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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

2009NHK杯 男子シングルショートプログラム終了(1)

Koduka3015s  日本期待のふたり――髙橋大輔はステップで大きくつまづき、小塚崇彦もほぼ百発百中だったトリプルアクセルで転倒、順位はそれぞれ、4位と5位。思わぬ展開だというのに、NHK杯男子シングル、こんなに楽しくてたまらないのは、いったいなぜだろう?

 まずひとつは、日本男子二人の失敗が「OK、全然大丈夫!」と言いたくなるほど、この先に不安のない失敗だったから。小塚崇彦は公式練習から明らかに張り切りすぎていて、世界チャンピオンやメダリストたちに交じっても元気いっぱい。「これは崇彦、ものすごく良いか、大コケか、どちらかじゃない?」などと言われるほどだった。昨シーズンはファイナルの表彰台まで登り、今年もプルシェンコのいる試合で2位。もう自分はトップスケーターたちにこうして交じってもおかしくない――そんな自負が小塚崇彦には確かにあっただろうし、見ている私たちにもあった。これだけのメンバーが揃うNHK杯でトップに立って、一気に名乗りを上げるチャンス! 意識はしていなくても、彼の気持ちのどこかにあるそんな思いが、トリプルアクセルを狂わせてしまったのだろう。
「調子が良すぎたからこそ! のミスです。いつもはタイミングなんて考えないのに、余計なことをいろいろ考えてしまった」(小塚崇彦)
 一方の高橋大輔は、見せ場のはずのサーキュラーステップで転倒、一瞬プログラムをとぎらせてしまうという、誰よりも高橋大輔自身が悔しくてしょうがないだろうミス。フィンランディア杯SPの最後のポーズでの転倒といい、なかなか素直に復活を喜ばせてくれない男だ。しかし、ジャンプがどうしても入らないとか、ケガをした足の調子が気になるとか、そういった種類のミスではないのだから、安心だ。
 オリンピックまでの長い道のりの、たったひと試合。ふたりとも大丈夫だよ、たぶんこの後は、うまくいくよ――そんな気持ちになれるから、なんだかちっとも残念だと思えないのだ。

 そしてさらに楽しいのは、世界的なスケーターであるふたりならば、凡ミスでも3位までには入れてしまえそうなグランプリシリーズ。しかしそれは許さないとばかりに、立つべきスケーター3人がしっかり上に立ち、NHK杯でありながら記者会見に誰一人日本人選手がいない、という状況になってしまったことだ。
 高橋、小塚に勝るとも劣らない、3人のワールド&グランプリファイナルメダリストたち。彼らがしっかりと自分たちの実績と実力にあった素晴らしい演技を見せ、一グランプリシリーズを、ミスなどしたら表彰台に立つことなんてできない、そこまでのレベルの高い試合にしてくれたことが、うれしくてたまらない。

text/Hirono Aoshima 


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フレンズオンアイス2009レポート 荒川静香 ――たくさんの意味をショーに込めて(1)

Shizuka146 「有香さんやカート、シェーリーンは、(現役の頃から)ずっと憧れてきた、そして、プロになっても憧れのスケーター。そんな彼らといっしょに氷に立つことで、そこに続いていくスケーターたちに、未来に夢を持ってもらえるようなアイスショーにしたい」

  荒川静香の記者会見での言葉どおり、今年のフレンズオンアイスでは、プロスケーターたちの演技が光った。
  本田武史が情緒たっぷりかつ、切れのよい演技で魅せれば、田村岳斗は、野球のユニフォームを着用し、バットとボールを小道具に使って、ファンに新しい一面をプレゼント。スターズオンアイスを始め、海外でも多くのアイスショーを経験している佐藤有香は、四方の客席へのアピールが行き届いている。引き込まれるようなスケーティングの美しさも健在だ。
  なかでも圧巻だったのは、ショーのフィナーレの振り付けを担当したシェイリーン・ボーンと、10年ぶりの来日でファンからの注目の高かったカート・ブラウニング。その卓越したスケーティングスキルとサービス精神からは、スケートを見せて観客を楽しませるというのはどういうことなのか、上質な大人のアイスショーとはどういうものなのか、を改めて教えられるようだった。

「カートはオープニングもフィナーレも、ちょっとしたことがすごく面白い。簡単そうだけれど、僕らから見ると難しいことをやっている。動きすべてがパフォーマンスみたいで、こうならないといけないなと思った。見られてよかった」と、髙橋大輔。荒川の想いはしっかりと伝わったようだ。

 ショーのホスト、荒川自身は、新しいナンバーのフラメンコを披露。
「私は今まであまり感情を表に出さないタイプでした。でも去年『カルメン』を滑ったときに、フラメンコもいけるかなと(笑)。情熱的な女性を、情熱的に感情を出して表現したい。なんでもできるスケーターになりたいので、その中の挑戦のひとつです」と、プロとして新しいことにチャレンジし続ける姿を後輩に見せた。

text/Hiroko Kato


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フレンズオンアイス2009レポート 髙橋大輔 ――喜びと喜びと喜びと

Foidai583   スポットライトに照らされて、大切なものをすくい上げるようにそろえたその両掌に、いったい髙橋大輔は何を見たのだろう?
  リハーサルの3日前にできたばかりという新しいエキシビションナンバー『LUV LETTER』は、短いけれどもスケートへの愛に溢れるナンバーだった。
  音もなく伸びていくスケート。美しさにただひたすら見入ってしまうようなアップライトスピン。切ないピアノの旋律をバックに、髙橋のスケートが滑らかに滑らかに行く。ただ静かにしみじみと胸に響いてくる何か。胸に染み入るようなプログラム……。
  本人いわく「滑り込みはできていないけれど、大好きなナンバー」とのことだったが、観客、スケーター、関係者ら、すべての人が、フレンズオンアイスでの彼の滑りに心を奪われたと思う。物足りなさのかけらも感じなかったと思う。
  髙橋復帰のショーとなった今年のフレンズオンアイスには、紛れもない、暖かく、優しく、美しい祝福のムードがあったし、また、彼自身が、1年近くに及ぶ長い孤独な戦いの後で、ファンもまたずっと待っていたこと、いっしょに耐えてきたことを、直接その肌に感じたに違いない。
  この喜ばしい復帰の日について語るとき、来るべきコンペティションシーズンのこと、オリンピックのメダルについて、4回転ジャンプの仕上がり――そのようなことについて述べるのは、無粋というものだろう。ジャンプがどうだとか、ケガの影響がどうだとか、今はひとまずおいておこう。
  髙橋のスケートが再びファンの心を震わせてくれた喜び、髙橋自身が久しぶりにスポットライトの下で滑る喜び、1年ぶりにファンの歓声と拍手を浴びる喜び――。

  戻ってきてくれてありがとう。もう一度あなたのスケートを見せてくれてありがとう。氷の上に髙橋大輔がいるだけでいい。この純粋な喜びと感謝の気持ちを忘れたくない。
  そしてまた、髙橋にも忘れないでほしい。この先の厳しい戦い、苦しい練習において、この時の喜びがきっと大きな力になるはずだから。

text/Hiroko Kato


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フレンズオンアイス2009、間もなく開幕! 

Friendsb_0224s   8月22日、23日、新横浜スケートセンターにおいて、荒川静香主催のアイスショー、「フレンズオンアイス2009」が開催される。「フィギュアスケートを志す子どもたちの未来のために」、「ひとりでも多くの子どもたちにスケートへの夢を持ってほしい」。そんな想いで始まったショーも、今年で4年目を迎えることになった。荒川自身がショーの企画、運営、キャスティングを担当。毎年すてきなアイデアが散りばめられ、工夫が凝らされた、手作り感あふれるショーになっている。
  今年は、荒川他、カート・ブラウニング、佐藤有香、シェーリーン・ボーン、チン・パン&ジャン・トン、エヴァン・ライサチェクら、世界チャンピオン7人によるチャンピオン・プログラムを用意。想像するだけでわくわくするような、豪華なコラボレーションに期待が高まる。
  なかでも4度のワールドチャンピオン・ブラウニングは、10年ぶりの来日。世界屈指のパフォーマーの演技は見逃せない。今年のカナディアンスターズオンアイスで滑った和太鼓による新プログラム「Spirit of Adventure」を日本で披露してくれるかどうかも気になるところだ。その場合は衣装も要チェック。「肌の色がきれいに見えるかどうか気になって……」。カナダのツアーでは、公演によってシャツを着て滑ったり、シャツを脱いで上半身裸で滑ったりしたようだ。
  髙橋大輔のアイスショー復帰も忘れてはならない。昨シーズンのケガ以来、リハビリとトレーニングに専念していた彼が、このショーで久しぶりにファンの前に姿を見せる。髙橋のいないシーズンはとてもさみしかっただけに、久しぶりに元気に滑る姿を見られるのはファンにとってこの上ない幸せ。苦しみや悔しさを乗り越え、新しく生まれ変わったであろう彼のスケートが楽しみだ。
  他にも、ショーに出演するキッズスケーターの募集、自己推薦枠シニアスケーター募集(村元小月に決定)、ショー前日のリハーサルを見学できるスペシャルイベント「Dear Friends」や、観客が参加できるバナーコンテストなど、フレンズオンアイスならではの面白い趣向があれこれと凝らされている。
  田村岳斗、本田武史、鈴木明子、小塚崇彦、タニス・ベルビン&ベンジャミン・アゴストらも出演の予定。
  昨年のグループナンバー「オペラ座の怪人」や、次々と衣装を替えての荒川静香メドレー、はためく大きな白い布の演出が美しかったシェーリーン・ボーンと荒川のコラボレーション、など――たくさんの印象的なシーンは、いつまでも観た者の心に残る。
今年はどんなプレゼントを荒川静香とそのフレンズからもらえるのか。ショーの開催が今から待ち遠しい。

text/Hiroko Kato


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髙橋大輔連載、スタート!

  スポーツ総合誌「Sportiva」(集英社刊)にて、髙橋大輔選手の連載「Step by Step」が現在発売中の9月号より始まりました。オリンピックに向けて少しずつ動き始めた髙橋選手の心境を、撮りおろし写真とともに紹介していきます。


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関西大学「氷の甲子園」髙橋大輔レポート掲載中

@niftyニュースにて関西大学「氷の甲子園」であいさつ、会見を行った髙橋大輔選手のレポートが掲載されています。

「高橋大輔が「氷の甲子園」で復帰へ向けて挨拶~日本のエースが胸中を語る」


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PASSION 2009 フィギュアスケート男子シングルフォトブック 近日発売!

Passion2009 2006年、2007年の「COLORS」、2008年の「男子シングルメモリアルブック」に続き、男子フィギュアスケートをフィーチャーしたフォトブック「PASSION 2009」が2月中旬発売になります。
 
PASSION2009 フィギュアスケート男子シングルフォトブック

出版社: 双葉社 
発行年月: 2009年02月18日 
ISBN:9784575301045
本体価格:2,200円 (税込 2,310 円)

 髙橋大輔から羽生結弦まで、日本を代表するスケーターたち。そしてブライアン・ジュベール、エヴァン・ライサチェクら世界のトップスケーターたちの魅力を、インタビューやコラム、たくさんの美しい写真でお伝えします。

<CONTENTS>
インタビュー・レポート――エヴァン・ライサチェクブライアン・ジュベール、ジョニー・ウィアー、パトリック・チャン、トマーシュ・ヴェルネル、エフゲニー・プルシェンコ、髙橋大輔、織田信成、小塚崇彦、無良崇人 他

メモリアルインタビュー&コラム――ステファン・ランビエール、ジェフリー・バトル

インタビュー――パスカーレ・カメレンゴ、佐藤有香、フィリップ・キャンデロロ

コーチ・インタビュー――ガリーナ・ズミエフスカヤ、佐藤久美子、無良隆志

スペシャル対談  大爆笑! 織田信成VS安藤美姫、  大暴露? 小塚崇彦VS中野友加里

コラム――「男子フィギュアスケーターの顔を読む」「スターたちの素顔 アイスショーの舞台裏」
「クワドラプルジャンプ伝説」 他多数

 ジュベールが棄権したグランプリファイナルで得たものとは?
 中野友加里が明かす小塚崇彦の素顔とは?
 アマチュア復帰をめざすプルシェンコの意気込みは?
 バトルとランビエール、引退後のそれぞれの変化とは?
 そして、リハビリ中の髙橋大輔が全日本選手権を見て思ったこととは?

 伸びてきた者、ふんばる者、去っていく者、戻ってくる者、そして、復活の時を待っている者……。
 それぞれのパッションが交錯する混迷のフィギュアスケート男子シングルを、多角的な視点から解き明かす一冊です。どうぞお楽しみに!


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2008 マイ・フィギュアスケート・オブ・ザ・イヤー発表 (1)  

Yukarig_7317   07-08シーズンから新しく創設された「マイ・フィギュアスケート・オブ・ザ・イヤー」。
 フィギュアスケートに関わるあらゆる人、物、事象の中から、ファンの皆さんが「ぜひ表彰したい!」と思うものをあげていただきました。
 個人的なアワードということで集計はせず、ユニークなマイ・フィギュアスケート・オブ・ザ・イヤーをできる限り紹介していきたいと思います。……といいつつも大変発表が遅くなってしまいましたので、せめて写真だけでも、最新のものを交えつつお届けいたします。

●スタンディングオベーション・オブ・ザ・イヤー  中野友加里選手の世界選手権フリー

「あの日観客から一番の賞賛を受けたのは中野友加里だった」(福岡県 locolocoさん)
「世界選で前の選手たちの完璧とはいえない流れの中で最終滑走、スタンディングオベーションも納得の全てを払拭させる素晴らしい演技。グッときました。私自身メダル獲得! と思ったのもつかの間、あの結果にブーイングしたのは会場のスケートファンだけではなかったはず」「全日本、世界選手権で見せた素晴らしい演技に、改めて心からのスタンディングオベーションを!」(埼玉県 オキナさん)

●ベストセレモニー・オブ・ザ・イヤー  スウェーデン世界選手権、表彰式での国歌生合唱

「アカペラで聞く国家がとても綺麗で印象的でした。日本語の発音もカンペキでびっくりしました。ちょっとテンポはやくてすぐ終わっちゃいましたけどね。カナダ国歌が美しすぎてテレビの前で思わず涙しました。あれはいい演出だったと思います」(東京都 如月さん)
「君が代に初めて感動しました! 爽やか! 他にもオー・カナダ、ラ・マルセイエーズ、ドイツ国歌、表彰式の度に楽しませてくれましたし、他の金メダル候補国歌も練習を積んだであろうコーラス隊に拍手ですね」(北海道 雲さん)「各国の国歌を全て覚え生披露したコーラス隊に心から尊敬」(北海道 駿さん)

●ノービス・オブ・ザ・イヤー  羽生結弦選手

「ノービスの選手とは思えないほどすばらしい演技に驚愕し、一気に惚れ込みました。さらにスタイルが抜群でどのエレメンツでも魅了させられる、日本男子史上初の完璧なスケーターが誕生した! と思いました」(宮城県 mikiさん)

●キス&クライ・オブ・ザ・イヤー 髙橋大輔選手のNHK杯フリー後のキス&クライ 

「フリー演技終了後のモロゾフコーチの涙、リンクから戻った時のハグ、優勝が決まった後に髙橋君が手袋をはずしてモロゾフコーチと握手、その後ベルネルともハグでお互いを讃えあう姿。スポーツマンらしい印象に残るシーンでした」 (東京都 ゆあんさん)

●サポーター・オブ・ザ・イヤー  大阪、倉敷などでスケートリンク存続活動をされている皆さん

「危機的状況の中で精一杯の努力を惜しまずされている。頭が下がります。なんとかいい方向に解決してほしいという思いから」(みきさん)「リンクがなくなることで夢を奪われる子どもの気持ちを考えると、本当につらいです。私にできるのは署名を送ることぐらいですが、がんばっている子どもたちがスケートを続けられることを願わずにいられません」(山梨県 ユウコさん)

●バトル・オブ・ザイヤー 全米選手権でのジョニー・ウィアー選手とエヴァン・ライサチェク選手

 「フィギュアスケートは順位の出るスポーツですから、常に大会は勝負の世界。その中でも毎年『名勝負』が生まれます。今シーズンの名勝負は、全くの同点となったウィアー選手とライサチェク選手の全米選手権戦だと思います」(獅子朗さん)

photo/Sunao Noto(写真は08年スケートアメリカでの中野友加里選手)


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2008 コスチューム・オブ・ザ・イヤー  推薦コメント(1)

Mikimorita82s コスチューム・オブ・ザ・イヤー投票結果詳細は→1位~20位21位~28位 

1位 浅田真央 FP 『幻想即興曲』 
(四大陸・世界選手権バージョン) 151ポイント
「清楚で可愛い中にもちょっぴり色っぽさもあって、今の真央選手をよく表していると思います」
「モノクロの衣装から深紅の衣装に変えたときはびっくりしたけれど、貴婦人のようで気高くて、とても曲に合っていた」
「特に四大陸選手権のものは、胸の部分の網目模様が中世のお姫様のようでロマンチックな感じ」
「世界選手権のとき、転倒をものともせず阿修羅のごとくステップを刻んで突き進んで行く姿を見て、『この色こそ相応しい』と思った」

2位 浅田真央 SP 『ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア』
(グランプリシリーズバージョン) 116ポイント
「イメージ一新って感じでしたし、プログラムの雰囲気とすごくマッチした衣装だと思いました。タラソワ氏プロデュースの衣装らしいですが、さすがプログラム作成者」
「シーズン前半のSPの衣装はプログラムのイメージにもぴったりだったし、今まで浅田選手にあった『かわいらしい』イメージをすべて取り払った美しく強い印象の衣装だった。不調とともにお蔵入り になって残念でした」
「SPでは3種類の衣装があってどれも好きですが、最初のが浅田選手の長い手足が一層長く見えて、美しい鳥が舞っているようでした」
「バレエの衣装を彷彿とさせる短いスカート、胸の羽のような模様が『今にも飛び立ちそうな強く美しい鳥』をイメージさせた」

3位 髙橋大輔 SP 『白鳥の湖』 107ポイント 
「プログラムにマッチした衣装。手袋が腕を長く見せ、指先までの表現がスムーズにつながっていた」
「白鳥なのにヒップホップと男子ということでか、黒にしたところが良かった。男子の衣装で綺麗だなと思った、たった1つの衣装」
「スワンはヒップホップっぽい衣装ではないけれど、ダークな感じととても良いデザインだし、髙橋選手にとてもよく似合ってました。羽がポイントですね。 透け具合もグゥーです」
「この衣装だからこそ、ヒップホップが活きたと思う。首周りのフサフサが忘れられない……」
「ひじきと言われても、ホームレスみたいと言われても、ヒップホップ白鳥の衣装を着こなせるのは髙橋選手だけだと思います。おひげもお似合い」

4位 安藤美姫 FP 『カルメン』 76ポイント
「どぎつささえ感じる派手な赤と黒。演技の良し悪しで衣装の印象さえ変わってしまうけれど、激しくて強気なカルメンをよく表現していたと思います」
「どうしてもこれまでカタリナ・ビット選手の『カルメン』のイメージが強かった私にとって、黒がメインの衣裳は新鮮で、同時に黒髪・黒目の安藤選手にはとても似合っていて素敵だと思いました。曲のイメージとマッチしていて、なおかつ選手に似合っているところが素晴らしい」
「ニコライ・モロゾフコーチになってから、プログラムの世界観をよくあらわしたセクシーな衣装が印象的」
「プログラムにとても合っていて、彼女の魅力がよく出ていた衣装。全日本の時は気高いカルメンが氷の上にいたと思った」

photo/ Masami Morita(写真は07年全日本選手権での安藤美姫選手「カルメン」)

*スケートアメリカでは日本のベストドレッサーたちの先陣を切って安藤美姫選手が登場。今シーズンはすでにエキシビションナンバー「ボレロ」で2着、ショートプログラム「チェアマンズワルツ」の衣装も披露している。フリー「ジゼル」の衣装は大きな舞台では初披露。グランプリシリーズ、次々に見られるニューコスチュームも楽しみたい

*髙橋大輔選手へのインタビューが『日本男子フィギュアスケートFan Book Cutting Edge2009』に、浅田真央選手、安藤美姫選手、髙橋選手へのインタビューが『フィギュアスケート グランプリシリーズ 2008 オフィシャルガイドブック』に掲載されています


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『Cutting Edge2009』発売記念、男子シングルチームジャパンクイズ!

Ce2009_12e6453 『Cutting Edge2009』、発売直前。
編集部より、インタビューに登場してくれた11人の選手に関する11問のクイズを出題します。
解答はすべて、『Cutting Edge2009』のどこかに掲載。昨年版より16ページ増の112ページ、答えあわせを楽しみながら読んでみてください。

 村主章枝選手に、マッサージ師さんを紹介してもらった選手は誰?

