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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

トリノ五輪閉幕 ――フィギュアスケートは好きですか?

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 多くのフィギュアスケートファンが待ちに待っていたトリノ五輪。
 振り返れば15日間の熱戦は夢のように、あっという間に過ぎ去ってしまった。

 一番大きな印象を残したのはやはり荒川静香選手だろうか。
 彼女がオリンピック前に言っていた、こんな言葉を今、思い出す。
「トリノでは、私の演技を見てもらった人に、フィギュアスケートっていいものだな、また見たいな、と思ってもらいたいんです。荒川静香の演技をまたみたい、と言われなくてもいい。私の演技をきっかけに、フィギュアスケートをもっと見たくなる、もっと知りたくなる、そんなスケートが、トリノではしたいんです」
 また、一年ほど前に語られた、日本スケート連盟城田憲子理事のこんな言葉も思い出す。
「選手たちが、オリンピックの大きな舞台で素晴らしい演技を見せる。そのとき、日本中の人々、世界中の人々を、スケートの素晴らしさで酔わせてみたい。演技を見た、スケートとはなんの関わりもない人生を送る人たちにも、スケートから何らかの力を得て欲しい。とても不遜な考えですが、フィギュアスケートはそんな力を持ったスポーツだと信じたいのです」(「日本女子フィギュアスケートオフィシャル応援ブック」より)

 荒川静香選手をはじめ、トリノ五輪日本代表選手たちは、さまざまな形でフィギュアスケートそのものに影響を与えてくれた。ほんとうにたくさんの人が、今シーズン、フィギュアスケートを楽しむようになった。

 すべてが終わった今、あなたはフィギュアスケートが好きですか?
 あんなに夢中になったけれど、トリノ五輪が終わって、もう他のことに興味を移してしまったかもしれない。また4年後、フィギュアスケートを楽しめばいいと思っているかもしれない。
 でも、それではちょっと、もったいない! 
 荒川静香や村主章枝、高橋大輔の演技に惹かれ、ちょっとフィギュアスケートがおもしろいな、と思ってくれたのなら。あともうちょっと続く今シーズン、もう少しだけこのスポーツから目を放さないでいて欲しい。
 なんといってもこれから、浅田真央が登場する世界ジュニア選手権が始まる。浅田真央にばかり注目が集まっているけれど、実はパワフルなスケートの澤田亜紀も、若々しさと大人っぽさの同居する武田奈也も、とても素敵な選手だ。
 男子シングルだって初出場の小塚崇彦、無良崇人がどこまでやってくれるのか、目が離せない。3年ぶりに出場権を獲得した柴田嶺の、もう一度立ちたかったこの舞台への思いも、受け取めたい。
 そしてこのあと3月20日からには、織田信成や中野友加里が初めて挑戦する世界選手権も控えている!

 彼らのスケートは、トリノ五輪で初めて夢中になった人たちの期待も、決して裏切らない。
 日本のフィギュアスケートは荒川静香だけじゃない、個性的な選手たちがまだ続々と登場するさまを、ぜひたくさんの人に見届けて欲しい。

 冬は、まだまだ終わらない。
 そして冬が終わったころ、きっとたくさんの人が、フィギュアスケートの本当の虜になっている。(青嶋)

写真/ロイター


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トリノ五輪記念グッズプレゼントのお知らせ

取材チームがトリノでみつけたおみやげをフィギュアスケート特集読者の皆さん11名にプレゼントします。
一部プレゼントはオリンピック出場選手のサイン入り。ページの右上にプレゼント応募フォームができますので、そちらよりご応募ください。
 公式パンフレット 3名(英語バージョン)
 公式パンフレット 3名(イタリア語バージョン)
 トリノ五輪ピンバッチ 4名
 トリノ五輪マグネット 1名
*サインは有明コロシアムで開催される「シアターオンアイス」の出演スケーターになります。

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女子シングル終了 村主章枝――4年後へ

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 「ここはソルトレイクシティ五輪だろうか?」と一瞬混乱した。この日のために新調した薄いパープルと濃いパープルを組み合わせたコスチュームは、4年前の五輪で村主章枝が着用していたものに似ており、観客席から見ると同じように見えたのだ。ヘアスタイルもどこか似ている。

 しかし、一歩踏み出すと、4年前とスケートの伸びが違う。腕や脚のポジショニングに無駄がない。差し出す腕が、これまで何度も何度も考えられ体にしみ込ませた位置にすっと決まる。やはり2006年トリノ五輪の村主章枝だった。

 最初のルッツも高く、あまり得意ではないサルコウも決めた。そして、中盤には、初めて見せるドーナツスピンも! 新しい技に取り組み、それを25歳になって初めて試合で披露する……その難しさや怖さを、向上心や探究心といったもので乗り越えていく村主章枝。それこそ、この4年間の彼女を駆り立て、成長させ、ここまでのスケーターにしたものだろう。

ソルトレイクシティ五輪で5位に入賞した村主が、4年をかけて順位をひとつ上げたトリノ五輪。しかし、「順位ひとつ」では表現し切れない4年間がそこには詰め込まれている。すでに世界トップレベルだったスケーターが、4年間でこんなにも上達する姿を体現してくれた。

 村主は、4年後のバンクーバーも視野に入れて、今後もアマチュアスケーターを続けていくという。となると4年後の彼女は、いったいどんなスケーターになっているのだろう。

日本のスケート界を引っ張ってきたスケーターがこれからもアマチュアのリンクに残ることは、後輩スケーターたちにとっても、大きな刺激になることだろう。また、これからもがんばる村主章枝を見せてくれること、彼女が着実に自らのめざすスケーターに近づこうとする道程を見せてくれること、そしてなにより、4年後の村主章枝を想像することができることが、ただただ嬉しい。(長谷川)

写真/共同通信


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女子シングル終了 荒川静香(2)パラヴェーラで見たトゥーランドット

