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Sports@nifty > スポーツレポート > フィギュアスケート特集 > 2006グランプリファイナル
この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

エキシビション終了! 浅田真央選手インタビュー

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 波乱のフリーから一夜明け、日曜日は選手もお客さんも楽しみなエキシビション。
 結果は残念だったけれど、浅田真央選手もおなじみカルメンのコスチュームでキュートな笑顔をペテルブルグのファンに振りまいていた。演技中に客席にあずけるカルメンのショールを置いてきてしまうなど、ちょっとした失敗もあったが、リラックスした表情に見守る人々も一安心。
 エキシビション終了後、短い時間だが、笑顔で記者たちの質問に答えてくれた。


――2度目のグランプリファイナル、どんな試合でしたか。
真央 これから何をするかべきか学べたし、上手な選手もいっぱい見られた試合でした!
――エキシビション、トリプルアクセルに挑戦しましたね。
真央 はい。先生にやってみようって言われて、みんなにも跳ぼうよって言われて。こういうときにも挑戦して、ちゃんと自信をつけようと思って跳んでみたんです。
――アルトゥニアンコーチともいい感じですが、言葉は大丈夫?
真央 英語、聞き取りは出来るんですけど話すのはまだまだ勉強しなきゃ。それに先生、興奮するとロシア語になっちゃうんですよ。「ダバーイ!」行けーって、意味なんですけど、よく言われます。先生、ときどきひとりでガーッてなっちゃうんだもん。
――ファイナルが終わってこのあとは、久しぶりに名古屋へ。エアロとも会えますね。
真央 そう、4ヶ月ぶりなんですよ! 舞よりエアロに会うほうが楽しみ。舞は数週間ぶりだし! でもエアロ、真央のこと覚えてるかどうか、心配です……。
――そして帰国したら、あっという間に全日本選手権。
真央 はい。エアロに会えればパワー倍増するので……優勝を目指します!
(日本人カメラマンに忘れ物のショールを渡されて)
真央 ああっ! ありがとうございます! すっかり忘れてたあ! 

 
文/Hirono Aoshima  
*写真はSP終了後の共同記者会見にて、安藤美姫選手と


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女子シングル終了 浅田真央 フリー4位 総合2位(2)

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「スケートアメリカの時、ショートはうまくいったのに、フリーはできなくて、残念な気持ちでした。今回はアクセルの後にそういう気持ちになっちゃダメだと思ったけど……やっぱりちょっと、ダメでした」
 ダメでした――彼女はたぶん、今日の演技のすべてを否定してしまっているだろう。大失敗のフリープログラムだと思っているのだろう。
 きっと、あのかわいらしく動きまわる序盤のサーキュラーステップで、ロシアのお客さんたちがどんなに喜んだか、気づいていない。小さかったころの「真央ちゃん」、子どもたちがたどたどしく滑る中で、ひとりだけ音楽に乗って自由自在に動いていたあのころの魅力そのままに。体が大きくなっても変わらないキュートな所作で見せたサーキュラーステップ。今シーズンはそんな素の魅力にエッジワークの確かさが加わって、上体の動きの華やかさも増して、たとえ気持ちが焦っていても十分お客さんを楽しませられる。そんなステップが踏めていることを、誰よりも浅田真央自身が気づいていない。ジャンプを跳ぶこと以外で自分がお客さんの心をつかめているなんて、ちっとも思ってないのだ。
 あなたが素敵なスケーターだと知っている人が、日本にもロシアにもこんなにたくさんいることを。素敵な浅田真央を待っている人が、こんなにたくさんいることを。ほんのちょっとでも彼女が気づいてくれれば、と思う。あとほんの少しだけ、ジャンプ以外にも自信を持ちさえすれば、一度のアクセルのミスなど、跳ね返せるはずなのに。
 
「最後まで引きずったのは残念でしたね。早く立て直せば絶対に間に合うはずだった。誰も助けてくれないところで、自分ががんばるしかないのですが……」
 そうコメントするのは、平松純子スケート連盟フィギュア部長。
「彼女の場合、去年とは明らかに状況が違います。昨シーズンは何も怖いもの無しでぽんぽんと進んでいけたけれど、今年は追われる立場。ただ挑戦ばかりではすまない、これは選手なら誰もが向き合う試練です。誰もが必ず通らなければならない道です。ジュニアの時の勢いを失っても、ライバルと戦いながら自分の地位を守らなければならない。そんなことを言うのはかわいそうなくらい、彼女は若いのですが……」(平松氏)
 確かに、このつまづきは、決して特別なことではないのだろう。私たちはついつい「あの、浅田真央が!」と彼女の不調に驚き、ひとつひとつのトリプルアクセル、一試合一試合の結果に一喜一憂してしまう。
 そう思わざるを得ないほど特別なスケーターに、この一年で浅田真央はなってしまった。 

