンを作っていければいいな、と思っています。本人も少しずつ意識して、バレエも一週間に通う日程をもう一日増やしたり……それなりに考えているようですね。

――日々の努力で保っているきれいなラインがあるからでしょうか。「座頭市」などを見ていると、すっとしゃがむだけでぞくぞくっとする瞬間があります。
織田 スタイルも大事ですが、そのうえで必要なのはきれいなポジションを取ることですよね。手のポジションひとつとってもそうですが、たとえば楽しい気持ちを表すときの手の高さ、苦しい気持ちを見せるための手の位置……それはぜんぜん違うものです。もうちょっとだけ手が上に上がれば、もっとこういう気持ちが伝わるのに、というポジションがある。皆さんが見て「いい動きだな」と思っていただけるかどうかは、そんなちょっとした体の表現、ポジション次第だと思うんです。ジャンプを確率高く跳ぶことももちろん大事だけれど、フィギュアスケートは芸術性が高いスポーツ。私はもっとこうした部分を大事にしたいと思っています。ほんとうに細かいところをつきつめていったら、音楽と体の表現とが完璧に一致する、そこまでのものが、フィギュアスケートでできるんじゃないか、と思うんですよ。

――ジャンプを跳べることはもちろん。さらにプラスアルファが必要になってくる、と。
織田 選手たちにしたら、きついことです。ジャンプも正確に決めたうえでひとつひとつのポジションにまで気を配ることは。でも、常に意識をそこにおくことで、慣れていく、体にきれいなポジションを覚えさせることはできると思うんですよ。

――美しい体の線のキープ、ポジションの美しさへのこだわり。織田先生のそういった考え方は、どこから影響を受けられたものでしょうか。
織田 実は私自身、スケートは始めるのが遅くて、小学校5年生くらいからなんです。でも3歳からバレエをやっていて、子どものころはバレリーナになるのが夢だったんですよ。独身のときはスケートではなくバレエの教師をしていました。それがたまたま、結婚したら近所にリンクができたので、フィギュアスケートの指導を頼まれてしまった(笑)。それから高槻でスケートのコーチをさせていただいて20何年……というわけなんです。

――では織田選手も、小さいころからバレエをみっちり仕込まれてきたわけですね。
織田 いえ、実は彼がバレエの教室にきちんと行きだしたのはここ数年のことなんです。スケートのプログラムを作るときに、表現の部分で「ここはこうよ」と教えることは以前からありました。でも中学生、高校生の男の子に、表現するのにここまでやれ、と言っても、なかなか素直には聞いてくれませんよね。彼もちょっと嫌がりました(笑)。ましてや私はコーチでもあるけれど、母親ですし……。

――反抗期は激しかった、なんて織田選手自身も言っていました。
織田 それなら他の人のところでレッスンを受けた方が、表現の大切さも理解してくれるんじゃないかと、バレエは外の先生に習わせることにしたんです。そうしていくうちに、やっぱり私の言うポジションの大切さも理解して、納得してくれるようになった。手の位置はやっぱりこうした方がきれいなんだ、もっと気を配った方がいいスケートができるんだ、そんなことがわかると、私の指導に対しても、ある程度信頼を持ってくれるようになったかもしれません。それからは表現の部分をしつこく言っても嫌がることなく、手の先まで、足のつま先まで、がんばって気を使うようになりましたね。(織田憲子コーチインタビュー(2)へ続く)

*織田信成選手へのインタビューは、発売中の「日本フィギュアスケートトリノ五輪&世界選手権応援ブック」(実業之日本社)、そして2月3日発売の「COLORS――フィギュアスケート男子シングルフォトブック」(あおば出版)に掲載されています
* 写真は昨年12月グランプリファイナルフリーの「座頭市」
Photo by K.Asakura