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 演技が終わるやいなや、うわーっという歓声とともに、会場の半分くらいの観客が一斉に立ち上がった。観客席で見ていると、演技中の細かな表情まではわからない。けれど、体いっぱいで大好きなプログラムを、満足できる演技をみせてくれていることは、ダイレクトに伝わってきた。

 6分練習のときから、荒川静香はひとりだけ違う空気をまとっていた。がちがちに硬い表情をしたショート1位のコーエンやショート2位のスルツカヤと比べても、彼女は力強くしなやかな表情。かえってどきどきしているのは、男子シングルのときより確実に人数を増した日本人観客のほうではないかと思うほど。

 コーエンへの歓声をシャットアウトするためなのか、「トゥーランドット」の世界に最後までひたるためなのか……コーエンの演技中盤にリンクサイドに現れた荒川は、大きなヘッドホンを身につけていた。引き締まった表情でゆっくりとリンクサイドを歩き、ヘッドホンをはずすと、佐藤久美子コーチと笑顔を交し合った。04年、ドルトムントの世界選手権で優勝したときの彼女からも感じたように、今日はなんだか失敗する気がしない。そんな確信が、観客席にも伝わってくる。

 彼女の魅力が詰め込まれた3代目「トゥーランドット」。
前に滑ったコーエンより20cm以上も大きな荒川が、足をぐっと持ち上げ、最後には支える手まではなしてみせるスパイラルや、両腕をいっぱいに伸ばしたキャメルスピン、流れるスケーティング、みんなが待っていたカーブを描くイナ・バウアーでは右手でたおやかな動きを見せている。その直後に3回転-2回転-2回転、そして充実感に満ちた笑顔。ここで会場がさらに沸く。最後のスピンに入ったところから、もう拍手が鳴り止まない。そして今シーズン最初の10月のジャパン・インターナショナル・チャレンジでびっくりさせた、I字スピンの途中で片手をはなし氷と垂直に伸ばす振付けも、もう一度披露してくれた!

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 熱狂する会場の中心で、ライトブルーとネイビーブルーのコスチュームの荒川静香は、笑顔で大きく手を振っている。笑顔、笑顔のキス&クライでの表情がリンクの大型スクリーンに映し出されている。得点が出ると、「すごい」と口にした後、ガッツポーズを見せた。

 そうか、これが、荒川静香がみせたかったスケートだったのか! そしてそれは、ファンがずっと待ち続けた荒川静香のスケート。それを、このオリンピックでみせてくれるとは!

 ドルトムントでの「トゥーランドット」は、私たちスケートファンの脳裏に残り、今も胸を打つ。そして、トリノ五輪の「トゥーランドット」は、五輪を振り返るとき、必ず日本人が思い出すシーンになるのだ。そしてきっとこれから何度も何度も見返され、スケートファンに長い時間愛される演技になるのだろう。(長谷川)

写真/時事通信


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女子シングル終了 安藤美姫――初めてのオリンピック

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「しーちゃん、がんば!」
 女子ショートプログラム、荒川静香の演技前にそんな声援が飛んだ。選手や関係者の座るサイドから、音楽のなる直前のタイミングをみはからって響いた声。あの声は、ひとつ前のグループで滑ったばかりの安藤美姫では?
 それが確信に変わったのは、フリーの演技前のこと。荒川の演技前、やはり同じタイミングで安藤が大きな声援を送る姿を見たときだ。
 今度は2度「しーちゃん、がんば!」を響かせると、オリンピックの金メダルを獲る荒川の演技を、その演技に会場が熱くなりスタンディングオベーションと大喝采を受ける先輩スケーターの姿を、静かに見つめていた。

 彼女のトリノ五輪は、すでに終わっていた。いくつかのジャンプでミスをした安藤が最後に転倒してしまうと、間髪おかず会場から「がんばれ」の声と拍手がわきおこった。思いのほか伸びなかった得点にも、会場から再びあたたかい拍手が送られた。

拍手にはいろいろな種類がある。このトリノ五輪で安藤美姫に向けられた拍手は、まだ挑戦者としての若いスケーターへの拍手だった。それは安藤自身が一番感じているはずだ。

そしてこの日、安藤は目に焼きつけただろう。長野五輪で憧れた先輩スケーターが世界のトップに立った瞬間、会場が一番わいたことを。称賛と感激の拍手が送られたことを。

 初めてのオリンピックは15位。でもまだ18歳。現在の村主章枝、荒川静香らとは6-7歳違う。次のバンクーバー五輪を迎えるときも、安藤は今の2人よりも若い。もしかしたら、まだ開催地の決まっていないその次のオリンピックにだって出場できるかもしれない。

 表彰式後には会場の外で、帰路につく観客たちに囲まれて、安藤はサインや写真撮影に笑顔で応じていた。最初は数人のファンだけだったのが、あっという間に数十人になってしまったその円の真ん中で、安藤美姫は終始とても晴れやかな笑顔だった。サインをしてもらった外国人観客が、大喜びしている。「だれ?」「ミキ・アンドウよ、サインしてくれるみたい」「私も行ってくるわ」と話している観客もいる。

 書いても書いても終わらないサインを求めるファンたちに、最後まで丁寧に対応していた彼女。そして最後に、重い荷を置いたような表情で、「4年後に」と言い残し、安藤美姫は笑顔で去っていった。(長谷川)

写真/ロイター


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オリンピックがやってきた! トリノ市街点描(10)トリノ空港の出発ロビー

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 トリノ空港の出発ロビーには、オリンピックのオフィシャルストアがお店を出しています。オリンピック帰りの人々が、最後にもう一度オリンピック気分のショッピングを満喫する場所。

 このレジにわきに、荒川静香のグリーティングカードが! これは、フィギュアスケートの選手たちがファンやお世話になった方々へのお礼などに使う、オリジナルのカードです。「彼女は、2月のはじめころここに寄って、これを私たちにくれたのよ」と、店員さんが嬉しそうに教えてくれました。