 でもまだ彼女は、16歳のひとりのフィギュアスケーターだ。
 誰もが立ち上がって称えるしかなかった、または驚愕で座り込むしかなかった、昨シーズンのグランプリファイナル、あの奇跡から一年。今回のフリープログラムの失敗、ユナ・キムに続く総合2位という結果も、彼女の歩み続ける道の、確かな一歩のひとつだ。
 代々木のミラクルマオも浅田真央ならば、ペテルブルグで肩を落としてうつむく女の子も、浅田真央。
 いい時も、悪い時も、すべての浅田真央を。
 彼女の歩む道を、まるごと見ていたいと思う。つまづきながらも進んでいく道を、見守りたいと思う。
 それは浅田真央と同じ時代に生きてフィギュアスケートを見る、私たちだけに許された特権だ。

写真/Tsuyoshi Kishimoto(PHOTO KISHIMOTO) 文/Hirono Aoshima


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女子シングル終了 浅田真央 フリー4位 総合2位

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 演技を見ずに彼女の今日の得点表を見た人がいたら、何かの間違いだと思うだろうか。
 真央ちゃんが、こんな演技をするなんて――。
 普段の練習では問題なく跳べているトリプルアクセルも、公式練習では50%の成功率。いつも報道陣に見せてくれる笑顔も、鼻歌交じりにスキップしながらリンク周辺を闊歩する姿も、見られない。明るいカリフォルニアから、日中もどんよりうす曇りが続くペテルブルグへ。彼女の移動してきた街の風景が、そのまま彼女の心に乗り移ってしまったかのように、元気がなさそうな様子はみんなが見ていた。
 でも、あの浅田真央が。ここまで崩れてしまうことが、あるなんて。

 SP1位という成績を受けて、フリーは最終滑走。村主章枝と安藤美姫が見せてくれなかったものを、この人は見せてくれるはず! 特に日本からの記者やファンの期待を一身に集めて、浅田真央は滑り出す。
 しかし最初のトリプルアクセルで、転倒。ここで私たち以上に「OH!」と頭を抱えている海外プレスの姿が、目に入った。そうだ、私たちは何度も見てきた浅田真央のトリプルアクセル。海外の人たちだって見たいのだ。日本のファンだけでなく、世界中のスケートファンが見たがっているのだ。
「アクセル、今シーズンは一度もまだきちっと跳べていないので……不安があったんだと思います」
 世界で一番このトリプルアクセルの成功を願っていたのは、やはり今日も浅田真央自身。一発目のアクセルが入るかは入らないかでフリーの出来が大きく変わることは、彼女自身もNHK杯で認めている。
「最初のトリプルアクセルで『降りた!』って思えると、その後も波に乗れるんです」
 だから今日、トリプルアクセルを跳べなかった後こそが、彼女の勝負――見守る人々は誰もがそう思った。アクセルが跳べなくてもその後の演技が崩れなければ、十分高い点数は出る。ここで彼女が心を折らずにいつもの浅田真央の滑りを見せれば「アクセル失敗しても、大丈夫なんだ!」と、新たな自信をつけられる。誰もがそんな展開を願ったはずだ。
 しかしその後に続いたのは、着地してもその場でターンしてしまう気持ちの途切れたジャンプ。ことごとくふたつ目が入らないコンビネーションジャンプ。中盤、トリプルルッツでは2度目の転倒。
 焦らないで! そんな人々の気持ちを代表するように「がんばれー!」織田信成が客席から大きな声を上げた。

写真/Tsuyoshi Kishimoto(PHOTO KISHIMOTO) 文/Hirono Aoshima


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男子シングルフリー終了 織田信成 3位(2)

