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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

世界選手権アフターレポート(1) 女子シングル 小さな国の花たち

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 世界選手権を生で見る楽しみのひとつに、予選の面白さがある。グランプリシリーズにも出てこない、テレビ放映ではまず見ることのない、そんな選手たちの演技が、世界選手権の予選では見られる。今年もまた、まだフィギュアスケートが盛んでない国、小さな国の代表たちが出場し、残念ながらショートプログラムやフリーに進むことなくカルガリーを去っていった。
 台湾のダイアン・チェンは、かつての世界チャンピオン、ルー・チェン(中国)をちょっと思い出させる容姿。いや、容姿だけでなく衣装もメイクも少し前の時代を思い出す、ちょっと不思議な雰囲気を持っていた。ジャンプはすべてダブルだったが、きれいに着氷したあとの笑顔がいい。そしてスパイラルにしてもスピンにしても決して高いレベルの取れるエレメンツではないが、素朴ながらに形がとても美しいのだ。背中は反っていないけれどきれいなポジションのイナバウアーには、大きな拍手ももらっていた。
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 韓国のチェ・ジウンは今年で3回目の世界選手権登場。四大陸選手権などにも出場しているため、日本のファンにも少しずつ名前が知られてきた存在だ。ジュニアのユナ・キムよりもスケート年齢で3つ年上にあたるが、大人っぽいキムに比べ彼女の方がずっと幼く見える。この日は昨年よりもさらにかわいらしく、髪の毛を横にふたつにまとめたヘアスタイルで登場。ひらひらと手を揺らすかわいらしい振付けとあいまって、メルヘンチックな世界を作り出していた。しかしジャンプはアクセルがシングルに、ルッツもダブルにと、ことごとく失敗。パーソナルベストの演技ができればフリー進出も可能な技術を持っているだけに、元気のなさが残念だった。それでも弾むようなダンスと、きれいにY字に上がる足、足をあげる前に先にエッジをつかみ、手足いっぺんに頭上高くかかげるビールマンスピン、ビールマンポジションを長くキープするスパイラルなど、体の柔らかさを駆使した演技は、やはり見逃せない個性を持っていた。
 彼女たちに加えてタイのタミル・スタンなどもそうだったが、アジアからの挑戦者は技術的にはまだまだ世界レベルに及ばなくとも、西洋の選手とは違う種類の繊細さで、強く印象に残るスケーターが多い。このなかから時にはジュニアのユナ・キムのような選手たちも出てくるのだろう。
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 さらに氷のスポーツとは縁遠い国、南アフリカからも、おなじみのシャリーン・ヒューマンに続く選手、ジェンナ・アン・バイズが出てきた。ジャンプで転倒するだけでなく、スピンも勢いをつけすぎて転んでしまうくらい、技術はつたない。でも若いころのポイキオを思わせるような気持ちの良い動きに、水色の清楚な衣装が良く似合う。何度も転倒して観客たちは激励の拍手を送るが、後半にトリプルを決めると、大歓声! それにきれいなビールマンスピンで応えてみせる。
 こんな彼女たちを見ていると、フィギュアスケートがより多くの国の選手によって競われれば、さらにいろいろな色の花が氷の上に咲くのかもしれない、そんなことを想像してしまった。
 また、決してメダルを争うことのないこうした選手を見ているときに、面白いと思うのが新採点システム、特にパーソナルベストという概念だ。彼女たちに限らず、あまり国際舞台でおなじみでない選手たちの演技を見ると、それが本人にとっていい出来だったのか、いまいちだったのかわからないことも多い。ダブルジャンプがいくつか入ってしまい、点数はあまり出なくても、それが精一杯の演技だという選手もいる。そんなとき「**選手、パーソナルベスト更新!」のアナウンスがあると、カナダのお客さんたちはどんな演技でも暖かい拍手で祝福する。また、失敗してしまった演技でも、パーソナルベストから何点低い演技かで、その選手の今日の出来の良し悪しの程度が、初めて見る選手でもわかる。新採点システムが、ひとつフィギュアスケート観戦のおもしろさを加えてくれたのかもしれないな――そんなことも予選では考えた。(青嶋)

写真/森田正美


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世界選手権ってなんだろう?

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 毎年、シーズン最後に行われるフィギュアスケートの一番大きな大会。この試合での優勝者は一年間「世界チャンピオン」と呼ばれ、オリンピックチャンピオンとはまた違う、大きな栄誉が与えられる――。
 そうした旧知の事実とは異なる、フィギュアスケートの世界選手権だけの持つ何かがあることを、オリンピックイヤーの今年、感じることができた。
 それは、ある種の親密さだ。
「オリンピックはお客さんみんなが国の名前を連呼していて、国別対抗の運動会みたいなところがありました。カルガリーはそれがなかったな」
 とは、木戸章之選手の言葉。確かにフィギュアスケートをよく知るカナダの人々は、選手を国名ではなくちゃんと名前で呼んで応援する。たとえカナダでなくとも、他の国で開かれる世界選手権であっても、お客さんは「ニッポン!」ではなく「織田君!」「フミエ!」と、「USA!」ではなく「キミー!」「サーシャ!」と声をかけただろう。
オリンピックとは違い、世界選手権を観戦しに来るのは、いつでもフィギュアスケートに注目しているファンたちだ。オリンピックが終わって一カ月。みんながそろそろ忘れてしまいつつあるフィギュアスケートに、相変わらず熱い視線を注いでいる人々だ。そんな、スケートをずっと好きだった人々に囲まれて、彼女たちは滑る。
今年はオリンピックイヤー。2月のオリンピックを最後に引退し、カルガリーには来なかった選手も多いなか、最後にもう一度フィギュアスケートファンの前に現れて、もう一度滑ってくれる選手がいるのもうれしいことだった。マシュー·サボイ、ペトロワ&ティホノフ、ドロビアツコ&ヴァナガス……。彼らはオリンピックで注目した不特定多数のスポーツファンではなく、フィギュアスケートファンにさよならして去っていった。これはスケートファンにとってもとても大きなプレゼントだったし、フィギュアスケーターである彼らにとっても幸せな最後だったと思う。
オリンピックイヤーだからこそ、世界選手権の存在意義がはっきりと浮き上がったこの大会――。フィギュアスケートの一番大きな祭典は、やはり世界選手権だ。長くフィギュアスケートを見続けてきたファンも、オリンピックでこのスポーツに注目した新しいファンも。
世界がオリンピックの熱から冷めたいまも、私たちはまだ、ここにいる。

写真/森田正美 


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ようこそ、サドルドーム(3)