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 すると横から「昨日(23日)、僕はフィギュアスケートを見に行ってきたんだよ。彼女はベリーベリービューティフルだった」と、アメリカに帰るおじさまスケートファンがニコニココメントしてくれました。それを聞いたレジ待ちの人々が「この選手が金メダルを獲ったの? 美しいわね」とそれぞれ話し込むシーンも。

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 そして搭乗口前で流される映像でも、荒川静香の優勝を告げるニュースが繰り返し流されていました。女子フリー翌日は、トリノ五輪関係ニュースは、これひとつだけ! なんだか、とても誇らしく嬉しい気分になりました。(長谷川)


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女子シングル終了 荒川静香(1)トリノのトゥーランドット 

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 パラヴェーラに「トゥーランドット」の最初のメロディーが流れ始めた時、あっ、と思った。
 久しぶりに見る荒川静香のトゥーランドット。
 2004年世界選手権のあの演技を知っているファンたちは、とても楽しみにしていたはずだ。
 また、2001-2002年、この曲で初めて滑ったシーズン。残念ながらソルトレイシティ五輪出場を逃した年の荒川静香を覚えている人は、トゥーランドットで滑る彼女をオリンピックで見ることができるとは……そんなうれしさに包まれたことだろう。
 「トゥーランドット」は荒川静香自身が、ぜひこの曲で滑りたいと、当時振付を担当していた佐藤久美子コーチに提案したという。それほど、彼女自身も思い入れの深い曲だ(佐藤信夫・佐藤久美子著『君なら翔べる!』より)。

 しかしその最初のメロディーが鳴った瞬間。
 私はこの選択は誤りだったのではないかと思った。
 この曲を聴くと、どうしてもあの世界選手権での神がかり的な演技を思い出してしまうのだ。
 フィギュアスケートのプログラム作りにおいては、過去に名作として高い評価を得たパフォーマンスの音楽を、避けて通る選手が多い。トーヴィル&ディーンの「ボレロ」しかり、ヤグディンの「仮面の男」しかり。
 人々の記憶に鮮烈に残る名演技と、どうしても見る人が比べてしまうためだ。
 荒川静香のトゥーランドットもそんな一曲。時々競技会で滑っている選手を目にすると、「どうしても静香ちゃんを思い出しちゃうね」と人々はささやく。そのくらい2004年のトゥーランドットは伝説の域にある。

 そんなタブーは、荒川静香本人にとっても同じだった。
 あのメロディが氷の上に流れた瞬間、一瞬にして脳裏には2004年ドルトムントの演技が浮かび上がってしまった。これは多くのフィギュアスケートファン、そして、審判たちにとっても同じだっただろう。
 この音楽で滑る荒川静香は、あの時と同じくらいの、いやそれ以上の演技をしなければ、ドルトムントを知っている人々の心を打つことはできないのだ!
 最初のトリプルルッツ-ダブルトウループは、ドルトムントではトリプルルッツ-トリプルトウループ-ダブルループだったな……好調な滑り出しにも、そんなことを考えてしまう。

 だがそんな思いは、長くは続かなかった。
 2006年、トリノのトゥーランドットは、ドルトムントのそれとはまったく違っていたのだ。振り付けはところどころで大きく変わってはいるが、同じ振付師が手を加えた同じライン上の作品だ。しかし演じる荒川静香自身が、あの時とは確実に違う。
 たっぷり、ゆっくりと見せてくれるスパイラル。ニコライ・モロゾフ、エフゲニー・プラトフ、マイヤ・ウソワ、シェイリーン・ボーンなど、一流のアイスダンサーたちから習ったステップワーク。今シーズンになって挑戦を始めたビールマンスピン……。2年前にはなかった、新しい武器がいっぱいだ。
 またそれらの「できるだけでもすごい技」に、ひとつひとつ表情がつき始めている。Y字から手を放して見せるびっくりスパイラルなども、シーズン当初はただひたすらできることだけに驚いてしまっていた。だが今は、ただのエレメンツから、手を放した瞬間に何かメッセージが聞こえるような、そんな美しい動きに、確実に進化している。
 そして何より、あの吸い込まれるようなスケーティング! 
 荒川静香はイヤというほど感情を表に出したり、派手に上体を動かしてアピールするタイプではない。ただ、あのなめらかなスケーティングが、滑りそのもので喜びも悲しみも表現してしまう。
 ドラマチックな上半身の動きや演技も必要なものだが、それは陸の上でもできるものだ。そうではない、バレエダンサーにも役者にもできない表現、氷のステージに立つフィギュアスケーターだけができる表現を、今の荒川静香のスケーティングは見せてくれる。

 ドルトムントで3回転-3回転-2回転を決め、勢いに乗った荒川静香を、私は絶叫しながら見ていた。
 あの時のような大技こそなかったが、スケーティングをここまで極めたトリノの荒川静香は、感極まりながらも、じっくり黙って見ていたいと思った。

「たぶんドルトムントと同じ演技では、今の私は満足できないと思います」
 またドルトムントのときみたいな演技がみられるかな、という問いに、きりっとした表情で答えてくれた去年の夏の彼女の言葉を思い出す。

 同じ音楽を使いながらも、荒川静香はまったく違うトゥーランドットを演じて見せた。
 そしてトリノで、ドルトムントの自らの伝説を越えた。(青嶋)

写真/共同通信

註:荒川静香選手は過去2シーズン、ヴァネッサ・メイの演奏する「トゥーランドット」をフリープログラムに使用している。01-02年ソルトレイク五輪シーズンのトゥーランドットは佐藤久美子コーチが振付を担当。03-04年ドルトムント世界選手権で優勝したシーズンのトゥーランドットはロシア人コリオグラファー、ニコライ・モロゾフ氏が振付を担当。ふたつのプログラムはまったく別の作品である(佐藤久美子バージョンも必見です)。
今回トリノで滑ったトゥーランドットは03-04年のニコライ・モロゾフバージョンを手直ししたもの。
ちなみにキス&クライに座っていたのは向かって右が佐藤久美子コーチ、左がニコライ・モロゾフコーチ。
この4年間、たくさんのコーチの薫陶を受けた荒川静香選手だが、現在は01-02年当時のコーチ佐藤久美子氏と、02-03年と03-04年に振付師として指導したニコライ・モロゾフ氏ふたりが彼女のコーチングを担当している。

*荒川静香選手へのインタビューは『日本女子フィギュアスケートオフィシャル応援ブック』『little wings』『Stay Gold』などに掲載されています


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女子シングル終了 荒川静香選手金メダル!