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 実はこの日の朝、公式練習の織田信成のフリーが凄まじかったのだ。
 昨日のミスが悔しかったのだろうか、ひとりにつき一度だけの曲かけが始まると、練習とは思えない、鬼気迫るような表情で滑り出す。そのままの勢いで見せるのは、顔が真っ赤になるまで、体が千切れんばかりに回るスピン、明らかにトップコンディションのジャンプ。
 特にジャンプは、試合で何度も見た織田信成の軽やかなジャンプとは違っていた。巧みさにパワーも加わった、この人は、こんなジャンプも跳べるのか! と驚くようなトリプルアクセル。あ、これを今見られれば、たとえ本番で彼がアクセルを失敗しても、ロシアまで来た甲斐があったかもしれない、そう思ってしまうほど美しく、完璧なジャンプだった。
 そして何よりも驚いたのは、彼の見せたフリープログラムが、スケートアメリカでの演技ともNHK杯の演技とも、まったく別物だったことだ。
 NHK杯の時、すべてのジャンプを決めて見せたけれど、まだこのプログラムでは織田信成の良さを出し切れていないのでは、と思った。SPのように大人っぽくもコミカルな魅力満載のプログラムの方が、まだ彼に似合っているのではないか、と。しかし、そんなことはちっともなかった!
 公式練習で見せた彼のチャイコフスキーの力強さ! オーケストラがどんなに力強く鳴り立てても、小柄な体が全部跳ね返してしまうような勢い。そして、いつしか反発しあっていた音楽と溶け合ってしまうスローパート。
 そうか、織田信成のフリーはこんなプログラムだったのか。こんなチャイコフスキーを見せたかったのか。彼に合っていないなんて、とんでもない。振付けのデイビッド・ウィルソンは、間違いなく今の織田信成の力を最大限に見せ付けるプログラムを作り、それを演じ手も自身の体のなかで消化しきっている。

 そんな公式練習を見てしまった後――フリー本番では「もっと!」の声を上げずにはいられなかったのだ。
 織田信成は本番に強い選手だといわれている。練習以上の力を発揮できる勝負強さを持っていると。でも、それは違う。少なくとも今シーズンのフリーは、まだ50%しか持てるパワーを見せていない。
 日本チーム全員が崩れるなか、よくがんばった織田信成のファイナル。でも私は敢えて、一番がんばった人に「もっと!」と言いたい。
 彼ならばきっと、ほんとうの本番、全日本選手権や世界選手権では、今日以上のフリー、今朝の公式練習以上のフリーを、見せてくれるはずだから。

写真/Tsuyoshi Kishimoto(PHOTO KISHIMOTO) 文/Hirono Aoshima
 
*ISUのビデオに関しては2005世界選手権特集にも記事があります
*織田信成、高橋大輔選手らのインタビューが収録されたオフィシャルファンブック『Cutting edge2007』、ウェブ上での先行発売が始まりました


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男子シングルフリー終了 織田信成 3位  

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 何を書けばいいのか、正直に言えば少し混乱している。
 日本勢総崩れといってもいいほど、男女シングル、どの選手たちも力を発揮できなかったグランプリファイナルフリー。
 目の前で次々に起こったことが信じられない。そんな一日だった。

 悪夢のような一日、ただひとり安定した演技を見せてくれたのが織田信成だ。
 6分練習の前、彼は場内に流れるISUのビデオをじっと見ていた。男子シングルフリー、始まるよ! とお客さんに告げる1分弱のビデオでは、現在のフィギュアスケート界を代表する選手たちの、様々な名シーンが流れる。
「ビデオ、新しくなりましたよね。今年の世界選手権の演技も入ってて、自分の『セビリア』(昨シーズンSP)も映ってる! あれを見てテンションが上がりました。
 そのテンションのまま、リンク中央でいっぱいに手を広げ、織田信成の「チャイコフスキー交響曲4番」は始まる。
 最初のジャンプは、あの大きく足を振り上げた構えから始まるトリプルアクセル。慎重なモーションながら、3-3-2のコンビネーションで決める!
 ジャッジの前では、これから自分の演技を「見せてやる!」という宣言のようなポーズ。続くループジャンプも、カシッと氷を捉える音が聞こえるかのような、見事な着地。
 最後まで大きなミスは、ほとんどなかった。ダブルアクセルが崩れたことだけ残念だったが、他はいつもの「こいつは失敗しない」とライバルに羨ましがられる織田信成。昨日のSPでの2ミスなど、無かったかのような安定感だ。
 しかし――4分半の間ずっと、「もっと!」と心の中で叫ばずにはいられなかった。スピンはもっと回るはず、もっとパシッと軸が決まるはず、ステップはもっと迫力があるはず、もっとぴったりと音楽にはまるはず! 彼の体は、まだまだほどけきっていない!

写真/Tsuyoshi Kishimoto(PHOTO KISHIMOTO) 文/Hirono Aoshima


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川口悠子選手からのメッセージ

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 グランプリファイナル会場のサンクトペテルブルクアイスパレスにて、ペア・ロシア代表の川口悠子選手をキャッチ。
 タマラ・モスカヴィナコーチの元、ここサンクトペテルブルで学生をしながらスケートを続けてきた川口選手。今シーズンは新しくパートナーとなったアレクサンドル・スミルノフ選手とともにロシアカップに出場、初出場で見事3位入賞! 日本のファンをびっくりさせてくれた。
 かつてはアレクサンドル・マルクンツォフ選手と組み、日本代表として活躍、その後デブン・パトリック選手と組んで全米選手権にも出場。
 ロシア代表となった今シーズン、日本のファンの皆さんにメッセージをもらった。
「3月は東京に行くので、待っていてください。久しぶりにおうちにも帰りたいですし、世界選手権に出たい! どんな演技を見せられるかはまだわからないけれど……とにかく東京まで行きつきます!」
 ロシアのペア代表枠は3枠。国内選手権を経て代表は決定されるが、ペア大国ロシアの選手として世界選手権出場となれば、大きな快挙だ。
 アメリカ代表の井上怜奈選手、カナダ代表の若松詩子選手らとともに、凱旋帰国を期待しよう。