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恩田美栄選手、引退は未定

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全日本選手権で渾身のノーミス演技を見せ、会場を大いに沸かせてくれた恩田美栄選手(写真はフリープログラム)。
一部メディアで現役引退が報じられたが、本人は自身のファンページでもこの報道を否定。思わぬ事態に「私もびっくりしている」とコメントを寄せてくれた。
現在はカナダに滞在中、間もなく帰国予定。一時期は引退も考えたというが、公式に口にしたことはなく、今後の進路については検討中だ。
「今はどうしたらいいのかわからない。もう少し考えさせてください」という恩田選手の動向を見守りたいが、全日本選手権ではベテランながらあれだけの成長ぶりを見せ、さらなる飛躍の可能性を感じさせてくれた。現役続行を強く願わずにはいられない。

いま、何かを掴もうとしている恩田美栄にとって、フィギュアスケートは必要なものだろう。
フィギュアスケートにとっても、恩田美栄はまだまだ必要な選手だ。

Photo by M.Morita


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NHK杯女子シングル出場 中野友加里インタビュー 

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今シーズンはスケートカナダでトリプルアクセルを決め、3位入賞。グランプリシリーズで初の表彰台に上った中野友加里が、第二戦NHK杯に登場する。
11月上旬には台湾で開催されたアジア選手権にも出場し、優勝(2連覇)。ここでもトリプルアクセルを成功させ、GOEで+判定も得た。
6月のドリームオンアイスではしっとりした演技と美しいスケーティングで観客を魅了し、新たなファンも急増中。中野友加里は今いちばん波にのっているスケーターのひとりだ。
初めての挑戦となるNHK杯を前に、胸のうちを語ってもらった。

――友加里さんにとっては初めてのNHK杯、やはり向かう気持ちは、他の試合とは違いますか?
友加里 はい、やっぱり特別ですね。初めて出る、ということもあるし、一戦目のスケートカナダで3番をとれたこともあるし……。今のこの調子を、維持できればいいなという気持ちはあります。

――NHK杯、小さなころの思い出はありますか?
友加里 フラワーガールを1回かしたことがあります。多分名古屋で開催の時かな? はっきりは覚えてないんですけど、誰かのサインをもらった覚えはあります。あ、そうだ、ボナリー(フランスのスルヤ・ボナリー)がいた気がする!

――ボナリーが優勝したのが92年と93年。その前後だとしても、もう10年以上前のことですね。
友加里 それから99年かな、ジュニアの一年目に名古屋で開かれたNHK杯のエキシビションに出たこともあります。だから過去2回ですね。

――ということは、NHK杯の氷の上に立つのは3度目。フラワーガールとして、ゲストスケーターとして、そして今度は選手としての登場というわけですね。今シーズン、グランプリシリーズ2戦目があること、それがNHK杯だということを知ったのは?
友加里 スケートカナダ行く直前、出発前日に内定という話を聞いたのかな? 正式に決定したことは、早稲田スポーツの記者の人から聞きました。聞いたときは……ああ、決まったんだあって(笑)。今まで出たグランプリシリーズは全部海外の試合ばかりなんです。今度は初めて日本ということで、日本人として恥ずかしくないような演技をしたいです。

――海外より国内の試合の方が滑りにくい、緊張する、という選手も多いようですが?
友加里 うーん、でも応援してくれる人がたくさんいると思うと、やっぱりうれしいです。私の演技でみなさんが盛り上がってくれれば!

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――そんな日本のみなさんに見せたいのは、どんな演技でしょう。
友加里 カナダでは3番に入れたけれど、決して出来はベストではなかったんです。ショートプログラムでもミスをしたし、あとでDVDをみたら表情も固かった。もう、最初から最後まで固かったですよね。練習みたいにうまくできなかったので……。だからNHK杯では練習どおりに。ほんとに練習どおりにできさえすれば、私は満足なんです。もちろん結果も大事ですけど(笑)。

――結果も大事? 次でうまくいったらファイナル、ということも意識しちゃったり……?
友加里 結果も大事だと思います。ファイナルも……そうですね、でも私の場合、2位以上じゃないとダメじゃないですか! ちょっと厳しいですよね(笑)。だからファイナルのことも、表彰台のこともあんまり意識せずに、自分の演技に集中して滑りたいと思います。カナダでひとつ良かったのは、あまり他人のことを意識しなかったこと。いつも気になって見ちゃう、他の人の公式練習もカナダでは見なかった。だからいろいろなことを意識するよりも、初めてNHK杯に出られること、そのものを楽しみたいです。先生からも毎日言われてるんですよ、楽しく滑ることがいちばん! って。