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 日本人で初めてのフィギュアスケートオリンピック金メダリスト。
 そしてトリノ五輪初めての日本人メダリスト、荒川静香。

 しかしそれ以上に注目したい記録が、今回の金メダルにはある。
 それは92年アルベールビル五輪のクリスティ・ヤマグチ以来、14年ぶりに20代のオリンピックチャンピオンが女子シングルに誕生したこと。
 そして88年カルガリー五輪のカタリナ・ヴィット以来、18年ぶりにオリンピック初出場でない女子シングルのチャンピオンが誕生したことだ。

 荒川静香は、世界のフィギュアスケートファンが待ちに待った、大人の金メダリストだ。
 もちろん若い選手たちの勢い、あふれる躍動感は素晴らしい。
 しかしフィギュアスケートの女子シングルはWomen's single ではなく Ladies'singleと呼ばれているように、女性の凛とした気品が求められる競技でもある。
 今日の荒川静香の「トゥーランドット」は、まさにじっくりと長い時間をかけて熟成された大人の美で満ち満ちていた。

 話題はともすると、フレッシュな若い選手たちにばかり集中しがちだ。
 しかしひとりでも多くのフィギュアスケート選手に、若くして競技のリンクを離れてしまうのではなく、少しでも長く現役選手生活を続ける勇気を、今日の荒川静香は与えてくれたと思う。
 フィギュアスケート界全体にとっても、求められるのは若い力ばかりではなく、大人のパフォーマンスである――そんな空気を彼女の演技がもたらしてくれたと思う。

 村主章枝、恩田美栄、男子シングルでは中庭健介といった大人の魅力を持ったスケーターたちが、日本にはまだまだたくさんいる。これを機会に、彼らの魅力にも、もっとたくさんの人々が気づいてくれるだろう。
 そして何よりも、彼女の活躍をきっかけにして、選手たちが長く長くフィギュアスケートを続けていける環境がこの国に整っていくといいなと思う。
 
 おめでとう、荒川静香選手。そして、ありがとう。(青嶋)

写真/ロイター

*94年リレハンメルのオクサナ・バイウル(ウクライナ)、98年長野のタラ・リピンスキー(アメリカ)、02年ソルトレイクシティのサラ・ヒューズ(アメリカ)はいずれも10代で金メダルをとり、10代のうちに競技生活を引退。リピンスキーは現在23歳、ヒューズは20歳で、24歳の荒川選手よりも若い。
上記3人に加え、92年アルベールビルの金メダリスト、クリスティ・ヤマグチはいずれも五輪初参加での優勝。88年カルガリーのヴィットも84年サラエボ初出場時に優勝しており、二連覇の金メダリストだった。フィギュアスケート女子シングルにおいて、一度オリンピックで苦杯をなめた選手が二度目三度目のオリンピックで金メダリストになることは、なぜかほとんどなかった。

*荒川静香選手に関するこれまでの記事
女子シングルショートプログラム終了 変化を遂げたふたり
佐藤信夫 佐藤久美子著『君なら翔べる!』発売中
村主章枝・荒川静香――揃い咲く二輪の花
2005プリンスアイスワールド横浜公演レポート(1)荒川静香の変化
2005世界選手権特集


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女子シングルフリー この技に注目!

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 ついにフィギュアスケートの競技最終日となってしまった今日。
 ショートプログラムでは「これぞオリンピック!」という見ごたえのある試合を見せてくれた女子選手たちが、いったいどんな戦いを見せてくれるだろうか?

 男子シングルでも集計した「この人のこの技を見たい」アンケート、女子シングルの結果は以下のとおり。
 荒川静香のイナバウアーやスルツカヤのビールマンなど、最近はテレビや新聞でわかりやすい必殺技的な紹介をされているが……。それぞれの華麗な技ももちろん注目したい。だがフィギュアスケートのプログラムはジャンプも、スピンも、スケーティングも、すべてが融合してひとつの作品となる。個々の技を単品で捉えるだけでなく、プログラムの中でそれぞれがどう生きているのか、どんなアクセントになっているのか、そのあたりも注目して、フリーの演技を楽しんでみよう(「」内は回答者コメント)。

●フィギュアスケート特集読者が注目する女子シングル「この人のこの技を見たい」ベスト10

1位 荒川静香のイナバウアー

 すっかり荒川静香の代名詞的な技になってしまい、本人もびっくり。「ぐーっと背を反らして滑る、あの柔軟性とバランスとなめらかな滑りの融合は他の選手では見られません」しかしこのアンケートはテレビが盛んにイナバウアーに注目するようになる以前に募集したものだから、やはりフィギュアスケートファンには印象深い技なのだろう。
 テレビなどで時々、「イナバウアーは身体を後ろに大きく倒して横に滑って行く技」と紹介されているが、これは間違い。イナバウアーは脚を前後に開き、左右のつま先は180度外側に向け、片足を伸ばし、片足を曲げる、あの脚のポジションでの滑走を指しているから、上体は倒していなくてもイナバウアー。ショートプログラムで6位と大躍進したゲテバニシビリが、コンビネーションジャンプの前に一瞬だけとったポーズもイナバウアーだ。