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男子シングルSP終了 高橋大輔2位   ペテルブルクへの挨拶

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 高橋大輔がペテルブルクのリンクに登場した時に思い出したのは、2005年のモスクワ世界選手権だ。
 フリーでミスを連発した彼に、ロシアのお客さんから送られたのは「がんばったね」という意味のねぎらいの拍手。
 あの時ぼろぼろになりながらも「これから地道に練習します。オリンピックに行きたいので!」と宣言した彼は、その後夢の舞台に立ち、グランプリシリーズで優勝できる力をつけて、戻ってきた。
 でもまだあれ以来、ロシアのお客さんに、彼はいいところを見せていないのだ。
「今日はちょっと緊張していたかも。滑る前、いつもより落ち着きが無かったです」
 というのも、先々シーズンのことをちらりとでも思い出したからだろうか。

 しかし音楽が鳴り出したとたん、高橋大輔は腕のひとふりで、やわらかな、あたたかな空気を氷の上に作り出してしまう。朝の練習では少し苦しんでいたジャンプも、音楽の中ではなぜか安定し、3フリップ-3トウのコンビでは1.80もの加点。トリプルアクセルもいつもにもまして高く、遠くまで跳んでいく。
「クラシック音楽の良さを美しく、大きく表現したい」とシーズン前に語っていたチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」だが、あまりにおなじみすぎるクラシック曲ゆえ、普通のスケーターが滑ってもおもしろみのないプログラムになってしまいがちだ。高橋大輔のSPには、プレオベールや織田信成のSPのように、個性的な振付けも入っていなければ、ジュベールのSPのような表現するべき具体的なキャラクターも無い。
 これほど難しい音楽を、この人はよくここまで表現しきるものだと感嘆してしまうほど、今日のSPには強さがあった。何人ものオーケストラがいっせいに奏でるダン! という大音響にも、たったひとりの高橋大輔の動きが負けていない。大きく跳ねた時の一瞬のポーズさえも、目に焼きつかせてしまうほど美しい形を体が自然に作り上げてしまう。

 サンクトペテルブルクは、チャイコフスキーゆかりの都であり、人々は質の高い芸術にいくらでもふれる機会を持っている。そしてあのエフゲニー・プルシェンコの出身地であり、フィギュアスケーターの見せる究極に近い演技も、お客さんは何度も見ているはずだ。
 それでも今日の高橋大輔は、ペテルブルクのお客さんを興奮させ得たのではないだろうか。地元の偉大な音楽家の代表曲に乗り、地元のヒーローと同じスポーツで、これだけの演技を見せてくれる東洋人が、この街にやってきた。
 プログラムの最後、最後の一音にまでパシッとポーズを合わせて演技を終えた時、モスクワでは彼が得られなかった種類の拍手、熱狂と賞賛の拍手が高橋大輔に送られた。
「以前のワールドのとき、反応が悪かったので……。今日はロシアのお客さんに喜んでもらえてうれしかったです。でも大事なのは明日のフリー! 大きなミスをしないように挑みたい」
 サンクトペテルブルクに挨拶するように滑った、初日のチャイコフスキー。
 フリーでは高橋大輔のカラー、セクシーさや情熱をより前面に押し出した「オペラ座の怪人」を滑る。今日高橋大輔を覚えたお客さんたちは、どんな反応を見せるだろうか。


写真/Tsuyoshi Kishimoto(PHOTO KISHIMOTO) 文/Hirono Aoshima


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女子シングルSP終了 村主章枝5位 本当のボレロへ

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 女子シングルショートプログラム。村主章枝のミスには理由があった。ホテルから試合会場に向かうオフィシャルバスがサンクトペテルブルクの交通渋滞にまきこまれ、30分程度の道のりに、2時間もかかってしまったのだ。このバスに乗っていた女子選手は、村主章枝、サラ・マイヤー、ジュリア・セベスチェンの3人。彼女たちが到着したのは女子の試合開始15分前、当然アップに時間をとる余裕などない。
「しょうがないですよね。アクシデントばっかりは、どんなにがんばっても起きてしまう。仕方ない……」
「どんなにがんばっても」。不断の努力を続けるこの人らしい言葉に、話を聞く記者たちは苦笑いするしかない。

