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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

フリー終了後 中庭健介選手コメント 「来シーズンに向けて」

Yasuken
――標高の高さに苦しみながらも最後まで滑りきれた中庭選手。フリーでここまでがんばれた理由は?
中庭 ひとつには、ジャンプ! 次のジャンプ! また次! って、余計なことを考えずにジャンプに集中したからだと思います。それから標高が高くて体が浮く分、ジャンプもぶれにくかった。その部分では助かりましたね。着氷の時に力を入れきれなくても、すーっと立てたんです。

――今回の試合を通しての収穫はありますか?
中庭 今まで苦手意識があったアクセルが跳べたこと。今日はそれが一番よかったことじゃないかな。今まではプログラム最初だろうがどこだろうが、アクセルを跳ばなきゃいけないだけで、マイナス思考になっていました。それがプログラムのリズムを崩すことにもなっていた。でもそんなことも、わりと少なくなってきたかな。これからは、2分半を超えたところでもアクセルが跳べるように(高いポイントが得られるため)。プログラム構成の段階で、アクセルをもうちょっと後ろに持ってきてみたいです。

――逆に反省すべき点はありますか?
中庭 最後は、メンタル面で甘えが出ちゃったかな。甘さが最後のジャンプを跳べなかったことに結びついていると思うので。ふだんからもっと練習を詰めてやっていれば、たとえ失敗したとしても、最後のジャンプを跳んでいたでしょう。そんな部分で、まだまだ自分は甘いなって思います。

――今季最終戦も無事終わりました。来シーズンに向けての抱負をお願いします。
中庭 今シーズンはフリーのプログラムができたのが、8月末と遅かった。次のシーズンは3月ごろから手をつけ始められるよう、さっそくスケジュールを立てていきたいです。来年の世界選手権は……彼らなら、3枠にしてくれるでしょう! いい後輩たちですから(笑)。自分も今日出たようなメンバーと、来年は気負いなく争えるように! 「うわー、エヴァン出てるよ」とか、「ジェフ出るのかぁ」ではなく、「あぁ、出てんだ……」みたいに思えるように(笑)。去年は「うわぁ……」の方が大きかったんです。でも今回は、ほんとに彼らを意識して縮こまるようなことはなかった。次は、気持ちが引かないだけでなく、しっかり彼らと戦えるくらいのレベルを、来シーズンに向けて作っていきたいです!

写真/Haruko Sawada 文/Hirono Aoshima
*写真はクロージングバンケットにて。南里康晴選手と
*中庭健介選手、南里康晴選手、神崎範之選手の爆笑座談会が、5月発売予定の「フィギュアスケートDays vol3」(ダイエックス出版)に掲載予定です


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女子シングル終了 澤田亜紀 フリー5位・総合4位  愛される才能(2)

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「インターハイ、アジア大会、四大陸と続けて試合してきて、疲れはアジア大会がピークだったんです。アジアでは日本チームでひとりだけエキシビションに出られなくて……(中庭健介、小塚崇彦、中野友加里、村主章枝選手は出演)。でもエキシビションの日に休めたので、そこで回復できました。だから大丈夫」
 大丈夫といっても、めったに弱音をはかない中庭健介、村主章枝らが連戦の苦しさを口にしているというのに。彼女のこのタフさは何なのだろう?
「実は亜紀ちゃんは、連戦が決まった時点で四大陸にピークを持ってくるように決めたんです。こちらの方がISUのポイントが高い(世界ランキングに影響)ですしね。高地対策は念を入れて、アジア大会の間も無酸素運動に慣れるよう、5分間走を欠かさずさせていたんですよ」
 と、スタミナの秘訣を語ってくれたのは濱田美栄コーチ。なるほど、ただでさえいつも元気な澤田亜紀、連戦への準備も、高地での試合対策もしっかり整えて、コロラドスプリングスにやってきたのだ。
 このパワーで、後半もトリプルフリップ、ダブルアクセルからのシークエンスなど、気持ちよく決める。トリプルトウ-ダブルトウのコンビネーションは相変わらず、「どうしてそんなに軸が曲がってもダブルがつけられるの!」と呆れてしまうものすごい力技だったが、そんな離れ技にもお客さんは大いに沸く。
 途中、ループがダブルになるミスは惜しかったし、見せ場のストレートラインステップはちょっとスピード感がなく、大事に滑っているようにも見えた。でも、ジャンプを跳んでも、にこ! スパイラルでも、にこ! といい笑顔を見せられるたびに、お客さんはうれしくなってしまう。声をかけずにはいられなくなってしまう。最後まで笑顔いっぱいで滑り終えたアジアの新人スケーターを、ワールドアリーナは大きな大きな拍手で包んでくれた。

 澤田亜紀は愛らしい笑顔を作ろうとして作っているのではない。自然ににっこりしてしまう、それがお客さんもわかっていて、応援せずにはいられないのだ。天性のパフォーマーのブラッドリーや、人前でのパフォーマンスが好きでしょうがないエミリー・ヒューズなどとは、またちょっと違う。しかし確かに澤田亜紀はアーティスティックスポーツのアスリートに必要な、「愛される資質」を持っている。
 そしてそれは大きな舞台に出て行くたび、よりたくさんの人々の視線にさらされるたび、どんどん強くなっているように見える。

文/Hirono Aoshima
*写真はSP終了後、海外メディアの取材に応える澤田亜紀選手
*澤田亜紀選手のインタビューは、3月発売予定の「日本女子フィギュアスケートオフィシャルファンブック」、5月発売予定の「フィギュアスケートDays vol3」(ダイエックス出版)に掲載予定です


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女子シングル終了 澤田亜紀 フリー5位・総合4位  愛される才能(1)