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 ふだんからアイスホッケーの試合が行われているだけあって、サドルドームは氷のスポーツを楽しむための環境が抜群! 観客席は十分暖かいし、リンクに近い席はプラスチックの椅子の上に薄くクッションが張ってあります。これでお尻が冷える心配は無し。客席の傾斜も、上からリンクを見るのにちょうどいい角度です。
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 そしてドーム内は、いつでもいい匂いが……。ホットドッグ、ハンバーガー、ドーナツ、サンドイッチと、観客席をぐるりと囲むようにたくさんのフードスタンドがあり、全日程通っても毎日違うお店でお昼ご飯が食べられるほどのバラエティ。ポップコーンやアイスクリーム、フラッペなど、おやつの屋台もあちこちに。おなかをすかせたまま寒いリンクで震えながら観戦……などということはまずありません。
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 メインエントランスの近くには、カナダのフィギュアスケートの歴史を紹介するコーナーが(実はカード会社の宣伝ブース)。
Img023 名選手たちの記念品がたくさん展示されており、アイスダンスのビクター・クラーツさんが着ていた懐かしい衣装も。


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ようこそ、サドルドーム(2)

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 ここカルガリーは西部開拓の歴史を誇るカウボーイの街。
 サドルドームがあるスタンピード公園も、毎年7月になると世界最大のカウボーイの祭典、「カルガリー・スタンピード」が行われ、100万人以上の観光客が集まります。サドルドームもロデオ大会の会場になるそうで、そのためもあってか、プレスルームやミックスゾーンには、なんとなく馬の匂いが……。でも一週間もいると慣れてしまいました。
 スタッフやボランティアの人々も、こんなカウボーイスタイルで仕事をしています。



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 エントランスではこんな人たちもフィギュアスケートファンを歓迎。





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 ポスターもスケート靴をかたどったボロ(紐ネクタイ)とウェスタンシャツのデザイン。スケート靴のボロは会場内の売店でも売られていました。でもこのポスター、良く見ないとシャツとボロには見えない! スケート靴からはえてる竹馬みたいなものはいったい何なのだろう? と初めは首をひねっていました。





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 公式グッズショップで人気のぬいぐるみも、カウボーイハットをかぶってスケート靴を履いた牛や馬たち。

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 エキシビションのフィナーレでは選手たちも白いカウボーイハットをかぶって登場しました。よくみると客席にもおそろいのカウボーイハットの一団が。

写真下/森田正美


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ようこそ、サドルドーム

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 NHLカルガリーフレームズの本拠地としてご紹介した、ここサドルドーム。
 いつもはホッケーの試合が行われているため、フィギュアスケートの選手たちにはちょっと小さめサイズ(60×25)だ。60×30メートルの国際規格リンクで練習を積んできた多くの選手にとっては、滑りの感覚がつかみにくい様子。あやうくフェンスにぶつかりそうになるシーンもしばしば見られた。
「リンクが狭いとスピードに乗りにくいので、なかなか難しかったです。でもNHLサイズのリンクで試合をするのは初めてじゃない。今までの経験を踏まえて、調整していければと思います」とは、予選のあとの村主章枝選手のコメント。

 サドルドームはフィギュアスケートの試合やショーの舞台としての歴史も長い。スケートカナダ、カナダ国内選手権なども行われ、シーズンオフにはスターズオンアイスのツアーもやってくる。でもなんといっても1998年カルガリー五輪。数々の名場面が生まれたフィギュアスケートの会場として、覚えている人も多いのではないだろうか。
「初日、サドルドームが見えてくるにつれて……なんだかどきどきしましたね」
 と語るのは、日本チームのスタッフとして選手たちを支えている藤井辰哉さん。カルガリー五輪の日本男子シングル出場枠はトリノと同じ1枠。藤井さんは当時、加納誠選手と最後まで出場権を争い、惜しくも全日本選手権で2位。サドルドームは出られなかったオリンピックの会場ということで、20年近く特別な思いを抱き続けた場所だという。そこに、今回は日本チームのまとめ役としてやってきたのだ。
「サドルドーム、実は初めて来たんです。自分が選手としては滑れなかったリンクで、今はスタッフとして。精一杯選手をサポートしたいですね」
 一方、14歳で伊藤みどりさんとともにカルガリー五輪に出場した八木沼純子さんは、テレビのコメンテーターとしてやってきた。オリンピック以来、18年ぶりに訪れたリンク。浅田真央選手より幼い年齢で滑った会場を改めて見て、思ったより小さかったんだな、としみじみ感じたとか。

 たくさんの試合やショーが行われた場所には、フィギュアスケーターの様々な思いが集う。
 そんなサドルドームで開催された2006年の世界選手権。また、たくさんの思い出が生まれ、さらにたくさんのスケーターやファンにとって忘れられない場所になった。(青嶋)


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女子シングル終了 村主章枝フリー2位 総合2位 

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 直前に滑ったキミー・マイスナーの演技が凄かった。
 2回の3回転-3回転を含むノーミスの演技もすさまじかったたけれど、さらに驚いたのは、カナダのお客さんたちの反応だ。あとに自国の選手、ロシェットが控えているというのに、マイスナーの快演に対して、まるで自分のことのようなものすごい喜びよう、ものすごい興奮ぶり。そして自分たちをここまで興奮させてくれたマイスナーに高い点数が出ると、足を踏み鳴らし、再び立ち上がる。サドルドームは、この一週間で一番大きな熱気に包まれた。
 このなかで滑ることになったのが、村主章枝だ。
「あのスタンディングオベーション、あの歓声のなかで良く滑りました。あそこで自分を失わず、村主章枝自身の演技ができたことが、まず素晴らしい」そうほめたのは、城田憲子強化部長だ。
 ほんとうに、この人はこの場所が怖くないのだろうか?
 そう思うほど、今日の村主章枝はいつもどおりの村主章枝。なんともいえない柔らかな、彼女自身が気持ちよさげな表情で、見ている人の気持ちも穏やかにしてしまう滑り。ジャンプを跳んでも決して心地よい流れは止まらない。いつもきれいなキャッチフットのスパイラルは、その視線の先まで跳んでいってしまいそうなほど。
 ミスはいくつかあったけれど、彼女の身体にも気持ちにも、無理に張り詰めたところがない。むしろあの全日本選手権よりもナチュラルで、清らかで、ラフマニノフの旋律にはぴったり合った滑りではなかっただろうか。
 演技後、彼女に与えられたスタンディングオベーションは、爆発的なほど大きなものではなかった。人々を興奮の渦に巻き込む、そういう種類の滑りではなかったし、そういうプログラム構成でもなかった。でも、マイスナーの若さと勢いでぐいぐいひっぱる演技の興奮にはない、心地よさ。ヒートアップしたサドルドームを強引ではなく静かな力で、やさしく鎮めていくような力が、村主章枝の「ラフマニノフピアノ協奏曲2番」にはあったと思う。