 滑走前、いつになく厳しい顔をしていたのは、このアクシデントのせいなのだろう。普段以上の硬い表情に、「おかしいな? 大丈夫かな?」とこちらの方が一瞬緊張してしまうほど。
 が、3ルッツ-2トウのコンビネーションは難なく成功。スピードも、いつになく速い。新採点システムが始まり、密度の濃いプログラムを彼女が滑るようになってからはそれほど感じなかったが、やはり村主章枝のスケーティングスピードは、ぐい、と視線を引き付けてしまう強さがある。続く3フリップも成功。これはいける、と思った瞬間……起きたのはダブルアクセルがシングルになる、信じられないようなミスだ。
 でも、さらに残念なのはここから先の演技だった。これまでの村主章枝だったら、SPでひとつのジャンプミスをしても、そんなものは無かったかのようにプログラムの世界を演じきる。SPで失敗、残念という気持ちがこちらに沸かないほど、作品として完成させたものを見せてくれていた。
 でもこの日の「ボレロ」は、ダブルアクセルのミス後に崩れてしまった。ストレートラインステップでは体中に神経が行き届かず、手先は泳いでしまっている。拍手をもらえるはずの得意のスピンコンビネーションでも精彩を欠く。最後のパートではなんとか気持ちを取り戻したか、ボレロらしい大きな盛り上がりに、ロシアのお客さんも喝采を送るが……。
「やはりコンディションが整わなかったので、出力を最後まで保つのが難しかった。でもこんな時にも対処できるだけの強さがあれば問題なかったのに……。アクシデントに対する経験が私になかったのも失敗の原因です。今日のことはいい経験になったと思います」
 最後は、やはり自分に原因を求める、彼女らしいコメント。
 しかし今シーズン、満を持して取り組んでいる「ボレロ」。残念ながら村主章枝はまだ、私たちに完璧なボレロを見せていないようだ。スケートカナダでは表情が今日以上に硬く、NHK杯でも、
「日本のお客さんの前。いい演技をしなければ、と責任を感じて、どうしても緊張してしまう。もう少し外にパワーが届くスケートができなければ」と本人が言うとおり、本来このプログラムにこもるはずの気迫が出し切れていなかった。
 ひょっとしたらこれが「ボレロ」の難しさかもしれない。トービル&ディーンがオール6.0満点の伝説の演技を見せて以来、スケーターにとっては一種聖域になってしまった音楽。そんなことを気にせずにトライする若い世代も出てきてはいるが、「スケートおたく」の村主章枝のことだ。この曲の重みは十分承知しているだろう。
「ボレロだからすばらしいものを見せたい」「ボレロだからこそ違うものを見せなければ」
 そんな意識に村主章枝は支配されているようにも見える。
 もっと……ボレロを楽しめたらいいのにな、と思う。バスの遅延トラブルさえも「アクシデントへの経験不足」といいきってしまう生まじめさ、伝説の音楽への大きすぎる思い。そんなものは少しずつでも脱ぎ捨てて、スケートを楽しみきったとき……村主章枝のボレロは、爆発するような力を持っているはずだ。
 全日本選手権、続く国際大会で。村主章枝の本当のボレロを楽しみに待ちたい。

写真/Tsuyoshi Kishimoto(PHOTO KISHIMOTO) 文/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2006レポート、はじまります

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女子シングルで村主章枝、安藤美姫、浅田真央。
男子シングルに高橋大輔、織田信成。
昨シーズンに引き続き、日本から5名もの選手が進出するグランプリファイナル。
sports@niftyフィギュアスケート特集では、熱戦の模様を現地サンクトペテルブルクよりレポートいたします。

水の都ペテルブルクも、この時期はクリスマスムードいっぱい。
街のシンボルである凱旋門も美しくデコレートされ、華やかなムードです。

13日、プルコヴォ空港には韓国女子シングルのユナ・キム選手の姿も見られ、公式練習の始まる14日朝には各国のテレビレポーター、記者なども続々到着。厳寒の地も徐々に臨戦態勢が整っています。

またサンクトペテルブルクはドストエフスキー、プーシキン、ボロディンなど、多くの作家、音楽家に愛された芸術の都。
街の中心部を少し離れたアレクサンドル・ネフスキー修道院にはチャイコフスキーやリムスキー=コルサコフらも眠っています。