2位 イリーナ・スルツカヤ(ロシア)のビールマンスピン 

そういえば現在の上位3名は全員ビールマンスピンをプログラムに入れている。しかし荒川静香、サーシャ・コーエンがビールマンに取り組みだしたのは今シーズンから。ずっと以前からダブルビールマンをトレードマークにしていたスルツカヤが、やはり人気だ。そのスルツカヤのビールマンも、以前は両足でできるのが珍しいだけで、決してポジションがきれいなスピンではなかったはず。しかし新採点システムの元、どんどん美しい洗練された形になっているようだ。「元祖のビールマンさんが一番綺麗なポジションだと思いますが、現役だとやっぱりスルツカヤ選手」

3位 村主章枝のスピン(アップライト、レイバックなど) 

今年の夏の野辺山合宿。黙々と練習をしている村主章枝のスピンを見て、ある男性コーチがため息をついてつぶやいていた。「うまいねえ、まったく軸がぶれることを知らない。身体が正しいスピンを覚えているんだよ」恐ろしいほど正確で、そして音楽などかかっていなくても、彼女の身体がそのまま音楽であるかのような美しいスピンだった。「サイドウェズリーニングからレイバック、そしてスピードアップ! という流れのスピンがたまらなく興奮します。そこからキャッチフットなり、ビールマンなりをしなければレベルは上がらないのでしょうが……。村主さんのあの回転が速くなる瞬間はたまりません!!」

4位 サーシャ・コーエン(アメリカ)のスパイラル 

新採点システムでは、様々なポジション変化が求められているスパイラル。コーエンも柔らかい身体を自在に操るが、どんなポジション変化よりもあの180度に脚が開くノーマルポジションスパイラルこそ、スケートファンの見たい技だろう。「角度といい手先といい、最高のスパイラルです」

5位 村主章枝のスパイラル 

コーエンや荒川静香ほど柔らかい動きは出来ないが、スパイラルの形の美しさそのもので見せるのは村主章枝。最近はキャッチフットのポジションを多く取るけれど、かつてたっぷりと見せてくれたシンプルなスパイラルも美しかった。「チェンジエッジスパイラルといえば力強さもあるクワンを思い出しますが、村主さんの大きくリンクを使うチェンジスパイラルも本当に素晴らしいと思います」

6位 村主章枝のステップ

7位 荒川静香のスパイラル

8位 安藤美姫の4回転サルコウ

9位 サーシャ・コーエンのバレエジャンプ 

10位 荒川静香のビールマンスピン 

写真/共同通信


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女子シングルフリースタート メダルではない何か

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 「日本選手団にはまだメダルがない。だから、日本には女子フィギュアスケートのメダルに期待している人が多いよ」……日本と連絡を取るたびに聞く言葉だ。
 しかし、トリノにいると、そんな話はぴんとこない。

 少なくとも、いまオリンピックが開催されているトリノに流れているのは、メダル至上の空気ではない。どちらかといえば、メダルではないものを求めて集っている観客の方が多いといってもいいだろう。もちろん、メダリストには惜しみない拍手と歓声、祝福を送るけれど、それだけではないものが、ここにはたしかにある。

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 たとえば、フィギュアスケートの観客は、いつもあたたかい。エレーナ・ソコロワのショートプログラムの演技のときのこと。序盤のジャンプにミスが出てしまった彼女は、2つめのループが1回転になってしまったとき、ほんの一瞬、気持ちが切れて演技を諦めてしまったように見えた。すると会場から1つめのジャンプ後以上に大きな「がんばれ」の拍手が沸き起こった。その拍手に応えるように、スパイラルでは笑顔も見せたソコロワ。そして最後のジャンプに成功すると、まるで優勝が決まったかのような大きな拍手と歓声がわいた。ソコロワは演技には悔しそうだったけれど、観客の方を向いて挨拶するときにはいい笑顔を見せていた。

 また、コストナーの演技前にもこんなことがあった。彼女がリンクに出てきたときから「カッロリーナ、カッロリーナ」の大歓声が響き、なかなかその声がおさまらない。が、どこからともなく「シーッ」という自制の声が聞こえてきて、コストナーの演技に集中する。もちろん、彼女の集中を乱さないようにといった意味もこめられている。

 さらに、選手の演技に会場が沸いたのに想像以上に得点が低いと、自国の選手でなくても大きなブーイング。そしてその選手を励ます拍手が生まれるのだ。

 このスポーツが大好きで、世界のさまざまなところから集まってきて、今日ここにいる。そして、国内トップになって国の代表としてこの場に来た選手たちに、敬意を持っていることが、じんわりと伝わってくる。

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 トリノは、街全体がそんなムードに包まれている。だから、パラヴェーラでフィギュアスケートの開場を待っている他国の観客に、日本の3選手とスルツカヤ、コーエン、コストナーのフリップを見せて、「誰が優勝すると思いますか?」といったインタビューを続ける日本のクルーは、かなり浮き上がっているように見える。

 外国からこのトリノ五輪観戦にきている人たちを見ると、年配の夫婦や、中高生くらいの子供のいるファミリーが多いようだ。その反面、日本の観戦者たちは圧倒的に20~30代の若者の友達同士が多い。確かに日本は遠い。とはいえ、こんなことでも、スポーツやスポーツ選手に対する敬意の相違を感じずにはいられない。そして、おじいちゃん、おばあちゃんたちが自国のジャージを着込んで熱く応援し、他国選手の健闘に拍手を送る……オリンピックを彼ら自身が満喫している。

 今日、女子フリーが行われる。日本の3選手、そして今日登場するすべての選手が、このトリノのムードの中で演技できますように。試合開始前のパラヴェーラは、きっとそんな空気で満ちるだろう。(長谷川)