 インタビューが始まるや否や、『Cutting Edge』の売り上げを心配してくれた選手は誰?

 ほんとうは今シーズンフリー、「オペラ座の怪人」を滑りたかった選手は誰?

 ジャンプを跳べたうれしさのあまり、氷の上を転げまわって喜んだ選手は誰?

 田村岳斗さんから小学生用計算ドリルをプレゼントされそうになった選手は誰?

 大切な試合の滑走直前、鼻血が止まらなくなった選手は誰?

 6人もの選手から、「あいつが一番器用」と言われた選手は誰?

 滑ってみたいプログラムは「髙橋大輔の剣の舞」という選手は誰?

 今年の色紙に「才能には限界がある。努力は無限だ!!」と書いた選手は誰?

 マイブームが「みんなのGOLF」、という選手は誰?

 インタビューで恋人募集をした選手は誰?

photo/Sunao Noto (ドリームオンアイス2008リハーサルにて)


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『日本男子フィギュアスケートFan Book Cutting Edge2009』10/14発売、10/12先行発売決定!

Ce200961776_2 今年で4冊目となる日本男子シングルのファンブック、『Cutting Edge2009』
お待たせいたしました。来週火曜日、全国書店、インターネット書店にて発売です。
また10/12より、東京フィギュアスケート選手権大会会場(明治神宮アイススケート場)にて、先行発売も決定いたしました。
待ちきれない皆さんは、ぜひ会場にて!

タイトル:日本男子フィギュアスケートFan Book Cutting Edge 2009
出版社:スキージャーナル

書店発売日:10月14日
会場先行発売日時:10月12日(16時~)、10月13日
定価:本体1800+税
ISBN:978-4-7899-6177-6
髙橋大輔ポスター付き!

【contents】
日本男子シングル11選手独占インタビュー

髙橋大輔  「落ち着いて、ゆっくりと。ちょっと賢く、一年を過ごしたい」
織田信成 「新しい自分になれたのは、去年のことがあったから」
小塚崇彦 「今までとは違う僕を見せられる、そんなシーズンになる」
南里康晴 「去年以上に厳しい今年。ひとつひとつ、結果を残したい」
中庭健介 「『頑張ってるね』じゃ、ダメ。『上手くなったね!』って言われたい」
無良崇人 「初めてのシニア、プラスになる経験を絶対にしたい。ひとつでも多くしたい」
柴田嶺 「生まれ変わります。レイジーな自分から、ストイックな自分へ」  
小林宏一 「スケートは難しい。でも今、その難しさが楽しい」
佐々木彰生 「ただの踊るスケーターじゃなく、トップレベルにふさわしい技術を」
羽生結弦 「頑張ったノービスは、もう終わった時代。今年は一からやり直しです」
町田樹  「常に考えているのは、目の前の試合のことだけ」

スペシャルインタビュー 
佐藤有香、田村岳斗、荒川静香

応援メッセージ  
今泉清保、小川彌生、本田恵美、中野友加里、安藤美姫

コーチメッセージ 
長光歌子、織田憲子、佐藤信夫、河野由美、石原美和、長久保裕、川越正大、樋口豊、阿部奈々美、佐藤亜希子、秦安曇、小泉仁

選手の皆さん、コーチの先生方をはじめ、たくさんの関係者のご協力により、今年も『Cutting Edge』、発刊にこぎつけました。史上最も日本男子シングルが熱い、今。
今を見逃したくない11人の選手たちの、冷たい氷の上に立ち続ける理由、
この場所で、この時代に、見せたいものとは?
スケーターと、スケートを愛する皆さんのための、ファンブックです。

*女子シングルファンブックの詳細も追ってお伝えいたします。
*スケートまったく関係ありませんが、写真家板東寛司さんとライター青嶋の本、『まだ恋じゃない』(メディアックス刊)も発売中。ついでにこっそりおすすめです。


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2008 コーチ・オブ・ザ・イヤー  推薦コメント(1)1位~4位

Awardp1000215_2 1位 ラフェアル・アルトゥニアン  94ポイント
「浅田真央、ジェフリー・バトルの世界選手権優勝に一番かかわった人物だと思う」
「(バトル選手がインタビューで)事情があってワールドに彼は来れなかったと言っていましたが、バトル選手・浅田選手という教え子2人の優勝は、ラファエルコーチのこれまでの指導の賜物といっていいと思います」
「残念ながら浅田選手とは師弟関係を解消してしまいましたが、今回の男女の世界チャンピオンを生み出した一つの要因は間違いなく彼の存在だったと思います」
「このコーチについた代表的な選手も山あり谷ありの劇的なシーズンでしたが、ラファエルコーチにとっても波瀾万丈のシーズンだったと思います。しかも、世界選手権で男女シングルの金メダリストが教え子だったにも関わらず、そのキスクラに座ることができなかったなんて……最後の最後にどんな思いをされたのかと考えると、胸がいっぱいになってしまいます」
「世界選手権の覇者は男女とも彼のコーチを受けている。なのに、どうして晴れの舞台に現れないんだ! 何かしらお礼の気持ちを伝えたい! この賞とか……」

2位 佐藤信夫  65ポイント
「教え子の中野選手・小塚選手が世界選手権でともに好成績。やはり、ここぞという時の安定感が、ベテランコーチだなと感じました」
「国外のコーチが賞賛されがちですが、日本の恵まれないリンク事情、環境の中で、ワールドにふたり送り込んだ佐藤ご夫妻はやっぱりスゴイと思います。コーチ選定で悩んでいる選手を見てから佐藤ご夫妻に大事に育てられている中野・小塚選手を見ると、なんだかホッとします」
「世界選手権での中野選手や小塚選手の堂々とした演技、清々しさや真面目な受け答えなど、スケーティングはもちろんですが、精神的な部分での教育もシッカリなさってるんだな~と思いました」
「長年コーチをしていらして、毎年大きな大会へ選手を派遣できる指導力の確かさを感じます」
「世界選手権でのキス&クライで点数の低さにブーイングが起こる中、中野選手ともども嬉しそうな表情だったこと。最高の演技ができた選手を温かく迎える気持ちが素敵だと思いました」

3位 ニコライ・モロゾフ 46ポイント
「一番の推薦理由は髙橋君にヒップホップをさせたこと。リッポン君をジュニアチャンピオンに導いたこと」
「技術だけでなくメンタルな面でもとても選手を上手に指導していると思う。情熱を感じる」
「昨シーズンに引き続き、髙橋、安藤を成長させてきたから。安藤は悩んでいたようだけれど、全日本での素晴らしい復活はやっぱりニコライのサポートがあったからこそ可能だったと思う」
「アダム・リッポンもジュニア選手権で優勝に導いたし、ここまで選手に付き添い、親身に指導、そして結果を出すコーチはいない」

4位 タチアナ・タラソワ  43ポイント
「コリオグラファーの立場にも関わらず、あどけなさの残る浅田選手の演技に見事『女性らしさ』を加えました。殿堂入りはさすがです」
「久々に魔法を使ったから! タラソワさんのフィギュアスケートへの情熱と、選手の能力を開花させる力は本当に尊敬します」
「真央ちゃんに、可憐さと美しさという武器を与えてくれた。あんな短時間で素晴らしい選手に育ててくれて、大感謝です!!」

*写真上は07年イタリア全日本合宿での佐藤信夫コーチ(右)と、ともに小塚崇彦を指導した小塚嗣彦コーチ


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2008 プログラム・オブ・ザ・イヤー 推薦コメント(1) 1位~6位

Awardimg_4020s 2008プログラム・オブ・ザ・イヤー、投票者の皆さんから寄せられた推薦コメントの一部をご紹介します。思わず昨シーズンのプログラムを見返したくなるようなたくさんのコメント、ありがとうございました。

1位 髙橋大輔 SP 『白鳥の湖 ヒップホップバージョン』
(ニコライ・モロゾフ) 320ポイント
「これをなくして今シーズンは語れないくらい、最高のプログラムです。大輔君にしか滑れないだろうと思います。そういうプログラムを待っていました。一度、生で見てみたいです」
「初めて見たときは、『これが人間わざか!』と、本当にびっくりしたし、その後も何度見ても飽きるどころか見るたびに輝きを増していきました」
「今季一番の話題作。競技会のはずが、いつの間にやらその場がショーに化けてしまっている、恐るべきプログラム」
「まさに今季の『事件』。モロゾフ振り付けのものは今季はこれが一番良かった。もちろん、髙橋選手の良さである『踊り心』を十分引き出している。あんなにお客の沸くSPは見たことがない」

2位 浅田真央 SP 『ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア』
(タチアナ・タラソワ) 270ポイント
「まず、映画のサントラを聞いて真央ちゃんが滑る姿が目に浮かんだ。日米対抗で初めて見た時、2時間の映画が2分50秒で表現されているように感じられた。タラソワ、天才!」
「新しい浅田選手を見事に表現したショートプログラム。ストレートラインステップの素晴らしさは、まるで不死鳥が力を得て飛び立つさまをあらわしているようで、見ていて自然と涙がこぼれる」
「嵐の海を渡る一羽の鳥のようです」
「また新たな真央ちゃんがのぞけたプログラム。悲しげながら情熱的で、大人の魅力にあふれていました」

3位 浅田真央 FP 『幻想即興曲』
(ローリー・ニコル) 142ポイント 
「浅田選手の耳の良さ、動きの美しさ、ステップの細かさがピアノの旋律や曲の雰囲気と見事に調和していて、『これが曲を表現することなのか……』と、何度もため息が出ました」
「3Aや3回転‐3回転などの大技を取り入れながら、涼しい顔で高密度のステップを踏んでいく姿に、もうほとんど圧倒されました。よく使われる音楽ですが、昨季のノクターンを継承する、彼女らしいプログラムに完成したと思います」
「曲に合わせてステップが変わっていくのが良かった。シーズン後半では、少しずつ振り付けを変えていて、『即興曲』の名の通り自由で、見ていておもしろかった。」

4位 中野友加里 FP 『スペイン奇想曲』
(マリーナ・ズウェア)  93ポイント
「ワールドでのステップの美しさが忘れられません。この日に向けてかなり練習して、レベルアップしたきたのでしょうね」
「歯切れの良い曲想と中野選手のシャープな動きがとてもマッチしていて、見ていて気持ちよかった」
「第四楽章から始まり、最後まで流れをとぎれせないすばらしい音楽構成と振り付けでした。特に音楽の盛り上がりに呼応する冒頭のトリプルアクセル、最後のドーナツスピンは見事でした」

5位 安藤美姫 FP  『カルメン』
(ニコライ・モロゾフ) 72ポイント
「カルメンは誰にでも踊れる曲ではない。安藤はそれを見事に安藤の曲として演じた」
「不調のなか、怖いほどの気迫と表現、技術。ともにすばらしいものでした」
「情熱と酷薄さの両面を持つ魅惑的な悪女を、安藤選手ならではの力強いスケーティングで表現した名プログラム。全日本選手権でのパーフェクトなカルメンは、今シーズン一番感動した演技でした」

6位 ヴァーチュー&モア FD 『シェルブールの雨傘』(イゴール・シュピルバンド&マリーナ・ズウェア) 58ポイント 
「本当に、一遍の小説か映画のようでした。難しいリフトなどもこなしながら、流れが全く途切れない、素敵なプログラム」
「世界選手権で一番素晴らしかった。高い技術が必要なのにそれを感じさせない流れるようなスケーティングが秀逸で、ふたりの雰囲気にピッタリ合ったプログラムだと思った」
「まるで二人が歌っているような情感たっぷりな演技をNHK杯で生観戦し、涙が出るくらい感動した」

photo/Masami Morita(全日本選手権での中野友加里選手「スペイン奇想曲」)


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2008 プログラム・オブ・ザ・イヤー  投票結果発表  1位~20位

Award_mg_1053 1位 髙橋大輔 SP 『白鳥の湖 ヒップホップバージョン』
(ニコライ・モロゾフ) 320ポイント

2位 浅田真央 SP 『ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア』
(タチアナ・タラソワ) 270ポイント

3位 浅田真央 FP 『幻想即興曲』
(ローリー・ニコル) 142ポイント 

4位 中野友加里 FP 『スペイン奇想曲』
(マリーナ・ズウェア)  93ポイント

5位 安藤美姫 FP  『カルメン』
(ニコライ・モロゾフ) 72ポイント

6位 ヴァーチュー&モア FD 『シェルブールの雨傘』(イゴール・シュピルバンド&マリーナ・ズウェア) 58ポイント 
7位 髙橋大輔 FP  『ロミオとジュリエット』(ニコライ・モロゾフ) 43ポイント 
8位 浅田真央 EX 『So deep is the night』 (ローリー・ニコル) 38ポイント
9位 ステファン・ランビエール FP 『ポエタ』 (アントニオ・ナハロ) 31ポイント
10位 ジェフリー・バトル FP 『アララトの聖母』(デイヴィット・ウィルソン) 21ポイント   
11位 キム・ヨナ FP 『ミス・サイゴン』(デイヴィット・ウィルソン) 20ポイント
11位 カー&カー OD 『スコットランドダンス』(エフゲニー・プラトフ) 20ポイント
13位 デロベル&ショーンフェルダー FD 『ピアノレッスン』(ヨルマ・ウォティネン) 17ポイント
14位 ジョニー・ウィアー SP 『ユノーナとアヴォーシ』(ファイエ・キタリエワ) 15ポイント
15位 太田由希奈 FP 『アランフェス協奏曲』(デイヴィット・ウィルソン) 14ポイント  
16位 ジェレミー・アボット FP 『仮面舞踏会、ジャズ組曲他』(トム・ディクソン) 13ポイント
17位 髙橋大輔 EX 『バチェラレット』(宮本賢二) 12ポイント 
18位 ジェフリー・バトル SP 『アディオス・ノニーノ』(デイヴィット・ウィルソン) 11ポイント   
19位 カロリーナ・コストナー SP 『ライダーズ・オン・ザ・ストーム』(ローリー・ニコル) 10ポイント
20位 ホフロワ&ノビツキー FD 『禿山の一夜』(アレクサンドル・スビーニン&イリーナ・チュク) 9ポイント
20位 ミライ・ナガス SP 『アイ・ガット・リズム』(ローリー・ニコル) 9ポイント

*()内は振付師
*投票者ひとりにつき3プログラムまで投票可能。1票1ポイントで集計しています

photo/ Sunao Noto *写真は全日本選手権での「白鳥の湖」


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フレンズオンアイス2008レポート(4) 髙橋大輔・Made in Japan の小さな奇跡

Daisukee8251_2   フレンズオンアイスの記者会見の席。新ショートプログラムについて語る髙橋大輔は、うれしそうだった。
 今回、彼が披露したソロナンバーは、今シーズンを闘っていく新SP、アコーディオン奏者cobaの「eye」。昨シーズンのEXナンバー「バチェラレット」に続く、宮本賢二振付けのプログラムだ。
「3~4年前からこの曲が好きで、ずっと滑りたいなと思っていて……。それがやっと実現できたので、自分自身でもすごく楽しみです!」
 昨シーズン、SP「白鳥の湖 Hip Hop Version」に関しては、「最初はやりたくなかったプログラム」と語り続けたことを思うと、意志を持って始動した髙橋大輔の姿が浮かび上がる。
 とはいうものの、実は「eye」という曲名を彼は知らなかったとか。
「(宮本賢二に)『cobaでやりたい』とだけ最初に言ったんです。そうしたら、彼の選んできてくれた曲が偶然にも『eye』で……。もう、ふたりの気持ちが一緒だった。そこから始まりました」
 心の通い合った同志との“小さな奇跡”を語る髙橋大輔は、ちょっと自慢げにさえ見えた。同じ方向をみつめ、慣れ親しんだ言葉で語り合い、盛り上がり、モノづくりをともにできる仲間が、こんなに身近にいるということ。しかも、日本人振付師×日本の楽曲というMade in Japanのプログラムで、世界チャンピオンを賭けて闘えるということ……彼の自信と手応えは、今回の演技にも現れていた。

 ドリームオンアイスで初披露されて1週間。フレンズオンアイスの「eye」は、さらに進化していた。
 前半のジャンプはより高さを増し、余裕の着氷。ショートにも4回転を入れる準備は整ったように見える。髙橋自身が「自分の課題」と語るスピンでも、シットスピンに柔軟性が増していた。競技会を見据え、好スタートを切れているようだ。
 後半は、ストレートラインステップとサーキュラーステップが続く、髙橋ワールドの見せ場。タンゴ特有の後ろに蹴り上げるステップや、女性をエスコートしているような振付けでタンゴの世界を表現する。
「(ステップが続いて)すごく大変。でも、ストレートラインステップとサーキュラーステップが全く別の雰囲気のものになっていると思う。サーキュラーステップの方は、ちょっとかわいらしい動き……男らしいけれど、かわいらしい、みたいなところを狙っています」

 髙橋大輔の狙いに嵌まったかのように、会場は彼のステップとともに揺れ動いていた。ステップを踏み、目の前を滑っていく髙橋とシンクロし、観客は心ごと、身体ごと、彼の進む方向に引き寄せられていくのだ。まるで、髙橋にもぎ取られていった自分の魂を追いかけるかのように……。
 これは、花道で見得を切る歌舞伎役者、はたまた早乙女太一や梅沢富美男など、大衆演劇のスター役者と観客との関係にも似ているのではないか、と思う。決して観客に、“美しき鑑賞物”としてだけの傍観はさせてくれない。観客と視線を掛け合い、心をさらい、観客を道連れに作りあげていくジャパニーズ・エンターテインメントの系譜が、髙橋大輔の演技の中にも脈々と流れているのではないだろうか。
 そんな彼だからこそ、Made in Japanのプログラムで闘う意義があり、その相乗効果を世界にアピールしてくれそうな予感がする。

 フレンズオンアイスのオリジナルメンバーの一員である、髙橋大輔と宮本賢二。この2人の“小さな奇跡”から始まったプロジェクトが、今シーズンの国際競技会で大きな成果となることを期待する。

photo/Sunao Noto    text/Yukiko Oshima


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フレンズオンアイス2008レポート(1)

Foto219s  先週のドリームオンアイスに引き続き、今週のフレンズオンアイス。
 2週続けてこんなゴージャスなショーを見てしまって、罰が当たらないだろうか? 