日本の高橋大輔選手はSPでチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を、織田信成選手はフリーでチャイコフスキーの交響曲第4番を披露予定。
安藤美姫選手もリムスキー=コルサコフの「シェラザード」を滑ります。
今回、なんと男女シングルとも、ロシア人選手のファイナリストはゼロ。
地元選手びいきの声援がない中、誰がいちばんペテルブルクのお客さんのハートをつかむのか、楽しみにしたいところです。

*写真は今大会のポスター。オフィシャルホテルのアンバサドールにて
地下鉄駅などペテルブルクの街の随所で見かけられる


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グランプリシリーズ終了 ファイナルに向けて(4)女子シングル

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 女子シングルで目を引いたのは、スケートアメリカで優勝し、エリックボンパール杯で2位を獲得した安藤美姫
 彼女は、苦い思い出となったオリンピックシーズン直後、子供の頃から師事してきた門奈コーチの元でジャンプを一から立て直してきた。そして、荒川静香を金メダリストへと導いたモロゾフコーチの元で、ステップワークと表現技術を磨いた。昨シーズンのような状態を繰り返したくないという強い思いが、今季の素晴らしい成績へと繋がったのだろう。しかし、安藤が本当のトップスケーターになるまでの伸びしろはまだまだある。今回のグランプリシリーズでついた自信を糧に、さらに進化するに違いない。

 次に注目を集めたのが、16歳のふたり、浅田真央ユナ・キム
 先にファイナル進出を決めたユナ・キムは、スケートカナダでは緊張のせいかフリーで失敗し、SP1位から3位に転落。しかし、エリックボンパール杯では今季好調の安藤を破り、グランプリ初優勝を飾るなど、昨年の浅田のグランプリデビューを思わせる好成績を残した。
 1年先にシニアグランプリデビューを果たしていた浅田真央は、スケートアメリカでSPは首位に立つも、フリーで冒頭のトリプルアクセルを失敗。そのままリズムを崩してしまい3位に終わる。しかし優勝以外ファイナル進出の道はないという大きなプレッシャーをはね除け、NHK杯で優勝。2人とも、16歳とは思えない精神的な強さを見せてくれた。
 シニアの選手としては、まだまだ幼い部分も見えるふたりだが、バンクーバーオリンピックの頃には19歳。大人になるにつれてどう成長していくのか、目が離せない。

 また、村主章枝は今季、振付師に元アイスダンサーのアレクサンドル・ズーリンを迎え、現代版シンデレラという新境地を開いた。ショートプログラムでは、アイスダンスのトービル&ディーン組が全てのジャッジから6.0の評価を受け、伝説となったラヴェルのバレエ音楽「ボレロ」に挑戦。多くのスケーターが避けて通るこの曲だが、あえて挑戦するところに村主のこだわりが感じられた。この時点ではまだ滑り込みが足りないようにも見えたが、このプログラムを完璧に自分のものにした時、村主がこだわり続ける最高の芸術が見られるような気がする。

 残念ながらファイナル進出には及ばなかったものの、恩田美栄が見せたロシア杯のフリーは素晴らしく、若手のエントリーが目立つグランプリシリーズで、ベテランの底力を発揮した。中野友加里はジャンプや得意のスピンでのチェンジエッジ失敗などミスはあったが、表情や曲の解釈において著しく成長した。また、シニアグランプリデビューを果たした浅田舞と澤田亜紀は各国のスケートファンに鮮烈な印象を残し、日本女子シングルの層の厚さ、個性の豊かさを見せつけたことだろう。

文/Niki Yamamoto 写真/Masami Morita(NHK杯での村主章枝)


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グランプリシリーズ終了 ファイナルに向けて(3)男子シングル

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 男女シングルに関しては、トリノオリンピック女子金メダリストの荒川静香が現役を引退し、男子金メダリストのエフゲニー・プルシェンコ、銅メダリストのジェフリー・バトル、女子銀メダリストのサーシャ・コーエン、銅メダリストのイリーナ・スルツカヤが欠場。男子銀メダリストのステファン・ランビエールもNHK杯を欠場するなど、トリノを熱くさせたスケーターたちのいないグランプリシリーズとなった。トリノでフィギュアスケートに魅了されたファンにとっては少し寂しく感じたかも知れない。しかし、今季のシリーズはバンクーバー五輪までの次世代スケーターたちを見比べる、非常に面白い大会だったともいえる。

 男子シングルは、フランスのブライアン・ジュベールがエリックボンパール杯とロシア杯を制し、一気にファイナル王者へと近づいた。今まではプルシェンコやバトル、ランビエールに隠れていたジュベールだが、五輪メダリストのいないグランプリシリーズで、ついに2大会完全制覇。ショートプログラムにて4回転+3回転のコンビネーションに成功。フリーでもトウループとサルコウの2種類の4回転と、4回転トウループ+2回転トウループのコンビネーションを決めるなど、アグレッシブに攻め続け、他を圧倒した。