Akifco
初めてのシニアISUチャンピオンシップ、初めてのスモールメダル、初めてのプレスカンファレンス。そして初めての、チャンピオンシップ大会フリー最終滑走。
 初めてづくしのスケーターを見るのは、楽しい。もうここまで来たら、結果はどうなってもOK。澤田亜紀自身が少しでも楽しんで、少しでもいい経験を積んでくれれば。
 でも外野がそんな心配をするまでもなく、この日の澤田亜紀は、実に堂々としていた。
 ウォーミングアップ前のリンクサイド、アメリカでの試合らしく、テレビカメラが最終滑走グループのスケーターたち、ひとりひとりをズームアップして紹介するという演出があった。さすがにマイスナー、ヒューズ、シズニー、ロシェットといった面々は、余裕の笑顔で手を振ってみせる。しかし中国のヤン・リュウはカメラを向けられても緊張した面持ちのまま。それはそうだろう、一番気を張っている瞬間に、こんなショーアップされた紹介を受ける経験は、なかなかない。日本の選手だって同じはずだ。しかし最後に紹介された澤田亜紀は、はにかんだようににこっと笑ってうれしそうに手を振っている! おお、なんだか頼もしい。
 またウォーミングアップ中には、客席間近でルッツの着氷体勢を大きく崩し、「Oh!」という声があちこちからあがった。そこを何とか立て直すと、「大丈夫だよ、えへへ」とでも言うように、客席に向かってにぱっと笑ってみせる。その笑顔に、お客さんはついつい拍手! その後もジャンプをひとつひとつ成功するごとに、ひとつひとつ笑顔を、それも客席にむかってして見せるのだから、お客さんはたまらない。地元勢に声援を送りつつも、ついつい澤田亜紀が気になって視線を向けてしまうようだ。
 演技が始まっても、最初の挨拶から、ぱーっと手を大きく広げ、堂々の登場。いつも高いジャンプも、ひときわ高々と決めると、「立派!」と声を掛けたくなってしまう。途中、フライングシットスピンのフライングでバランスを崩す珍しいミスがあったが、
「標高が高いからジャンプがすごく上がりますよね。フライングも上がりすぎてタイミングが合わず、失敗してしまいました(笑)」
 とのこと。しかしもうひとつの標高の影響、スタミナ切れは起こらなかったのだろうか?

写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


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女子シングル終了 恩田美栄 フリー4位総合6位  ジャンパーの誇り

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 フリーの演技を終えた恩田美栄は、リンクを上がる直前、そっと氷に触れ、ちょっと名残惜しそうな表情を見せた。
 ひょっとしたら、これが現役生活最後の試合になるかもしれない。もしそうなったとしても、悔いが残らないように。「今までどうもありがとう」そんな気持ちを込めて。

 競技引退を決めて今大会にのぞんだ神崎範之とは違い、恩田美栄はまだ今後のことを決めきってはいない。
「これから名古屋に帰って、家族と話し合ってから決めます。私だけの考えでは決められないことなので……。でも3月には、きちんとご報告します」
 10数年も続けてきたことが、今日で最後になるかもしれない、そんな試合。昨日のショートプログラムとは違い、実に恩田美栄らしい演技だった。
 スタート位置に立つ前、彼女は少しだけあたりを見渡してから、何かを決意したようにおもむろに、右手をまっすぐ横に伸ばした。音楽が鳴る前の緊張した面持ちは、ジュニアの頃から変わらない、あの表情。そして冒頭に持ってきたジャンプは、トリプルルッツ-ダブルトウ-ダブルトウ! フェンスぎりぎりで跳ぶビッグジャンプに、大きな歓声が沸く。続いて逆サイドで決めたトリプルフリップ-ダブルトウは、「イェーイ!」という野太い声が称えた。「応援してもらった分、しっかり声を掛けてきます!」中庭健介はじめ、昨日試合を終え、今日は応援団の日本男子3名だ。
 さらにサルコウも確実に降り、これは昨日とは確かにジャンプが違う、いや彼女自身が違うな、と思う。恩田美栄には自分のジャンプはどうあるべきか、しっかりとした信念がある。跳びたいジャンプの理想形を持っている。そんな、根っからのジャンパーが10数年かけて手に入れたジャンプの集大成を、私たちは今、見ているのかもしれない。
「今日はショートの時と違い、『絶対跳ぶぞ!』という気持ちで集中していたんです。それがジャンプに繋がったと思う」
 途中、ループの軸が曲がり両足着氷、ルッツでハンドダウンなど、細かなミスはあった。でも「跳ぶぞ!」という気迫を見せ続けたプログラム。きれいに跳んだジャンプからも、小さなミスをリカバーしようとする姿からも、終始恩田美栄らしさが伝わってくる。
「とにかくジャンプを跳ぶ、絶対にやったる! それだけだったから……きれいに滑ろう、感情を入れよう、って部分は、まったく意識していませんでした」
 昨日に引き続き、ジャンプを跳ぶことと感情表現は別、両立できない、とかたくなに語る。だから自分は今日、ジャンプを選んだのだと。
 でも違うよ、美栄ちゃん。「絶対跳ぶぞ!」という何より強い感情が、確かに今日の演技にはこめられていた。さらに、今まで積んできた練習の成果、柔らかなレイバックスピンでも拍手をもらえたし、スパイラルも伸びやかだった。一番大切なジャンプに集中しても、ジャンプだけではないプログラムを見せられる、そんなスケーターに、恩田美栄はいつのまにかなっていた。
 そして、最後の瞬間、氷にそっと触れた手――。最後になるかもしれない4分間を、悔いなきものにしたいと願う強い気持ち。そんなものが宿っていたから、今日の恩田美栄の滑りは素敵だったのだ。
 磨きぬかれた表現技術で魅了することだけが、フィギュアスケートの表現ではない。ほとばしる生の思い、
演じる選手に宿った強い気持ちが、たくさんの人の心を動かす。
「ジャンプだけは、ゆずれない」彼女のアスリート人生を貫いたその思い、すべてを4分間にこめて、恩田美栄はコロラドスプリングスの氷上を去った。

写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


*恩田美栄選手のインタビューは、3月発売予定の「日本女子フィギュアスケートオフィシャルファンブック」、5月発売予定の「フィギュアスケートDays vol3」(ダイエックス出版)に掲載予定です


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男子シングル終了 中庭健介 フリー6位 総合8位  さらなる進化への一歩