 もちろんふたつのショーは、大きく違う。ドリームオンアイスは前のシーズンに結果を残した選手だけに参加が許されるショー。スケーターたちはその名誉を噛みしめ、そこに立つ誇りを感じながら滑ってくれる。
 フレンズオンアイスは、荒川静香というメダリストを中心に、その仲間たちが作り上げるショー。選ばれたスケーター、というよりも、自ら集まったスケーターたちによる、ぐっとフレンドリーなアイスショーだ。
 オープニング、名前をコールされたスケーターたちは、荒川静香を中心にくるりとまわり、彼女と親しげに目を合わせ、選手ではなくキャストとして紹介される。
「また来年も見たい、というお客さんの声に支えられて、今年で3回目のショーができました。また、ショーは私ひとりでは成り立たないもの。集まってくれるスケーターがいるからできるものです。みんながここまで短い期間でひとつのショーを仕上げてくれて……。参加したスケーター同士が、この場に集まったことでまた高めあえるショーでありたい。またこの場にいることで、スケーターたちが楽しくリラックスできるショーでもありたい。そう願っています」(荒川静香)
 
 そんな彼女が「3年目だから、06年から連続で出演しているショーのオリジナルメンバーといっしょに、何かできないか」と考え、作り上げたのが、グループナンバー「オペラ座の怪人」だ。
 ショーの中盤。天井から吊るされた豪華なシャンデリアを中心に繰り広げられたのは、仮面をつけた宮本賢二の妖艶な滑り、恩田美栄、本田武史、田村岳斗と、同じ時代を戦い抜いた3人のコラボレーション。続いて中野友加里と荒川静香が純白の衣装で登場すると、二人そろってのダブルイナバウアー! そしてビールマンスピンをする荒川静香の周りで中野友加里がジャンプ。中野友加里のドーナツスピンの周りで荒川静香がジャンプ!
「作り出すのはひとつのナンバー。でもその中で、出てくれるスケーター、ひとりひとりのいいところを存分に引き出せる演出、ひとりひとりの個性がしっかり発揮できる演出を考えてみました」
 白いふたりのクリスティーヌが夢のような時間をつむぎだしたかと思うと、おなじみの音楽とともに現れたのは、怪人・髙橋大輔! あの2007年東京ワールドを沸かせた「オペラ座の怪人」のステップを、あの衣装で、久しぶりに見せてくれた。
「実はこの演目を選んだのも、大ちゃんの『オペラ座の怪人』のステップがとても好きで、それをうまく生かしつつグループナンバーができないかな、と思ったからなんです。ミュージカルも映画も見て、音楽もCDを5枚くらい駆使して構成したんですよ」
 1年以上を経て、怪人・大輔は一段と迫力を増していた。力強い足さばきや自在な上半身。身体の動きも表情も、すべてにおいて一層の凄みを帯びて見えたのは、ワイルドなヘアスタイルやボーカル入りのドラマチックな音楽のせいだけではないだろう。ステップの後にはジャンプもスパーンと決め、ここで一挙に美しいプログラムを引き締める。
「彼も友加里ちゃんも、アマチュア。でもショーを見ると、もうこの人たちプロだな、と思います。その姿に刺激を受けて、私たちプロももっとがんばらなきゃ! と思ってしまう」
 後半には、本田、田村、荒川、中野と、4人がいっせいにイーグル。美しいこの技をそれぞれに極めた4人。試合ではいつも大きな拍手をもらっていたこの技を、4人が一度に見せてしまうのだ。仕掛け人の荒川静香は、スケートファンが何を見れば喜ぶかを、本当によく知っている。
 最後は恩田、髙橋、宮本の3人が戻ってきて、華やかにフィニッシュ。
 
 フィギュアスケートのグループナンバーは、プリンスアイスワールドやスターズオンアイスなどでおなじみだ。フレンズオンアイスの「オペラ座の怪人」は、それに比べればぐっとシンプルな構成。しかしこのうえなく煌びやかな作品だった。
 こんなに美しいものをみんなで作り上げられる幼なじみ、仲間たちとは、いったいどんなものだろう? ジャンプが得意なスポーツ少年少女たちが競い合って成長して、大人になって、また自らの意思で集まって。「オペラ座の怪人」は、彼らからスケートファンに送られた、素敵なプレゼントだ。

 他にも、振付けを担当したシェイ・リーン・ボーンと荒川静香が競演した「ある晴れた日に」。一般公募の子供たちによるキッズスケーティングのコーナー。ファンからリクエストの多かったナンバーを次々に滑る荒川静香メドレーなど、フレンズオンアイスならではの見どころがたくさん。
 中庭健介は3年前のEXナンバー「ロミオとジュリエット」、小塚崇彦は噂の新SP「Take Five」、中野友加里も同じく新SP「ロマンス」と、現役選手たちがドリームオンアイスとは別のプログラムを滑ってくれたのもうれしい。

 フレンズオンアイスは本日6日も2公演を実施。当日券も発売される予定だ。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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振付師、宮本賢二 自作を語る

_mg_0168daisuke_4  明日からドリームオンアイスが開幕! 来月にはフレンズオンアイス、ザアイス、プリンスアイスワールド東京公演と次々開催され、スケートファンにとってはうれしい夏のアイスショー月間が始まる。
 ドリームオンアイスでは、今シーズンの新ショーナンバー披露が楽しみ。今年も、安藤美姫選手や南里康晴選手、中庭健介選手ら、たくさんのスケーターの振付けを担当しているのが、宮本賢二さんだ。
 宮本さんが現役を引退したのは2006年。それからたった2年で、阿部奈々美さん、樋口美穂子さん、佐藤紀子さんらとともに、日本を代表する振付師のひとりに。
 この春発売された『別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート 2007-2008メモリアルブック』でも、世界のトップスケーターたちへの「こんな振付けしたい!」コーナーが話題になった。今年はトップスケーターたちの競技用プログラムも手がけており、振付師としてますます注目を集めている。
 今回は「男子シングルメモリアルブック」に収録できなかった「宮本賢二、自作を語る」の一部をお届け。選手を影で支えるアーティスト、振付師にも注目しつつ、夏のアイスショーシーズンを楽しんでみよう。

●宮本賢二、「バチェラレット」(髙橋大輔)を語る
「髙橋選手が『僕、あれ好きなんですよ!』って、ずっと真似して踊ってたのが、中野友加里選手に振り付けたエキシビションナンバー、『リトルナーレ』。で、『僕もあんなん、やってみたいなあ』って彼が言うので、探した曲が『バチェラレット』です。
 音楽も不思議なのがいい、っていうから、いろいろ聞いたんですよ。トランスとか、ハウスとか、ぐにゃぐにゃしてるよくわかんないやつも(笑)。そのなかで、やっぱり僕も好きなビョーク、あの声だなって思ったんです。この曲には髙橋選手も一発OKでしたね。聞き終わった瞬間に、『これやね!』って。イメージしてたの、まさにこんな感じだ、って言ってくれた。2人で聞いて、もうこれしかないね、って。
 僕も曲を選んだ瞬間から、頭の中でずーっと髙橋選手が踊ってるんです。コスチュームも僕がイメージしたものを着て、踊ってる。で、氷に乗って、その動きをひとつずつ彼に伝えていくわけです。でも氷の上に立てば立ったで、頭で考えていたのとはまた違う動きが出てくることもある。ごめん、やっぱ変えるわ、なんて言って、そんなんしてたら、最初のポーズだけで1、2時間かかったりもして(笑)。時には、これがええわってポーズを絵に描いて彼に見せたこともありましたね。
 色々細かいところは悩んだんですが、大筋のコンセプトは、『拍手が出ないプログラム』。お客さんには、『わあっ!』じゃなくて、『しーん』としててくれていい。で、終わった後、今の、髙橋大輔よねえ? って。全体的に、ちょっと気持ち悪い雰囲気でしょう? 気持ち悪かったけど、でも、今の髙橋大輔だったんだよね、って思われながら、ゆっくり拍手が起こればいいなって思ったんです。
 でも……やっぱり彼が客席に近付いたときには、『キャー!』って声が出ちゃうんですよ。あれは、うーん……。でもまあ、目の前に大ちゃんがいたら『キャー!』言うのもしょうがないか(笑)。でもほんとは、滑り始めから終りまで、拍手なしで見てもらうのが理想なんです。
 何せあれ、イメージが人間でも動物でもないから。なんというか、無機質。肉じゃない感じ! 人形か何か、魂のないものに何かが乗り移った感じ。で、乗り移られた何かが動きまくって、踊りまくって、そんなイメージです。でも、このイメージを髙橋選手に説明する方法が、わからなくてねえ(笑)。最初は妖怪とかなんとか言ったかな? 妖怪なんていうと鬼太郎が出てきちゃいそうで、そういうんでもないんやけどなあって……ちょっと迷いました。
 でね、このプログラムはひとつひとつの動きに意味があるんですよ。最初、乗り移ったかなあ、って感じで動き出して、やがて完璧に入って、動き出す、みたいな。で、木が伸びて枯れて、とか、羽が生えて、どうなって、とか、全ての動きに一応意味があるんです。でもそれを説明しだしたら、あと1時間くらい話さんと(笑)。
 で、そういう動きを、面白いことにふたりでほとんど会話することなく、作り上げていったんです。あんま喋らずに、『こういう感じで』って僕が伝えたら、彼はすぐに、そのまま動いてくれた。だからほとんど会話がなかったんですよ。『じゃあ、もう1回最初から』『賢二先生、鬼ですね……』とか、しゃべったのはそれぐらいです。
 で、出来上がってみたら……かっこいいですよねえ。もう、髙橋大輔、すごいねって感じ! そりゃあ、あんなん滑られたら嬉しいですわ。作らしてもらって、ありがとうって思います。時々こけたりするとね、終わった瞬間にとんできて、『賢二先生、ごめーん!』って言う。でも『いいよいいよ、かっこよかったよ』って(笑)。ねえ、かっこいいですよねえ!」

photo/Sunao Noto  text/Hirono Aoshima

『別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート 2007-2008メモリアルブック』では、宮本賢二さんが語る小塚崇彦、南里康晴、中庭健介各選手のショーナンバー(07-08シーズン)振付け秘話が掲載されています。

*ドリームオンアイス会場にて販売の公式パンフレットには、シニアの日本人シングル選手全員のミニインタビューを掲載。安藤美姫選手や鈴木明子選手、無良崇人選手らが今シーズンの宮本賢二振付け作品について語っています


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別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート~2007-2008メモリアルブック~ 本日発売!

Kadokawa 髙橋大輔、ジェフリー・バトル、ステファン・ランビエールなど世界の男子シングルスケーターを特集したメモリアルブックが、本日発売になりました。

別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート~2007-2008メモリアルブック~ 
発売日:2008年4月19日
価格(税込):1800円
A4判  オールカラー112ページ
発行:角川ザテレビジョン
発売:角川グループパブリッシング
※ジャパンオープン2008会場、アイススペースブースなどでも数量限定販売
※書店ではスポーツ誌コーナーのほか、テレビ誌のコーナーでも販売

【contents】
巻頭特集30ページ 髙橋大輔

10000字独占インタビュー

トップスケーターへのインタビュー
ジェフリー・バトル、ステファン・ランビエール、ブライアン・ジュール、ジョニー・ウィアー、エヴァン・ライサチェク、小塚崇彦、南里康晴、中庭健介、羽生結弦

スペシャル対談
髙橋大輔VS中野友加里
南里康晴VS小塚崇彦
長光歌子VS河野由美
長久保裕VS田村岳斗

インタビュー 
宮本賢二、佐藤有香、アントニオ・ナハロ、アレクセイ・ミーシン、村主章枝ほか

「バンクーバー五輪、いちばん楽しみなのは男子の戦い」と、ニコライ・モロゾフ氏も語るように、今もっとも目が離せない種目、男子シングル。来シーズンの開幕が今から待てないファンの皆さんにお送りする一冊です!

*スケートまったく関係ありませんが、写真家板東寛司さんとライター青嶋の本、『逢いたくなっちゃだめ』『誰かいませんか』が文庫になりました。ついでにこっそりおすすめです。


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男子フリー終了 髙橋大輔6位、総合4位 「諸刃の剣」

Dai_f6i3505_2  なぜ、こんなに強くなったの? 
 なぜ、今回負けてしまったの? 
 まったく異なるふたつの問いかけに、今、髙橋大輔が答えるとしたら、その答えはまったく同じになるだろう。
「勝ちたかったから」

「勝ちたい!」
 そう思う気持ちが、彼を強くした。
 トリノ五輪の前後、国際試合の表彰台に手が届き始めたころから、彼は「すべての試合で優勝する」ことを常に目標にしてきたという。「たとえプルシェンコがいたとしても」そう付け加えた時もあった。もう、誰にも負けたくないから、練習にも集中したし、4回転ジャンプも跳べるようになった。強さの源は、試合の結果やライバルを強く意識する、熱い闘争心だったのだ。
 しかし今回は、勝ちたい気持ちが彼の足元をすくった。「絶対優勝したかった。その思いが大きすぎて……気持ちばかりが前へ、前へと先走ってしまった」。彼は泣いたあとの顔をゆがめて、歯噛みした。

 試合前のインタビューでも前面に出された、積極的にライバルの存在を口にし、自らを高めようとする髙橋大輔の闘争心が私は好きだ。「自分の演技をしたい」ではなく、「戦って、勝つ!」という気持ちを堂々と口に出す彼は、アスリートらしいし、男らしい。
 しかし今回は、他者を気にしすぎて、必要以上に緊張して、本来の力が発揮できなくなってしまった。「勝ちたい気持ち」は、諸刃の剣なのだ。
 こんなことになってしまうのなら……多くの選手が言うように、人を気にせず、結果を気にせず、「自分の納得する演技」を目指した方がいいのだろうか? たとえばランビエールの言うように「勝つためではなく、自分の芸術を見せること」を一番に考えたり。日本の女子選手たちが言うように、「人に勝つのではなく自分に勝つ」ことを考えたり。髙橋大輔にも、意識改革が必要なのだろうか?

 今回の彼のコメントで一番印象的だったのは、ずっと調子の悪かった4回転ジャンプをなぜ一本にしなかったのか、という質問への答えだ。今大会、上位陣で4回転ジャンプをクリーンに決めたのは髙橋とジュベールだけ。2本以上決めた者は、誰もいなかった。ジュベールでさえ安全策を取り、トライしたクワドは一本。ジャンプ以外にも高い加点が得られる髙橋ならば、4回転もトリプルアクセルも一本に抑え、クリーンにプログラムをまとめたら、確実にメダルには手が届いていただろう。モロゾフコーチも、4回転は一本にすることをすすめたという。
 しかしシーズン最初に、「勝つために」設定した目標通り、2本のクワドを跳ぶことを、彼は選択した。その理由は「逃げたくなかったから」。
 ここまでの「負けたくない!」気持ち、むき出しの闘争心。本当に素晴らしいと思う。
 もう、こうなったら、彼はこのままで、いいのではないか。ライバルを認め、ライバルを強く意識する。勝つためならば何でもする。やはりそれが、髙橋大輔の強さだ。この強さをとことんまで磨き抜けば、いつかきっと、彼の諸刃の剣をも使いこなせるようにしてくれる。

 フィギュアスケートは、やはりスポーツだ。髙橋大輔自身も、「今、男子シングルはものすごく面白いですよ。トップクラスに個性の強い選手がたくさんいて、それぞれの力が、近い」。それぞれの違った魅力を楽しんでほしい、そして、誰が勝つかわからない試合の行方を楽しんでほしい、と、彼は大会前のインタビューで語った。
 彼の言うとおりだ。フィギュアスケートは、勝負がつくからこそ面白い。強く美しい選手たちが、「勝ちたい!」思いでぶつける、技と美を楽しみたい。自分の芸術を見せるためでなく、勝つために本気になる男たちを見たい。
 バトル、ジュベール、ウィアー、髙橋大輔、ランビエール、ヴェルネル、ライサチェク。そしてこれから伸びてくる、たくさんの選手たち。男子シングルがたまらなく面白かった時代の選手たちとして、確実に後の時代に語り継がれる男たちだ。彼らの意地と誇りをかけた戦いは、バンクーバーまで、まだまだ続いていく。
 髙橋大輔には、技も、美も、強い心も、すべてで先頭を切って。この時代を駆け抜けていってほしい。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 

*髙橋大輔選手へのインタビューは、発売中の週刊ザテレビジョンに掲載されています。4月発売予定の月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムックにも掲載予定です


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男子シングルSP終了、髙橋大輔3位 「白鳥の湖」、終演

Daimma_5154s  間違いなく今シーズンのフィギュアスケートシーンを代表するプログラム、ヒップホップ「白鳥の湖」。
 その、試合では最後となる滑りを生で見ることができる幸せを、髙橋大輔をよく知る日本のファンは、噛み締めていた。でもそれは私たちだけではなく、スカンジナビウムに集ったたくさんのお客さんも、同じだった。

 北米や日本で開かれる世界選手権とヨーロッパ開催の世界選手権の大きな違いは、客席でありとあらゆる国の国旗がたくさん揺れていることだ。アジアやアメリカではどうしても、やって来られる国の人々は限られている。でもスウェーデンなら、フランスからも、イタリアからも、ドイツからも、もっと小さな国々からも、たくさんの人々が集う事が出来る。そして集まったスケートファンは、各国の旗を盛んに振り、自国選手や近しい国の選手に大きな大きな声援を送る。もちろん、とびきりお客さんが力を入れて応援するのは、ヨーロッパ各国の選手たちだ。
 これは、髙橋大輔にとっては予想以上に厳しい、アウェイの戦いになりそうだ――ペアや女子の試合を見て、そう感じた人は多い。これは、一つのミスでも足元をすくわれる、完璧にやり遂げなければ、並みいるヨーロッパのライバルたちに勝てないだろう、と。

 しかし髙橋大輔に限っては、そんな心配は杞憂だったのかもしれない。
 ヒップホップ「白鳥の湖」――ちょっと気合を入れてフィギュアスケートに注目している人ならば、誰もが知っている名作になってしまったこの作品が、今日スカンジナビウムで「上演」されることを、多くの人が知っていた。彼の演技が始まろうというとき、明らかに「あれが来るぞ!」という期待に満ちた雰囲気が、すでにできあがっていた。
 そして、トリプルアクセルのハンドダウンという失敗がありながらも、リミッターが解除されたように激しい後半のステップシークエンスや、氷の上にいることを忘れさせる自由自在な彼のダンスに、スタンドを埋め尽くしたすべての人が大喜び! 
 拍手や歓声の大きさだけでなく、ミスがありながらも3位という得点の高さに、ジャッジもまた彼の「白鳥の湖」を楽しんでくれたことがわかった。ここは、髙橋大輔にとってアウェイなどではなかったのだ。会場もジャッジも、高橋大輔の味方で、彼のファン。そして試合が始まる前からこの場所を彼の舞台にしていたのは、他の誰でもなく髙橋大輔と、彼の「白鳥の湖」。他の何でもなく、今年、この素晴らしいプログラムをひとつひとつの試合で滑り続け、スケートファンを楽しませ続けてきたことだ。

 昨年あたりから、髙橋大輔は世界のトップスケーターとして、誰もが認める存在になっていた。
 しかし彼の存在を世界のスケートファンにはっきりと印象付けたのは、今年のショートプログラム「白鳥の湖」だろう。
 素晴らしいのは、このプログラムを生み出したニコライ・モロゾフのアイディアと想像力。そして「最初は乗り気じゃなかった」のに、完璧にひとつの作品に作り上げた髙橋大輔の技術と心と努力だ。
 07-08シーズン、世界中、どのアイスリンクでも、どんな観客にかこまれても、「白鳥の湖」は必ず人々を熱狂の渦に巻き込んだ。今シーズンの国際試合、国内試合、合わせて6試合、すべてでそれをやり遂げたことに、最大の賛辞を髙橋大輔に贈りたい。
 そしてもう二度と、試合の場で「白鳥の湖」を見ることが、私たちにはできないことが、たまらなくさびしい。
 こんなプログラムが、かつて氷上に存在しただろうか?
 
photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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「きれい系が続いたあとに、僕ですか」 男子SP直前! 髙橋大輔選手コメント

Daisuke_12e3678_2 (日本の記者たちの前に、海外メディアの取材を受けて)

髙橋 もう英語、しゃべりたくないです(笑)。

――では、日本語で(笑)。

髙橋 でも、こうして海外の人にも取材してもらえてありがたいですよね。英語、勉強しなきゃなあ、と思ってます。

――滑走順が決まりましたね。

髙橋 ジョニー、ジェフときれい系が続いて、僕で若干むさくるしくなりますかね。どうしよう(笑)。まあ、あまり気にせず。ジェフの後だと、彼への歓声が多い中で滑らなきゃいけないのは分かってます。彼は世界のどんな場所でも歓声が大きいですし。それは承知の上で、気にせずに! あと後ろがジュベールなので、僕のあと、確実に4回転を入れて来ると思いますし。ジャンプ以外のところで見せていかなきゃ! でもステファンは4回転も、ステップも他の部分でも見せられるので、彼がパーフェクトに決めたら、きわどいかな。ジャンプやスピン以外のところでもアピールしないと。

――リンクの雰囲気はどうでしょう? お客さんが近い方がのれる、と言っていましたが。

髙橋 僕は好きです。ここのリンク! こういう感じが(手で、客席の傾斜の具合を示して)。雰囲気的にいい感じだと思います。氷はまだプラクティスリンクでしか滑っていないので、メインリンクの具合は分からないんですが。  いつものように、ライバル選手の名前を次々に、なんのてらいもなくあげてくれた髙橋選手。「自分の演技」ではなく、相手がいる戦いに挑む気満々だ。SP前日の公式練習で滑った「白鳥の湖」でも、自信に充ちあふれていたいい動きを見せる。 ペアや女子の結果を見ても、明らかに彼にとってはアウェイの戦い。しかしここで勝てたら、彼は本物のチャンピオンだ。

*髙橋大輔選手へのインタビューは、発売中の週刊ザテレビジョンに掲載されています。4月発売予定の月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムックにも掲載予定です

photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima 


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世界選手権直前! 田村岳斗の男子シングル大予想(2)

Patimg_5564 ――来るとしたら?
田村 ランビエール選手! 彼はほとんどの試合で4回転を2本、跳んできます。コンビネーションで3-3もしくは4-3も跳べる。でも彼は……トリプルアクセルが苦手で、1本だけなんです。この点を考えると、やはり大輔選手有利は変わりませんね。ただランビエール選手は、ジャンプはここまでかもしれないけれど、スピンが抜群にいいので……スピンの加点でジャンプを補って来ることも考えられます。やっぱりジュベール選手も、ランビエール選手も、一度世界タイトルをとってる人たちは、怖い。大輔選手、ランビエール選手、ジュベール選手……表彰台のメンバーは今年も変わらずだと思うんですよ。あとは今シーズン、ジュベール選手の病気(エリック・ボンパール杯、インフルエンザで欠場)などがありましたよね。そういったアクシデントが誰かにあれば、トマーシュ・ヴェルネル選手がメダル争いに絡んでくる可能性は高いと思います。大輔選手は健康でいてくれよ、と(笑)。

――表彰台争いは昨年と同じメンバーと予想。では、その他の選手で田村さんが注目している選手もぜひあげてください。
田村 カナダのパトリック・チャン選手ですね。

――あの若さで今年はファイナルにも進出! 田村さんは昨シーズンからチャン選手を推していましたが……。「ステップなど、難しいことをしすぎているから今はジャンプが入らないけど、プログラムの難易度を下げればジャンプは跳べる。または難しいプログラムでもジャンプが跳べるようになりさえすれば、すぐに勝てる選手」と。
田村 それが今シーズン、言ったとおりになっちゃったんですね! びっくりです。適当に言ったのに(笑)。でも今年も彼には注目でしょう。4回転がまだ試合で成功していないから、今すぐ表彰台、というわけにはいかないけれど……。でもバンクーバー五輪のころにはきっと! 地元開催で開催でしょ。しかも今、まだ16歳? 今年17歳? じゃあ4回転なんか、若さですぐに跳んできますよ。そんなに癖のある跳び方もしていないですし、彼はいっちゃうと思いますね。

――田村さんのお好きなジョニー・ウィアー選手はいかがですか。
田村 ジョニー選手、好きなんですけどね……。彼はここ何年か、あまり良くなかった。日米対抗でもそれほどいいとは思わなかったのに……チャイナカップではランビエール選手に勝っちゃいましたね! 彼も4回転を入れなくてもけっこう点が出る選手だから。でも、いくらすごいといっても、もう4回転がないとこれ以上順位を上げるのは、難しいかな。トップの選手が、ただ4回転を跳ぶだけでなく、2本、3本跳んできてますから。

Yamatosenseip1000223 ――今年の世界選手権も、オリンピックに向けても、やはり鍵は4回転ですね。今跳べていない選手も、これから身につけられるかどうかがポイントになって来る。日本の選手も苦しんでいます。日本屈指の4回転ジャンパーだった岳斗先生が、彼らに教えてあげるわけには……。
田村 みんなそれぞれ素晴らしいコーチについているので、僕が余計なことをしたらおかしくなっちゃいますよ(笑)。小塚崇彦選手はイタリア合宿で跳んでるのを見ましたし、みんな少しずつ挑戦しているところです。あ、世界選手権の注目選手をもう一人、ぜひ!