 日本の高橋大輔織田信成は、ともにひとつずつ優勝と2位を獲得。
 織田が初戦のスケートアメリカで見せたのは、猫のように柔らかいジャンプと、細部まで気を配った演技だ。SP3位、フリーで1位に立ったライサチェクの追随を退け金メダルを獲得。NHK杯では風邪をひいて体調は最悪の状態だったが、ディフェンディングチャンピオンとしての意地を見せ、ジャンプやスピンを次々と決めた。ジャンプの流れを殺さない、膝を柔らかく使った着氷は素晴らしいの一言。織田自身も「満足できるスケートができた」と語るように、順位は2位だったものの、完成度の高い滑りでファイナル進出を決めた。ファイナルでは4回転ジャンプをプログラムに取り入れる意欲も見せ、さらに高いレベルへと挑む。

 一方、高橋のグランプリ初戦は、スケートカナダにて昨年の世界王者ステファン・ランビエールとの一騎打ち。SPで1位に立つも、SP7位のランビエールがフリーで驚異的な演技を見せ、わずか2ポイントの差で逆転を許した。NHK杯ではランビエール欠場により、またも高橋は織田との一騎打ち。スケートアメリカですでに優勝している織田に、負けるわけにはいかない、とばかりの気迫を見せ、ショート、フリー共に完璧に近い演技を日本のファンに披露した。スピンの回転数など課題は残るものの、見事NHK杯初優勝。4回転ジャンプ、そして上体は激しく動いているにも関わらずエッジが氷に吸い付くような完成度の高いステップ。これらは、グランプリファイナルにおいて、ブライアン・ジュベールの2種類の4回転に匹敵する武器になるだろう。

 そして、このNHK杯で注目を集めたのが、今年シニアデビューを果たした小塚崇彦。
 グランプリ初参戦のエリックボンパール杯ではショートプログラム11位と出遅れ、総合6位に終わったが、NHK杯でのショートプログラムは中国の4回転ジャンパー、チェンジャン・リーに次ぐ4位スタート。フリーではほぼノーミスの演技を披露し、風邪による体調不良とスタミナ不足で順位を落としたリーをかわして表彰台に登った。表現の面では未だ照れが見え隠れするものの、高いスケート技術を持つ小塚の今後に期待したい。

 ジュベール、高橋、織田以外にファイナル進出を決めたのは、エヴァン・ライサチェクアルヴァン・プレオベールジョニー・ウィアーの3名。初戦のスケートアメリカで完璧なフリー演技を見せたライサチェクは、中国杯で優勝し早々とファイナル進出を決めた。ブライアン・ジュベールと同じフランスのアルヴァン・プルオベールは、まるでアイスショーを見ているかのようなプログラムで一躍人気者に。このジュベールとプルオベールは、歳は1つ違いだが、誕生日が同じ9月20日。浅田真央もユナ・キムも9月生まれだ。偶然の一致に過ぎないが、グランプリファイナルは9月生まれに注目してみたい。

文/Niki Yamamoto 写真/Masami Morita(06年世界選手権でのエヴァン・ライサチェク)


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グランプリシリーズ終了 ファイナルに向けて(2)アイスダンス

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  アイスダンスでは、トリノ五輪とグランプリファイナル金メダリストのタチアナ・ナフカ&ロマン・コストマノフ組と、ファイナル銀メダリストでトリノ五輪銅メダルのエレーナ・グルシナ&ルスラン・ゴンチャロフ組の不在により、今季のグランプリシリーズは 「次期頂上決戦」 といった趣きだった。

 その中でもグランプリシリーズを2勝したカップルが2組。スケートアメリカとエリックボンパール杯優勝の、アルベナ・デンコワ&マキシム・スタビスキー組と、スケートカナダとNHK杯優勝のマリー=フランス・デュブレイユ&パトリス・ローゾン組だ。大人のロマンティックな雰囲気を持つカナダのデュブレイユ&ローゾン組は、昨シーズン限りで引退を表明していたが、前チャンピオン不在の今季、もう一度頂点を目指す。そして、昨シーズンの世界選手権を制し、勢いに乗るブルガリアのデンコワ&スタビスキー組も、世代交代をはかるべく金メダルへ挑む。

 次に、昨年のファイナリストであるオクサナ・ドムニナ&マキシム・シャバリン組と、トリノ五輪銀メダリストのタニス・ベルビン&ベンジャミン・アゴスト組は、共に中国杯とロシア杯に出場。各大会で優勝と準優勝を分け合った。ロシアの期待の若手、ドムニナ&シャバリン組は昨シーズンより力をつけており、同年代のライバルであるベルビン&アゴスト組との対決がこれから面白くなりそうだ。