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 はるばるコロラドまで来てよかった! そう思わせてくれる中庭健介のフリープログラムだった。
 なんといってもプログラム冒頭、全日本選手権では見られなかったクリーンな4回転を成功! 続いて苦手としているトリプルアクセルまでも、きれいに着氷! 
「4回転とトリプルアクセル、両方降りたのは2年数ヶ月ぶり。04年のNHK杯ショートプログラム以来なんです。フリーでは、今回が初めてです!」
 2年間一度もできなかったことを、このコロラドで。続くほとんどのジャンプも美しく着氷し、転倒もお手つきもひとつもない。次々と決まるジャンプを見るたび、ひとつのプログラムが完成していく様を見ているようで、興奮がどんどん大きくなっていく。
「でも正直いえば、もう根性でした。きついなんて、もんじゃない。普通は転倒もなくあれだけジャンプが跳べたときは、体力の消耗もなくて楽なんですよ。なのに、アクセルを降りたあたりから、もう尋常じゃないきつさで……」
 確かに、気持ちが乗りきっているときの中庭健介と比べると、演技に疲れを感じる部分はあった。最後のコンビネーションスピンではさすがにふらつき、「がんばれ!」と多くの人が声を掛ける。
「後半……もっとがんばりきれればよかったですね。実は最後のジャンプ、ループが入るべきところ、ひとつ跳んでいないんです。このところずーっとループの調子が悪くて……ここで転倒でもしたら絶対流れが途切れるし、ばてばてになると思ったので」
 結局、ジャンプの要素は予定よりひとつ少ない7つ。点数の上では数点、損をしてしまっている。
 でも、丁寧にひとつひとつの音を拾うように、激しい曲調ではしなやかに激しさを表現し、スローのパートではお客さんが見入ってしまうような動きを見せて。シーズン最高のフリーを、シーズン最後の試合で披露することができた。
「最後まで、がんばりきれたんじゃないかと思います。でも、最終グループのジェフやエヴァンをじっくり見て、思ったんです。動きの間の取り方など、ジャンプとジャンプの繋ぎの部分が、彼らはすごく上手。休んでいるけれど休んでいないように見せる技術を持ってますね。僕なんか今日は、手はこの位置におくとか、体はしっかり後ろに伸ばすとか、苦しすぎて何も考えられなかった。そういう工夫をプログラムの中でできるようにならなきゃなって思いました」
 なるほど、4回転とトリプルアクセル入りのプログラムを披露できたからには、さらに見せるプログラムとして磨きをかけていこうという決意。
「いや、もちろんジャンプだってさらに。もっと攻めるプログラムを見せていきたいです。4回転はもう一種類入れたいですね。トウループとサルコウ、新ルールが始まってから日本人で初の4回転二種類、これを大輔より先にやろうという魂胆です(笑)。理想としては、ひとつのプログラムに4回転2回、アクセル2回。そのくらいのジャンプが、これから必要になってきますから!」
 シーズン最後の試合を充実した気持ちで終えたのも、束の間。中庭健介はスケート靴さえまだ脱がないうちに、もういくつもの新しい目標に、視線を向けている。

写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


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男子シングル終了 南里康晴フリー12位 総合12位 あきらめない男

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 神崎範之、中庭健介、南里康晴。とにかく今日は日本男子3人、ほんとうに良くがんばった。
 南里康晴は結果だけ見ればフリー12位、総合12位。全日本選手権3位の実力を考えれば、ちょっと残念な順位だ。
 フリープログラム「カルメン」では、出だしのトリプルアクセルからいきなり、場内が息を呑むほどの大きな転倒。続くフリップは決めたものの、3つ目のループは力任せの彼らしくないジャンプで、着氷後に手をついたかに見えた。ここでもう、すでに体はふらふら。何とか跳んだルッツがダブルになったあと、彼はしばらく氷上をさまようように逡巡し、プログラムは中断してしまう。カルメンの運命的な音楽だけが、彼に決断を迫るように鳴り続ける……。
「最初のアクセルの転倒で、お尻を強く打ったんです。あの時はもう痛くて……止めようと思った」
 苦悶にゆがんだ表情の彼を、誰もが固唾を飲んで見守る。やはり標高1800メートルのコロラドスプリングス。男子シングルのフリーは、第一グループからプログラム途中で息切れをおこし、命からがらに滑り続ける選手が続出していたのだ。これまで途中棄権の選手こそいなかったものの、大きなアクセルの転倒でどこか痛めたようにみえる彼が、この世界一ハードなリンクで演技を続行するのは、あまりにも過酷だ。ここで止めても、誰も彼を責めはしない。
 ところが。
「今シーズンはこれが最後の試合です。ここで止めてしまって、そのままシーズンを終わりたくはなかった」
 顔を蒼白にさせながらも再び滑り出した彼に、観客たちは大声援! これはもう、演技を続けたことだけで、拍手を贈りたい気持ちだ。たとえこの後、どんなにぼろぼろの演技をしたって恥ずかしくはない。南里康晴は、胸を張って日本に帰れる!
 しかし驚きはそれだけではなかった。再び滑り出した彼がいきなり跳んだのは、最初に失敗したトリプルアクセル! しかもクリーンな着地! すごい! 
 続くサルコウ、ルッツと、予定していたジャンプは次々と、ほぼクリーンに決めていく。そうだ、これがジャンプ大国日本にあっても、屈指のジャンパーとして鳴らしてきた南里康晴の底力だ。
 ジャンプだけでなく、フラメンコの靴音とカスタネットの響く中で踏んでいくサーキュラーステップも、スピードこそないが、じわじわとカルメンの世界を作り上げていくよう。最後のストレートラインも、多少ふらつきながら、力を振り絞って進んでいく。
「お尻はずっと痛くて。でもお客さんの拍手と歓声で、がんばれたんです」
 滑りきってやる! そんな思いで演じた今シーズンの最後のカルメン。南里康晴が今までに演じたどのカルメンよりも、エモーショナルだったかもしれない。
 
 ショートで見せた、ジャンプ失敗後の渾身のステップ。フリーで見せた、中断後のジャンプ連発と最後まで滑りきる気力。07年四大陸選手権、南里康晴は2日間とも、最高の演技は見せられなかった。しかし2日間とも、最後まであきらめない男だった。

写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


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女子シングルSP終了 村主章枝12位 「ボレロ」の行く先 

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 村主章枝の、「ほんとうのボレロ」を私たちは知っている。
 きっとこのプログラムは、こんなものではない。もっと完成された姿、彼女が思い描くほんとうのボレロの姿は、あるはずだ。そんなことを、今シーズンの試合ではいつも感じてきた。
 それが思い込みでないことがわかったのは、全日本選手権の後、メダリストオンアイスの舞台だ。ショーアップされた空間で、フルオーケストラをバックに、大観衆を前に彼女が滑った「ボレロ」。彼女の動きと音楽は恐ろしいほどシンクロし、その壮絶なパワーにただただ圧倒させられるしかなかった。美しいとか、感動的だとか、そういうものではなく、人の体がスケートを滑ることで生まれる、パワーの凄まじさ。「ボレロ」で彼女が見せたかったものは、これなのだ。バレエでもダンスでもない、最上級のスケートがこの音楽と共にあるときに見せられる、最上級のもの。
 やっぱりほんとうのボレロはあった! 今度はこれを、試合で見たい! 多くの人が、そんなことを感じながら、大きな拍手を村主章枝に贈った。
 