中野友加里がこれから何度か立つだろう、NHK杯という舞台。
しかし初出場のNHK杯は、後にも先にも、この一回だけのことだ。
きっといつまでも忘れないだろうこの試合が、中野友加里にとってひとつの美しい記憶になることを祈りたい。
そして彼女に花を届ける小さなフラワーガールたちが、10数年のち、この日の中野友加里の演技を思い出してくれるような、そんな演技が見られたらいいな、と思う。
今シーズンの中野友加里なら、きっと見せてくれるだろう。

Photo by K.Asakura & M.Morita
写真上は優勝した東京選手権のショートプログラム「ムーランルージュ」
下は1日の公式練習 


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チャイナカップ 浅田真央2位! 山田満知子コーチインタビュー

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グランプリシリーズ第3戦チャイナカップ、女子シングルで日本の浅田真央が2位、荒川静香が3位に入った。

浅田真央は昨シーズンの世界ジュニアチャンピオン。この試合がシニアデビュー初戦となったが、プレッシャーをはねのけて世界チャンピオンスルツカヤに次ぐ2位!
同じ大会で世界ジュニアチャンピオンとなった織田信成(スケートカナダ3位)とともに、シニアデビュー戦で表彰台という快挙を成し遂げた。
ジュニアとシニアの間の壁は厚い。ジュニアでチャンピオンになっても、シニアでなかなか活躍できない選手、伸び悩んでしまう選手は数多い。そんななかでの織田信成、浅田真央の大健闘は世界を驚愕させたことだろう。

また、スケートアメリカ3位の恩田美栄、スケートカナダ3位の中野友加里に続き、山田満知子コーチの元で育った選手たちがグランプリシリーズ3大会連続で表彰台にのぼった。
現在は体調を崩し名古屋で療養中の山田コーチだが、のびのびと選手の長所をいかす育て方で知られるフィギュアスケート界のグレートマザー。山田コーチの復調も祈りつつ、浅田真央選手に関して聞いたオフシーズンのインタビューをお届けしたい。

――今年からシニアに挑戦の浅田真央さんのプログラム、どんなところが見どころでしょうか?
山田 いまは新採点への対策がいちばんのネックですね。スピンをはじめ、やりたいことはたくさんあります。プログラムの完成度もまだまだ、なかなか(笑)。でも今ある形を磨いて行くと同時に、プログラムを変えて行くこともどんどんしています。野辺山以降、トリプルアクセルをひとつのプログラムにふたつ入れようかな、とも考えたし、テクニックの部分ももどんどん変えています。だから最初にローリーに振付けていただいたプログラムからは形も変わってきていますね。

――プログラムを手直ししたり難しい技を入れたり……その過程は山田先生が決めて行くものですか? それとも……。
山田 真央本人がそのプログラムをどう思うか、その技を入れることをどう捉えるか、によっても変わりますね。でも今はとりあえず、ふたりで右往左往しながら進んでいる状態かな? 完成に向かっていろいろ手探りという感じです。

――ジャンプに関してもいろいろ悩んでいたようですね。4回転の挑戦に関しては、「絶対跳ぶ!」と言ってみたり、「跳べないかもしれない……」と弱気になってみたり。
山田 私に言われてるからかな、「あんた、そんなに簡単に跳べるわけないじゃん!」って(笑)。真央はシーズンオフの最初の頃はね、取材が来ると「真央は4回転跳べます」「今年跳んで見せます!」って言ってたのね。でも私は「あの子も楽天的だから……そんな簡単には行かないですよ」って答えてた。それを受けてまた真央に話を聞きに行くと「じゃあ、先生と勝負です。絶対跳んで見せます、先生が負けます!」なんて言ってたんですって!