――あげてください!
田村 フランスのアルヴァン・プレオベール選手! 彼は来るね! 何かしら、してくれると思う。

――そのこころは?
田村 彼のスケートは、面白いから好きなんです。ただそれだけ(笑)。いやいや、僕の予想なんて、単純に好き嫌いだけですよ!

*田村岳斗さんのブログ「田村岳斗―華麗なる舞」
*世界選手権男子シングル、J SPORTSの解説は田村岳斗さんです!
3月22日(土)15:00~17:00 男子シングル ショートプログラム 
3月22日(土)20:40~25:30 男子シングル フリー ★生中継!
「このインタビューでは色々な選手の名前を上げていますが、まずもう、大輔選手で決まりですね! いいなあ、現地にいる皆さんは、優勝の瞬間が見られて。本人にも伝えてありますよ。『解説やるから、変な演技したらぼろくそに言うからね!』って。彼は『ほめてほめて!』と言ってたけれど、負けたら『これは練習が足りないですね』って言っちゃうよ!」(田村さん)

photo(上)/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima 
*写真上は07年グランプリファイナルのパトリック・チャン選手
*写真下は日本代表イタリア合宿時、フランス・イタリア国境をまたぐ田村コーチと重松直樹コーチ(明治神宮外苑クラブ)


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世界選手権直前! 田村岳斗の男子シングル大予想

Daisukeimg_3080s  男子シングル読本『COLORS』などで、毎年男子の熱い戦いを展望をしてくれている、関西大学アイススケート部の田村岳斗コーチ。
 今年もメダル争いの行方が楽しみな世界選手権を前に、主な選手たちの戦力分析をお願いした。といってもこれはシーズン半ば、全日本選手権前に行われたインタビュー(遅い掲載でごめんなさい)。
 シーズン後半の髙橋大輔選手の活躍ぶりなど、すでに当たっている部分もあり、驚くばかりだ。
 昨年はベルットソン、ヴェルネル、パトリック・チャンらの躍進も予言した田村コーチ。今大会の予想にも大いに期待しながら耳を傾けてみよう。

――オリンピックも2年後にせまった08年の世界選手権ですが、今年、男子シングルで田村さんが注目している選手は?
田村 今年は、まず大輔選手ですね!

――まず大輔選手!
田村 大輔選手で優勝確定!

――確定、いきなりそう来ますか? 他にも強力な選手、多いですよ! ジュベール選手、ランビエール選手、ヴェルネル選手、ウィア選手ー……。
田村 もちろん彼らもいますけれど、やっぱりまずは大輔選手です。彼は今年、4回転2本を入れるそうですが、彼の場合は4回転だけじゃなく、トリプルアクセルも2本、さらに3回転-3回転も入れてくる。その上での4回転2本です! これはすごく意味があるんですよ。たとえばジュベール選手が4回転3本を跳んだ試合(06年ロシア杯 4回転トウ-2トウ、4回転サルコウ、4回転トウ)、あれが彼のフリーではベストの試合だったんですが、あのときでも彼はトリプルアクセルが1本。コンビネーションも3-3が入っていないんです。だから4回転3発とトリプルアクセル1発が大きなジャンプ。そうすると、基本の点数は高く出ますが、4回転のような難しいジャンプほど、リスクも高いんです。

――一方で髙橋選手が狙っているのは……。
田村 4回転が2本と、アクセルが2本。大輔選手のジャンプはきれいだし、流れもあるから、トリプルアクセルなどはプラスがつく。アクセルでも4回転に匹敵する点数がもらえますよね。6種類のジャンプに得意も苦手もない。ジャンプのバランスという点では彼が圧倒的だと思うので、4回転2本という彼の目標さえちゃんと達成できれば、心配ないと僕は思っています。

――髙橋選手はただ大技があるだけでなく、他のジャンプも跳べてバランスがいい。でも4回転2本……そう簡単ではないですよね(インタビューの時点では未だ成功なし)。
田村 簡単ではないです。でも、大輔選手だったらやるんじゃないですか! 去年までの滑りを見ていると、もう4回転以外のジャンプはステップみたいな感覚で跳んでますし。ちょっとプレッシャーを感じているのは、4回転だけでしょう。でも、それ以外は先シーズンまでと同じだと思うんです。4回転2本も、今はまだやったことがないから感覚がわからないだけ。今シーズン、日米対抗でも挑戦していますし、この調子で世界選手権の前までにちょくちょく跳んでおけばいい。そしたらもう、2本跳ぶための感覚なんて、彼だったらすぐ掴めると思います。

――去年の世界チャンピオン、ジュベールの力が去年のままだったら、今年の高橋大輔は勝てる、と。
田村 まあジュベール選手や他の誰かが、4回転を3本入れて、なおかつトリプルアクセルが2本で、コンビネーションも3-3を入れて来るとなったら……話が変わってきますが(笑)。それをやるには、相当なスタミナがないときついと思いますよ。ただ、あともうひとり来るとしたら……。

*髙橋大輔選手へのインタビューは、今週発売の「週刊ザテレビジョン」に掲載されます

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 
*写真は07年全日本選手権のSP


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世界選手権に向けて――髙橋大輔選手、小塚崇彦選手コメント

Takaimg_8409s  前哨戦となる四大陸選手権終了後、髙橋大輔、小塚崇彦の男子シングル代表に、世界選手権への思いを聞いた。

*小塚崇彦選手
「世界選手権代表に決まったときはうれしくて、がんばろう! ってすごく思ったんですけど……。四大陸までは練習場所の確保とか4回転のこととか、いろいろなことにふりまわされてしまったかもしれません。世界選手権までは、ただ練習のことだけを考えて、思いっきり練習して、練習したな! って思える状態で臨みたい。男子の3枠を何としても確保するよう……がんばります!
 スウェーデンに行くのは初めてです。どんな国なのかな? まだ何にも調べてない!」

 インタビュアーからはなかなか聞きにくい出場枠の話。でもこちらが聞く前に、彼の方からはっきり口に出してくれたのは、うれしかった。戦う気は十分。でも、佐藤有香さんも言うように、まずは結果を気にせず、ぞんぶんに初めての大舞台を楽しんでほしい。

*髙橋大輔選手
「世界選手権は……楽しめなさそう! だって、男子シングルの試合は全日程の最後じゃないですか! それが嫌なんですけど(笑)。それに、世界ジュニアで優勝した時に行ったノルウェイは雪ばかりで、北欧はあんまり明るいイメージがないな。でもノルウェイは魚がおいしかったから、きっとスウェーデンも魚がいけると思う。勝手なイメージですが(笑)。ご飯を楽しみにしたいです.
世界選手権までの時間は、緩めすぎてもダメかと思っています。日本に帰ったらもう一回追いこんで練習して、体力をつけて。あと、スピンの練習をもっとしたいですね。これから少し、スピンに時間を割いてみよう。
 世界選手権で勝つには……最低でも四大陸ぐらいの演技をしなきゃいけないですね。他のみんながどこまで上げてくるか、わからないですから!」

 いつもの世界選手権では、トリをつとめる試合は女子シングル。しかし今年はヨーロッパ勢、男子に有力な選手が多いためか、男子シングルが最後の決戦に選ばれている。
 毎年試合後には女子シングルの応援(05年の記事)をするなど、リラックスしている髙橋選手。でも今年は、最後に控えた最もドラマチックな舞台に立つ。「嫌なんですけど」と笑いながらも、一番目立つ試合、一番注目を集める試合で戦うこと、楽しんでくれそうだ。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 
*写真は07年全日本選手権のフリー


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四大陸選手権こぼれ話(6) オフリンクの選手たち

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 記者会見会場での、素敵なツーショット2枚。
 まずはショートプログラム記者会見後の、高橋大輔&ジェフリー・バトル選手。
 今大会、お客さんの黄色い声を二分したふたり。
 がんばって英語で記者たちの質問に答えようとする高橋選手を、「がんばれ! 大丈夫だよ!」と励ましていたバトル選手の姿が印象的だった。高橋選手の方も、「僕の英語、合ってる? おかしくない?」と彼に確認を求めるように話す。
 この後の日本の記者たちとの対話では、「今回はジェフ君のような強い選手もいて緊張して……あ、違った、バトル選手だ!」と言いなおす高橋選手も、またキュート。

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 こちらはアイスダンスフリー終了後、準優勝のチャーリー・ホワイト選手とズウェアコーチ。チームマリーナ全員での写真をお願いしたのだが、「あら、私、チャーリーとふたりで撮りたいわ!」と、乙女のようにわがままを言うマリーナコーチ。ご要望に応えての、笑顔のツーショットです。

text/Hirono Aoshima


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男子フリー終了  髙橋大輔優勝! そして歴代最高得点更新

Id7e0651  全日本選手権に続き、またもや2本決めてしまった4回転の安定感。
 トリノ五輪以前、あれほど本番に弱いと言われ続けた彼の、心の成長ぶり。
 革新的なショートプログラムに続き、王道のフリーでもこれだけ見せてしまった、表現の幅広さ。
 ジャンプのGOEプラスが目立った要素点、8点台が当たり前になってしまった演技構成点、どちらもとてつもなく高かったジャッジの評価。
 そして、プルシェンコが06年トリノ五輪で出した世界歴代最高得点、2年ぶりの更新……。

 オウリムヌリアイスリンクの観客を総立ちにさせた演技が終わり、熱狂の渦を抜けて記者席でキーボードに向かい――。
 今、自分があの演技について何か書かなければならないことに、呆然としている。
 とにかくいろいろなことが頭の中に渦を巻いてしまい、何について記せばいいのか、わからない。
 いやそれ以前に、あの演技について私などが何か書く意味はあるのだろうか、と呆然とするしかないのだ。
 今夜の演技の意味するもの、価値、影響……。「書けること」はやまほどあるけれど、書かなければならないこと、書きたいことはたったひとつしかない。
 ただただ、2008年4大陸選手権の高橋大輔の演技を、「見られて良かった」。
 たったひとつ、そのことだけ。ただただ「見られれて良かった」と言うしかないし、書くしかない。そんな演技が、フィギュアスケートで見られたのだ。 
 
 2本の4回転と、トリプルアクセル。男子選手の多くが、ただ跳ぶことすら苦労するジャンプを、あまりに美しく跳んでしまうことに驚く。
 冒頭の3本のジャンプを決め、観客が興奮しながらもほっとした瞬間、髙橋大輔のロミオに魂が入った、その刹那の空気の変化に驚く。
 十字を切る動作も、何かに手をさしのべるしぐさも、振り付けのひとつひとつがくっきり目に焼きつき、見ていて自然に涙が出そうになっていることに驚く。
 最後のコンビネーションジャンプ、トリプルフリップ-トリプルトウを決めた瞬間、「うん!」とうなづいて見せた彼の、自信に満ちた不敵な表情に驚く。
 ストレートラインステップがこれだけ激しいのに、これだけ気持ちがあふれていて、髙橋大輔自身の必死さも、ロミオという青年の苦悶も、同時に感じさせてしまったことに驚く。

 4分30秒の最初から最後まで驚きの連続で、一瞬たりとも見逃すことのできなかったこの演技を今、ここで見られたということ。今、この演技が私たちの目の前に確かにあったということ。その事実の前には、世界記録更新も、どんな数字の上での大きな記録も、すべてがどうでもいいことになってしまう。
 もっと俗なことをいえば、これでまた彼の取材が取りにくくなるかな、とか、彼の優勝の影響で新しいフィギュアスケートの企画は通りやすくなるだろうか、とか、そんなこともすべて、どうでもよくなってしまう。

 今日、ここで髙橋大輔の演技を見られたという事実があれば、他には何もいらない。
 彼がこうして氷の上に立っている時代に生まれてきたことが幸せだし、こうして彼の演技を見に来る機会を得たことが幸せだ。
 どうか、少しでも今日の演技を見て心が動いてしまった人は、彼がここにいるうちに、テレビの前ではなく、早くこの場所に来て欲しい。
 幸い、髙橋大輔の体はまだまだ元気に動くし、試合でもアイスショーでも、彼を見る機会はたくさんある。
 時間もお金も体力も、すべてをかけてリンクにやって来る価値が、髙橋大輔にはある。髙橋大輔と、彼が選んだスポーツ、フィギュアスケートにはあるのだ。
「疲れも緊張感もあったなか、この演技ができたことがすごくうれしいです。今までこんな点数をいただいたことはなかったし、こんなに高く評価されたこともとてもうれしいと思う。でも、最高の演技だったとは、自分では思わないから……今度は、もっとできると思います! もっと自信を持って、もっともっと練習しますから!」
 ほら、今からでも遅くはない。今夜が彼のマックスではないことは、彼自身が保証してくれたから。
 髙橋大輔の目撃者になる機会が、私たちにはまだまだたくさんある。

photo/Takayuki Honma   text/Hirono Aoshima 


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四大陸選手権こぼれ話(2) 髙橋大輔、韓国でも大人気!

Darkswansp1000457_2  お手製の選手資料を手にしたファン。南半球出身の、グランプリシリーズにも出ていない選手のこともよく知っていて、名前を呼び掛けるファン(また彼女たちの注目した選手は、無名なのに素敵な滑りを見せるのだ!)。韓国のスケートファンは決して数は多くないけれど、とても情熱的だ。そんな彼らが作ってくれた髙橋選手の応援バナーが、これ。ゴージャスな黒い羽根をまとった「白鳥の湖」バージョンの他に、凛々しい「ロミオとジュリエット」バージョンもある。

「ソウルの高橋大輔ファンクラブの名前は『Dark Swans』なんですよ!」と、バナーを張り付けていたお姉さんはニコニコ。

 彼がジャンプを決めるたびに「ウォー!」と叫び、パーフェクトの演技を終えた時には立ち上がってバンザイをしてくれたお兄さんは、ちょっとたどたどしい日本語でこう話してくれた。「2年前のNHK杯から、彼のファンです。彼はサイコウのアーティストだと思う!」

 彼らの熱狂ぶりには、髙橋大輔本人もびっくり。
「え、ファンクラブがあるんですか? 3年前に韓国に来たときにも熱狂的なファンの方はいてくれたけど、こんなにたくさんはいませんでしたね。ちょっと驚いています。うれしいです! 今日はお客さんの数はそれほど多くなかったけれど、声援がすごく大きくて……。ほんとに応援してもらえてるんだ、って感じました。それだけでもう、楽しかった! 」

text/Hirono Aoshima


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全日本選手権男子フリー終了「泣く者と、笑う者と」(1)

Ajdaisuke_mg_3759  高橋大輔は圧倒的だった。声援の大きさや応援バナーの数、そして何より演技の内容がずば抜けていた。世界の舞台で一番になるために何が必要かを考え、この全日本選手権では「4回転を2つ」という目標を掲げ、見事にそれを達成した。
 高橋大輔が別格の演技を披露した。そのことが、残る2つの枠を争う選手の心に少なからず影響を与え、そして与えなかった。

 小塚崇彦はトリプルループがすっぽ抜けてシングルになった以外は、ほぼ自分の力を出し切り、演技が終わると力強いガッツポーズを見せた。滑走順は最終グループの1番目。高橋大輔の演技を見ることなく自分の演技を終えることができた。
 もちろん、小塚自身はこのことをまったく意識していないだろう。自分の演技に集中して結果を出しただけだ。自分の演技に集中する。この一見当たり前のことがフィギュアスケートではとても難しい。

 小塚の次に登場した高橋大輔がすばらしい演技をして、観客のほぼ全員が立ち上がって拍手をおくった。得点が出るまでの間も、高得点をうながす拍手が続き、さらに表示された得点の高さに観客からはどよめきが起こった。
 その間ずっとリンクにいた南里康晴は「体がガチガチになってしまった」という。最初のトリプルアクセルは力が入ってしまい大きくステップアウト。次のトリプルフリップはなんとか降りたものの、トリプルループで転倒してしまった。
Ajkensuke_mg_4148  この転倒ですこし肩の力が抜けたように見えた。トリプルアクセルートリプルトウループのコンビネーションを含め、残るジャンプを決めて演技を終えたが、その表情に笑みは無かった。

 中庭健介はフリーで4回転を跳ぶことを決めてはいたが、心の片隅に迷いがあった。その時、控え室のモニターテレビで高橋大輔が4回転を2度成功させたことを知る。
「4回転は今シーズンものすごく不安で、正直逃げ出したくなりました。他の選手の出来具合で、最初に3-3を持ってくるということも考えたんですけど、高橋選手が果敢に4回転を2回、すごいプレッシャーの中で成功させたので、そういう高いレベルで戦うためには逃げてちゃダメだという気にさせてくれました」
 そしてリンクに現れた中庭健介は「今までで一番緊張していて、出番が近づくたびに体が震えるような状態だった」という。最初の4回転は着氷が乱れてオーバーターン。トリプルアクセルは決めたものの、その後のジャンプで細かい着地ミスが続いてしまう。必死に転倒だけはこらえたが、演技を終えた中庭の顔にもやはり笑みはなかった。

photo/Sunao Noto   text/Seiho Imaizumi 


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グランプリファイナル2007 エキシビション終了、髙橋大輔共同インタビュー「やっぱり4回転、2本!」

Daisukeimg_0073  エキシビションでおなじみ「バチェラレット」を披露した直後の囲み取材。「真央は今、靴脱いでるんで……インタビュー、僕からお願いします」と、待ち構える報道陣に気遣いさえ見せてくれた。

――フリーから一夜明けましたが、気持ちは落ち着きましたか。
大輔 いや、時間が経てば経つほど悔しいです。悔しいし、全日本も近いので今日のエキシビションの練習は本気モード! おかげで本番、バテちゃいました(笑)。

――エキシビションナンバーでも大きな拍手をもらっていましたね。
大輔 いやあ……今日はねえ、お客さんが遠かった! ずっと下を向いているプログラムなので、客席が遠いと”気”を飛ばすのが大変なんです。今日は難しかった。でもできるだけ入り込めるよう、がんばりました。

――SP同様、意欲的なショーナンバーですが。
大輔 最初から最後まで、ひとつのつながりがあるプログラムなんです。全体を通して、なんだかよくわからない、くらーい感じを見てもらえるといいですね。でも今日はやっぱり練習をがんばりすぎた……。

――練習を見ていたら全日本選手権が楽しみになりましたが、プログラム構成などに変更の予定は?
大輔 変えるほどの時間はないので、今やっていることそのままで練習していきます。4回転は2本入れるつもりで、調整していきたいです。

――2度の4回転への意欲は、変わらず?
大輔 やっぱり4回転2本、やってみたいですね! 入れる入れるって言っておきながら、まだ入れられてないんですが(笑)。でもこれからの試合、きっとステファン、トーマス、もちろんジュベールも跳んで来ると思いますし、いやでも今後は入れていかなきゃいけない。自分の気持ち的にも、いつでも2本跳べるようにしておけば、不安もなくなりますし。

――練習を見ていると4回転の安定感も増していますね。
大輔 はい、調子のいい時はまず失敗しません。疲れてさえいなければ跳べるジャンプです。成功率は先シーズンより確実に上がっていると思います。

――全日本選手権での好演技、期待しています。
大輔 ありがとうございます。休みはあまりとらず、かといって追い込みもせず、うまく調整をして。このまま調子を落とさないように持っていければ。……次、真央ですよね? 呼んできますね、真央ー!