 そのための舞台が東京世界選手権でないのは残念だけれど、四大陸選手権の開かれるコロラドスプリングスもまた、村主章枝にとって思い出の場所だ。03年、グランプリファイナル優勝という大きなタイトルを手にしたリンクが、このワールドアリーナ。ここならば、きっと……。
 でも今日のボレロを見て、アイスショーと試合で同じ演技をすることが、どんなに難しいかを知った。普段ならばまず失敗しない、得意のルッツとフリップで転倒。そのことにも驚いたが、ジャンプのミス以上に、彼女の演技そのものに、しなやかさや艶やかさががないことに驚く。
 スポットライトの下では少しも無駄のなかった上体の動きには、ギクシャクしたところがどうしても残っている。最後の見せ場であるステップにも、あの勢いがない。
 アジア大会からの連戦で、高地という条件下で。でもどんなに疲れていても、これがアイスショーでのボレロだったら、もっと彼女は生き生きと滑ったはずだ。ジャンプを跳べなかったとしても、滑りや演技までこんなに輝きを失うことはなかっただろう。
 世界選手権代表を逃した苦しみ。ここでワールド出場メンバーを相手に、一定の成果をあげなければ、というプレッシャー。村主章枝本人は口にしないが、そんな心の重みが、彼女のボレロを曇り空のような重いベールで覆ってしまった。
「体調面ほか、いろいろなことが噛み合っていませんでした。今日の結果は、仕方がなかったと思います。もう一晩冷静に良く考えて、フリーに向かいたいです」

 搾り出すような言葉、消えてしまった笑顔。
 ほんとうは、ここから彼女を解放してあげたい、と思う。もうこんな重圧ばかりの競技生活に縛られなくても、いいのかもしれない。もっと輝ける場所が他にあるならば、そこで大好きなスケートを存分に滑らせてあげたい、と。
 でもそれは、村主章枝自身が決めることだ。
 私たちは、彼女の行く先を見つめるしかない。
 ひょっとしたら競技のこの苦しみがあるからこそ、ショーでのあのボレロはあるのかもしれない。いや、やはりもっと本当の、究極のボレロの姿は、この苦境を乗り越えた先、コンペティションの氷の上で見られるのかもしれない。
 どの道を選べば、最も彼女らしいスケートを人々に見せられるのか。
 本当のボレロを見せるためには、どうすればいいのか。村主章枝はいま、必死に考えているはずだ。


写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


*村主章枝選手のインタビューは、3月発売予定の「日本女子フィギュアスケートオフィシャルファンブック」に掲載予定です


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女子シングルSP終了 恩田美栄7位 

Yoshiespco
 少し前の恩田美栄、たとえば01年ソルトレクシティ四大陸選手権頃の彼女を知っている人が、今日の彼女を見たとしたら、ずいぶん驚いたのではないだろうか。本当に、あのころとは正反対のスケーターに見えただろうから。
 ジャンプは、10代のころほどではないけれど、今でも女子選手の中では充分に高い。でもこの日の3つのジャンプは、トリプルルッツの着氷でぐらつき、コンビネーションジャンプのふたつめはシングルに。ダブルアクセルの着氷も乱れ、もうひとつのトリプルフリップも流れのない、かろうじて成功、というジャンプになってしまう。恩田美栄本来の爽快なジャンプは、ついに一度も見ることができなかった。
 一方で、あんなに元気いっぱいで、ちょっと乱暴なほど勢いよく滑っていた恩田美栄の姿も、影を潜めていた。ここ数年、スケートの美しさにこだわって、つきつめて練習した成果だろう。見せてくれたのは、ドラマチックな音楽「Love Dance」にマッチした、滑らかなスケート。あんなに苦手だったスパイラルでは脚が高く上がり、スピンのレイバックも見違えるように美しく反っている。そして何より「ジャンプが跳べてうれしい!」だけだった感情のほとばしりが、こんなに豊かに深みを増しているとは。シックなブルーの衣装も良く似合い、大人の女性の滑り、といっていいほど、今日の恩田美栄はジャンプよりも滑りに見ごたえがあった。ジャンプがなかったらどうなる? のスケートではなく、ジャンプがなくてもフィギュアスケートとして高く評価される、そんな滑りができていた。これでいつものジャンプさえ取り戻せば、ほんとうに完成されたスケーターに近づけるのに!
「でも、両方は難しいんです」
 辛そうな表情で、少し視線も落とし気味に、彼女はそう言った。
「今は、スケートと感情表現が、一緒にやりにくい。フィギュアスケートは華麗な部分とスポーツの部分があります。それは自分でもわかってる。でも、試合はショーじゃないから。私たちは試合をしているんだから。先生(シュイナールコーチ)はカナダ人だから、滑ることを楽しめっていいます。でも私は日本人だから。試合は試合、と思ってしまう。両方は、難しいんです……」
 ジャンプミスは体力面ではなく、そんな精神的なゆらぎから起きたのだと、自身を分析する。

 恩田美栄にしても、村主章枝にしても、長い選手生活の間に、培ってきたものがある。技術面でもスケートへの考え方においても、少しずつ努力して手に入れてきたものがあり、それを支えに、彼女たちは何度も国際舞台の表彰台に立ってきた。自分のスケートを信じて、走り続ければいいと思っていた。
 でも、選手生活が長くなれば、色々なことが変わってくる。体力的に、本来のジャンプを維持していくのは至難の技だろう。浅田真央や安藤美姫など、若手も次々と台頭し、追いつき、追い越していった。新採点システムの影響で、以前はしていなかった練習が必要になったり、大切にしていたものが役に立たなくなったりもした。
 かつて五輪代表として揃って日の丸を背負ったふたりが、今、ふたりともに苦境に立たされている。澤田亜紀の笑顔とは対照的だったベテランふたりの表情を見ていて、思った。フィギュアスケートとは、なんて残酷なスポーツなのだろう。
「四大陸に向け、一生懸命やってきたつもりです。高地での試合も以前経験しているし、それを前提に今日まで練習してきました。もう一度自分のジャンプの感覚を取り戻して……フリーはもうちょっと冷静に挑みたいです」
 年を重ねて、アスリートとしていろいろなものを失ったとしても、彼女たちを決して裏切らないものはある。それは、若い選手にはない、豊かな経験値だ。ショートで失敗した恩田美栄の落ち込んだ表情は、何度も見てきた。でもその後、ふっきれたようなフリーを滑る姿も、何度も見てきた。経験といういちばん大切な財産を、彼女たちが生かしきれるかどうか。
 最終日のフリーを、最後まで見届けたい。