――真央ちゃん頼もしい!
山田 それをまあ、最初のころはおもしろおかしくしゃべってる余裕がありました。でも、こりゃちょっとダメかなと思って、最近は多少は考えてるのかな? 跳びたいって気持ちはきっとすごくあるでしょうね。

――4回転ループ、野辺山では一度きれいに降りたようですね。
山田 野辺山のあれも、ちょっと回転が足りて無かったかな。ちょうど真央と同じ練習時間に、九州の森永浩介くん(ジュニアグランプリシリーズエストニア大会2位)がいて、あの子もやっぱりループの4回転を跳んでたんですよ。彼もまだまだ回転が足りないみたいなんですが。でも真央はもう、彼が気になって気になって(笑)。

――真央ちゃん、また男の子とジャンプ競ったりして……。
山田 そうこうしてるうちに森永君は4回転のトウループをきれいに降りたんです。それをみて今度は涙、涙……。

――泣いちゃったんですか? 悔しくて!
山田 そう。それで私が「どうするの?」って聞いたら、「もう、今日はやんない、帰る!」って練習上がっちゃったの! 泣きながら! わはははは!

――男の子相手にそこまで……。4回転への気持ちがそれだけ大きいってことですね。
山田 がんばりたい、負けたくないって気持ちはある。でも、なかなかそれだけではね! 難しいってことがだんだん、少ーしずつわかってきて、最近はちょっと言葉にも気をつけるようになったのかな。
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――でも今は、4回転をはじめいろいろな挑戦をそれほど気負わずできている。それは今年、彼女がオリンピック出場権がないから、という事情もあるのでしょうか?
山田 真央はオリンピックがないから気が楽……それはほんとにそう思います。これがもしオリンピックに行ける年齢だったら、やっぱりこんなゆったりとした気持ちで、今、真央とは接していないでしょう。今年はオリンピック行けるんだ! がんばらなきゃ! がんばって3番目に入ってトリノに行きたい! そう思ってやっているでしょうね。これもやらなきゃ、あれもやらなきゃって、大変だったと思う。でも今年はまったくオリンピックと関係ないので、真央も私もマイペースでいられる。楽ちんですよ。

――行けなくて残念、という気持ちは?
山田 もちろん残念は残念です。でも、3ヶ月遅く生まれたことを悔やんでもしょうがない(笑)。ここはいい方向で考えて。よかったね、今年はリラックスしながら練習できるからって、思うようにしています。だから次のオリンピック、4年後まで……まあ、怪我が無いように、すくすくと育ってくれれば、と思いますね。

ジュニアからシニアへ。カテゴリーを移ってすぐに大活躍の浅田真央や織田信成はすばらしい。
しかしシニアに上がってからじっくり自分を磨いて、ついに今シーズン表彰台に立った高橋大輔、中野友加里らにも拍手を送りたい(ちょうどふたりは同じ年、2002年の世界ジュニアで金メダルと銀メダル)。 さらにケガやスタミナと戦いながら若手と競う本田武史、中庭健介、荒川静香、村主章枝、恩田美栄らベテラン勢も負けてはいない。
男子も女子もすべての年代の選手たちが同じ土俵で競い合い、刺激を受けあって……このオリンピックシーズン、チームジャパンの強さはある。

Photo by M.Morita
(上:表彰式にて憧れのふたりの世界チャンピオン荒川静香選手、イリーナ・スルツカヤ選手と)
(下:チャイナカップでのショートプログラム「カルメン」)

*野辺山でのエピソードに関しては「日本女子フィギュアスケートオフィシャル応援ブック2006」の浅田真央インタビューも合わせてお読みください

*浅田真央選手に関するこれまでの記事
2005プリンスアイスワールド横浜公演レポート(2)浅田真央 はじめてのPIW


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小林宏一選手近況  「ローリーのプログラムに恥じない滑りを」