 呼んできてくれるのか、いいやつだな……と、ベテラン報道陣も驚く好青年ぶり。人に優しく、自分に厳しい日本のエース、彼が世界の表彰台の一番上に立つ日の記事を、私たちも早く書きたい。

photo/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima


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グランプリファイナル2007 フリー終了後、髙橋大輔共同インタビュー

Daisukep065 ――グランプリファイナル、惜しくも2位という結果でしたが……。
大輔 やっぱり優勝しにここに来たので、こういう結果になって悔しいです。1本目の4回転と後半のサルコウのパンク……。4回転が3回転になったときは「やっちゃった!」っていう気持ちが大きくて。ここで失敗したから、後半プラスがつくはずの構成が、うまくいかしきれなかったですよね。サルコウの失敗も普段まずしないことなのに、本番でしてしまって……。

――1本目の4回転の失敗、やはり演技に影響しましたか。
大輔 はい、途中で「4回転、どこかで入れなきゃ」と考えながら滑ったり、ステップで失敗して頭が真っ白になったり……。気持ちはずっと落ち着いていなかったかもしれない。また昨日からの疲れが残っていて、朝から体が重かったんです。このあと全日本が控えているので、時差を完全にこちらに合わせたくなくて……。現地にもぎりぎりに入って試合に臨むっていう、いい経験ができました。でも……悔しいです。優勝したかった。

――しかし2本目のジャンプで4回転、見事成功しましたね。
大輔 4回転は、もともと1本で行く予定でした。でも「これは4回転入れなきゃ勝てない!」と思って、とっさに2度目を入れたんです。あそこで4回転が跳べたことは自信になったかな? ニコライにも、今日は演技の出来よりも、急に構成を変えて4回転を入れられたことが大きい、といわれました。でも次は最初から2本入れて、両方成功できるように、がんばります。

――時差調整や4回転。世界選手権前にここで試合をした意味は大きそうですね。
大輔 そうですね。エヴァンとはアメリカで試合してますが、ステファンやジョニーたちがどこまで仕上げて来ているか、一緒に練習をして、ここで知ることができた。とりあえずトップクラスの今年の雰囲気がつかめたのは良かったです。自分も飛ばしていこう! って気持ちになりました。試合はまだ誰の演技も見てないんですが……。ステファンは完璧ではなかった? そうか、ずっとiPodを聞いていたけれど、それでも歓声が大きかったから、いい演技なんだ、と思ってました。でも僕も完璧じゃなかったからな。僅差か……。やっぱり自分に対して情けない……。がんばれよ、何してんだ! って感じです。(隣でインタビューを受けるランビエールを見ながら)イケメンですね……。

――髙橋選手も、イケメンですよ。
大輔 いやいやいや、全然勝てません……。あ、でも見て(プロトコルの最後のスピンの箇所を指しながら)。すごい、レベル4! レベル3、3、4……。2がひとつもないよ! イェイ!

――得点だけでなく、すごいことですよ。トリノ五輪以降、1位か2位しかとっていない。2位でここまで悔しいと思えるようになってしまった。
大輔 そうですね……。4回転がパンクした時も「これで負けたかな?」と思ったけれど、気弱にならずに「まだ後半あるぞ!」って、すぐに攻める気持ちになれました。試合ごとの波も、大きなものはなくなったかな。オリンピックのころとは、心構えは違うと思います。もちろん不安はいつもたっぷりあるけれど、それを超えるやる気が、今はあるから!

 いつもしっかりした言葉で演技を振り返ってくれる髙橋選手だが、この日はいつになく饒舌。悔しさがあふれてあふれて仕方がないようだった。この気持ちをぶつける機会は、この先まだまだある。次回はうれしさで饒舌な髙橋大輔に、会いたい。

photo/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima 

*髙橋大輔選手のインタビューは発売中の日本男子シングルオフィシャルファンブック『Cutting Edge2008』に掲載されています


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グランプリファイナル2007 男子シングル終了 髙橋大輔2位 

Daisukeimg_9824  髙橋大輔のグランプリファイナル、フリー。
 この試合を、私は心から楽しんだし、彼が勝てなかったと知った時は、心の底から悔しいと思った。スケートを見る楽しみも、競技の興奮もこんなに味わえたのは、久しぶりだ。

 髙橋大輔の滑走前には、エヴァン・ライサチェクとステファン・ランビエールのふたりが、ジャンプミスはあったものの素晴らしく気迫のこもった演技を、まずは見せてくれた。でもこのあとに、私たちはまだいいものが見られるのだ。しかも彼らに負けない演技を見せると期待され、最終滑走で滑るのは、日本の代表なのだ! かつては彼が滑る時には必ず抱いた不安、「大輔、大丈夫かな?」という気持ちが、今日はまるでない。ほんとうに彼の演技が見られることがうれしくて、心の底からわくわくしてしまう。見ている人をそんな気にさせるスケーターに、オリンピックから2年も経たずして髙橋大輔はなってしまった。

 冒頭にぜひ跳びたかった4回転は、残念ながら3回転に。この時点で本人は「やっちゃった! もう勝てない!」と思ったそうだが、すぐさま予定していなかった4回転をもう一度入れてしまう試み、そしてその成功に、見ているこちらはたちまちヒートアップ。「大輔、すごい!」 続くトリプルアクセルも、もちろん成功。アクセルからの3連続コンビネーションも難なく着氷! ここでもう、見ているこちらの緊張の時間は終わってしまう。大丈夫、もうきっと失敗などしない。あとは髙橋大輔の滑りを存分に楽しめばいいのだ。
 強く、自在に体が動くサーキュラーステップは今日も素晴らしかったし、スローパートの振り付けの見せ場では、青年が何かに身を捧げるさまを描いているよう。「物語は気にしないで、僕なりのロミオとジュリエットを滑れたら」と語っていたが、この日のフリーはフィギュアスケートに身も心も捧げている髙橋大輔自身の魂を表しているように見えた。
 いいなあ、素敵だなあ……。よく滑るスケートも、手足だけでなく頭や上半身までよく動くステップも、これが試合であることも優勝がかかっている大事な演技であることも忘れて、心底楽しませてくれるものだった。
「でも大きなミスはなかったけどサルコウがパンクしたり、小さなミスは続いてしまって……。何してんだ? って感じです」と本人は首を横に降る。
 確かに、もっとやろうと思えば、もっとこの人はできるだろうな、と思った。昨日のSPで感じた「こんなもんじゃないのに!」という思いとは少し違い、「この人なら、もっともっと楽しませてくれるだろうな!」と、さらにわくわくするような気持ちだ。「自分の演技ができなかった」というけれど、4回転に2度チャレンジして1度は成功し、トリプルアクセルも2度入れて。ここまでやって、スケートも誰よりも伸びて、わくわくさせてくれて、彼はもう間違いなく、世界の髙橋だ。
 オリンピック以来、久しぶりに生で彼の演技を見るトリノの人がいたら、さぞやびっくりしただろう。「いつの間に彼は、こんなチャンピオンの滑りをするようになったんだい?」と。

「今日は……かなり緊張してたんですよ。足なんてガクガクで、ステップも全然体が動いてなかった。緊張した理由は……久しぶりの大一番だったからかな。集まっている選手たちがもう、グランプリシリーズとは違いましたから。世界選手権以来、久々に大きいの来たな! って。でもこれだけ世界のトップがほぼ出揃って2位。この結果を、プラスにしていけたら」
 シーズン前、今年は一戦一戦試合のたびに何かを得ていきたい、と話していたが、本当にそのとおり。髙橋大輔はまたいろいろなことを学んで、トリノのリンクを去っていく。 
 でも、どうやらひとつ、彼は気づいていないことがあるようだ。それは私だけでなく、見ているたくさんの人々が同じように感じたことだろう。イタリア在住の日本人記者の言葉を借りれば、こうだ。
「髙橋君、あんなにかっこいいのに! 見た目だってスケートだって、全然欧米人に負けてないよ。何で本人、それに気づいてないの?」
 そうだ。髙橋大輔は、もっと自分に自信を持っていい。見ている人がこんなに自分のスケートを楽しんでいることを、知ったほうがいい。今回、これだけのジャンプを跳んでランビエールに追いつかれてしまった理由。技術的な分析ではなく演技から受けた印象だけで言えば、ランビエールにはあったふてぶてしいほどの自信、「俺を見ろ!」という気持ちが、髙橋大輔には足りなかったことだ。3位のライサチェクだってそうだ。彼はそれほど高い表現技術や芸術的感性持っているわけではないけれど、自分への自信と、自分のかっこよさを見せたい一心だけで、あの迫力を生んでいる。
 だから、もっと自信を持とうよ、髙橋大輔! 隣でインタビューに答えるランビエールを見て「イケメンですね……」なんて言ってる場合じゃない。「俺の方がかっこいいのに!」ぐらい思ったっていい。
 そして、もっともっとフィギュアスケートで、私たちを楽しませてほしいのだ。

photo/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2007 SP終了後、髙橋大輔共同インタビュー

Daisuke3480
――SPは無事終了、今の気持ちはいかがですか。
大輔 自分では演技に納得がいってないんですが、この点数をもらえたことは素直にうれしいです。ステファンやライサチェクがどんな演技をしたのかはわからないけれど、歓声を聞いた限りではミスはなかったのかな。たぶん彼らは4回転を入れたと思うし、僕は4回転なしでこの点数は、やはりうれしい。

――納得のいかない演技になってしまった理由は?
大輔 プログラムの中で力の配分がうまくいかなかったことと、時差の影響でこの時間がしんどかったこともありますね……。でもお客さんが乗ってくれたのは良かった。ほんとはもうちょっと手拍子をもらえてもうれしかったですけれど。

――ファイブコンポーネンツでは8点台も出ていますよ。
大輔 出たんですか!? すごいですね(他人事のように)。えー、ありがとうございます(笑)。でももっとリラックスしてペース配分がうまくいけば、全日本などではもっといい演技ができると思います。

――明日はフリー。どんな気持ちでのぞみますか?
大輔 まず4回転を2回入れるかどうかは、朝の調子を見て決めたいと思います。明日の方がずっとハードでしょうね。みんなもっと力を出してくると思うし。でも僕も、フリーは自分の得意な部分を出しやすくなってますから。リラックスして、自分ができることを精一杯やって……いい順位に結び付けたいと思います。明日が勝負です!

 このあとの記者会見では、海外の報道陣からの質問に「苦手だけどがんばります」と、英語で答えるシーンも。が、質問が複雑になると「やっぱ日本語でいきますね」とちょっと照れくさそうに切り替え。
 海外の記者たちの関心も、試合をこなすごとにどんどん高まっている。

photo/Dave Carmichael text/Hirono Aoshima 

*写真は公式練習終了後。リンクサイドで長光歌子コーチと


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グランプリファイナル2007 男子シングルSP終了 髙橋大輔首位 「行けるところまで!」

Daisuketorinosp_2 「すごい! 感動しました!」
 と、イタリア在住の日本人記者は大興奮だった。
「とてもかっこよかった! 彼はヒッポホップ、いったいどこで習ったの?」
 ドイツ人記者も手放しでほめた。
 でも私たちは返すのだ。「いや、大輔のスワンレイク、こんなものじゃありませんから!」

 トリプル-トリプル、トリプルアクセル、トリプルルッツ。予定していたジャンプはすべてクリーンで、加点もついた。見せ場のステップも、二本の腕、二本の脚がそれぞれ違う生き物のように妖しく激しく動いて、目が離せない。でも、公式練習や試合、エキシビションなどであのステップの真骨頂を見ている私たちは、今日の出来はまだまだ、髙橋大輔の力の60%程度だったと思ってしまう。それはもちろん、高橋大輔本人が、一番良く分かっていた。
「スピンは回転不足だったし、ステップは後半、ストレートラインステップでばててしまって。今日は全体的に雑だったかな……。サーキュラーステップを頑張りすぎて、後半まで体力が持たなかった。緊張感もあって、力の配分を間違えてしまったんです。手拍子をいただいたのはうれしかったけれど、でも自分の演技はできなかったと思います。もうちょっと、できたはずなんですけどね!」

 しかし受けた評価は素晴らしいものだった。地元のお客さんや報道陣の盛り上がりもすごければ、ジャッジの出した点数もすごい。エレメンツスコアは4回転をコンビネーションで跳んだランビエールの44.90に迫る44,50。ファイブコンポーネンツにいたっては、コリオグラフィーとインタープリテーションでなんと8点台が出てしまった! 総合得点84.20は、今シーズンの自己ベストも、男子シングルの今シーズンベストも更新。
 いやいや、ちょっと待って。そんなに出しちゃっていいの? 髙橋大輔が万全の状態でこのプログラムを滑ったら、もっとすごいのだ。もし世界選手権でこれ以上の「白鳥の湖」を見せてしまったら、いったいどんな点数が出てしまうのか?
 でもとにかく評価が高いのは喜ばしいことだ。私たちや高橋大輔本人が「まだまだ!」と思った演技でも、初めて見る人の度肝を抜くほどすばらしかったのは確かだし、何よりヒップホップという新しい挑戦に、これだけの評価をジャッジから受けたことは大きい。シーズン前、この斬新なプログラムへの評価を、心配する声はあった。髙橋大輔の父親よりも上の世代の審判たちに、眉をしかめられはしないか、と。それは決して杞憂ではなく、たとえばアイスダンスのベルビン&アゴスト組は今シーズン、エキシビションでヒップホップにチャレンジしているが、「ほんとは試合で滑りたいけれど、点数のことを考えると難しいから、ショーナンバーにしたんだ」とのこと。また高橋自身もショートではじける分、フリーは王道中の王道のクラシック曲を持ってきている。
 だがそんな心配を吹っ飛ばす評価と、人々の反応。得点を聞いた長光歌子コーチも「新しい、今まで誰もやったことのないプログラムを見せた、そんな評価がいただけたんですね」とうれしそうだった。
 あとは、真の「大輔のスワンレイク」を見せるだけだ。「行けるところまで!」、高橋大輔は時々そんな言葉を口にする。目標を設定するとそこまでしかたどり着けないから、あえて到達点は決めない。どこまででも行けるところまで行くのだ、という思いを込めて。そうだ、このまま行けるところまで行っちゃえよ、と思う。

 また 今日の演技後の彼の言葉でうれしかったのは、「この演技で1位という感じは、自分ではしません」というひとこと。SP1位でも彼はまだまだ不完全燃焼。全力を出し切れていないことを悔しく思っていることだ。ランビエールもライサチェクもウィアーも押さえての首位に、喜ぶことも気を抜くことも、緊張してしまうこともない。フリーでも「やってやるぞ!」の気持ちになっている。明日、素晴らしい「ロミオとジュリエット」を見るためには、今日くらいのSPでちょうどよかったのかもしれない。
 いや、違う! 今の高橋大輔なら、大満足でSPを終えて首位に立っても、決して怖気づいたり守りに入ったりはしないだろう。場所は同じでも、ここはトリノ五輪の時のパラヴェーラとは違う。「オリンピックがずいぶん遠くに感じられる」今の彼なら、フリーでもっとやってやろうじゃん、そう言って、不敵に笑うに違いない。

photo/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2007 公式練習後、髙橋大輔選手共同インタビュー

Daisuke00361 ――オリンピック、ユニバーシアードに続いて、トリノは3度目になりますね。
大輔 そうなんですよ。もう街も、会場も、更衣室まですっかりおなじみで、またここか、という感じです(笑)。だから外国に来たような気分もないですね。イタリアのお客さんのノリにもだいぶなれましたし! イタリアの人たち、スケートを見に来てもちょっとサッカー観戦っぽいノリなんです。これでユニバーシアードの時みたいに、子供たちが大勢来ちゃうとすごいですよ。プログラムの音楽、聞こえるのかなっていうほど大騒ぎで(笑)。今回のお客さんは大人の方中心みたいだから、多少落ち付いてるかな。

――ここにやって来るとオリンピックのこと、思い出したりはしますか。
大輔 トリノオリンピック、すごく昔のように感じますね。まだ2年も経っていないのに、すごく遠い。この2年間、ほんとうにいろいろなことが詰まっていたので。

――オリンピックではSPが第一滑走でフリーが最終滑走でした。今回はSPから最終滑走者に。
大輔 そうですね。でもどの順番でもやらなきゃいけないことに変わりはない、ってわかってきたので。そう思えるほど、ここまでいろいろな経験をさせてもらいました。本田さんや荒川さん、村主さんたちががんばって、日本のレベルを引き上げてくれて、連盟の人も一生懸命強化してくれた。そこで安藤選手、浅田選手、みんなでたくさんの経験を積んで、日本のみんなで高めあって強くなってきましたから。

――特に髙橋選手は日本人男子初の世界ジュニア優勝、初の世界選手権銀メダルなど、フィギュアスケートの歴史を作ってきました。ここで勝って、男子のファイナル初優勝を目指すという意気込みは?
大輔 初めての記録を作れたのは、いつもたまたまなんです。特に結果を意識しては来なかった。今回もあまり考えずにやっていきたいですね。いや、ほんとに何にも考えてないんですが(笑)。

――大学4年生ということで、今回は卒論の執筆と重なって、そちらも大変だったとか。
大輔 はい。教授さんに会いに行って、いろいろ相談をしたり。卒論のテーマですか? えーと……内緒です。恥ずかしいので(笑)。4回転ジャンプの研究? それは成果があったら僕の方が教えてほしいですよ! ほんとうに、頭を使うのは苦手なんです。

――ところで髪を切りましたね。
大輔 切りました! NHK杯が終わってすぐに切ったんです。さわやかですか? 実はストレートパーマをかけたんですけど……。ちょっと坊ちゃんみたいで、恥ずかしい(笑)。本番ではちゃんとワックスつけて出てきますから!