写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


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SP終了後 澤田亜紀 記者会見レポート&インタビュー

Akipress2
 ショートプログラムで3位に着けた澤田亜紀は、フリーの滑走順抽選後、3位までの選手がもらえるスモールメダルを獲得。同じく3位までの選手が呼ばれるプレスカンファレンスにも出席した。ジュニア・シニアの国際試合を通じて、スモールメダルを手にするのは初めての経験だ。
「記者会見も、国際大会では岡谷(05年ジュニアグランプリシリーズ岡谷大会)以来。でもあの時は日本語でよかったんです」
 今回は1位のロシェット、2位のヒューズと並び、多数の海外メディアと対面。しかも地元北米の選手でもなければ、世界選手権などでおなじみの選手でもないのに、記者からの質問は上位2人よりも澤田亜紀に集中した。それだけ、今夜の演技が多くの人に印象深かったのだ。
 特に場が沸いたのは、「濱田コーチのでこピン」について質問された時。日本のファンならおなじみのエピソード、「初めておでこを叩いてもらったとき、全日本ノービスで優勝したので、それ以来、縁起担ぎでずっと演技前に叩いてもらってます」これには、海外の記者たちも大うけ! 
「隣にいたロシェットにも笑われました」
 と、本人も苦笑い。今日の演技とこのエピソードで、澤田亜紀はもうすっかり人気者だ。
 でもこうした華やかな場に立つことよりも、今夜の彼女が一番うれしかったのは、パーソナルベストを更新できたこと。
「岡谷以来、久しぶりの更新なんです。苦手なスパイラルでレベル4をもらったのもうれしい。スピンは4を狙っていたのが3で少し残念だったけれど、スピンもステップもスパイラルも、全部3以上で!」
 みんなが悩まされているコロラドの標高、これは気にならなかったのだろうか?
「『ここはただのアメリカや!』って勝手に思いこんで滑りました。疲れることはなかったけれど、ジャンプが少し上がりすぎたかな? でも感覚は悪くなかったです」
 ライバル選手たちが次々ミスをしていったこの状況についても、各国のトップ選手が揃ったことについても、澤田亜紀らしい飄々とした受けとめ方をしていた。
「自分が滑る前の演技は、誰のものも見ていないです。結果を見てびっくりしました! でもみんな、前から知っている選手なので……。キミーもエミリーもシズニーも、中国のビン・シューも、ジュニアでいっしょやったし。フリーは……またパーソナルベストの更新を狙いたいです!」

文/Hirono Aoshima


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女子シングルSP終了 澤田亜紀 3位  すごいぞ、亜紀ちゃん! 

Akispco
 女子シングルSP、最終グループ最終滑走。
 飛び出してきた澤田亜紀に、今日ほど強く「がんばれ!」という気持ちを抱いたことはない。村主章枝、恩田美栄と、ふたりの先輩がジャンプミスで沈んでしまい、昨日の男子シングル同様、日本勢は全体的に元気がなかった。
 それだけではない。女子シングル、アメリカのマイスナー、ヒューズ、カナダのシズニー、ロシェットと、有力選手のほぼすべてに転倒などのミスが続出。今夜のお客さんは、クリーンなショートプログラムを、ほとんど見ていないのだ。女子SPに先立って行われたペアフリーでは、カナダのジェシカ・デュベが演技中に大怪我をしてしまうアクシンデントもあり、会場のワールドアリーナの雰囲気は、なんとなく沈みがちだったかもしれない。
「Not a good night!」
 今回写真を提供してくれているカメラマン、リー・アダムスさんも、大きなため息をついて言う。
 ここはひとつ、亜紀ちゃんがあの元気いっぱいの演技を、パーフェクトで見せてくれなくては! 日本チーム応援の思いからだけでなく、今日一日を締めくくる最終滑走でいい演技を見せて、お客さんたちを喜ばせて欲しい、そんな気持ちになったのだ。
 かくしてチームジャパンの末っ子、澤田亜紀は大きな期待に見事にこたえてくれた! 大人っぽさを意識した今シーズンのSP「Blues in the Night」。もうすっかり自分のものにしたよ、そんな余裕さえ感じさせる滑り出しで、トリプルルッツ-ダブルトウ成功! 続くトリプルフリップもこらえた! ふたつのジャンプを無事に終えると、笑顔もちょっとだけゆるめて、手の振りもかわいいスパイラルシークエンス。のびやかな、いちばん澤田亜紀らしい演技で楽しませてくれる。やっぱりまだ、大人っぽい、というよりはかわいらしい、と思ってしまう彼女のスケート。
 でもお客さんは、こんな演技をずっと待っていたのだ。若さの勢いで、すべての憂いを吹き飛ばしてくれるような、「最後の日本の女の子、かわいかったねえ」と、笑いながら家路につけるような、そんな最終滑走者を、会場に足を運んでスケートを見るファンなら、誰しも待ち望んでいる。
 プログラムの一番最後に持ってきた得意のダブルアクセルを成功した瞬間! 大きく咲いた笑顔とともに、澤田亜紀は、ワールドアリーナのお客さんの待ち望んでいたスケーターになった。

写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


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SP終了後 神崎範之選手コメント

Kanzakioff
――(すぐ横をライサチェク選手が通り過ぎて行くなかで)世界のトップレベルの選手と一緒の試合、いかがでしたか?
神崎 もうこの場にいることが光栄で、楽しいな! って感じです。ちょっと前までは考えられなかったことなので。

――ショートプログラム、いい出来だっただけにルッツの失敗が惜しまれますね。
神崎 ちょっと惜しかったです。元々ルッツに苦手意識はあったんですが、今シーズンは克服できたな、と思っていました。でも最後にまた「苦手」が出てしまって。高地の影響はそれほどでもないです。現地に入って初日はきつかったけれど、だいぶマシになりました。調子も良くてノーミスいけるかな、と思ったので、悔しかった。

――でもアクセルで目を引いて、ステップでお客さんを大いに乗せてくれました。
神崎 ステップ、なんとか足が動いて、まとめられました(こけるかと思った(笑)、と濱田コーチ)。お客さんの歓声は、必死だったので最初はあまり聞こえなくて。次、次ってジャンプに意識を集中していたので、ジャンプが3つ終わってから、少し様子がわかった感じです。

――振付師のトム・ディクソンさんもいらっしゃるし、コロラドは神崎選手にとってゆかりのある場所ですね。
神崎 はい、3年前と4年前、クラブの合宿で来ています。このリンクは夏の間、氷が張っていなくて。でもその氷のないリンクに来て、真ん中に立って、客席を見渡したことがあります。いつかはここで試合が出来たらいいな……と。トムさんには挨拶しました。アップ中にシャンペンを持ってきてくれて『飲むか?』って(笑)。さすがに遠慮しましたが。

――フリーに向けて、意気込みを聞かせてください。
神崎 やっぱり今日失敗したルッツを決めたいです。トリプルアクセルも2本とも決めて。さすがにここでの4分半はきつくなると思うので、後半、ばたばたしないように。今夜はしっかり睡眠をとりたいです。時差ぼけで朝4時くらいに目が覚めたりするんですが、今日は試合で疲れたから、ゆっくり眠れるかな。