 フィギュアスケートの試合には、ふたつの勝負がある。ひとつは競技として、スポーツとしていかに優れていたか、ジャッジが下す判定。もうひとつは、見ている観客たちが下す「自分たちに何かを感じさせてくれたかどうか」の判定。時として観客が喜んだ演技に十分な得点が出ず、大きなブーイングが起こることもある。フィギュアスケートがスポーツとアートの境界線にある以上、それは起こりえることだし、そこがフィギュアスケートの面白さでもある。
 キミー・マイスナーの世界選手権優勝、ジュニアでの浅田真央、ユナ・キムの活躍、トリノ五輪で注目されたエレーヌ・ゲテバニシビリ。彼女たちが伸びてくることで、来シーズン以降、女子シングルの技術が飛躍的に向上することを多くの人が予想している。とても楽しみだけれど、それはスポーツとしてのフィギュアスケートを、大きく推し進める動きになるだろう。
 現役続行を宣言した村主章枝、そしてまだ動向はわからないけれど、若い世代を迎え撃とうというたくさんのベテラン選手たち。彼女たちに期待するのは、もうひとつのフィギュアスケートの魅力、アートとしていかにお客さんを楽しませてくれるかの部分、それを引っ張っていってくれることだ。
 3回転-3回転の時代、ひょっとしたら村主章枝らは、若い選手たちに競技で勝つことは難しくなるかもしれない。でも、勝負で負けながらもフィギュアスケートはそれだけではないことを、彼女たちには見せてもらいたい。そして高度なジャンプがなくても、それ以上の演技が、観客だけでなく審判の判定さえ勝ち得てしまう、そんなフィギュアスケートも見てみたい。
 今日のキミー・マイスナーとの戦いで――村主章枝には、その覚悟が出来たのではないだろうか。(青嶋)

写真/森田正美


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女子シングル終了 中野友加里 フリー6位 総合5位  彼女の得たもの

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 中野友加里のフリー演技を待っているとき、ふっと思い出した光景がある。
 2003年の全日本選手権。高校3年生だった中野友加里は、シニアに上がって2シーズン目、大きな壁にぶつかっていた。ジュニアで世界の銀メダルまで取ったというのに、シニアのグランプリシリーズではなかなか成績が出ない。その年の全日本選手権の順位は、クラブの後輩浅田真央や浅田舞にも遅れを取る7位。不本意な出来だったフリープログラムのあと、記者たちからの質問にうつむき顔で答えると、肩を落として更衣室へと去っていった。
 そのときのほんとうにさびしげな後姿を、今日のフリーが始まる直前、ふっと思い出してしまった。「また来年がんばって!」。そんなことを言いたかったのに、声もかけられない。小さくなっていく後姿を黙って見ているしかない。次々と新星が出てくる女子シングルの戦国時代、この子はひょっとしたら、このまま大きな活躍をすることもなく選手生活を終えてしまうのかもしれない。そんな予感を勝手に感じて、切なくなってもいた。私は、まったくもって見る目がなかった。
 あれから、2年と少し。あのうなだれていた小さな女の子が、世界選手権の最終グループで滑る姿を、今見ている。

 滑走前、カナダ人のおじさんがニコニコしながら言っているのを聞いた。
「このプログラム、かわいいんだよ。見逃すなよ」
 この人は、予選の中野友加里を見たのだ。日本でもNHK杯、グランプリファイナル、全日本と試合が進むにつれて、どんどんファンを増やしていった彼女。それと同じように、ここカルガリーでも、ユカリファンは日を追うごとにずいぶん増えてきている。そんな会話が観客席のそこかしこで交わされていることも知らずに……リンクの上の彼女は、一度大きく上を仰いだ。心を落ち着けよう、落ち着けようと苦心しているように見える。
「最終グループの最終滑走。待っている間に、前に滑った選手たちへの歓声が聞こえてきて、気になってしまった。だからだんだん……緊張してしまいました。先生からも、だいぶ弱気になってたね、と言われて(笑)」
 弱気になってしまった結果――ジャンプの細かなミスを比べれば、同じフリーでも予選の方が出来がよかったということになる。得点を見ても、予選114.14点、フリー108.24点。
 でも私には、ひとつひとつの細かな動作、作り出す空気のかわいらしさ、そんなものはむしろフリーの方が魅力的ではなかったかと思う。Y字から手を離してもしっかりとポジションをキープし続けるスパイラル、その高く上げた脚の位置の美しかったこと! 中盤、ループがダブルになった直後、一瞬動揺しただろうに、そのあとの動きに微塵も焦りを感じさせない。キトリというよりもお姫様のような軽やかな動作で、次のコンビネーションスピンにつなげていったシーンも素晴らしかった。
 とにかく中野友加里の独自のカラー、気が強くてはきはきとしていて、でも少女のように初々しくて、そんな彼女の持つ空気は、緊張しながらも十分にカルガリーの氷の上に醸し出すことが出来た。
「予選からフリーまで、最後まで体がもってよかったです。でも今日の最後のジャンプ(トウループ)は跳べたはずだった。練習ではいつも跳べているジャンプなので、あの失敗がすごく悔しい。でも……何事も経験です。こういうことは、もう繰り返さないようにしたい」
 中野友加里自身にとっては満足しきれない出来だったかもしれない。でも友加里ちゃん、さっきのカナダ人のおじさんは、大喜びして手を叩いていたよ。お客さんはほんとうにあなたの演技を楽しんだし、あなたの演技をまた見たいと思っている。それは滑っていて、感じることが出来ただろうか?
「今シーズン……こうなるとはぜんぜん想像していませんでした。まさかグランプリシリーズで優勝できるなんて、ファイナルや世界選手権に出られるなんて、思ってもみなかった。今までで、いちばん充実したシーズンでした」
 誰よりも負けず嫌いな彼女は、シニアに上がってどん底を味わってからもずっと、誰もが賞賛する努力を続けてきた。きっと出られなかった大きな試合、上がれなかった表彰台、手に出来なかったメダルを思い描いて。そして今シーズン、本人も驚くほど素晴らしい成果を挙げ、大きな大会にも堂々と出場した。欲しかった、たくさんのものを手に入れた。
 しかし――私が今シーズン、中野友加里が得たいちばん大きなものは、ニコニコしながら手を叩いているあのカナダのおじさん、彼らの存在だと思う。日本で、カナダで、世界中で。今シーズン、多くの人がユカリ・ナカノを知った。彼女がどんどん上手になってどんどん輝きを増せば、どんどん彼女を見つめる視線も増える。それはきっと他の競技のアスリート以上に、フィギュアスケーターが得られる大きな幸福のひとつだ。何よりもそんな幸福を、今シーズンの中野友加里は得た。
「世界選手権、また来たいです。この場所にもまた来たいし、この最終グループで滑ることも、できるものならまた経験してみたい」
 誰もがよく知っている、現在の日本女子シングルの状況。
 もう、世界中のスケートファンがその名を知っている中野友加里。世界選手権で5本の指に入った中野友加里であっても……次の世界選手権に絶対にまた来られるという保障はない。今シーズン、確かな評価と自信を得た中野友加里であっても、また再び厳しい戦いに苦しむ日々が待っているのかもしれない。
 でも。友加里ちゃん、あなたにはあなたのスケートを待っているたくさんの人がいる。人々に「またユカリを見たい!」と思わせてしまう力を持っている。表彰台やメダルはその試合限りのものだけれど、中野友加里自身が心をつかんだファンは、彼女が彼女らしいスケートを見せ続けている限り、ずっと離れない。
 そのことは、これからまた始まる戦いのなかでも、忘れないでいて欲しい。(青嶋)