 最後の質問には、さらさらの髪をゆらしながら照れ笑い。特にフリーに関しては、「いつも濃くなりすぎちゃう、もうちょっとさわやかに滑りたいのに」と語っていたが、さわやかなヘアスタイルで、また違った雰囲気の「ロミオとジュリエット」が見られるかもしれない。

text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2007 男子シングル公式練習レポート

Daisuke0358  現地時間13日午前、男子シングルのファイナリスト6人がそろい、今大会初の公式練習が行われた。
 6人のファイナリストは全員がTシャツやスポーツウェアなど、上下とも黒づくめ姿(ジョニー・ウィアー選手のみ、おしゃれなブルーのラインが入っていた)。しかし動きの癖やジャンプの跳び方で、遠くからでもすぐ見分けがついてしまうのは、さすがファイナリストたちだ。真黒な姿のままでも、それぞれの曲がかかわるとあっという間に独自の空気を生んでしまうのもすごい。
 この日注目を詰めていたのは、やはり地元やトレーニング地も近い、ステファン・ランビエール選手。リンクの真ん中でプログラムには入っていないひたすら超高速のスタンドスピンを見せると、お客さんたちから大きな拍手。曲かけではおなじみのフリー、「ポエタ」を滑り、ポーズのひとつひとつで会場を湧かせ、公式練習からスイス国旗もふられる盛り上がりだった。
 ジャンプの好調ぶりが目立っていたのは、ケヴィン・ヴァン・デル・ペレン選手。プログラムはフリー「アラビアのロレンス」を滑ったが、どうしてもヤグディンを思い出してしまうこの曲。しかし音楽が進むにつれ、個性的な振り付けで彼らしい「アラビアのロレンス」を自信を持って表現しようとする姿が見られた。
 そして日本の髙橋大輔選手は、フリーの「ロミオとジュリエット」で4回転-2回転を成功! ランビエールは転倒、ライサチェクはオーバーターンと、ライバルたちが4回転の調整に苦しむ中、この日最もきれいなクワドを見せてくれた。すべてのジャンプを入れたわけではないが、トリプルアクセルからの3-2-2、フリップからの3-3など、曲かけ中に跳んだジャンプは全てクリーンに着氷。ステップは体を大きく使い、激しく。曲かけ後にはSP「白鳥の湖」のサーキュラーステップなど、確認するようにじっくり練習していた。
 しかしやはりファイナルに残った6人! 練習時間の後半には誰もジャンプを失敗しないし、真黒な6人がそれぞれ個性を主張して一歩も譲らない様は壮観だった。
 昨年は参加4名、一昨年は5名と、欠場者が相次いだ男子シングルのファイナル。今年は6人ががっぷりとぶつかり合う、いい試合が見られそうだ。

text/Hirono Aoshima

*写真は公式練習終了後、地元の若者たちのサイン攻めにひとつひとつ丁寧に応える髙橋選手


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NHK杯4日目・男子シングルフリー 髙橋大輔1位、総合1位   笑顔のロミオ

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 ほぼ 4回転の失敗だけだった、と言っていいだろう。
 この日、彼がリンクに現れ、氷を一蹴りした瞬間、あまりの心地良さに見ていて気持ちがふわっとしてしまうほど、スケートが伸びていた。
 ひとりの人間がこれだけ大きな空間を、一瞬にして快感で満たしてしまうなんて、スケーティングの美とはなんて力を持っているんだろう……そんなことをプログラムが始まる前から思ってしまったのだ。
 氷上のロミオは、甘い言葉も透き通る歌声も持たないが、氷の上に立つ者だけが持ちえる武器、滑りの美しさを持って彼の思いを語りかける。
 音楽の始まりとともに彼が見せてくれたものは、助走の滑らかさと一体となって完成されるトリプルアクセル、足元がしっかり氷をつかむため、どんなに大きくても決してぶれないしなやかな腕や上半身の動き。髙橋大輔のプログラムは、どのエレメンツも、つなぎのどの動きも、すべてがスケーティングと一体になって形作られているようだ。
 4つ目のジャンプ、トリプルアクセルからのコンビネーションを成功させた時点で、「もう大丈夫だ、これは最後まで行ける!」とすっかり安心してしまったのも、彼のこの日のスケーティングがこの上なく安定して自信にあふれていたからかもしれない。このスケートに乗っていけば、永遠にだってミス無しの演技を続けていけるのではないか……。調子のいい、こんな日の髙橋大輔の滑りは、競技を見るハラハラした気持ちさえ、私たちから取り去ってしまう。後半はただただ彼の滑りや、大きく動く心をそのまま身体で表すような演技、昨シーズンよりさらにスピード感を増したステップを楽しむだけで良かった。安心して、髙橋大輔のスケートを見る幸せに身を任せていられた。
「今日はあまり何も考えずに滑っていたかな。ただ練習してきたことをやろう、ずっとそう思っていただけで」
 実際、彼の表情も心なしか明るく、滑る喜びにあふれていた。お客さんといっしょになってジャンプの成功を喜んで、これだけの声援を身に受けることを楽しんで。最後のストレートラインステップでは、これ以上ないくらい盛り上がる観客に囲まれて、彼の視線は、しっかり上を向いていた。まるで彼のめざすべき高い位置を、鋭いまなざしでキッと見据えるかのように。
 良く考えれば、「ロミオとジュリエット」は悲恋の物語だ。恋の悲劇と言えば世界中の誰もが一番に彼らを思い浮かべるほど、良く知られた儚いふたりの物語だ。でも今日の髙橋大輔のパワー、視線の強さ、振り上げておろす腕の溌剌さ。こんなに力強くて生命力にあふれたロミオなら、ジュリエットを救えたかもしれないな、と思ってしまう。
「実は『ロミオとジュリエット』のストーリー、まだちゃんと把握していないんです(笑)。だからロミオを演じきれているかどうかは分からない。今はロミオになるというより、音楽を感じて滑っているのかな」
 やはり髙橋大輔に、物語をそのままなぞる気持ちはなかった。確かに、後半の盛り上がりはちっとも悲劇的ではない。高らかに鳴るオーケストラに合わせてとる最後のポーズは、恋人を失い自らも命を絶つ悲しい青年ではなく、勇ましく戦って、何かに打ち勝ったロミオだ。
 でもそれでいいのだ、と思う。髙橋大輔のロミオは、勝利のロミオ。遥か高いところをめざし、決して諦めない意思を持ち、最後にはここにたどり着いたことを喜ぶ、強いロミオだ。見る人々も、悲恋に涙するのではなく、彼とともに歓喜のスタンディングオベーションを送る。シェイクスピアのロミオから少し離れて、世界チャンピオン、オリンピックチャンピオンを目指すスケーター、髙橋大輔の今の気持ちの充実をそのまま表す、そんな彼なりの「ロミオとジュリエット」だ。
「今日は4回転を失敗してもこの点数をもらえました。日本での試合だからかもしれないけれど(笑)。でもこれでちゃんとジャンプも跳んだら、もっと点をもらえるんだって、自信になったかな!」
 笑顔のロミオは、まだまだ強くなるつもりだ。

Photo/Takayuki Honma   Text/Hirono Aoshima

*髙橋大輔選手のインタビューは本日発売の『Cutting Edge2008』に掲載されています


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日本男子フィギュアスケート オフィシャルファンブック『Cutting Edge2008』 発売!

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「オフィシャルブックまだですか? はやく読みたい!」と、無良崇人選手もお待ちかねの日本男子フィギュアスケート オフィシャルファンブック『Cutting Edge2008』、まもなく発売です。
『Cutting Edge』『Cutting Edge2007』に続き3冊目となる今年は、16歳の無良崇人選手から26歳の中庭健介選手まで、8選手のロングインタビューと多数の写真を収録。オンアイス、オフアイス、様々な表情の彼らに出会えます。

タイトル:Cutting Edge2008 日本男子フィギュアスケート オフィシャルファンブック
価格:1800円(税抜)
全国書店での発売日:12月5日
※NHK杯会場にて、先行販売中!

【contents】
髙橋大輔 金メダルのその先へ
織田信成 鳥のように飛べ
南里康晴 情熱は月の光のように
中庭健介 とどまることなき、意思
小塚崇彦 本当の1年目が始まる
柴田嶺  新たなる覚醒
町田樹  多面体の輝き
無良崇人 羽ばたく日のために

インタビュー 平松純子日本スケート連盟フィギュア部長
応援メッセージ  村主章枝、中野友加里
コーチインタビュー 長光歌子、織田憲子、河野由美、長久保裕、佐藤信夫、川越正大、秦安曇、重松直樹

佐藤信夫コーチの語る全日本選手権、日本最高の男たちの戦い 


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日米対抗2007エキシビションレポート   髙橋大輔SP初公開!

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「僕はまだやりたくなかったんですよ。練習でも一度も通して滑ったことがないプログラムを、いきなり人前でなんて!」
 世界初披露――そう大げさに言ってしまいたくなるほどだった、髙橋大輔のSP「ヒップホップ白鳥の湖」。きっと本人も、早く見せたかった自信作に違いない……と、思いきや、実は当初はおなじみのEXナンバー「バチェラレット」を滑る予定だったという。それを覆したのは、コーチのニコライ・モロゾフだ。前日の試合で満足のいく演技が出来なかった教え子ふたりに、若き名伯楽はご立腹。
「ダイスケは明日のエキシビション、ショートプログラムを滑れよ!」
 そんなコーチ命令にはさからえず、おかげで私たちは世界初披露をスケートアメリカの開催されるペンシルバニアに奪われることなく、あの「白鳥の湖」を見ることができたのだ。
「ほんとに不安でしたよ。どれだけ疲れるかわからないし、何が起こるかもわからない。で、ステップこけちゃいましたが(笑)。でも思った以上にお客さんがのってくれて……逆に僕の方がびっくりしましたね。うれしかったです」
 しかし会場の雰囲気は、のった、とか、沸いた、とか、そういう類のものでは、もはやなかった。まったく新しい髙橋大輔、まったく新しいフィギュアスケートに、騒然としていた、そんな形容が正しくはないだろうか。「ヒップホップは難しいですよ。身体の使い方、重心の置き方が、スケートとはまるきり違う。身体のパーツをばらばらに動かしながら、しかもきれいにかっこよく崩さなくちゃいけない!」そんなふうに苦しんでいたシーズンオフを越え、今日見せてくれた、スケートとヒップホップの融合。息を呑むほど激しいサーキュラーステップでは、髙橋大輔の動きに合わせてカラフルな光を投げかける照明が、邪魔に思えるほどだった。この日の凝ったライティングはほんとうに美しく選手たちを彩ってくれていたが、「白鳥の湖」のときだけは、氷の上で動くのは髙橋大輔だけでいい、そう思ってしまったのだ。
「でも、まだまだですよ。スピンも不安定だし、つなぎの部分は、実は適当。完璧には程遠いです。それなのにあんなに疲れちゃって(笑)。これから試合でどうなるか、心配です」
 確かにステップでの転倒は、こんなに動いていて転ばない方がおかしい、と思えるほど。これからジャンプもしっかり入れて、エレメンツのレベル判定も意識して、これだけのナンバーを仕上げていくのは並大抵のことではないだろう。
 しかしこのナンバーがエキシビションではなく、試合で見られるということ。それが何より、うれしくはないだろうか。これから半年、試合の緊張感のなかで、「白鳥の湖」はどう化けていくのか、髙橋大輔は何を見せてくれるのか。
「とにかく、今までにない挑戦をふたりでしようと、ニコライと決めたプログラムです。試合でどこまでできるか、自分でもまだわからないけれど……スケートアメリカまでの3週間で、まずは自分のものにできたらな、と思います。僕なりの新しい表現をアピールできたら!」

photo/Masayuki Kojima    text/Hirono Aoshima


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日米対抗フィギュアスケート競技大会2007横浜 記者会見&公式練習レポート(2)

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「プログラムへの取り組みが遅れているので、明日、どれだけできるかの不安はありますが……日本チームが勝てるように、全力を尽くします」(髙橋大輔)
「僕にとっては初めてのチーム戦です。チームの勝利の足を引っ張らないように、自分の力を精一杯出して生きたい」(南里康晴)
「日米対抗には2度目の参加。楽しみにしてきました! 日本チームが勝てること、自分もベストを尽くすこと、ふたつを目標にがんばります」(中庭健介)
 アメリカの選手たちが一様に「試合を楽しみたい」「日本で滑れてうれしい」といったなごやかなコメントを発していたのに対し、日本男子チームはそろって「迎え撃つぞ!」モード。頼もしいサムライたちは、公式練習で、はやくも火花をちらしていた。

 ジュニアからただひとりの参戦で「すごく緊張しています」という町田樹は、練習からトリプルアクセルを次々に着氷。しかも大きく力強く、代表4人中、誰よりも高く、これぞ男の子のジャンプ! という気持ちのいいアクセルを見せる。曲かけで披露したプログラムも、フリーの「白鳥の湖」。イタリア合宿時にもダイナミックかつナイーブな表現でライバルたちの注目の的となっていたプログラムだが、シニア3人と一緒に練習しても決して薄れない存在感をアピール。練習では確かめるように滑っていた難度の高いステップを、本番でどれだけ見せてくれるか、楽しみだ。
 町田樹が少年の初々しい繊細さを存分に見せた後は、中庭健介がおなじみのSP「サラバンド」で、お兄さんの成熟した繊細さを見せつけた。今年、さらに確実になったという噂の4回転も、後ろに2回転をつけ、きっちり成功。チームジャパンの屋台骨として、いっそう頼れる存在になったことを実感させてくれた。
 中庭健介とともに今シーズン初の世界選手権代表を狙う南里康晴も、負けてはいない。町田樹のような高さや軽さはないが、力強さでは一枚上手のトリプルアクセルはしっかり決め、オフシーズンにとことん滑り込んだSP「月光」を披露。これまでは海賊やカーレーサーなど、キャラクターを演じることで照れ隠しをしながら苦手な表現もがんばってきた、という印象の南里康晴だが、今年の「月光」は違う。静かなピアノの旋律に身を任せるように、激しくなったメロディーに抗うように、心の奥のパッションを表現しようとするさまにぜひ注目して欲しい。この日はジャンプの調子が上がりきっていない様子だったが、もし本番でジャンプを失敗したとしても、ステップやスピンで充分拍手がもらえる、そんなプログラムになっているはずだ。Qr2i1280_1
 そして注目の世界選手権銀メダリスト、髙橋大輔! フリーに選んだ音楽は、王道中の王道といっていいチャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」。出来上がりがいつもより遅かった、というこのプログラム、まだ振りを確認しながら滑っている印象ではあるが、とにかくファンの期待を裏切らない、大輔らしい、モロゾフらしい「ロミオとジュリエット」だ。
 特に印象に残るのはプログラム中盤のムーブメント。これまで以上に手を大きく使い、青年の恋心を表そうとする様は、今年も多くの女性の心をつかみそうだ。彼が滑っていると、この曲の中ではロミオのささやきを表すと言われる、ホルンの音色がはっきり聞こえるよう。トリプルアクセルからの2回転-2回転など、ジャンプもきれいに決まり、試合での演技が早く見たくなる公式練習だった。
 が、この日のほんとうの驚きは、「ロミオとジュリエット」には、なかった。髙橋大輔ひとりだけ、2回目の曲かけがあったのだが、そこで滑って見せたのは、今シーズンのショートプログラムで滑る予定のヒップホップ風「白鳥の湖」。これがもう、何と言ったらいいのか……とにかく恐ろしい、あいた口がふさがらないようなプログラムだ。おそらく氷上で、フィギュアスケートで、こんな表現をしようとした選手はこれまでいないだろうし、表現できた選手もいないはず。なるほど、ショートでこんな動きに取り組んできたからこそ、肩が大きく使えるようなるなど、体の可動域が広がり、フリーを滑っても手足が長く見えるようになったのか、と納得がいった。この日はまだまだ肩ならし、といった風情で「どうかな?」「いいぞ!」とコーチのモロゾフとアイコンタクトを交わす。
 見る前に情報を得てしまうよりも、ぜひ実際に見て、楽しんでいただきたい髙橋大輔の「白鳥の湖」。今回のエキシビションで披露するかもしれない、とのことだ。

photo/Takayuki Honma       text/Hirono Aoshima


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プリンスアイスワールド2007東京公演レポート

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 1978年、日本初のアイススケートショーとして誕生した「プリンスアイスワールド」は、今年、記念すべき30回目を迎えた。東京公演の会場となったダイドードリンコアイスアリーナには、子供たちからおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い客層が集まり、フィギュアスケート人気の高さを物語っていた。

 「プリンスアイスワールド2007」の目玉ともいえるのが、荒川静香と本田武史による夢のコラボレーションスケーティングだ。この2人は幼い頃からのスケート仲間で、同時代にフィギュアスケート界を牽引し、共に昨年プロスケーターに転身。豪華な顔合わせでショーのトップを飾り、会場を盛り上げた。
 『ウエスト・サイド物語』の曲に合わせ、深紅の衣装に身を包んだ2人が恋人どうしを演じる。最初は2人で、そして本田武史のソロ、荒川静香のソロと続き、もう一度2人のコラボレーションで終わる構成。さすが男女シングルのトップスケーターとして活躍してきた2人だけに、スピード感のあるスケーティング、揃ってステップからのアクセルジャンプを決めるなど、難度の高いコラボレーションを見せてくれた。
 2人による恋人どうしの表現という点では、ソロパートの方が恋の切なさを表現できていたかもしれない。2人のコラボレーション部分では、初々しさが際立ち、微笑ましい恋人どうしが表現されていた。
 これと対照的だったのが、ショーの後半に演じられた、プリンスアイスワールドのチームリーダー・八木沼純子と大島淳による『雪の華』。決して高難度の技が盛り込まれているわけではないが、純白の衣装で舞い踊る2人は、情感たっぷりに大人の愛を表現していた。

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 現役選手からは、中野友加里と高橋大輔が華を添えた。
 中野友加里は、5月のプリンスアイスワールド公演でも披露した『リトルナーレ』。滑るごとに妖艶な身体の動きを身につけ、完成度を増しているようだ。
 このオフシーズンのアイスショーでは、トリプルアクセルに挑戦したり、片手ビールマンスピンも積極的に取り入れるなど、シーズンに向けて、要素のレベルを上げるための努力が垣間見える。表現技術もどんどん上がっている中、勢いをつけてグランプリシリーズを闘ってほしい。
 高橋大輔は、今シーズンのエキシビションナンバー『バチェラレット』を披露。公演途中からはロングバージョンになり、サーキュラーステップが追加された。うねるような全身の動きとステップが、他のスケーターにはない独自のスケート世界を表現していた。
 オフシーズンはアイスショー出演が目白押しだった高橋大輔。それらの中でも、オープニングやフィナーレに、4回転ジャンプやステップからのトリプルアクセル、トリプル-トリプルのコンビネーションジャンプ、逆回転のジャンプ……と、さまざまなトライアルを繰り返していた。意気に燃える彼の心の表れだろう。
 現役選手は間もなくシーズンイン。アイスショーで磨いた技や演技を生かし、今シーズンも勝ち抜いてほしい。

text/Yukiko Oshima    photo/Takayuki Honma Masayuki Kojima


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野辺山サマーフェスティバル・オン・アイス2007Finalレポート(1) 男子3枠を巡る闘いが始まった

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 2002年から強化指定選手合宿などの期間中に開催されてきたエキシビション「野辺山サマーフェスティバル・オン・アイス」。フィギュアスケートファンの間ではすっかり夏の恒例イベントとなっていたが、今年度、文科省によって中京大学アイスアリーナがナショナルトレーニングセンターに指定されたことを受け、野辺山でのエキシビションも今年がファイナルと発表された。
 国内トップ選手のほとんどが顔を揃えて新プログラムを披露したこのエキシビション、選手たちの今シーズンの意気込みが、はっきりと感じられるものとなった。

 今シーズン、まず注目されるのは、来年3月の世界選手権で出場枠3を獲得した男子。2枠から3枠に1つ増えた出場枠を得るための彼らの闘いは、すでに始まっている。

 この日、男子のトップで登場した柴田嶺。ボーカル曲「The Prayer」で、彼らしい繊細で柔らかな世界を表現したが、昨シーズンの柴田嶺とはひと味違う成長を感じさせた。
 一部のジャンプにステップアウトなどはあったものの、身体の軸が太くなり、安定感がある。スケーティングもスピードを増している。さらに、ドーナツスピン、レイバック姿勢のまま後方に進むスパイラル、Y字スパイラルなどでは、彼本来の魅力をアピール。個性に磨きをかけつつ全体のレベルアップを図り、世界選手権を狙う。
 小塚崇彦は、映画「Saturday Night Fever」でお馴染みの「Staying Alive」。今季初披露のエキシビションナンバーで会場を沸かせた。
 正統派スケーターとして定評のある彼が、シャイなイメージを打ち破る。氷上に寝そべって背泳ぎの形で滑ったり、リンクのフェンスを乗り越えて客席の前で踊り、投げキッス……と、ジョン・トラボルタになりきって踊りまくる。「こんな小塚くん見たことない!」と、観客にインパクトを与えた。
 どちらかと言えば、普段はうつむきがちな彼の目線が観客を見据えて演じる姿は、この冒険がただの冒険では終わらない、小塚崇彦の本気の挑戦を感じさせた。
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 中庭健介は、意表をついた新プログラム「Cerezo Rosa」をすっかり自分のものとして、マンボのリズムで観客を引き込んだ。トリプルルッツを美しく決め、流れるスケーティングも魅せる。新境地開拓だけではない、彼の静かで熱き闘いの始まりを物語っていた。
 南里康晴は、今季注目のエキシビションナンバー「炎のファイター ピアノバージョン」。アントニオ猪木をイメージさせる振り付けはもちろんだが、高レベルのジャンプ等で観客を引きつける。高くて強さを感じるトリプルアクセルを成功させ、フライングシットスピンのフライングの高さには、観客のどよめきが起こった。得意のジャンプの成功率、表現技術のレベルも上げ、世界選手権に向けての一歩を踏み出した。
 世界選手権で金メダルを狙う高橋大輔は、今季エキシビション用の新プログラム「Bachelorette」を披露。アイスショー等でオフシーズンも多忙を極める中、若干の疲れを見せながらも崩れないジャンプは、彼の安定した実力を示していた。

 各選手それぞれにステージを広げる男子シングル、今シーズン、3枠を巡る闘いが見逃せない。

text/Yukiko Oshima   photo/Takayuki Honma


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チームジャパン in  クールマイヨール!