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 シニアデビューした昨年、NHK杯出場という大きな舞台をさっそく経験した小林宏一選手。
 ジャパンジャージを着る選手の中では最も大きな身長(177cm)に恵まれ、ジャンプもスピンもきれいに決まれば日本人離れしたダイナミックさで魅了する。
 滑っている自分をたくさんの人に見せたい! という気持ちも旺盛で、どう踊れば人目を惹くか、そんなことも生まれながらに知っているかのような華がある。
 これから何年後かに来るであろう「日本男子シングル黄金時代」、その時代を確実に担ってくれるスケーターのひとりに、話を聞いた。

●05年5月28日 関東学生フリースケーティング選手権大会にて

――昨年はNHK杯のあと、アメリカでのトレーニングを経験したそうですね。
小林 はい。ニューヨークのリュウ先生のところで4回転を跳ぶためのレッスンを積んできました。手ごたえはありましたね。4回転はだいぶコツをつかめてきたし。何しろ今年はオリンピックがあるので、気合を入れていかないと!

――やはり目標はオリンピック出場!
小林 3歳でスケートを初めてから、ずっと見てきた夢。最終目標はオリンピックです。

――迎えたトリノ五輪シーズン、小林さんは素晴らしいプログラムを用意したようですね。
小林 今年はフリーが「エキゾチカ」というCDの中の一曲、すごく好きな曲です。以前プルシェンコがフリーで使っていた曲で、2000年のNHK杯での彼を見てからずっと使いたいと思ってて……。ずっと探していたんですけど曲名もわからなかった音楽が、今年になってやっと見つかったんです。

――5年越しでやっとめぐり合えた音楽! 今日の試合でもすごくエレガントで、振り付けもはっと目を見はるような動きがたくさんありました。
小林 でも今日はまだ滑り込みが足りないから、振りがあちこちで抜けちゃって……。まだまだあんなものじゃないんです、ローリーの振り付けは。

――ローリー? 振り付けはローリー・ニコルさんですか?
小林 はい! 今回ローリーに出会えて、今までの自分が「いかに何もやってなかったか」が良くわかりました。とにかくプログラムの内容が濃い。そして、滑っていて楽しい! 曲のメリハリに合わせてサーキュラーステップ~ストレートラインステップと、どんどん盛り上がってくる。今日はこんなだったけれど、シーズンに入ったらちゃんとこのプログラムの完成形を見せたいです。

――有名な振付師の作品、というだけでなく、このプログラム自体を小林さんがものすごく気にいってるわけですね。
小林 このプログラムを滑ってると、スケーターとしての僕のすべてを出してくれてる、という実感があります。だからローリーのおかげでスケートがすごく楽しくなりました。いいプログラムを作ってもらったことで、やっと「このままじゃいけないんだ!」とも思えた。ショートプログラムも「マキシム」というアルバムからの一曲でノリノリの曲ですが、これもローリー振付けです。

――ショートもフリーも、音楽だけ聴くと、ちょっとローリープログラムのイメージとは離れた印象がありますね。
小林 そうなんです。ローリーというと村主章枝さんとかティモシー・ゲーブルとか、今まではクラシック系の音楽に振付けるのが得意、っていう印象があったと思う。でも本人はもっと違う音楽も好きみたいなんです。今回、僕のプログラムを手がけて「私、こんな振り付けしたことないわ!」って言ってくれました。

――ローリー・ニコルにとっても、新境地を開拓しえたプログラムになったのかもしれない。
小林 ローリーが「クラシック音楽じゃなくても、こんな振り付けもできるのよ」っていうところを、僕のプログラムで世界に見せたいって、思います。やっぱり世界のトップの振付師にお願いできたわけだし、ローリーの名をけがしたくない。そのためにも「ちゃんとやんなきゃ!」と思います。今年はこのプログラムで、終わったあとにガッツポーズしたいですね!

――プログラムには大いに期待できる。となると後の課題は、ジャンプですね。
小林 ジャンプ……自分では跳べるパワーはあるはずだと思ってます。あとは気持ちの問題だから、今年はどんどん攻めて行きたいですね。「ジャンプ良くなったねー」ってみんなから言われるように。

――ぜひジャンプも入った完成形のプログラム、見せてください。ところで、いまスケート以外に夢中になっていることは何かありますか?
小林 いや、今はスケートだけに集中してます!