写真/森田正美


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村主章枝ショートプログラム2位  総合2位 

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 24日のショートプログラム。
 私たちは、こんな村主章枝を見たかったのではないだろうか?
 フラメンコギターの旋律にのった「トカ・オリージャ」は、今の村主章枝をもっとも魅力的に見せてくれるプログラムだ。野辺山のエキシビションで初めて披露したときから、人々は村主章枝の吸引力、パワフルな感情表現に興奮した。見に来たお客さんたちだけでなく、日本チームの後輩たちまで、村主章枝の存在感に圧倒されていた。シーズン前からあそこまで滑り込めていたプログラム、いったいどこまで行ってしまうのか? 楽しみにしていた「トカ・オリージャ」のその完成形を、ついに村主章枝は、カルガリーで見せてくれたような気がしる。
 プログラム冒頭、彼女がふっと振り向いた瞬間から「入ってる!」。「技術にとらわれて感情をのせられなかった」といった予選とはまるきり、動きの切れが違う。スーッと滑り出した瞬間もまた、ぞくぞくした。力強くてそれでいて、どこまでも伸びやかなスケーティング。
 トリプル-ダブルをきれいに決めた後は、強い気持ちを持って何かを求める人のように氷上をさまよう。美しいスパイラルはぐんぐん伸びていき、あっという間にリンクの向こうまで行ってしまう。
 ダブルアクセルを決めた後のきっとした表情は恐ろしいくらいの強さだ。強くて、怖くて、その迫力を持ったまま回る、お手本のように正確なスピン。
 実は、ノーミスの演技ではなかった。得意のはずのフリップがオーバーターン。3つしかジャンプのないショートプログラムで、このミスは小さくない。フリップさえいつもどおりに跳んでいたら……そんな声があちこちから聞こえてきた。
 でも、プログラムそのものを堪能しようとするとき、ジャンプミスはほとんど気にならなかった。一瞬のミスなど消しとんでしまうほど、誰も真似の出来ない凄みがこの日の「トカ・オリージャ」にはあった。

 しかし「村主章枝はこんなにすごかったのか!」と、ドキドキしながら彼女の話を聞きに駆けつけると……。
「ジャンプミスはもったいなかったです。でもそれを抜きにしても、本来あるべき7割の出来。課題はまだまだ多いな、と感じます」
 また、この人は! 
 彼女は一度だって「今日の出来は100点です」などと言ったことがない。こちらがどんなに興奮して待ち構えていても、いつも難しそうな顔をしている。
「この出来でも得点には反映されたから、良かった部分も多少はあったのかな? でも、ほんとにまだまだ。競技としては良かったのかもしれないけれど、お客さんに見せるものとしては、まだまだです」
 私が感じたことと、まったく逆のことを言う。競技としてはあのジャンプのステップアウトで完璧ではなかったかもしれない。けれど、パフォーマンスとしてはほとんど完璧だったと思ったのに。
 まだまだ高いところに、まだまだ遠いところに、村主章枝のめざすものはある。
 この人はひょっとしたら、オリンピックで表彰台に乗っていたとしても……。
 あと4年、続ける決意をしていたかもしれない。(青嶋)

写真/森田正美


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女子シングル終了 恩田美栄フリー12位 総合11位 

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 3年ぶりの世界選手権、恩田美栄のフリー演技。
 人々が最も大きな喝采を送ってくれたのは、演技直後の彼女に対してだった。顔を覆い、うんうんと自分に言い聞かせるように何度もうなづく。感極まったように大きなモーションでする挨拶、そしてこの世界選手権で見せた最もいい笑顔。そんな彼女に対して、カナダのお客さんはほんとうに大きな拍手を送ってくれた。
 日本の関係者やファン、報道陣は、今回の世界選手権に臨む彼女の胸のうちを知っている。恩田美栄がどんなふうにオリンピックシーズンを過ごしたのか、どんな経緯で今、この舞台に立っているのか、私たちは彼女の物語を知っている。
 フィギュアスケートは時として、選手の中にある物語をそのまま氷上に表してしまうことがある。積んできた努力、報われなかった日々、この試合にかける思いの深さ。そんなものが知らず知らずのうちにステップの一歩一歩や手足の細かな表情に出て、見ている人に、プログラムが本来持っている以上の物語を語ることがある。全日本選手権の恩田美栄の演技がそうだった。彼女のことを何も知らない人が見ても、ジャンプに込められた気迫、柔らかだけれど意思を秘めた手の動き、見違えるように滑らかに回るスピン、そんなものから恩田美栄の来た道を、心で感じることが出来た。初めて彼女の演技を見た人でも、涙を流してしまう。フィギュアスケートには、そんな不思議な力がある。
 でもこの日の演技で最も彼女の物語を雄弁に語ったのは、一昨日よりもずっと高く上がっていたジャンプでも、丁寧に回ったレイバックスピンでもなく、最後に見せた涙と笑顔。そこに、きっと彼女は大きなものを乗り越えて、何かを背負ってフリー演技を終えたことを、感じてくれた。ストレートに喜びや安堵を表す彼女のことを、カナダの人々を愛してくれた。
 でも、それではフィギュアスケートではだめなのだ。リンクの外で語る物語ではなく、スケートそのものだけが、彼女たちが何かを伝える手段。何か伝えたいことや表現したいことがあるのならば、すべて氷の上の数分間だけで伝えなければならない、それが表現を伴ったスポーツ、フィギュアスケートの本当のありようだ。

 恩田美栄はおそらく、その人柄を最も愛されているスケーターのひとりだろう。「よっちゃんは本当にいい子だよね」「美栄ちゃん大好き!」日本でフィギュアスケートに関わる人々、誰もがそんなふうに言う。それはひょっとしたら「美栄ちゃんのスケート、素敵だね」「よっちゃんのスケート、大好きだよ」と言われることよりも、多かったかもしれない。だからこそ、全日本選手権で生まれ変わったような恩田美栄を見たときに、私たちは心の底からうれしかったのだ。大好きなよっちゃんを、今日は手放しで褒めることができる。やっとオフリンクの美栄ちゃんではなくフィギュアスケーター恩田美栄を愛することができる、と。