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 フィギュアスケート日本チームのメンバーは、7月19日よりイタリアはピエモンテ州アオスタ県クールマイヨール市のフォーラム・スポーツ・センターにて、特別強化合宿を敢行中。
 イタリア・フランス国境にそびえるモンブランが目の前という素晴らしい自然環境の中、日々トレーニング、氷上練習に励んでいる。チャレンジ中のジャンプを高地で完成させようと奮闘したり、ライバルたちの新しいプログラムに真剣に見入ったり……。
 しかしオフの時間にはクールマイヨール市街に繰り出し、ジェラートやピエモンテ名物グリッシーノをほおばり、ケーブルカーに乗ってモンブランからの絶景を楽しむなど、それぞれにリフレッシュもしている様子。
 また世界のトップ選手が合宿に訪れるというここ、フォーラム・スポーツ・センター。地元の子どもたちの間でもフィギュアスケートは大人気で、日本選手たちは記念写真やサインを求められることも。
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 明日はそんな子どもたちも楽しみにしているアイスショー、「ジャパン・オン・アイス」が開催される。初めて海外で行われるチームジャパンのエキシビション。陽気なイタリアのお客さんたちの前で、どんなショーを見せてくれるだろうか。

 クールマイヨール合宿でのインタビューは「フィギュアスケート日本女子シングルオフィシャルファンブック(仮)」(9月下旬 マガジンハウス刊)、「Cutting Edge2008 日本男子フィギュアスケートオフィシャルファンブック」(10月下旬刊)に掲載されます。

photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima


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ドリーム・オン・アイス2007レポート 日本男子ここにあり!(2)

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 そして、この後に続く男子日本代表4人は、なんと全員が、振付師として活躍の場を広げるプロスケーター・宮本賢二振り付けによる新エキシビションナンバー。
 中庭健介は「マンボ」で怪しい色気を振りまき、会場中を一気に独自の世界に引き込んだ。衣装の胸元をはだけて見せ、投げキッスを送るなど、これまでのイメージとはかけ離れたセクシーな演出をも、彼らしく真っすぐに演じる姿に、観客は思わず微笑んでしまう。誰よりも彼自身がこのプログラムを楽しんでいることが、見る者の心に訴えかける。
 南里康晴は、アントニオ猪木の入場テーマ曲「炎のファイター」のピアノバージョンで、プロレスという雄々しい世界をしっとりと舞った。「闘魂」と背中に書かれた衣装、首に掛けた赤いスカーフ、随所に散りばめられた猪木を連想させるポーズと、猪木へのオマージュを表現。異色の作品ながら、上半身を大きく使ったステップなど、表現技術の進化を感じさせるプログラムとなった。
 織田信成はレッド・ホット・チリ・ペッパーズ「Around The World」で熱演。エアギタープレイから、神宮アイスメッセンジャーズのメンバーによるリフトまで、エキシビションならではのサービス精神溢れるエンターテイナーぶりを見せた。
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 トリを務めた高橋大輔は、ビョーク「バチェラレット」で新たな大輔ワールドを披露した。流れるスケーティング、野性を感じさせるダイナミックな演技。観客は息をのんで、彼の表現世界を堪能した。アンコールの「オペラ座の怪人」では、会場中が世界選手権の興奮の中に引き戻されたかのようだった。
 その熱を帯びたまま、フィナーレに。高橋大輔、ステファン・ランビエル、織田信成、中国ペアのホンボー・ツァオらをセンターに据えた出演者全員による群舞では、郷ひろみさながらの<ジャケットプレー>ならぬ<ジャージプレー>も見られた。日本ならではのアイスショーのスタイルが、また広がりをみせたようだ。
 欠場選手が続出したのは残念だったが、それによって、かえって日本選手の層の厚さとショーのレベルの高さを浮き立たせたのが、今年の「ドリーム・オン・アイス」だったのではないだろうか。ケガを治した選手たちも参加した、より華やかなショーを今後も期待したい。

text/Yukiko Oshima   photo/Takayuki Honma


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男子シングルショートプログラム終了 高橋大輔3位、織田信成14位

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 試合前の共同インタビューや記者会見では、笑顔も多くはしゃぎ気味だった高橋大輔と織田信成。彼らは実はリラックスしていたのではなく、襲いかかる緊張感を押し隠して、必要以上に明るくふるまっていたのかもしれない――そう思ってしまうほど、ふたりともが今シーズン最も納得できない演技を、ショートプログラムで見せてしまった。
 織田信成は最初のトリプルアクセルの回転が抜け、シングルアクセルに。さらに単独のフリップもステップアウトし、ジャンプはまさかの2ミス。しかし見ていていちばん辛かったのは、ジャンプの失敗よりも、その他のエレメンツやつなぎのパートに、織田信成らしい魂がまったく入っていないことだった。スケーティングにスピードがなければ、踊りのキレもない、何よりあの「うわあ!」とこちらが嬉しくなってしまうような大きな笑顔がない。
 もちろん、あれもない、これもない、そう感じてしまうのは、彼には本来、すばらしいキレやスピードや笑顔があるから。そんな彼を、いったい何がここまで追い詰めてしまったのだろうか。

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 続く高橋大輔は、出だしの3回転-3回転の着氷がやや乱れたものの、他は手堅くまとめて3位につける。しかし演技終了直後の彼の表情は、自分の不甲斐なさに怒っているように見えた。理想が高く、自分に厳しい彼のことだ。めったに心から満足した顔で演技を終えることはない。しかしここまで険しい顔、落胆や失望ではなく、怒りの表情を彼が見せたのは、初めてかもしれない。
「今期一番の緊張を感じて、今期最悪の演技をしてしまいました。あの演技でこの順位はラッキーだったと思います」
 確かに、場内の空気を根こそぎ持っていってしまうようなダイナミックなムーブメント、軽やかに情熱を表現するステップの自在さ、そんなものがこの日は影を潜めていた。しかしこれほそ大きなプレッシャーの中でもジャンプで致命的なミスをしなかったのは、精神の強靭さが今期飛躍的にパワーアップしたことの証明になるだろう。ほんの数年前には、苦手な全日本選手権だというだけでぽろぽろミスをしていた人だとは思えないほどの強さ。彼には自ら身につけたこの強さを、もっともっと誇ってほしい。そんな過去を振り返る暇など、いまの高橋大輔にはないかもしれないが。
「自国開催ということで、みんなの期待が大きくて……それに応えたかった。応えようとした欲が、一番大きな緊張に繋がってしまいました」
 いつもの彼の演技が出せなかった理由は、やはりそこにあった。前代未聞のフィギュアスケートブームのただ中の、地元開催世界選手権。テレビをつければニュースやCMで自分たちの姿が流れ、街中にはポーズをとった自分が溢れかえる。リンクに立てば大きな体育館を埋め尽くすほどの観客、無数のカメラ、マイクが取り囲む。中心にいる彼らにとってみれば、オリンピックシーズンを超えるほどの異常事態だろう。
 では、彼らから本来の輝きを奪ってしまったのは、私たち日本のファンや報道陣なのだろうか。過度な期待が、彼らをつぶしてしまったのだろうか。
 それは違う、と思いたい。彼らにとってもこのフィギュアスケートブームは必要なもののはずだ。たくさんの注目を集め、大きな話題になることで、スポンサーも練習場所も得、選手を続けていくための環境は整いつつある。良くも悪くも、彼らはこのブームとともに生きていかなければならない。もっと注目され、もっと愛されて、もっとスケートの素晴らしさを見せつけていかなければならない。この大きな波の中で生きていくための、強さを身につけなければならない。
 奇しくも同じ日にフリー演技を終えたペアのロシア代表、川口悠子は、日本よりもずっとフィギュアスケートの伝統が長い国で選手を続けていくことの過酷さを、こう語っていた。
「世界選手権の成績なんて、ロシアではたいした価値はないんです。ロシアのフィギュアスケーターはオリンピックで結果を出してこそ認められる。私もそのつもりです。そのくらい本気になって臨まないと、ロシアの人たちにはついていけないから」
 高橋大輔、織田信成、そして彼らに続く、今の時代を生きる日本男子選手たち。彼らはこの国のこのスポーツのこの種目の歴史の中で、いちばん大きな期待を背負い、いちばん大きなプレッシャーと戦っている。
 そこで生きていくための覚悟。高橋大輔と織田信成には、とっくに出来ていたはずだ。
きっと今は、「思ったよりきつかったな!」そんなことを思って、フリーでの巻き返しを誓っているに違いない。
「あとは自分に集中して――フリーでは何も考えずに、攻めるだけです!」(高橋大輔)

photo/Takayuki Honma text/Hirono Aoshima


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COLORS2007 フィギュアスケート男子シングル読本 2月27日発売!

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2007東京世界選手権でいちばんエキサイティングな種目は、男子シングルではないだろうか――?
それでもメディア情報は、どうしても女子シングルに偏りがち。
お嘆きの男子シングルファンの皆さんに、今年も『COLORS』をお届けいたします。
昨年の「フォトブック」から「読本」へ。
今年は写真に加え、記事ページもさらに充実の内容です。

■巻頭言「チャンピオンのあるべき姿」 本田武史

■トップスケーター10人のフォト&インタビュー
高橋大輔 ステファン・ランビエール ブライアン・ジュベール エフゲニー・プルシェンコ
ジェフリー・バトル 織田信成 ジョニー・ウィアー エヴァン・ライサチェク
エマニュエル・サンデュー 小塚崇彦
*リラックスしたオフショットや少年時代の貴重な写真も満載!

■注目5選手紹介
アルバン・プレオベール 中庭健介他

■さらに注目! 国内外36選手紹介
南里康晴、セルゲイ・ドブリンから、羽生結弦、アルトゥール・ガチンスキーまで

■気になるあの人が男子シングルの現在と未来を語るインタビュー
藤森美恵子、リー・バーケル、田村岳斗、岡崎真、濱田美栄、薄田隆哉

「COLORS2007 フィギュアスケート男子シングル読本」あおば出版
2007年2月27日発売
定価 1900円+税
サイズ B5判 
オールカラー 128P

*同じくあおば出版の猫+俳句コラボレーション写真集『誰かいませんか』『逢いたくなっちゃだめ』(写真:板東寛司 選と文:青嶋ひろの)もこっそりおすすめです


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フィギュアスケートDays vol.2 3月1日発売!

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東京世界選手権目前!
世界中からトップスケーターが集結するこの大会をもっと楽しむために、フィギュアスケート専門誌「フィギュアスケートDays」の第2号が発売になります。
3月1日より全国書店にて発売予定です。


第2号の内容は……

■全日本チャンピオン 高橋大輔インタビュー 
  「プレッシャーさえも、今は楽しめる」

■きょうだいスケーター大特集!!
 [きょうだい対談] 浅田舞×浅田真央 中庭健介×中庭弘二 
           南里康晴×南里美羅 
日本、海外のきょうだいスケーターを一挙紹介 

■2007東京世界選手権 応援ガイド 
 [仲良し対談] 織田信成×中野友加里 
世界選手権の見どころ&スケジュール 

■大会レポート
 2006全日本選手権・2006全日本ジュニア選手権
  [インタビュー] 村元小月/町田樹/キャシー&クリス・リード 
  全日本2006勢力分布図 
 
■「ペア」への招待 
 佐藤有香の語るペアの魅力  
 [インタビュー] 川口悠子/若松詩子 
 ペアスケーター年齢早見表 

■[追跡ドキュメント] スケート王国仙台、復活への道
■日本スケートリンク事情 醍醐スケート濱田チームの1年半
■フィギュアスケート スタンダードナンバー大比較 カルメン編
■武田奈也のOFF Ice

シーズン真っ只中、取材に協力してくださった選手、コーチ、関係者の皆さんからの声がいっぱいです。
世界選手権に出場する高橋大輔選手のインタビュー、織田信成選手、中野友加里選手、浅田真央選手らの登場する対談、木戸章之選手のアイスダンス講座など、熱戦を前にぜひ読んでおきたい記事もたくさん。

この他にもテクニカルスペシャリスト岡崎真さんによる「ゼロからおぼえる新採点講座」、フィギュアスケートを支える裏方さんの話を聞く「from the backstage(今回は柴田嶺選手の衣装を手がけるコスチュームデザイナー多田淳子さんが登場)」なども好評連載中です。

あれもこれもと編集部が欲張りすぎたため、0号・1号より16ページ増! 
しかもお値段据え置き!

書店で入手しにくい場合はダイエックス出版ホームページよりご注文ください。
3/30までにご注文いただいた方には、浅田選手・高橋選手らのサイン入りグッズを抽選でプレゼント!


「フィギュアスケートDays vol.2」 ダイエックス出版
ISBN: 978-4-8125-2892-1
サイズ: A4版
発刊年月: 2007年3月1日
定価:1,680 円(本体価格+税)


世界選手権会場(東京体育館)でも販売予定。
またフィギュアスケートDaysホームページでは、太田由希奈選手への質問を大募集中。太田選手からの回答は2007年5月発売予定のvol.3「あの選手に訊きたい」コーナーに掲載予定です。


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日本男子フィギュアスケートオフィシャルファンブック『Cutting Edge2007』発売中!

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 昨年に引き続き、日本男子シングルトップスケーター10名のインタビューと写真を収録したファンブック『Cutting Edge2007』が1月、発売されました(予定より大幅に発売が遅れましたことをお詫びいたします)。

CuttingEdge2007 日本男子フィギュアスケートオフィシャル ファンブック
ダイエックス出版刊
A4判
定価 1,890円(税込)

■インタビュー
高橋大輔 「氷の上に立つからには、ナルシストでなくちゃいけない」
織田信成 「なにごともスケート中心。その点は僕、すごいですよ」
中庭健介 「まだまだやりたいことはたくさん。今、スケートがほんとうに面白い」
小塚崇彦 「最後まで絶対にあきらめない。この気持ちだけは大事にしたい」
南里康晴 「欲しいのは力強さ。伸びたり縮んだり柔らかくなったり硬くなったり、自在な強さ」
神崎範之 「研究を続けながらフィギュアスケートも続けてこられた、そのことは僕の誇り」
無良崇人 「スケートをやめちゃったら、今の友達もなくなっちゃう。今の自分もなくなっちゃう」
柴田嶺   「リンクに立つときは、完璧じゃないとイヤなんです」
小林宏一 「もう、人のことは気にしない。自分のできることをやれば、結果は必ずついてくるから」
岸本一美 「期待をかけられること、早く演技見たいといわれることが、辛かった」

■荒川静香、日本男子スケーターのここをチェック! 
■応援メッセージ FROM 恩田美栄/本田武史 

 選手たちの考えていることや感じていることを知れば、演技の見方は変わるでしょうか?
 スケートだけを純粋に楽しみたい方には、オフアイスの素顔やオフシーズンの裏話など、ひょっとしたら邪魔になってしまうものかもしれません。
 でも、あのきらきらした演技を見せる彼は、氷の上で何を考えているのか? 
 どんな練習をしたら、あんなに気持ちのいいスケートを滑れるのか?
 彼らのスケートを見ていたら、色々なことを聞いてみたくなって、この本は生まれました。

 言葉と写真で伝えられることは、彼らの魅力のほんの一部にすぎません。
 インタビューを読んで「がんばったんだなあ」と感じたら、その何10倍、選手たちはがんばっています。
 「辛かったんだな」と感じたら、その何10倍も辛かったのでしょう。
 そして、「なんて素敵な選手なんだろう」と思ったら、その100倍、彼らは素敵な選手たちです。

『Cutting Edge2007』を読んだ方の心なかで、選手たちを応援する気持ちがちょっとずつでも大きくなるといいな、と思っています。

*女子シングルオフィシャルファンブックも、予定とは少し違う形になりますが、発刊が決定しました。
こちらも大変お待たせしてしまったことをお詫びいたします。詳細が決定次第、お知らせいたします。


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男子シングルSP終了 高橋大輔2位   ペテルブルクへの挨拶

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 高橋大輔がペテルブルクのリンクに登場した時に思い出したのは、2005年のモスクワ世界選手権だ。
 フリーでミスを連発した彼に、ロシアのお客さんから送られたのは「がんばったね」という意味のねぎらいの拍手。
 あの時ぼろぼろになりながらも「これから地道に練習します。オリンピックに行きたいので!」と宣言した彼は、その後夢の舞台に立ち、グランプリシリーズで優勝できる力をつけて、戻ってきた。
 でもまだあれ以来、ロシアのお客さんに、彼はいいところを見せていないのだ。
「今日はちょっと緊張していたかも。滑る前、いつもより落ち着きが無かったです」
 というのも、先々シーズンのことをちらりとでも思い出したからだろうか。

 しかし音楽が鳴り出したとたん、高橋大輔は腕のひとふりで、やわらかな、あたたかな空気を氷の上に作り出してしまう。朝の練習では少し苦しんでいたジャンプも、音楽の中ではなぜか安定し、3フリップ-3トウのコンビでは1.80もの加点。トリプルアクセルもいつもにもまして高く、遠くまで跳んでいく。
「クラシック音楽の良さを美しく、大きく表現したい」とシーズン前に語っていたチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」だが、あまりにおなじみすぎるクラシック曲ゆえ、普通のスケーターが滑ってもおもしろみのないプログラムになってしまいがちだ。高橋大輔のSPには、プレオベールや織田信成のSPのように、個性的な振付けも入っていなければ、ジュベールのSPのような表現するべき具体的なキャラクターも無い。
 これほど難しい音楽を、この人はよくここまで表現しきるものだと感嘆してしまうほど、今日のSPには強さがあった。何人ものオーケストラがいっせいに奏でるダン! という大音響にも、たったひとりの高橋大輔の動きが負けていない。大きく跳ねた時の一瞬のポーズさえも、目に焼きつかせてしまうほど美しい形を体が自然に作り上げてしまう。

 サンクトペテルブルクは、チャイコフスキーゆかりの都であり、人々は質の高い芸術にいくらでもふれる機会を持っている。そしてあのエフゲニー・プルシェンコの出身地であり、フィギュアスケーターの見せる究極に近い演技も、お客さんは何度も見ているはずだ。
 それでも今日の高橋大輔は、ペテルブルクのお客さんを興奮させ得たのではないだろうか。地元の偉大な音楽家の代表曲に乗り、地元のヒーローと同じスポーツで、これだけの演技を見せてくれる東洋人が、この街にやってきた。
 プログラムの最後、最後の一音にまでパシッとポーズを合わせて演技を終えた時、モスクワでは彼が得られなかった種類の拍手、熱狂と賞賛の拍手が高橋大輔に送られた。
「以前のワールドのとき、反応が悪かったので……。今日はロシアのお客さんに喜んでもらえてうれしかったです。でも大事なのは明日のフリー! 大きなミスをしないように挑みたい」
 サンクトペテルブルクに挨拶するように滑った、初日のチャイコフスキー。
 フリーでは高橋大輔のカラー、セクシーさや情熱をより前面に押し出した「オペラ座の怪人」を滑る。今日高橋大輔を覚えたお客さんたちは、どんな反応を見せるだろうか。


写真/Tsuyoshi Kishimoto(PHOTO KISHIMOTO) 文/Hirono Aoshima


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NHK杯男子シングル終了 高橋優勝、織田2位、小塚3位!(1)

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「フィギュアスケート、日本は男子もこんなに強かったんですか?」
 日本の3人が表彰台を独占したNHK杯が終了して、たくさんの人にそう聞かれた。
 そう、強かったんです。
 ランビエール不在、チェンジャン・リーの風邪、いくつかの要因が重なったとはいえ、全員がほぼノーミスでショートとフリーを終えた日本男子3人。海外の有力選手がいたとしても充分戦えていただろうし、大会前から期待された女子以上のエキサイティングな戦いを、3人の日本男子は見せてくれた。

 優勝した高橋大輔は4回転やトリプルアクセルの成功も素晴らしかったが、ジャンプ着地後すぐさま滑り出すスケーティング、そのスピードに圧倒させられた。ステップはいつも興奮を呼ぶ終盤のストレートラインだけでなく、中盤のサーキュラーからダイスケワールド全開。プログラムのどの部分にもすべてに思いを込めた演技で、今季最高の「オペラ座の怪人」を見せてくれた。
「でもジャンプは跳べたけど、スピンやステップは雑だった。そのあたりが今後の課題かなと思います。今回は相当疲れていて……ステップではもう、体が動いていなかったんですよ」(高橋)
 誰もが至福を感じた演技、本人はまだまだ満足していないようだ。

 試合前、声もかけられないほど緊張し、滑りだす前もガチガチの顔をしていた織田信成。いつものことだが、この人は音楽がかかった途端、別人のような安定した滑りを見せてしまう。
 コンビネーションで決めたトリプルアクセルももちろん素晴らしかったが、トリプルルッツ-ダブルトウで見せた信じられないほどの飛距離と、着地後の流れ。この人のジャンプは本当に絶品なのだと改めて唸ってしまう。
「こういう演技をいつでもできるって自信を、今はつけなくちゃいけないと思います。そんな意味でもNHK杯はいい大会になりました」(織田)Img_3655s
 脚上げのアップライトなど複雑な形も、スタンダードなポジションも。得意なスピンはどんな形でも速度を落とさない。ジャンプだけでなく技のすべてが端正で、ジャッジの評価も+1、+2が続々とついていく。
 ただ、マイムや派手な演技のない、クラシック曲の美しさを表現する今年のフリープログラム。まだまだ織田信成だけの魅力は出し切れていないかもしれない。今のところはコミカルな動きを交えたSPの方が彼本来の持ち味が出ているよう。しかし日々進化をやめない彼のことだ。世界選手権のころには、フリーでこそ、真のノブナリが出せる、そんなプログラムに仕上げてきてくれるだろう。