――今年は大学2年生ですが、女の子とおつきあいするとか、学生生活を楽しむこともない?
小林 あ、女の子にはちょっと興味、あるかなー……。でも城田さんに「女の子はジャンプ跳んでからにしようね」って言われてるんで(笑)。しばらくはスケートだけです!

 
yukari-koba
 日本選手で最もショーマンシップに富んだスケーター、小林宏一。
 しかし今年のDreams on Ice 2005では、残念ながら彼の姿を見ることはなかった。ショーでは何倍も輝く彼の滑りを楽しみにしていたお客さんにとっては残念なことだったし、ショーで滑ることが大好きな小林宏一自身が、誰よりも悔しい思いをしたことだろう。
  ローリー・ニコルのプログラムを得たことにより、彼のスケートが新たにどんな色を放ってくれるのか、今シーズンの演技を楽しみに待ちたい。
 そして年末のMedalist on Ice には、ぜひ元気な姿で戻ってきてくれることを期待したい。
 


 このインタビューを収録した関東学生フリースケーティング選手権大会は、大学のクラブチーム対抗試合。日本代表選手たちもふだんのジャパンジャージではなく、それぞれの大学のチームジャージで集合。チームメイトのジャンプが決まれば大歓声、足を踏み鳴らして応援! ふだんとはちょっと違う、体育会系のノリでシーズンオフの試合を大いに楽しんでいた。(写真右は中野友加里選手)


*小林宏一選手に関するバックナンバー →第7回プリンスアイスフェスティバルレポート(2)

Photo by K.Asakura


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浅田舞選手近況 「スケートは続けていきたいです」

maidoi
 世界ジュニア選手権4位入賞2回。今シーズンは全日本ジュニア2位、インターハイ優勝。
 ジュニア女子トップ選手の一人として活躍中の浅田舞選手が先日「第2回 国際モードルオーディションORIBE」でグランプリを受賞したことが、大きく報道された。一部スポーツ紙やテレビ等では「フィギュアスケート界を引退、モデルに転身」などと報じるところもあったようだ。
 しかし舞選手自身は今後も芸能活動に専念するのではなく、フィギュアスケートも続けていきたい、という意向。来シーズンもステージの上だけでなく、氷の上で元気な姿が見られそうだ。

 舞選手は妹・浅田真央選手とともに7歳よりフィギュアスケートをはじめ、2002年から2004年まで3期連続で全日本ジュニア2位。ジュニアグランプリファイナルや世界ジュニア選手権などジュニアの国際大会にも多数出場。03-04シーズンからは日本スケート連盟のジュニア特別強化選手にも選ばれており、今後も活躍が期待される選手だ。
 しかし昨シーズンはケガのためジュニアグランプリシリーズで不調(ベオグラード大会5位)。全日本ジュニアでは優勝した妹・真央選手とともにワンツーフィニッシュを飾るも、3年連続となる世界ジュニア選手権への出場はならなかった。
「舞は10年間、スケートだけをがんばってきました。でも昨年はケガや思うような成績が出なかったこともあって、スケートへの意欲を保てなくなってしまう日々が続いたんです。世界ジュニアのような大きな試合に向けてがんばらなきゃ、という思いはあったけれど、気力と体がついていかず、一年間ずっと苦しみ続けていました」と、舞選手の関係者は語る。
 注目を集める妹とふたりで競い合っていく状況も厳しかったようだ。一時期は家族がひっぱるようにしてリンクに連れて行く時期もあったが、なかなかスケートに向けて前向きになることは難しかったという。そんな気持ちが野辺山合宿での接触事故、ケガなどにもつながってしまった。
「真央とは違い、舞はこれまで、自分の持つ力いっぱいいっぱいのところでがんばってきました。能力が上の真央と競うようにして、ともにトップクラスを目指して来たんです。でもずっとこの世界しか見てこなかったためでしょうか、『スケートへの意欲がなくなってしまったら、こうなってしまうのか』と私たちも愕然とするほどの落ち込みようでした。最大の努力をして一時は日本の代表に選んでいただけるまで来ましたが、もう無理はさせられません。今の彼女には『スケート以外の何か』も必要なんです」(前出関係者)
 彼女自身、スケートに邁進していた10年間は、自分のやりたいことを考える時間もチャンスもなかった。しかし思うような成績が出なかった先シーズン、初めて「スケート以外の道」を考えるにいたったのだという。
「16歳という大人になりかけの年頃でもありますし、ただ『がんばれ、がんばれ』と続けさせてきた子ども時代とは、もう違う。今は私たちも舞の気持ちを大事にしたい。彼女には彼女の歩く違う道があってもいいのでは、と思ったんです」
「スケート以外の、他のこともしてみたい。できるかもしれない」
 と彼女が思ったとき、開催されたのが「国際モードルオーディションORIBE」だ。このオーディションは岐阜県の繊維街を活性化するためのイメージモデルを募集するオーディション。舞選手のお母さんが岐阜出身でこの地域には縁もあった。
 地方都市の小さなオーディションということで、舞選手は「フィギュアスケート以外にもできること、それを探すきっかけになれば」という気持ちで応募。決してこれを機に競技引退、芸能界転身を決意しての参加ではなかったという。
 しかし本人や家族の気持ちとは裏腹に、世界選手権の盛り上がりや妹・真央選手の活躍とあいまって報道ばかりが過熱。「有名フィギュアスケート選手が芸能界に転身」と大きく取り上げられてしまったわけだ。
 彼女自身は現在もスケートの練習を続けているが、引退報道が一人歩きしてしまったため、「なぜ引退しちゃうの?」、また「やめちゃうのに何で滑ってるの?」という声をかけられることもあり、少々困惑気味という。