文/Hirono Aoshima  


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男子シングルSP終了 神崎範之7位 

Spkanzaki
 神崎範之がリンクに現れた時、「待ってました!」の雰囲気はなかった。もちろんコロラドの観客たちはどの選手にもあたたかいけれど、ライサチェクやブラッドリーのような、おなじみの選手を迎える高揚感は、ない。なんといってもISUチャンピオンシップ、初出場。まだほとんどの人が、彼のことを知らないのだ。
 そんな、客人を迎えるような空気が一変したのは、彼が最初のトリプルアクセルを、美しく、かつ豪快に決めたときだ。
「ワーオ!」「やった!」
 隣の席でくまのぬいぐるみを抱えて観戦していた女の子と、同時に大きな声を上げてしまって、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。日本のファンにはすっかりおなじみのあの、トリプルアクセル。今日はなんと6名ものジャッジが+2をつけている! GOEも+1.57と、出場選手中最高の評価。今日最高のトリプルアクセルだと、国際ジャッジにも高く評価されたのだ。
 もうこんなアクセルを跳ばれてしまったら、コロラドのスケートファンたちも目が離せない。駘蕩と流れる「ボレロ」の調べに乗って、軽く、舞うようなサーキュラーステップ。体を上下に激しく、そしてしなやかに動かしながらリンクを斜めに貫いていくストレートラインステップ。3つ目のジャンプ、ルッツの転倒はおしかったが、それもあまり気にならないほど。もう、「ボレロ」に思い残すことのないよう、存分に神崎範之はこのプログラムを楽しみ、彼の世界に私たちを引きずりこんでくれた。
「ねえ、彼のこと、知ってるの?」
 私の反応を見て、おそらく自身もスケーターであろう女の子は、興奮気味に聞いてきた。
 知ってるよ! 彼はノリユキ。日本のナショナルで4番で、トリプルアクセルが得意。コロラドの先生に振付けをしてもらってるんだよ。うれしくて、ついつい聞かれてもいないことまで答えてしまう。
 そして彼はたぶん、これがラストコンペティションなんだよ……。
「Really? But he is great!  またフリーで彼を見られるんだよね!」
 異国の地で、日本のスケーターを見ていてとても幸せに思うのは、こんなときだ。
 
写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


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男子シングルSP終了 南里康晴 11位 成長の証

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 四大陸選手権には、ニュージーランド、メキシコ、南アフリカといった、ふだんあまり見かけない国の選手たちもたくさん参加している。そして彼らの多くは、ジャンプが2回転になってしまったり、スピンやステップのレベルがとても低かったりと、技術的にはなかなか世界の表舞台に立ちにくい選手たちだ。でも彼らの中には時々、フィギュアスケートとしてはいまいちだけれど、なんだか見ていて面白い、芝居っ気たっぷり、その人にしか作れない世界が広がる、そんな魅力を持った選手たちがいる。ジャンプは跳べなくても、人前に立つことが大好きで、このスポーツを続けているんだよ、そんな気持ちが伝わってくるような。
 彼らの演技、スケートの技術よりも強いアピール力で目を引く演技を見た後では、南里康晴の演技は、少し薄味な感じがしてしまった。
 今シーズン、見せるスケートを意識して大きく成長。全日本選手権でも念願の表彰台に上った彼だが、やはりまだまだシャイな九州男児だ。でも、南里康晴には彼らにはないスケートの技術がある! 特にジャンプの切れ味は、見る人をびっくりさせてくれるはず! ……だったのだが、この日はそのジャンプに精彩を欠いてしまった。
 3回転-3回転はフリップでバランスを崩しかけたが、なんとかトウループをつけ、ひとまずOK。しかしトリプルアクセルは両足着氷、最後のルッツにいたっては、シングルに。得意のショートプログラムのはずなのに、ほんとうに彼らしくないジャンプを見せてしまった。
「6分練習(ウォームアップ)がすごく良くて、『やってやろう!』という気持ちになったんです。でもその気持ちが空回りしてしまった。スタミナ的にはコロラドに来て3日目なので、高地でもそんなにきつくはなかったんですが……」
 ルッツでの大きな失敗を見て、これは……思ってしまった。気持ちも、ここでへこんでしまうに違いない、このまますっきりせずに終わってしまうのだろう……と。
 でもこの日、南里康晴が今シーズン取り組んできたことは、ジャンプミスの後に発揮された。最後のストレートラインステップ、これが、とても気持ちの入ったいいステップだったのだ! 大きな腕の動きで、最後のツイヅルで、おっ! と思った。ジャンプの失敗で離れかけた観客の目を、もう一度引き寄せるステップ。前半に感じた「薄さ」などもうなく、アピール上手の選手たちにも負けない、見せるスポーツの醍醐味を味わわせてくれた。
「ジャンプが跳べなかった分、ステップはがんばろうと思ったんです」
 顔は曇らせたままだったけれど、きちんと気持ちを入れ替えたそのときのことを、彼は振り返った。
 これはひょっとしたら、無難にノーミスの演技をするよりも、彼にとって貴重なショートプログラムだったのではないだろうか。ジャンプが武器の彼が、ジャンプがダメだった時も、ステップで力を出せたこと。本人にとっては不本意極まりない結果だったけれど、決して諦めないで踏んでいったステップに、今シーズンの南里康晴の成長を見たような気がした。
「フリーは、今日出来なかった分、納得のいく演技をしたいです。いい演技をして、後の選手を待つ。することは、それだけですね」

写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


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男子シングルSP終了 中庭健介9位 「連戦はきつかった」