 そして、エリックボンパール2位、ロシア杯3位のイザベル・デロベル&オリビエ・ショーンフェルダー組は、秀逸なディープエッジで他を圧倒するも、ツイズルの出口がずれたりするなどユニゾンの細かいあやふやさが見られた。あれだけのスケーティング技術をもったカップルはなかなかいないので、お互いのスケートにシンクロさせて滑ることが出来ればメダル争いの仲間入りも夢ではない。

 アメリカの2番手メリッサ・グレゴリー&デニス・ペチュコフ組は、スピード感溢れる演技でスケートアメリカ2位、NHK杯3位入賞でファイナルへと進出する。このグレゴリー&ペチュコフ組は、滑りもスピンもスピードがあり見応え充分なのだが、ツイズルなどの細かい部分に雑な箇所が見える。アメリカには世界ジュニア3位のメリル・デイビス&チャーリー・ホワイト組という実力派の若手が育っているだけに、細かいミスを減らすことが今後の課題だろう。

 そのアメリカの若手で全米ジュニアチャンピオンのデイビス&ホワイト組は、アメリカシニア3番手のモーガン・マシュー&マキシム・サヴォイより順位とスコアを伸ばし、このグランプリシリーズで一気にアメリカ3番手に躍り出た。清潔感のある正確なスケートと端正なルックスは、ベルビン&アゴスト組に続くアメリカカップル期待の星だ。バンクーバーに向けて、このような若いカップルが続々出てくると、アイスダンスは男女シングルに負けず劣らず面白い競技になるかもしれない。

文/Niki Yamamoto 写真/Masami Morita(06年世界選手権でのイザベル・デロベル&オリビエ・ショーンフェルダー組)


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グランプリシリーズ終了 ファイナルに向けて(1)ペア

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 今季のグランプリシリーズが全て終了し、グランプリファイナルへと進むファイナリストたちが顔を揃えた。
 若手の台頭が目立った男女シングルとは違い、ベテラン勢がトップを譲らなかったのがペアとアイスダンスだ。

 ペアは、トリノ五輪や昨シーズンのファイナル金メダリストのタチアナ・トトミアニナ&マキシム・マリニン組が引退したが、その他はほぼ変わらぬ顔ぶれ。
 なかでも相変わらず中国勢が強く、特に申雪&趙宏博組は今シーズン限りの引退を表明しているだけに、悔いを残さないよう、大切に、丁寧に滑っているような印象を受けた。中国杯、NHK杯ともに完全優勝を手にし、有終の美を飾るべくファイナルへと挑む。
 その申雪&趙宏博組の後を継ぐのは、スケートカナダ優勝、NHK杯2位の張丹&張昊組。ジュニアっぽさの残る数年前とは違い、すっかり世界のトップペアとして成長した張丹&張昊は、これからバンクーバーに向けてさらなる成長を遂げることだろう。

 エリックボンパール杯優勝、ロシア杯2位のマリア・ペトロワ&アレクセイ・ティホノフ組は、ロシアっぽいしっとりとした大人の演技に更に磨きがかかっていた。中国勢のようなとびきり大きなジャンプや、井上&ボルドウィン組のような大技はないが、技の確実性、曲の表現ともに他のペアとはひと味違った雰囲気を持つ。その独特の魅力を持つペアが、ファイナルでどのような演技を見せてくれるか楽しみだ。

 アメリカ代表の井上怜奈&ジョン・ボルドウィン組は、彼女たちにしか出来ない大技、スロートリプルアクセルの確実性やソロジャンプの確実性(特にボルドウィン)への不安は未だ残る。しかし、井上の誠実なスケートとボルドウィンの陽気な魅力が融合したこのペアは、いつでも観客を魅了する。グランプリファイナルでは、上記3組にどこまで迫れるかが見所だ。

 ファイナル出場は逃したものの、日本人ペアの活躍も目をひいた。今シーズン限りで現役を引退するカナダの若松詩子&ジーン=セバスチャン・フェクトー組は、毎年NHK杯にて成長を楽しみに待っている日本のファンを沸かせていた。彼らのオリエンタルな魅力がもうグランプリシリーズで見られないのは残念だが、それ以上のものを彼女らは残してくれたと思う。
 そして、新ペアを結成してから初めてスポット参戦したロシア杯で堂々の3位を獲得した川口悠子&アレクサンダー・スミルノフ組。来シーズンのファイナル進出争いには、是非とも加わってもらいたい。

 文/Niki Yamamoto 写真/Masami Morita(06年世界選手権での井上怜奈&ジョン・ボルドウィン組)


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