 彼女はこれからもスケートを続けていく。しかしそれは、真央選手のように世界のトップを目指して練習に試合に、全力をかけていくという続け方ではないかもしれない。ただ浅田舞はスケートを滑ることが大好き、という気持ちにはなんら変わりはない。
 またモデルとしての活動も、チャンスがあれば取り組んでいきたいが、そのために東京に移住する、固い決心で芸能界に乗り込んでいく、という予定も今のところない。
 オーディションを主催したホリプロ側からも「今までがんばってきたフィギュアスケートを辞めてしまう必要はありません。芸能活動は競技生活を終えた後でも遅くはない。何をするにしても準備、勉強は必要ですから」と彼女の気持ちを支持する構えだ。
「オーディションが終わってまだ1週間。舞の気持ちがこれからどうなっていくかはわかりません。でも私達はふたりの子どもが元気で輝いていてくれれば、それでいいと思うんです」そんなお母さんの言葉にも、とかく少ない情報から憶測ばかりを語りがちな私たちは耳を傾けなければならないだろう。

 世界のトップで戦っていくためには、常人が想像を絶する努力、そして強い強いモチベーションが必要だ。フィギュアスケートの場合はそれに加えて、氷上練習やトレーニングに割かなくてはならない長い時間、またリンクの確保、遠征、衣装、プログラム制作などに莫大な費用もかかる。
 アマチュアの選手たちはひとりひとりがそうした犠牲をはらって競技を続けていることを私たちは忘れてはならない。これは浅田舞選手に限らず、真央選手、また他の選手たちでも同じこと。選手として続けていく気持ちがいつ薄れてもなんら不思議のないほど厳しい状況で、彼ら彼女らは戦っている。
 浅田舞を応援する気持ちのあまり、人々は「スケートをやめて欲しくない」「どちらかに専念してほしい」といった思いを彼女に押し付けてしまうこともあるだろう。
 しかし彼女もまだたったの16歳。スポーツ選手と言ってもアマチュアだ。誰かのために何かに打ち込まなければならない義務もないし、好きなことを好きな姿勢で取り組む自由がある。
 浅田舞が自分の歩みたい道をゆっくりゆっくりと見つけていくこと。そして見つけた道を堂々と歩いて行ってくれることを心から願いたい。

Photo by M.Morita(昨年6月、ドリーム・オン・アイスでの浅田舞選手)


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