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 本田武史、高橋大輔、町田樹と、多くの選手が挑戦してきた楽曲、「アランフェス協奏曲」。そのことに少し躊躇はしたものの、やはり彼らとは違う自分だけの「アランフェス」を滑りたい。そう話していた中庭健介のSPは、他の誰にも負けない、ドラマチックなアランフェスになった。今大会もきっとそれを見せてくれる、と思っていたのだが……。
 4回転を予定していたトウループのコンビネーションは3回転-3回転に。トリプルアクセルは着氷していながら、直後に滑るように転倒。残るトリプルフリップもぐらつき、痛いジャンプミスが続いてしまった。
 最後まで力を抜かずに、アランフェスの世界を描ききろうとしたのだが……結果は悔しい9位。
 ミックスゾーンでの中庭健介は見たことがないほど意気消沈した様子だったが、それでもしっかり話を聞かせてくれた。
「……失敗の原因は、連戦ですね。先週のアジア大会までは調子が整えてこられたんです。でも、ショート、フリー、エキシビションと連日滑って、翌日中国からコロラドまで10時間以上の長距離移動、一日あいただけで、今日再び、ショートプログラムです。
 体はまったく動きませんでした。朝から手足が重たくて、ジャンプも高地だというのに、浮かなかった。思っていたより、タフさが足りませんでしたね……。ほんとうはこんなこと、言い訳にしたくないんですが」
 一週間と間隔がなく、グランプリシリーズ以上にハードな連戦となってしまったアジア大会と四大陸選手権。アジア大会の方を欠場し、四大陸に集中する選択はなかったのだろうか?
「実は最初はそのつもりでした。日程が詰まっていることは、最初からわかっていましたから。でも、アジア大会も4年に一度しかない大きな試合です。そこに自分を選んでいただいたからには、代表としての役割をまっとうしたかった」
 実に、中庭健介らしい理由だ。スケートに対しても、人に対しても、まじめに誠意を持ってつきあう態度。今回はそれが裏目に出てしまったが、もちろん彼のことだ。意気消沈したまま、姿を消したりはしない。心配している私たちを安心させるかのように、少し明るい表情を作って、言葉を継いだ。
「でももちろん、この経験は今後のプラスにもなります! 自分が思っていた以上に疲れたことで、たとえ同じだけ滑ったとしても、試合の疲労と練習の疲労はまったく違うことがよくわかりました。それに、疲れはどっときているけれど、体調は決して悪くないんです。トレーナーの加藤先生に、今日は良く体をほぐしていただいて……フリーまで一日空くので、いい気分転換をしたいです。フリーは100%の演技を目指せるように!
 それに今回は、アメリカとカナダのワン、ツー、スリーがほとんど来てる! 実は僕、現地入りするまで彼らと試合ができるって知らなかったんです。特にジェフ(ジェフリー・バトル)とは久々なので、うれしい。エヴァンをはじめ、ほんとうにトップの選手たちですから、同じ試合に出て身近に感じることで、自分も吸収できる部分をしっかり吸収していきたいです」
 不満足な結果と、大きな疲労。早々に控え室に戻っても許されるところなのに、中庭健介は自分の気持ちを整理するように、しっかり今の状況を伝えてくれた。スケートともこんなふうにつきあってきたからこそ、25歳にしてまだまだ上手になる、そんな選手に彼はなった。
 絶好調の時ではなく、どん底にいるときにこそ、スケーターたちの強さの秘密はわかることがある。


写真/Leah Adams   文/Hirono Aoshima


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アイスダンスCD キャシー・リード&クリス・リード組7位 ジャパンジャージで初陣!

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 アメリカで育ったスケーターのアメリカでの試合。でも、彼らは日本代表なのだ。
 全米ノービスチャンピオンながら、母親が日本人ということで日本国籍も持つ二人は、今シーズンから日本のスケーターとして競技会に出場することを決めた。
 昨年末、初めて出場した全日本選手権でも2位に入り、メダリストオンアイスにも出演。日本のファンにもすっかりおなじみに。そして今回は日本チームの一員として初めて、大きな国際試合の出場となった。
「もう、すべてがエキサイティングです」(クリス)
「ここにいられることが、とてもうれしい!」(キャシー)
 アメリカで選手登録をしていた頃を含めて、ISUのチャンピオンシップ初出場ということで、ウォーミングアップ中はちょっと緊張したおももち。特に弟・クリスがなかなか笑顔を見せず、見ているこちらまで硬くなってしまいそうだ。でもふたりの名前がコールされると、場内は大きな大きな声援! やはり全米ノービスチャンピオン、地元のファンたちにも良く知られている。他国の代表になってもあたたかく迎えられているようで、客席では日の丸がいくつか揺れているのもうれしい。
「緊張はしていました。でも音楽が始まったら、自然にスケートに入り込めたんです」(キャシー)
 この雰囲気の中、ふたりはしっかりと最初の一歩を踏み出した。いつも大きなキャシーの笑顔はさらに晴れやか。また、167センチと183センチのふたりは、北米のカップルたちと比べてもひときわ大きく、華やかに見える。ひとつひとつのステップも大きければ、腕や上体の動きもワルツの整ったリズムの許すなかで最大限に大きく。クリスの方は終始緊張した表情のままだったが、ひとつずつ確認するようにパキッとポジションを変えていくさまは、目に鮮やかに残った。
 ラストのポーズを終えると、緊張感から解き放たれたように、キャシーよりもクリスの方が大きく大きく挨拶をして見せたのが印象的だった。
 結果はアメリカの3組、カナダの3組に次いで、7位。高い評価を得つつある中国のハン&チェン組の上につけた。ほとんど国際舞台初登場で、この成績はなかなかのもの。
「はい。でも順位より、いいスケートができたことがすごくハッピーです。大きな経験にもなったし。でも、順位も良かった!」氷上と同じ大きなスマイルを見せ、キャシーは満足そう。
 ところで今回、キス&クライでは初めてジャパンジャージ姿を披露。ナショナルチームジャージを着るのは、初めての経験?
「イエース! スゴーイ!」(クリス)
「ついにもらったんですよ。全日本の後に!」(キャシー)
 日本語は苦手なふたりだが、質問する記者が日本人だとわかると、「ハイ!」「ドウモアリガトウ!」と、極力日本語を交えながら答えてくれる。
 スケートにも、たたずまいにも、彼らに日本人らしさはない。でもジャパンジャージを着たふたりのスケートや考え方が、これからの日本チームに新しい風を吹き込んでくれそうだ。日本代表としてのリード姉弟がこれからどんな進化を遂げていくのか、彼らがいることで日本チームがどんな影響を受けていくのか、今後がとても楽しみだ。

文/Hirono Aoshima
*キャシー・リード&クリス・リード選手のインタビューは、5月発売予定の「フィギュアスケートDays vol3」(ダイエックス出版)に掲載予定です


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男子シングル直前!  濱田美栄コーチ、神崎範之選手を語る

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 昨年末の全日本選手権では4位、年明けに行われたニューイヤーフィギュアでは高橋・織田に次ぐ3位!
豪快なトリプルアクセルだけでなく、内に秘めた感情が伝わるような演技も見逃せない神崎範之選手。ひょっとしたら現役最後の大舞台になるかもしれない今大会を前に、濱田美栄コーチに話を聞いた。

――全日本選手権、神崎選手は第4位! ショートもフリーも素晴らしい演技で、先生も大感激されていましたね。
濱田 大学院に入って自由になる時間が増えたから、今シーズンは調子が良かったんです。でも本番に弱い選手だからどうなることかなあ、と思っていたんですが。4番でしたねえ!