写真/共同通信(右)、時事通信(中、左 最後の公式練習に臨む日本選手たち)


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オリンピックがやってきた! トリノ市街点描(9)アイスホッケー会場周辺

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 大会期間中燃えつづけている聖火は、アイスホッケーの会場近くにあります。近づけないのがちょっと残念ですが、5つの筒が絡み合ってひとつの聖火になっているのは、確認できました。

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 アイスホッケー会場前には、チケットを売ろうとする人たちがいっぱいです。フィギュアスケートではあまり見かけなかったこういった人たち。ダフ屋さんも多いけれど、一般客もたくさんチケットを売っていました。

「僕はロシアファンなんだ。でもこのチケットはアメリカvsフィンランド。だから、買わない?」と。フィギュアスケートと違って、アイスホッケーは、チケット購入時には対戦カードがわからないため、こういう事態になるそうです。

試合開始30分前になってもなかなか売れない……。定価130ユーロが100ユーロになったり、100ユーロのチケットが80ユーロでよかったり……ちょっと心が動かされます。(長谷川)


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オリンピックがやってきた! トリノ市街点描(9)新聞もフィギュアスケート一色

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 街角のタバッキ(キオスクのようなもの)に売られている新聞「LA STAMPA」。21日付けの一面に、カロリーナ・コストナー(イタリア)の写真が! 近くの席のイタリア人観客に訳してもらったところ、「今日はカロリーナの日」という意味だそう。「カロリーナはとにかくいい子なの。スケートも上手よ」とはその観客談。

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 中面には、なんと日本女子3選手の紹介記事が掲載されています。3選手の顔写真とISU(国際スケート連盟)のバイオグラフィに載っている紹介文など。そして極めつけは、「Shi-chan」などニックネームの紹介。そのほかにも、スルツカヤとコーエンの紹介ページもありました。
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 女子シングルの紹介だけで2面ぎっしり、さらに前日のアイスダンス、フリーダンス演技後のフーサル=ポリ&マルガリオ(イタリア)の写真(大見出しは「抱擁」という意味だそう)を紙面の半分くらいにレイアウトしたり……フィギュアスケートへの注目度がうかがえました。(長谷川)


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オリンピックがやってきた! トリノ市街点描(8)ピンバッジの交換

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 街や会場を歩いていると、洋服や帽子、マフラーなどになにかしらのピンバッチをつけている人とすれ違います。時には数十個のピンバッチで埋め尽くされたTシャツが、その重みに耐えられずにびろーんと伸びてしまっている人も。そして今回初めて知ったのですが、ピンバッチには不思議な魔力が! ピンバッチ収集に興味のない人でも、オリンピックの空気を吸って、周りの人のかわいらしいデザインの一品を眺めているうちに、なんだかそわそわ、ほしい気持ちにさせられてしまうのです。

 トリノ五輪のオフィシャルピンバッチは、500個前後! オフィシャルグッズストアだけでなく、土産物屋さんやスーパーなどにも売られていて、見るたびに初めて出会うピンがあって、毎回心を動かされます。

 ピンバッチを手に入れるのには、交換という手段も。道端ですれ違った人に「ピンの交換をしませんか?」と声をかけると、たいてい「OK」と。すれ違う前に、お互いなんとなく「交換したいのかな?」といった雰囲気を察知しているようです。相手の持っているピンをよく見せてもらい、ほしいピンバッチを告げ合い、ピンを交換したら笑顔でがっちり握手します。大のおとなが小さなピンを一生懸命選んでいるのは、ちょっとかわいい風景です。(長谷川)


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オリンピックがやってきた! トリノ市街点描(7)応援団は元気!

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 こちらはトリノの街でよく見かける、ロシアチームの応援団。女子シングルショートプログラムの応援を終えて会場から出てきた人々も陽気でした。ロシアグッズショップで購入できるジャケットやフリース、ジャージなどはいくつかの種類がありますが、白地に赤い模様の入ったこのジャケットが一番人気の印象です。ロシアジャージ……ときには、ロシア応援団ではない人たちが、「かっこいいから」と着込んでいる姿も。

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 また、こちらはサン・カルロ広場ですれ違ったカナダ人の男の子。ライトブルーの旗は「カナダのケベック州の旗だよ」と。マントのようで、ちょっと素敵です。顔にはカナダ国旗をイメージさせるメイプルリーフらしきものも。彼のように、旗を背負って歩いている人が多いのも、オリンピックの特徴かもしれません。(長谷川)


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世界で一番熱いリンク! パラヴェーラ競技場点描(3)ボランティアの人々

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 フィギュアスケートが行われているパラヴェーラでは、日本人のボランティアがチケット確認をしていました。イタリア在住の伊藤美香子さんは、オリンピックが好きでこの仕事をしているそう。女子シングルのフリーでも、会場のどこかでお仕事するそうです。
 「今日は9時すぎから日本選手が出てきますよ。応援よろしくお願いしますね」と笑顔でまたチケットチェックに戻っていきました。

 会場内にはボランティアスタッフがいっぱい。席を案内してくれるおじさん&おばさんたちも、親切なイタリア人ボランティアさんたちです。試合開始1時間前にもなると、みなさん大忙し。
ただ、ここパラヴェーラ……1、2階席は大丈夫なのですが、3階席のブロック表示がわかりにくい! そこで案内のおじさんボランティアに尋ねると、親切に階段を一緒に上って席を教えてくれます。が、数十分後、そのおじさんが他のお客さんを連れてやってきて「僕がブロックを間違えた。君はあっちのブロックだよ」と。そして移動した先には、やっぱりそのおじさんに席を案内された、1つむこうのブロックに座るはずのお客さんが……。そんなことが何度か繰り返されていました。