 今日、全日本選手権のようにスケートで自分を語ることが出来なかった恩田美栄は、なかなかミックスゾーンに姿を現さなかった。やっと出てきたとき、彼女はごしごしと涙をぬぐいながら私たちの前に現れた。
「四大陸選手権に出場するのを辞めて、引退も決めていた自分が、今、この舞台に立てました。でも全日本選手権までにせっかく手に入れたスケーティング、スピード、ジャンプは、その後スケートをしていなかった2ヶ月間で台無しにしてしまった。せっかく得たものをキープしなかった自分が……悔しいです」
 涙は、今日の演技に対する悔し涙ではなく、全日本選手権以降、スケートから離れたしまった自分に対する悔し涙だった。
「引退したいという気持ちは……もうどっかに行っちゃいました。絶対来年、なんとしてでもカンバックする! その気持ちの方が今は強いです。今回みたいにチャンスをもらって出るんじゃなくて、来年は自分の手で世界選手権を掴み取りたい。それが難しいのは……よく分かっています。来年は誰が出るのか……なんとなく思い描くことも出来る。でも彼女たちに負けないようにしたい!」
 世界選手権だけでなくグランプリファイナルにも出たい、全日本選手権もとりたい。ミックスゾーンでの恩田美栄は、ほんとうにストレートに、思いのすべてを語ってくれた。
「でももし、世界選手権代表からはずれることになって四大陸選手権の方に選ばれたとしても……今度はちゃんと出たいです。来年はどんな試合であっても、これまでに身につけてきた自分のスケーティングを見せたい」
 
 ひとりのスケーターが、大きな目標に向かって死力を尽くし、新しい力を手に入れ、大切な大会で素晴らしい演技を見せた。でもその努力に見合った評価はなく、夢はかなわず、彼女はスケートをあきらめかけた。そこからさらに、様々な思いを越えて、再び氷の上に立つことを決意した。
 そんな恩田美栄の物語は、氷の上ではなく、バックステージで語られた。でも今回はそれでいい。
 いつかきっと、彼女の物語は氷上で語られる。彼女に近い日本の私たちだけでなく、恩田美栄のスケートを見た世界の人が彼女の思いを受けとめる日が、きっと来る。
 2006年の世界選手権は、いつか完結する彼女の物語の、エピソードのひとつに過ぎない。(青嶋)

写真/森田正美


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中野友加里ショートプログラム終了後の共同インタビュー

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――予選に引き続きいい演技でしたね!
中野 ひとつずつ終わっていくので、ほっとしています。目標はノーミスだったので、それが達成できてよかった。

――佐藤コーチからはどんな言葉をかけられましたか?
中野 いつも以上のことをやろうとは絶対しないこと。今もっていること、できることだけをやりましょう、と。そういう約束をしています。練習どおりのことができたので、今は満足です。

――予選と比べて気持ちの変化はありますか?
中野 予選のときより緊張はなかったです。落ちついて滑っていたと思います。ジャンプも決まって自然と笑顔も出ました。応援もすごくたくさんしていただいて……。信成の声もちゃんと聞こえました(笑)。

――世界選手権で初めて最終滑走という緊張は?
中野 まったく初めてなので自分が世界のどの辺りにいるかも分かりません。だから最終グループで滑れるだけで満足、という気持ちです。

――明日はいよいよ最後のフリープログラムですね
中野 このシーズンの締めくくりとして、一つ一つ、今までやってきたことすべてを出せればいいな、と思います。初めての世界選手権、楽しむことも大切だけれど、それと同時にまたひとつ勉強できれば。私は今シーズンラッキーなことが多かったので。まだまだ足りないところがたくさんありますから。

――ラッキーですか!? そればかりじゃないでしょう?
中野 本当にラッキーですよ。どの試合も、他の人の失敗に助けられた部分が大きいです。あとはトリプルアクセル! 今シーズンはすべてのフリーで挑戦してきました(トリプルアクセルに挑まなかったのは、世界選手権予選のみ)。調子は悪くないので、やっぱり明日は跳びたいです! 今シーズン何度もダウングレード(ダブルアクセル認定)されてしまったけれど、今回はちゃんとトリプルアクセルと認定されたいです!

写真/森田正美


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女子シングルショートプログラム 中野友加里6位 総合4位!

 NHK杯、グランプリファイナル、全日本選手権……。今シーズン、初めて中野友加里を知り、その魅力の虜になった人々がまず目に焼き付けたのは、この都会的で挑発的な黒いコスチューム姿の彼女だっただろう。秋の東京ブロック大会で、まずこの衣装とプログラムを眼にした人々が、興奮して知らせてくれた。「今年の友加里ちゃんは違う! 衣装もかっこいいよ!」「オリンピックに選ばれてもおかしくないよ!」カメラマンからも、「ぜひ見てくれ」と、真っ先にこの衣装の写真が送られてきた。そして、高まるファンの期待に十分すぎるほど応えるNHK杯優勝、グランプリファイナル3位。
 振り返れば、今シーズンの中野友加里は世界選手権の最終グループを滑りに十分値する活躍をしてきた。オリンピックに出た選手の代わりとしてここにきたのではない。ここにいるべき存在として、堂々とサーシャ・コーエンや村主章枝と同じリンクに立っている。初出場ではあるけれど、十分に力を持った存在として。滑るのはすでに何度も大喝采を浴びたプログラム「ムーラン・ルージュ」。彼女なら、できる! 