――ジャンプのパーフェクトも素晴らしかった。でもあの大きなスタンディングオベーションが起きるほど、エモーショナルな演技で。
濱田 実は今思えばね……私、彼の高校の文化祭の演劇を見にいったことがあるんです。そのときなんと「項羽と劉邦」の主役を範之がやってた! もう、びっくりして! というのもそのころは、スケートでもぜんぜん表現なんてできない子だったんです。シャイだったし、ろくにしゃべりもしないし(笑)、表現なんてとんでもないって。あの範之が、お芝居なんてできるの? って。見に来てくださいって聞いた時も「私が行っても範之が出てるところ、わかる?」なんて話してたくらいだったんです。でも、ぱっと幕が開いたら主役で、もうびっくり。え、この子、こんな面があったんだ! って目が点になるような、堂々とした演技でした。

――高校時代、オフアイスで一足先に、エンターティナーぶりを見せていた!
濱田 そうなんです。それが何年かごしに、やっと今になって氷の上でも出てきたのかな(笑)。今になって振り返れば、そういう面が高校時代からあったんだなあ、と思いますね。

――これで引退、というのはもったいない気もします。来シーズン以降があれば、グランプリシリーズでも活躍ができそうなのに……。
濱田 そうですね、でも彼の場合、勉強も中途半端にできないしね。彼は、小さな頃からスケートは趣味です、勉強が中心ですって、ご両親にも言われて、自分もそう思って続けてきたんです。ここまで来るとは思ってなかったから(笑)。でもその取り組み方が良かったんだと思います。彼のご両親も、決して上達をせかそうとはしなかった。やっぱり親御さんは、「まだダブルジャンプが跳べないのかな」「もっと練習させて欲しい」「もっと難しいことを教えて欲しい」と、上手くさせることに焦ってしまう部分があります。でも彼の場合は、ご両親にそういうところがなかった。その分、じっくり自分のペースで技術を身につけられたんだと思います。

――神崎選手本人も、欲がないように見えますね。人を押しのけてまで勝とうという感じが、あまりしない。
濱田 逆にそれがないから、今までなかなか本番で力を発揮できなかったのかもしれませんが。でも彼は、上手くいかないことを人のせいにしない子だったんです。人は失敗すると、原因を自分以外のところに求めがちですよね。氷が合わなかった、先生の指導が悪かった、採点法のせいだって。でも範之は、うまくいかなかったことを全部自分のせいにできた。そんな姿勢があったからこそ、今ここまで成長できたと思うんです。

 全日本選手権の成績に関して、神崎選手自身は、「自分の思うとおりの演技ができたので、順位はあまり……ああ、4番かって感じでした(笑)。でも出たかったメダリストオンアイス出演はうれしかったです」と冷静に振り返る。
 しかしこの成績で、狙っていたユニバーシアードだけでなく、四大陸選手権代表の座も自ら引き寄せた。「国際大会を目指すようになって、スケートへも気持ちも、本気になってきた」(神崎選手)
 ライサチェック、バトル、サンデューなど世界選手権クラスの選手と競える最高の舞台が、彼を待っている。

*濱田美栄コーチへのインタビューは、2月末発売予定の「COLORS2007」(あおば出版刊)にも掲載予定です

写真/Takayuki Honma  文/Hirono Aoshima
(写真はメダリストオンアイス2006での「冬のソナタ」)


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四大陸選手権男子シングル直前!  気合充分! 中庭健介選手からのメッセージ

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 四大陸選手権には3年連続4度目の出場。初出場の03年は13位、その後、05年8位、06年6位と、出るたびに順位をあげ「進化するベテラン」そのものの中庭健介選手。今大会にかける意気込みを語ってくれた。

――なんと四大陸選手権の開催地は、昨年に引き続き、アメリカ・コロラドスプリングスですね。
中庭 そうなんですよ。もう、やめてくださいよって感じです(笑)。

――そんなに嫌な場所なんですか?
中庭 いや、街の雰囲気はいいんです。でも、標高が高い!

――標高1840メートル、高地トレーニングに最適、と言われている街ですね。同じ分数のプログラムを滑っても、コロラドは息の上がり方が全然違うとききました。
中庭 そう、すごいんですよ。リンクの裏に、担架がおいてあるんです! いつ誰が酸欠で倒れても、スタンバイOK(笑)。しかも去年の四大陸は、キス&クライが無駄に高いとこに作られていたんです。へとへとな体で、階段を上がんなきゃいけない(笑)。特にペアの男の選手とか、もう、こんなんなってキスクラに這いあがるんです(へろへろのジェスチャーつき)。

――そんな厳しいリンクでの試合、2年連続で。
中庭 四大陸はうれしいけれど、もう、コロラドはやだなあ、と(笑)。でも標高が高い分、ジャンプはあがりやすいです。僕が初めて4回転を降りたのも、メキシコのジュニアグランプリですからね(00年メキシコシティ大会)。あの時も標高1800メートルのリンクでした。だから、へとへとになることばっかり考えないで(笑)、いい方向で考えます。

――昨年12月の全日本選手権は、5位。中庭選手としては少し残念な結果でしたが、気持ちは切り替わっていますか?
中庭 今シーズンはまたいっぱい、経験させてもらいました。だから全日本が終わって、「何でダメだったんだろう?」って失敗した理由がわからないわけではないんです。大輔やノブの演技も、「ここが自分とは違うんだな」っていう目でみられた。練習でも、あ、こういうところがちょっと足りないんだ、そんなことがわかるんです。試合までの持って行き方も、全日本でまたひとつ勉強になりましたし。長久保先生とも話しました。まだまだやることはある! と。だから練習に対してのモチベーションも、昨シーズンとは違う。これから四大陸まで、試合に向けてうまく合わせていけると思ってます!
(全日本選手権終了後のインタビュー)

中庭健介選手の登場する男子シングルは現地時間7日19時よりスタートです。


*中庭健介選手へのインタビューは、2月末発売予定の「フィギュアスケートDays第2号」にも掲載予定です
*写真・街を見下ろすパイクスピークは標高4200メートル! 寒さはそれほどでもなく、東京より少し寒い程度

文/Hirono Aoshima


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四大陸選手権2007、開幕!

Colo1_1
アメリカ・コロラド州コロラドスプリングスにて、2月5日より四大陸選手権が開幕。
現地時間の7日午前11時30分、アイスダンスコンパルソリーを皮切りに試合がスタートします。
日本からは女子シングルの村主章枝選手、恩田美栄選手、澤田亜紀選手、
男子シングルの南里康晴選手、神崎範之選手、中庭健介選手、
そしてアイスダンスのキャシー・リード&クリス・リード組が参戦。
一方で、アメリカからはライサチェク、マイスナー、カナダからはバトル、ロシェットと、国内チャンピオンたちが顔をそろえます。
世界選手権にも出場する北米の最強メンバーに、日本のベテラン、若手はどう挑むのか。
sports@niftyフィギュアスケート特集では、今大会も現地よりレポート。
来シーズンの世界選手権代表入りを虎視眈々と狙う日本選手たち、彼らのシーズン最後の国際舞台での滑りを連日お伝えします。

四大陸選手権2007オフィシャルページ
四大陸選手権2007リザルトページ


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