間違った席を教えられて移動しなくてはいけなくなっても、怒ったりする観客は皆無です。周りの席の観客も「あーあ、まあ仕方ないね」という顔で笑顔を向け、その日知り合ったばかりの隣席の観客と「チャオ」と挨拶を交わして去っていきます。そうやって試合開始までの時間、周囲の人たちと会話を交わし、お互いのご贔屓選手を一緒に応援する……そんなあたたかな関係づくりに、あのおじさんボランティアも一役買っていたのかも。(長谷川)


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女子シングルショートプログラム終了 ティーンエイジャーたちのオリンピック

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 ひとつ前の滑走のエレーヌ・ゲテバニシビリ(グルジア)の演技が1分ほど過ぎたところで、安藤美姫はリンクサイドに姿を現した。終始、落ち着いた表情に見える。そして、ここまでの選手で一番大きな拍手と歓声を受けたゲテバニシビリのあと、黒地の新しいコスチュームで登場。髪を切ったこともあり、「メリークリスマス・ミスターローレンス」のピアノの音が響く中、左肩をふっと落とすしぐさが少し大人びて見える。

 序盤のジャンプミスを取り戻すような力いっぱいの演技で迎えた最終盤、日本人応援団の様子が視界に入る位置に彼女はスパイラルで進んでいった。目の前を通り過ぎていく安藤に、応援団も日の丸やバナーを振り、歓声をあげて力づけた。……と、その直後、スパイラルポジションの安藤はリンクサイドに近づきすぎ、フェンスに触れてしまったように見えた。

 ジャンプでミスしたあとから、手拍子を受けたステップ、力強いダブルアクセル、上体をひねりながら前傾させてジャッジに向かっていったスパイラルまで、安藤は、元気いっぱいのジュニア時代を思い起こさせるような演技を見せた。

 しかし、オリンピックの大舞台で日本代表として演技することに加えて、たとえば直前のゲデバニシビリへの大歓声、ジャンプミスを取り戻そうとした負けん気などによってさらに張り詰めていった気持ちが、日本人応援団の前を過ぎた位置で一瞬途切れてしまったのかもしれない。自分を応援してくれる日本人観客に安心したのかもしれない。そんなちょっとしたことに揺らめくほど追い詰められたところに立って、彼女はこの日を迎えていたのだろうか。

 ジュニア時代、たびたび同じ表彰台に並んだ同世代のカロリーナ・コストーナーは、フィギュアスケート界だけでなく、このオリンピックでイタリア一番の期待の選手。「カッロリーナ!カッロリーナ!」のものすごい声援を受けて臨んだショートプログラムでは、最初のジャンプで転倒することになる。トリノ五輪は安藤美姫とコストナーの大舞台になるのではないかと言われた時期もあったが、だからこそこのふたりが、オリンピックの魔物に少しだけとりつかれてしまったのかもしれない。

 プレッシャーの中で、十代の若い選手たちは、ときに奇跡的ともいえる演技を見せる。たとえばソルトレイクシティ五輪のサラ・ヒューズのように、「失うものはない、攻めるだけだ」という状況に立ったとき、顕著に現れるようだ。
フリーは、1日おいた明日行われる。ともに第3滑走グループとなった安藤とコストナーの、のびのびとした演技に期待したい。(長谷川)

写真/時事通信


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女子シングルショートプログラム終了 変化を遂げたふたり

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 1位コーエン、2位スルツカヤ、3位荒川静香、4位村主章枝。
 トリノ五輪フィギュアスケート最後の種目、女子シングル。ショートプログラムでは多くの人が予想したとおり、世界のトップスケーター4人が、上位にずらりと顔をそろえた。
 2度、3度のオリンピックを経験しているキャリアのあるトップ選手という点では共通しているこの4人。しかしコーエン、スルツカヤと荒川静香、村主章枝の間には、ひとつ見逃せない差異がある。
 それは、コーエンとスルツカヤが前回のオリンピックでもメダル候補として戦っていたのに対し、4年前の村主章枝、8年前の荒川静香は、それぞれ挑戦のオリンピックしか経験していないことだ。
 今日の彼女たちは、いずれ劣らぬ世界の4強。しかし村主章枝、荒川静香はこの4年で劇的な変化を遂げ、切磋琢磨の末に、ついに世界に追いついたふたりなのだ。

 村主章枝のじっくり4年間過ごしてきた日々は尊い。
 ルッツやフリップは元気いっぱいだけど、踊りは一生懸命こなすだけの「章枝ちゃん」が、ソルトレイクシティでは清清しい空気で人々を魅了する表現者の片鱗を見せた。「でも、このままでは足りない」、そんな気持ちで、たくさんのパフォーマンスアートを見て、様々な音楽ジャンルのプログラムにチャレンジして。4年間を大切に、技術も精神性も積み上げるようにして過ごした結果――今日の村主章枝は、4年前の彼女とはまるきり違う姿を見せてくれた。
 フラメンコというかつての彼女には想像できなかったジャンルの音楽にのり、豊かな表情はより複雑な感情や大きな思いを表現できる域に。ジャンプをすべて成功させて以降、後半の動きは、まるでショースケーターのように大胆で魅力的だった。
 ソルトレイクシティの頃の自分、特にエキシビションの演技などは、「今見るのは恥ずかしくて仕方がないです、あれは放送禁止!」などと笑っていた彼女だが、逆にソルトレイクシティの頃の村主章枝が今日の演技を見たとしたら、どんなに驚くだろうか。
 彼女が「新しい村主章枝」を常に探してきた4年間の成果を、私たちは今、堪能している。