 元気良く飛び出していった勢いそのままに、3つのジャンプはもう、当たり前のようにノーミスでこなす。速いスピンは黒く美しい機械のようで、硬質なこの音楽にぴったりだ。大きく手を広げたスパイラルは「すごい勢い。フェンスにぶつかるかと思ったよ」と織田信成が絶賛するほど、エッジにスムーズにのって滑っていく。「彼女のいいところをあげればきりがない」といつも佐藤信夫コーチが言っているように、いきいきと跳びはねていくストレートラインステップも、ぴくりともぐらつかないYの形のスパイラルも、どれもこれもがほんとうによくコントロールされていい動きだった。たった数分のなかにこれだけ見どころの詰まった華麗なプログラム。用意されたひとつひとつのエレメンツを着実にこなしていく中野友加里の技術。
 大活躍の今シーズンを象徴するにふさわしいプログラム「ムーラン・ルージュ」を、シーズン最後の大舞台、中野友加里はパーソナルベストの演技で滑り終えた。(青嶋)


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女子シングルショートプログラム 恩田美栄12位、総合11位

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「今日は果たして、自分の本当のジャンプが出来ていたんだろうか?」
 それが、演技を終えて記者に囲まれた恩田美栄の第一声だった。
 トリプル-ダブル、トリプルフリップ、ダブルアクセル。予選とは違い、ジャンプにミスはなかった。
「でもそれは最低ラインです。ショートは最初からノーミスをするつもりだった。ノーミスは『しなきゃいけないこと』と、決めていたので」
 きりっとした顔で、自分に言い聞かせるように話す。
「一昨日は高く跳びすぎて回りすぎて失敗。今日は逆に、いつものジャンプの半分しか跳んでいなかったと思う」
「スパイラルやスピンも、(キープ時間、回転数の)カウントをしながらしっかり滑ること、回ることを考えていました。きれいにエッジにのることよりもカウントに頭がいっていたから……いつもより回転が遅かったかも」  
 3つのジャンプはすべて成功させても、今日の恩田美栄は最後まで緊張感の塊が滑っているような演技だった。もっと柔らかく動くはずの手は、ぴーんと張り詰めたまま。サーキュラーステップはおそるおそる踏んでいるようで、描く円がさびしいくらい小さい。カウントをせずにすむ後半のツイヅルだけはくるくると勢い良く、どこまでも回っていきそうで気持ちが良かったけれど、全体的にはやはり最後まで乗り切れないまま、音楽は終わってしまった。
 点数はパーソナルベストを6点下回る52.49点。ジャンプは跳ぶけれどスケーティングや表現技術の不足で点数が伸びなかった、かつての恩田美栄に戻ってしまったようにも見える。
 見ていたファンは「全日本の演技は幻だったのだろうか」「あの恩田美栄は、もう見られないのだろうか」そんなふうに肩を落としているかもしれない。
 でも、演技は元に戻ってしまっても、今の彼女はかつての恩田美栄とは違う。
「ジャンプは膝が使い切れていなかったと思う。足のバネもクッションも、半分しか使わずに跳んでしまったんです」
 ジャンプにミスはなくても質の点で不満があることも、スピンやスパイラルが点数をもらえない出来だったことも、今の恩田美栄はわかっている。
 かつての彼女は、ジャンプを豪快に跳び、与えられた振りを懸命にこなし、精一杯できることは全部やったけれど点数が出なくて「どうしたらいいかわからない」という苦い表情をよく見せていた。
 しかし今日の表情は、自分が自分の演技を出来ていないことを知っている、こうすれば出来ることも知っている、でも、それが練習不足で出来ないのがもどかしい、そんな苦さだった。
「全日本が終わって2ヶ月。世界選手権のために練習が出来たのは、直前の4、5日だけです。曲かけも一日一回くらい。そんななかで、良くやったと思う」
 不十分な練習で、満足の行かない結果が出ることは、始めからわかっていた。それでも最低ここまではやろうというラインは決めて、それは達成できたショートプログラム。でも以前だったら満足していたジャンプのノーミスをしても、今はちっとも納得していない。そして、次につなげる意思も持っている。
「世界選手権、せっかく来たのにうまくいかなくてスミマセン、で終わるだけにしたくない。今、この状況でやれることは全部やろうと思います。来年へむけての目標も、新しいプログラムのことも、これから考えなくちゃいけないから。そのためにもこの試合は大切です」
「予選、ショートと滑ってきて、悪い方向には行っていない。スケートもだいぶ滑らかになっている。明日の朝調整して、調子が良かったらフリーはたぶん行けると思います。ジャンプの切れ味を取り戻して、スピンもきちんと回れば!」
 一度は出場することを拒んだ世界選手権。調整も練習も不足していて、十分戦える状態にはない。でも、彼女は決して「来なければ良かった」とは思っていない。もうこの状況を「どうしたらいいかわからない」とも思っていない。来シーズン、また大きく変わるために必要なステップとして、恩田美栄はきちんと世界選手権に立ち向かっている。(青嶋)

写真/森田正美


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アイスダンス終了 渡辺心・木戸章之組 17位 

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 今シーズンいちばん、心に響く「マイ・フェア・レディ」だったのではないだろうか。
 とにかく渡辺心がかわいらしい。今大会、リトアニアのポビュラス・バナガス(アイスダンス・ドロビアツコ&バナガス組)とともに全参加選手中最年長選手となった彼女が、こんなにかわいらしいなんて。女の子の方から男の子を誘う無邪気さ。そんな彼女に手を焼きつつ、振り回されつつ、恋に落ちていくふたり。とにかく楽しくて、かわいらしくて、あっけらかんと突き抜けて明るい。ふたりのキャラクターに良くあったプログラムを、高い技術を見せながらものびのびと演じてくれていた。
 何しろ直前の6分練習で起きたホフマン&エレク組(ハンガリー)との軽い衝突事故のことさえ「珍しいことが起こったなあ、なんて人ごとみたいに思ってた」(木戸)というふたりだ。とにかくこのアクシデントが精神的に影響するのではないかと見ている方はハラハラしたが、さすがベテラン、このくらいでは気持ちを失うことなどない。いや、いつも以上にリフトは堂々としていて、高い位置でまっすぐ掲げられた渡辺心の腕の伸びが気持ちがいい。ツイヅルで彼女のスカートがひらひら舞うと、見ているこちらまで遊園地にいるような心踊る気持ちになれた。
 そんなことを告げると、木戸章之はうれしそうにいった。
「ほんとですか? とにかくオリンピックから今日まで、雰囲気を作りこんできましたから。五輪後のエキシビション(シアターオンアイス、長野メモリアルオンアイス)、気を抜く選手もいるけれど、僕らはそう考えなかった。世界選手権の予行演習として、エキシビションも徹底して滑ってきました」
 演技後の共同インタビュー、いつもふたりは技術的な出来の良し悪しを、まず口にしていた。今日はどのくらい細かいミスがあったか、いかにしてステップのレベルを上げていくか。探究心も挑戦心も強いふたりは、とことんまでダンスの技術を追求して、日本人がかつて行けなかった世界のレベルまで上がってきた。たとえアイスダンスをあまり見ない、良く知らない人には分かりにくい技術であっても、コツコツと練習して上手になって、見る目のあるジャッジから高い評価を得るようになってきた。
 しかしアイスダンスの魅力は高度な技術を正確にこなすことだけではない。ダンスを何も知らない人が、見ていた楽しくなる、心が動く、引き込まれる。そういったダンスの力は、もちろん正確な技術が基礎にあって生まれるものだけれど、技術にばかりこだわっていては生まれない何かでもある。
 この世界選手権。コンパルソリーでは「ステップも大切だけど上半身の表現をもっと見せられるように練習してきた」(渡辺)、フリーでは「雰囲気作りに気を配った」(木戸)、そんな言葉を彼らから聞くことができた。
 玄人好みの高い技術をもったふたりから、ダンスを知らない人々も魅了するふたりへ。30代前半というベテランの彼らは、さらに進化していこうとしている。来シーズンは、どうだろうか?
「来シーズンのこと、まだはっきりは決めていないんです」(木戸)
「続けるとか続けないとか、いろいろなところで噂が流れているみたいで」(渡辺)
「もちろん、ダンスを続けたい気持ちはあります」(木戸)
「来年は世界選手権が日本で開催。応援もたくさんしてもらえるし、楽しそう。出たいな、という気持ちはあります」(渡辺)
「これからじっくり考えたいです。やりたいことはまだまだあるし……やっつけるべき相手も、まだぜんぜんやっつけていませんから!」(木戸)
 そう、来シーズンはたくさんのライバルたちだけでなく、私たち観客も、もっともっとたくさんやっつけてほしい。渡辺・木戸組にやられた! そんな思いを彼らのダンスからもっと感じてみたい。(青嶋)


写真/森田正美


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男子シングル終了! 織田信成フリー5位 総合4位!

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 ああ、こんなふうに体が動けたら、どんなに気持ちがいいだろう?
 織田信成、世界選手権最後の演技。フリーの「座頭市」、最後のサーキュラーステップシークエンスを見ながら、彼に対して感じたのは、憧れの気持ちだった。
 ジュニアのころから小さな身体でがんばってきて、出られなくて悔しがった年もあった世界ジュニアに、昨シーズンは涙の優勝。シニアに上がった今シーズンは、スケートカナダで、NHK杯で、ファイナルで、全日本で。どんな結果でも見せた、子供のような大泣き。そんな織田信成に対しては、がんばっている若いスケーターを暖かな目で見守る、そんな気持ちにいつしかなっていたような気がする。
 でも、この日。初出場の世界選手権フリーで、世界最高のスケーターたちとともに最終グループを滑る彼の演技を、「見守る」ことはできなかった。
 確かに予選に比べるとジャンプの出来はよくなかったし、点数も136.73。予選で出したパーソナルベストから8点以上下がってしまった。でも、世界選手権を予選、ショートと戦い抜いたことで、織田信成は確かに昨日までとは変わっていた。
 ジャンプとジャンプの間をつなぐ動きからは、これまでにないほど静謐な空気が生まれている。この日、ジャンプを降りるときにスケート靴が生む「トン!」という心地よい音が、ほんとうにはっきりとサドルドームに響き渡った。こんな軽やかな音をジャンプの着氷で作り出すことができるのは、世界でもきっと織田信成だけ。そしてその音が、この日の「座頭市」前半に彼が作りった張り詰めた雰囲気に、たまらなく合っていた。「トン!」という小さな音が響くたびに、ぐっと彼の世界の中に引きずり込まれるような気さえする。
 そして後半、音楽が高鳴る中の、ストレートラインステップ。一緒に最終グループを滑ったランビエールやジュベールのような、また国内で激しい競争をしてきた高橋大輔のような力強さはなかった。でも、「こんなふうに動けたらいいのに……」「私たちにはどんなにがんばっても彼のようには動けない」そんな切なさと憧れがまざったような思いを、私には抱かせてくれた。
 もう織田信成は、隣に住んでいる楽しいお兄ちゃんでも、陽気なクラスメートでもない。暖かく見守るべきヤングスケーターでもない。
 ほんとうに選ばれたスケーターだけが立てるフィールドに立ち、ほんとうに選ばれた人間だけができるパフォーマンスを見せられる――世界選手権で、彼は、そんな選手になったのだ。

 帰りのバスの中、フランス人の記者が私を見つけると「ノブナリ! ノブナリ!」と良くわからない言葉でだーっとまくしたて、両手をつかんでぶんぶん振り回し、大きくにっこり笑った。たぶん「ブライアンも素晴らしかったけれどノブナリも良かった。きっと次はもっといい試合ができるぞ」と言っているのだと思う(たぶん)。
 ランビエールの優勝でニコニコ顔のスイス人記者も「ノブナリも素晴らしかったわ! 彼はまだ若い、これからなんて楽しみなのかしら。でも、日本人のもうひとりのスケーターはどうしたの。そう、ダイスケ! 彼は?」
 日本男子シングルはひとつしか出場枠がないから、トリノにはダイスケが行って、カルガリーにはノブナリが来たんだよ、と説明すると、「なるほど!」と。
 そこで気がついた! 織田信成のがんばりで、来年は再び、世界選手権にふたりの男子選手を送り込むことができる。「来年は、東京ね。ちょっと私たちには遠いけれど、楽しみにしているわ」
 そうだ、1年後の東京世界選手権。もうすでに、ノブナリのこともダイスケのことも待っている人々が、ここにはたくさんいる。いやきっと、世界中にたくさんたくさんいる。(青嶋)

写真/森田正美


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女子シングル予選 村主章枝A組1位  新しい4年の始まり

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 細い細いシルエット、伸びのあるストローク、緊張して、目をしばしばさせながらはずす手袋。
 滑り出す前、どこを見てもいつも通りの村主章枝が、サドルドームにいた。
 でも、なにかが違う。
 見ているこちらの勝手な気持ちだろうか?
 3年ぶりの世界選手権表彰台、それも一番高いところに手が届きそうな試合だということが、彼女を見つめる者の気持ちを、どうしても緊張させてしまうのだろうか。
 でもそれは、きっと彼女自身も感じていること。村主章枝にとってこの大会は、オリンピックシーズンの締めくくりというよりも、新しく始まるこれからの四年の、スタート地点となる試合。そのスタートを、やはりきれいなメダルで飾りたい。村主章枝の時代はこれからだということを、カルガリーから世界に知らしめたい。そんな思いは、彼女を取り巻く人々も彼女自身も、きっと同じ。
 だからこんなに、私たちもいつも以上に緊張した気持ちで、彼女を見つめてしまうのだ。これは、「初出場なんだから、もっと気楽に頑張ろう!」そんな思いで見つめた織田信成や中野友加里の滑走の時には、感じなかった気持ちだ。