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 荒川静香のいい意味で行き当たりばったりに過ごしてきた4年間もまた、激動の日々だった。
 時にはまわりの状況に流されるままに、コーチや練習地を変えた。でもそのたびに、何か新しいことを吸収して、どんどんどんどん大きくなっていく。接したコーチたちみんなが、荒川静香の才能にも人間性にも惚れ込み、持てるものすべてを彼女に授けようとしたためだ。まわりの人々の熱意に比べれば淡白だった彼女の闘争心や表現欲も、少しずつ火が付き、手にに取るように磨かれていった。
 そして今日、トリノの氷の上に立ったのは、長野五輪当時とは顔つきも気持ちも別人のような荒川静香。「彼女の持ち味」とさかんに言われるスパイラルも、ほんの数シーズン前には、すぐに足を下ろしてしまう苦手なエレメンツではなかったか。氷の世界に誘い込むような凛としたしぐさも、プロラムの最後に見せた歓喜の表情も、さんざん彼女に足りない部分として指摘されてきたものではなかったか。
 「新しい荒川静香」がどんどん出来上がっていくさまを見てきたこの4年間。トリノでその完成形を見られる喜びに、私たちは浸っている。

 日本の誇るふたりのフィギュアスケーター、村主章枝、荒川静香。
 日本中が彼女たちに大きな期待を寄せているが、彼女たちは、ずっと前から世界のトップに立っていたのではない。日本の女子フィギュアスケートも、ずっと前から最強チームだったわけではない。
 ほんとうに長い間の彼女たち、そして彼女たちを支える人々の努力がやっと花開いて、今、私たちは極上の試合を楽しむことができている。

 日の出の勢いで伸びてきた日本選手たちの強さを象徴するふたり。
 どんなに若手が育ってきても、最後に底力を見せてオリンピックの舞台に立ったふたり。
 日本が世界にとても太刀打ちできなかった時代から、ずっと第一線でがんばってきたふたり。
 村主章枝、荒川静香。日本の誇るスケーター、ふたり揃ってのオリンピック。
 彼女たちのひとつの集大成を、最後まで見守りたい。(青嶋)

写真/時事通信(上)、共同通信(下)
*村主章枝選手、荒川静香選手へのインタビューは『日本女子フィギュアスケートオフィシャル応援ブック』『little wings』などに掲載されています


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女子シングルショートプログラムスタート 私たちが待つもの

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「メダルを取らないと、つまらないね」「オリンピック、盛り上がらないな」
 日本人はいったいいつから、オリンピックをそんなふうにしか見られなくなってしまったのだろうか?
 メダルというわかりやすい記号を与えられないと、ドラマを発見できない。競技の面白さも堪能できない――そんな人が、ちょっと多すぎはしないだろうか。

 メダル獲得の最後の望みと言われるフィギュアスケート女子シングルの3人には、いま、尋常でないプレッシャーがかかってしまっている。
 荒川静香が出場した長野五輪でも、村主章枝が出場したソルトレイクシティ五輪でも、また毎年の世界選手権においても、これほど過度なプレッシャーを彼女たちがかけられることはなかった。3人はこの状況に耐えられるだろうか? プレッシャーを乗り越えて、オリンピックを楽しんでくれるだろうか?
 ケガよりも新採点システムよりも、海外の強敵よりも、もっと大きなものが、ここに来て彼女たちに重くのしかかっているような気がしてならない。

 今回のオリンピック、「メダルゼロ」というごく表面的な事象だけをつきつけられて、これまでにも他競技の何人かの選手たちが、取材陣の前で頭を下げた。
「銀でごめんなさい」そう言って謝った92年アルベールビル五輪の伊藤みどりさんのことを、人々はもう忘れてしまったのだろうか。また伊藤みどりに対してした過ちと同じことを、日本人は繰り返そうとしているのかもしれない。

 しかし村主章枝、荒川静香、安藤美姫。彼女たちは気がついているだろうか。
 メダルのことばかり口にするのは、所詮、オリンピックでしかフィギュアスケートに興味を示さない、オリンピックが終わればスケートのことなど忘れてしまう、そんな人々だと言うことを。
 与えられた単純な記号にしか目を向けられない。自分自身で楽しみ方を見つけられない。 
 そんなレベルでしかスポーツを楽しめない人々のためになんか、滑らなくていい。
 がんばってここまできた彼女たちは、ただ自分のために、自分らしく、オリンピックの舞台を楽しめばいい。
 フィギュアスケートの試合は、楽しんだもの勝ちだ。リラックスして、自分らしく、ここにいる幸せを存分に感じて。そんな気持ちになれた選手がきっと、一番の力を出せる。

 ずっとフィギュアスケートを見守ってきた日本のファンは、わかっている。
 オリンピックでフィギュアスケートのほんとうの面白さに気づいてくれた人々も、わかっている。
 私たちがいちばん見たいもの、それはメダルではない。
 彼女たちが彼女たちらしいスケートをこの大舞台で見せてくれること、それだけを、心の底から待っている。(青嶋)

写真/共同通信(13日の記者会見にて、村主章枝選手)


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オリンピックがやってきた! トリノ市街点描(6)ロシアグッズのお店続報

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 以前にもお伝えしたロシアグッズのお店には、連日、ロシア人客だけでなくロシア選手ファンやチェブラーシカファン! も集っています。エフゲニー・プルシェンコやタチアナ・ナフカがキス&クライで手にしていたのも、ここのお店のチェブくんたち。お店のディスプレイは数日ごとに変えられて、いまはチェブくんがメイン! 彼らは全3サイズ。一番のチビチェブは全長10cmほどで、顔がひとつひとつ違っています。ほかに中サイズと大サイズもあり。

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 そしてほぼ毎日、このお店では新聞も発行しています。18日付けの新聞の一面トップはプルシェンコの優勝。「プルシェンコ、大好きよ!」というお店のお姉さんに見出しの意味を聞くと、「私たちが待っていたものを、彼は手にした」と、プルシェンコの悲願の金メダルをドラマティックに伝えているようです。ロシア語を読めないのが、残念……。(長谷川)

写真/長谷川仁美(上・お店にお客さんがいないのを見たことがないほど大盛況! お洋服は赤と白の2パターンあります。下・こちらが新聞。日本の一般紙と同じサイズで全4色カラーの4ページ、なのに無料です)


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