 ジャンプミスは苦手のサルコウがシングルになっただけだった。海外選手に比べるとひときわ小さな彼女だが、世界のフミエ・スグリとして堂々と舞った。鮮烈なピアノの音も、折り重なるオーケストラの響きも大切に拾って、柔らかな彼女独特の動きでプログラムを彩った。
 予選A組は1位通過。点数的にも文句のない出来だ。でも……。
「ミスはひとつだけで、最低限必要なことはできた。ただ、もうちょっと勢いが欲しかったと思います。スケートで人を惹きつけるには、もっとスピードとパワーがなければ」(佐藤信夫コーチ)
 確かにこの日の彼女の演技は「無難にこなした」という感じがどうしてもあった。見ている方も緊張したまま、その緊張が興奮や快感に変わることなく、4分は終わってしまった。
「まあまあいいところもあったし、悪いところもいっぱいあったかな……。まずますの出だしだと思います」
 とは、村主章枝自身のコメント。
「オリンピックのあとに十分な練習を積むことができなくて。なんとかここまでやってきたけれど、どうしても練習不足のせいで、技術に気を使うほうに意識が行ってしまった。それで、感情を目いっぱいプログラムに入れることが出来なかったんだと思います」
 しかし、練習が足りなかったという彼女に対して、佐藤信夫コーチは、
「オリンピックのあと、もう少し身体を休ませる期間があれば……。ここまでずっと休み無しで、結果的に体調も崩してしまった。このあたりが女子選手の難しいところです。男だったら休め! といえば素直に休む。でも休むことはとても勇気のいること。それを彼女に強要することはできませんでした。女の人は、難しい……」
 信夫先生、それは女子選手というよりも村主章枝の難しさでは??
 シーズン初めの股関節炎に続き、また「いっぱい練習しすぎ」「がんばりすぎ」が原因とは!

 ほんとうに、これから4年間、コンペティターの村主章枝が見られるのはうれしい。
 でも、彼女はこれから4年間、ずっとこの調子でがんばりすぎてしまうつもりだろうか? がんばりすぎて、考えすぎて、そのためにケガをしたり調子を崩したりして、ファンに眠れない日々を繰り返させるつもりだろう?
 ……でも、それもいい。それが彼女らしさで、コーチもファンもはらはらさせて、振り回してくれるのが村主章枝なのだから。彼女ががんばってがんばって、ファンは心配して、心配して。その果てにあるものが最高の結果、最高のパフォーマンスならば、喜びもきっと大きい。
 村主章枝はトリノで、4年間「がんばりすぎる」決意をした。
 ファンも4年間、そんな彼女を見守り続ける覚悟が必要だ。(青嶋)

写真/森田正美


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女子シングル予選 恩田美栄A組6位 「I Like Skating!」

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 演技前の6分間練習。彼女の跳躍は誰よりも大きく、鮮やかだった。同じ滑走グループに集うクリーム色や黒の衣装の選手たちのなか、ビビッドな青いコスチュームはひときわ目をひいている。サーシャ・コーエンやスザンナ・ポイキオが同じリンクにいるというのに、どうしても目が行ってしまうのは彼女だ。
 世界で一番爽快感のあるジャンプを、6分の間に何度も何度も成功させ、そのたびに観客が大きくどよめく。恩田美栄――彼女が、3年ぶりに世界選手権の舞台に帰ってきた。

「美栄ちゃんガンバー!」
 演技前、そう、2度声をかけたのは織田信成選手。 
 チームメイトの声援が聞こえたのかどうか、3年前よりもちょっと大人びた笑顔を浮かべて、恩田美栄は滑り始めた。この、少し慎重さを隠した微笑みが、演技が終わったあとは大きな大きな美栄スマイルになっていますように……。
 3年前と違ったのは、表情だけではない。フィギュアスケートを良く知るカナダの人たちは、プログラム冒頭から、恩田美栄の手足の動きがちょっと違うことに気づいただろうか? 元気のいい女の子から、大人の女性の心の豊かさを感じる動きへ。ずっと変わりたいと願っていたけれど、なかなかできなかった変化を、彼女はこのプログラム「キングダム・オブ・ピース」を滑った全日本選手権で見せてくれた。あの誰もが喝采を送った演技を、世界の人々に見せたい!
 でも……全日本では軽々決めたいつものジャンプが、ちょっと怖がって跳んでいるようにみえる。全体の動きもあのときより少し硬くて、どうしても大きなジャンプだけが目立ってしまう。きっと以前の恩田美栄しか知らなかったら、いつもどおりの恩田美栄に見えただろうけれど……。全日本の彼女を見たものにとっては、どうしても思ってしまうのだ、「今の恩ちゃんなら、もっとできる!」。
 いくつかジャンプミスもしてしまった。トリプル-ダブル-ダブルのコンビネーションはは途中に小さなステップが入ってシークエンスに、中盤のルッツはシングルに。
 終わったあと、氷上の彼女はちょっとうつむき加減で、「ああー」という顔。
 この日は結局最後まで、大きな美栄スマイルを見せてくれることはなかった。

「ひとつ目のジャンプミスは、きれいに上に上がりすぎて、回転がまわりすぎちゃった……。降りようとしたらランディングのタイミングが遅れちゃったんです」
「ルッツは構えた瞬間、足が氷を捉えてなかった。それで感覚を失って、一回転になってしまいました」
「全日本のときとはいろいろなものが違います。氷の質、ライトの強さ……。今日は目がちかちかします(笑)。自分の状態も違う。あのときは練習を積んで100%で出られたけれど、今日は50か60%のコンディション」
 笑顔は見られなかったけれど、ミックスゾーンで淡々と、冷静に、終わったばかりの演技を振り返る彼女は、3年ぶりに世界選手権にいた。
「今回は全日本からずっと試合に出ていなくて。急に出場が決まり、2週間で調整してきました。だからこの出来も仕方がない……。緊張の仕方も忘れていたから、足が浮いてましたよね」
 彼女は全日本選手権後、引退を考えて四大陸選手権も欠場した。あれだけの演技を全日本選手権でできたのに、順位は4位、オリンピックはおろか、世界選手権派遣選手にも名前はなかった。そこでいったんスケートへの気持ちをとぎらせてしまっていたのだ。
「今日はいいパフォーマンスじゃなかった。でも、私はハッピー! 全日本のあと、もう一度スケートができるとは思わなかったから。世界選手権、一度は出場も断ってしまったけれど、やっぱりここに戻ってこられてうれしい。Fainally,I like Skating!」
 最後は、海外メディアからの質問に対する答え。
「ごめんなさい。引退するつもりが、一年延びました(笑)。もう一年スケート、やります!」
 I like skating! 英語ではそうはっきり言ったくせに、私たちにははにかんで、こんなふうに言う。
 でも、よかった! 「また、戻ってきちゃった」という最後の照れ笑いが、今日の美栄スマイル。氷の上でのスマイルは見られなかったけれど、このあと一年、またあの爆発する笑顔と、ジャンプと、パフォーマンスが見られるチャンスがあることを、はっきり宣言してくれた。
 いや、もちろんこれから始まる一年の前に……このカルガリーで美栄スマイルを見られるチャンスだって、あと2回もある! (青嶋)

写真/森田正美


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