 3位の小塚崇彦は、先輩ふたり以上に、初めてのNHK杯を楽しんだのではないだろうか。
 序盤のトリプルアクセルを成功してからは、俄然勢いを増し、軽やかでなめらかな滑りには見入ってしまうほど。ほぼ確実に決めたジャンプ、評価の高いスピンやステップもさることながら、彼のプログラムで注目したいのは、採点されるエレメンツではない部分だ。ピアノの調べに乗り、後半にゆったり見せるイーグルからスパイラルへのムーブインザフィールドなど、何げない動き。そんなところにまで心配りが出来ている、とてもシニア一年目とは思えない完成度の高さだ。
 ノービス時代から敵無し。クラスをまたいで4年間全日本ノービスを制覇し続けた逸材が、高校3年生にして早くもNHK杯の表彰台に駆け上がっていった。おそらく今大会で初めて演技を目にした人もいるだろう小塚崇彦、この名をぜひ、多くの人に覚えてもらいたい。

写真/M.Morita 文/H.Aoshima


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関西大学アイスアリーナ オープニングセレモニーレポート(1)

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 ここ数年、リンク閉鎖の暗いニュースにばかり接してきた日本のスケーターやスケートファンにとって、「新しいリンクができる!」この話題はほんとうに嬉しいものだ。それが、日本で初めての大学キャンパス内のリンクだと聞いたら、なおさら。
 スケートやホッケーを魅力あるスポーツと認め、在学する選手たちをバックアップしたいとまず名乗りを上げたのは、今年で創立120周年を迎える関西大学(本部・大阪府吹田市)だ。
 7月13日、高槻市の高槻キャンパスに新たに建設された「関西大学アイスアリーナ」のオープニングセレモニーが開催され、地元のちびっこスケーター、関西在住スケーターらのアイスショー、また関西大学VS同志社大学のアイスホッケー交流戦などがにぎやかに行われた。

 真新しい匂いのするアリーナ。セレモニー参列者たちがまず目にするのは、在学生の高橋大輔選手、織田信成選手、そしてOB&OGで在学中にオリンピックにも出場した佐藤信夫氏、佐藤久美子氏の凛々しく華麗な姿。巨大な写真は垂れ幕としてリンクの両ロングサイドに4枚ずつかかげられているのだ。これには選手たちも、佐藤夫妻も照れまくり。
「(先にリンク入りしていた)織田君に『めちゃくちゃでかい写真が飾ってあるよ』って聞いて、等身大くらいかな、と思ってたんです。でも、ほんまにでかい(笑)。もうびっくりです」
 と、共同インタビューでの高橋大輔選手。
 ゲストとして招かれ、くす玉開きにも参加した佐藤信夫コーチは、「壁は見ないように! リンクの選手を見てくださいよ」と照れくさそう。
 門下生の村主章枝選手、中野友加里選手もセレモニーで演技を披露した佐藤コーチ夫妻だが、久美子コーチによれば、
「昨日の練習の時にね、友加里ちゃんが縮こまりぎみだったから『上向いて、もっともっと上!』って注意したんです。そうしたら『だって今日は上を見ると先生がいるんですよ! わたし、上からも下からも見られてる!』ですって(笑)」
 そんな一幕もあったとか。

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 日本のフィギュアスケート黎明期のトップスケーターふたり、そして現在のフィギュアスケート界を引っ張る若いふたり。スケート史に残る4人のスケーターが、関西大学にとっても輝かしい伝統と新しい風として、多くの人が彼らの姿を見上げたこの日。
 ご本人たちはひたすら照れるばかりだが、関西大学が彼らを誇りとし、本気でこのスポーツを応援して行こうという気持ちが大きな垂れ幕からは感じ取れ、なんだかとてもうれしく、感激してしまった。
 マイナースポーツといわれていたフィギュアスケートは、いま、たくさんの人々にその魅力を認められつつある。
 選手たち、支える人々の長い間の苦労やがんばりが、いま確実に、あちこちで実りつつあることを感じた、そんなオープニングセレモニーだった。(青嶋)

*セレモニーでは地元の若いスケーターたちによるグループスケーティング、三木遥選手(関西大学)、ノービスの田中刑事選手(倉敷FSC)ら、関西在住スケーターらのアイスショーがリンクを彩った。関西を拠点とするトップスケーター、金彩華選手(京都醍醐FSC)、澤田亜紀選手(京都外大西高)、町田樹選手(倉敷翠松高校)らも出演。アイスショーレポートも後ほど掲載いたします

写真/本間孝行


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男子シングルフリー 高橋大輔 ここがスタート地点

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 6分練習からたがが外れてしまったようにヒートしていた男子シングルのフリー最終グループ会場。人々は、プルシェンコの演技に総立ちで大歓声を送った。続くランビエールには、主にスイスの大応援団からのホームリンクであるかのような嬌声が響きわたる。最後から2番目の滑走となったジュベールにも、フランスから駆けつけたたくさんのファンから、ものすごい歓声が送られていた。

 ジュベールがキス&クライに向かうと、最終滑走の高橋大輔がリンクに降り立った。そのひと蹴りで進む距離は非常に長い。今日もいつものスケーティングは健在だ。モロゾフコーチが両手を大きく動かしながら何か語りかけている。名前をコールされる直前、やさしい笑顔の長光コーチと、やはり笑顔のモロゾフコーチと握手した。

 スタートポジションに向かうかな、と思ったとき、急に長光コーチが走り出し、奥のほうへ行った。かと思うと、ティッシュの箱を手に駆け戻り、高橋に手渡した。そのあわただしさが少し気になったけれど、リンクの真ん中で音楽を待つ高橋は、凛とした引き締まった表情を浮かべていた。……しかし、体のキレは悪くないようなのに、会場を熱狂させるいつもの高橋が出てこない。

 ショートプログラムは1番滑走、フリーでは最終滑走と、大きなプレッシャーを感じずにはいられない位置で滑ったトリノ五輪。さらに、ランビエールやジュベールのようなホーム状態ではない、プルシェンコやバトル、ウィアーのように同国の他競技選手が揃って応援に来てくれているわけでもない。もちろん日本からの応援団はいるけれど、絶対数では最終グループの他5選手の応援団にはかなわない。そんな完全アウェイの会場は、想像以上に厳しいものだった。

 ホーム状態の会場に鼓舞され、見守られていたランビエールと、彼が表彰式の間じゅう見せた静かな涙、それを迎える会場の温かさ……。この大会の男子シングルでもっともハートウォーミングなシーンを、高橋も感じたはずだろう。

 来シーズンの世界選手権は東京だ。演技前に笑顔で送り出し、演技中にステップに酔い、演技後に温かく迎え入れてくれるのが、コーチと海を渡ってきた少しの応援団だけでない。会場がみんな味方になるのだ。
 たくさんのことがあった高橋大輔の長い05-06シーズンは、ここで一区切りとなる。だが、彼のスケーター人生、それもオリンピックのフリー最終グループで滑った世界トップスケーターとしての人生は、来シーズンから本格的に始まる。(長谷川)

写真/共同通信
*高橋大輔選手へのインタビューは、『COLORS』『Cutting Edge』『オール・アバウトフィギュアスケート』に掲載されています


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男子シングルフリー この技に注目!

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 いよいよ始まる男子シングルフリー。高橋大輔選手の活躍ももちろん期待したいが、ショートプログラムを見て海外のトップ選手たちの個性的な演技に興味を持った人も多いだろう。
 今夜のフリー、どの選手がどんな技を見せてくれるのか、どの技に注目か?
 フィギュアスケート特集で12月に募集したアンケート「この人のこの技が見たい」の集計結果を元に、注目選手の見逃せない技を紹介してみたい(「」内は読者コメント)。

●フィギュアスケート特集読者が注目する男子シングル
「この人のこの技が見たい」ベスト10

1位 高橋大輔のステップシークエンス(サーキュラー、ストレートライン)

圧倒的な支持を集めたのは高橋大輔選手の代名詞ともなっているステップワーク。
「多彩でスピード感のあるステップが好きです。日本では高橋選手ですね」
男子のフィギュアスケートといえばジャンプ、と言われているところに、ステップで世界と戦える日本代表選手が出てきたこと、これはうれしい。

2位 ステファン・ランビエール(スイス)のスピン(シットスピン、アップライトスピン、コンビネーションスピンなど)

少年時代は細い体で繊細の極致ともいえるようなスピンを回っていたランビエール。体ががっしりするにつれてスピード感は少し減ってしまったようにも見えるが、フリープログラムの最後に見せる高速スピンはやはり圧巻。姿勢変化が少ないことでレベル1判定となることが多いが、高いレベルを得ることよりも自分らしい技を見せたい……そんな思いもあるのかもしれない。「彼のスピンのように圧倒的なのにレベルが低いと見なされる技は、これから先は見る機会が減ってしまうのでしょうか……。それがすこし気がかりです」

3位 ジェフリー・バトル(カナダ)のイナバウアー

荒川静香や太田由希奈、中野友加里、サーシャ・コーエンら、女子選手がプログラムの見どころに持ってくることが多いイナバウアー。スケーティングが美しいバトルのイナバウアーも一級品だ。今シーズンのバトルは、彼女たちにようにリンクをまっすぐに横断するものではなく、くるりと円を描くようなイナバウアーを見せている。

4位 ジェフリー・バトルのスプレッドイーグル

両足のつま先を180度開き、広げた手は大きく泳ぐように。鷲が羽を広げた形、とも言われるスプレッドイーグル。かつてはブライアン・ボイタノ、また日本の本田武史や田村岳斗が得意としていたが、現役選手ではバトルやサンデューのイーグルが美しい。

5位 高橋大輔のトウジャンプ

リズムにのって流れるように跳ぶ高橋大輔のトウジャンプ。ショートプログラムでは3回転ルッツがきれいに決まったが、フリーでは4回転トウループが見られるか? 練習では4回転-3回転のコンビネーションも成功させたとのこと。

6位 エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)のジャンプ

7位 高橋大輔のレイバックスピン

8位 エフゲニー・プルシェンコのビールマンスピン

9位 エマニュエル・サンデュー(カナダ)のキャメルスピン

10位 ジョニー・ウィアー(アメリカ)のステップ

写真/共同通信(16日の公式練習での高橋大輔)


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男子シングルショートプログラム 高橋大輔5位発進!

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 トリノ五輪大会5日目、ついにフィギュアスケートチームジャパンの先陣を切って高橋大輔選手が登場。トリプルアクセルで着氷が乱れるなどのミスはあったが、フリー最終グループ入りとなる5位でショートプログラムを終えた。

 夢にまで見た大舞台で、30人の演技者の中の第一滑走!
 もう、これ以上ないくらい緊張している様は、ポーズをとる前に手を2回うちならす、こんな時のお決まりの動作からも感じ取れた。
 そして何より、スタートのポーズを取った瞬間。高橋大輔の武器のひとつである瞳の強さが足りなかった。いつもなら、観客もジャッジもテレビの向こうの人さえも、きっと見据えて離さないような目つきをするはずなのに……。
 大輔、大丈夫だろうか?
 誰もが不安に感じてしまったとおり――。序盤のトリプル-トリプルのコンビネーションは着氷に流れがなく、続くトリプルアクセルも乱れる。彼の一番いいときの「ロクサーヌ」を知っている人々にとっては、完璧なパフォーマンスとはいえない、残念な演技となってしまった。
 しかし緊張でがんじがらめだったものの、全日本選手権から高橋大輔のスケートがさらに成長している様が見て取れるたのは、うれしいことだった。
 まず、ステップやスケーティングに比べれば苦手なはずのスピンが、全日本までとは別人のように力強い! レイバックスピンなど、あまりの速さと迫力に、観客席からは大きな歓声が上がっていたほどだ。
 そして、焦りのために心ここにあらずだったステップも、いつものエモーショナルさこそなかったものの、素晴らしいスピードでリンクの空気を切り裂いていった。あんなに激しく足を動かして、よく転ばないものだと、感心。
 同じようにジャンプミスをした選手たちの多くは、動揺から振り付けがおざなりになっていた。でも高橋大輔の体は、心が宙に浮いてしまっていても、勝手に動いていってくれるのだ! これはきっと、オフシーズンから繰り返してきた激しいトレーニングの賜物。努力はきちんと彼の中に蓄積され、この大舞台で、体が応えてくれた。これは、胸を張って誇っていい。

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 総合得点、73.77。小さなミスがあってもがくんと点数が落ちたりしない、トップ選手らしい評価も得られた。
 しかし4位のジュベールからは4点、3位のランビエールからは6点離されての5位。たとえ上位の選手がフリーで崩れたとしても、すぐ下から0.5点差でバトルが迫っている。メダルを狙える位置にいると、軽々しく言うことはできない得点だ。
 しかし、だからこそ、変に表彰台を意識せず、リラックスしてフリーに臨める位置に立ったと言っていい。フリーはきっと気持ちを楽に、楽しんで滑ってくれる。大輔らしく、のびのびと。大技4回転にも、きっと気負いなく挑める。いつもの高橋大輔の演技――妖しさ、色っぽさ、猛々しさで、日本中をとりこにしてくれるだろう。
 まだまだ女子への注目が大きい日本のフィギュアスケート。でも男子のフィギュアスケートも、いいかもしれないぞ! そんなことをひとりでも多くの人に感じさせてくれる演技を見せること。メダル獲得以上にそんなことを、高橋大輔のフリーに期待したい。(青嶋)

写真/ロイター(上)、NFS(下・高橋大輔選手の応援に駆けつけた母校・関西大学応援団)

*高橋大輔選手に関するこれまでの記事
トリノ五輪 種目別見どころガイド(2)男子シングル
祝! 高橋大輔スケートアメリカ優勝。長光歌子コーチインタビュー
男子シングル日本勢展望
高橋大輔予選6位通過
本田、高橋、日本男子シングルの今後
男子シングルショートプログラム 高橋大輔、孤軍奮闘高橋大輔、フリー直前!
男子フリー終了 フリー18位、総合15位 高橋大輔の試練
オフリンクのチームジャパン


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トリノ五輪 種目別見どころガイド(2)男子シングル

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 日本からは「セクシーな」演技をめざす高橋大輔(関西大学)が出場する。ショートプログラム、フリーとも「セクシーな」ステップが一番の魅力。ショートではタンゴのリズムに合わせて妖しい男くささを、フリー「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第二番」では、清しい色気を漂わせる。「出るからには金メダルをめざします」という高橋。今シーズンはたった1つのオリンピック日本代表を手にするためのプレッシャーのなかで過ごしてきた。しかしオリンピックでは、優勝候補筆頭ではないからこそ、力まず、彼がもともと持つ伸びやかなスケーティングと細かいステップでダンサブルに魅せてくれるかもしれない。

 優勝候補ナンバーワンは、02年ソルトレイクシティ五輪銀メダルのエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)。ソルトレイクシティ五輪男子シングル入賞者(8位以内)のうち、トリノ五輪にも出場するのはプルシェンコだけとなり、トップ選手も様変わりした。そんななかで、幼少時からのライバル、アレクセイ・ヤグディン(ロシア、ソルトレイクシティ五輪金メダル)が引退し、採点方式も大きく変化したものの、膝やそ頸部のけがを乗り越え、不動の強さを見せてきた。その集大成の演技を目に焼きつけたい。

OH1D4621s ショートプログラムから4回転ジャンプにトライすることが予想される有力選手は、ステファン・ランビエール(スイス)、エマニュエル・サンデュー(カナダ)、ブライアン・ジュベール(フランス)、チェンジャン・リー(中国)、イリア・クリムキン(ロシア)など。
 ただ、現世界チャンピオンのランビエールは2月に入って右膝を故障したこともあり、回復が心配されている。
また、これまではカンフーや「スターウォーズ」のマイムで楽しませてくれたリーのショートプログラムは、優雅な旋律が印象的なリストの「愛の夢」。今シーズン、日本ではまだテレビ放送されていないプログラムだが、チェンジャンが「愛の夢」とは……いったいどんな演技を見せてくれるのか、目を離せない。

 試合状況や体調次第ではフリーで4回転にトライするかもしれないが、跳ばなくても表彰台を狙える位置につけているのは、美しいスケーティングやスピンなどが武器のジェフリー・バトル(カナダ)、プログラムのいたるところ、美しいポジションで魅せるジョニー・ウィアー(アメリカ)、清潔ではつらつとした演技のエヴァン・ライサチェク(アメリカ)など北米勢だ。彼らは、プログラムのリズムや音に敏感で、外してしまうことが少ない。
 オンアイスだけでなく、キス&クライや表彰台での機転の利いた振る舞いを見るのもまた、楽しいひとときだ。

 男子シングルの競技日程は、ショートプログラムが14日19:00~(日本時間15日3:00~)、フリーが16日19:00~(日本時間17日3:00~)。(長谷川)

写真/森田正美(上・05年グランプリファイナルでの高橋大輔、下・05年グランプリファイナルエキシビションでのステファン・ランビエール)


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トリノ五輪開幕直前  『COLORS―フィギュアスケート男子シングルフォトブック』  本日発売!

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トリノ五輪開幕までいよいよあと一週間!
日本勢期待の女子シングルに大きな注目が集まりますが、「絶対に、見逃さないようにしてください! 面白さは、僕が保証しますから!」(田村岳斗さん)と、勝負の行方も選手たちの演技も女子以上に気になるのが、男子シングル。
日本期待の高橋大輔選手をはじめ、プルシェンコ、ランビエール、バトル、ウィアーなど8人のメダル候補をクローズアップした「COLORS―フィギュアスケート男子シングルフォトブック」が本日発売されます。

選手たちの演技中、オフリンクでの魅力的な写真はもちろん、プルシェンコ、ランビエール、ウィアー、高橋大輔、本田武史らのインタビューも収録。
田村岳斗コーチの語る「トリノ五輪プレビュー&男子シングルの魅力」、キャンデロロやヤグディンの戦いを振り返る「プレイバック 男子シングルオリンピック名勝負」、そして注目の選手を樋口豊氏が紹介する「樋口豊の部屋」など、コラム記事も充実。
そして五輪メダル候補だけでなく、神崎範之、梅谷英生から無良崇人、町田樹まで日本の男子選手17人、ダンビエ、ミン・チャンからポンセロ、ドブリン、ウスペンスキーまで世界の男子選手25人も紹介。総計50人の個性的なスケーターが登場します。

華麗なる男たちの舞にずっと注目してきたファンの皆さん、トリノオリンピックで彼らにつかまった新たなファンの皆さん。すべての男子シングルファンだけに送る一冊です。

本日全国書店にて一斉発売、各ネット書店、あおば出版ホームページでも購入できます。


COLORS―フィギュアスケート男子シングルフォトブック

インタビュー・ストーリー収録選手

氷の支配者 エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)
ピュアなアーティスト ジェフリー・バトル(カナダ)
さわやかなそよ風 ジョニー・ウィアー(アメリカ)
真のパフォーマー ステファン・ランビエール(スイス)
パワーと品格 ブライアン・ジュベール(フランス)
華麗なるエネルギー エヴァン・ライサチェック(アメリカ)
天性のエンタテイナー エマニュエル・サンデュー(カナダ)
氷上の情熱 高橋大輔
若き戦士 織田信成
よみがえる輝き 本田武史

2006年2月3日発売
定価1900円+税
B5判オールカラー112ページ


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いよいよNHK杯! 公式練習フォトレポート(1)織田、本田、高橋それぞれの思い

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織田信成の世界ジュニア優勝、高橋大輔のスケートアメリカ優勝、小塚崇彦のジュニアグランプリファイナル優勝。
この一年、大きな大会で表彰台の一番高いところに複数の選手が立っている日本男子。しかも10代の若い選手たちの活躍が目立つ日本の男子シングルは、今、世界一勢いがあるといっていいだろう。しかし、この充実のシーズン、トリノ五輪に出場できる選手はたった一名のみ。
女子シングルが長らく「国内で勝てば世界で勝てる」と言われてきたが、今はこの言葉がそっくりそのまま男子シングルにあてはまるかもしれない。
NHK杯では五輪代表候補3人、本田武史、高橋大輔、織田信成が10月のジャパンインターナショナルチャレンジ以来、2ヶ月ぶりに顔をあわせる。
女子以上に熾烈な生き残りレースが繰り広げられるこのNHK杯、3人それぞれに大きな思いが秘められている大会だ。

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織田信成にとっては初めてのNHK杯。国内で毎年開催される唯一の国際大会に対し、選手たちの憧れは強い。限られた選手しか出場が許されないこの大会に、シニア最初のシーズンにして参加が決まったことを、織田信成はインターネットで知ったという。「NHK杯なんてもう、あこがれ中のあこがれの試合ですよ! 選ばれたときはびっくりしました。インターネットのISUのページを見てたら、グランプリのエントリー表が出てて、おお、自分の名前、書いてあるわー、みたいな(笑)」(男子シングルオフィシャルファンブック『Cutting Edgeより』)しかも初出場となるNHK杯は、奇しくも織田信成の地元・大阪開催。のしかかる大きな大きなプレッシャーを、彼ははねのけることができるだろうか?

一方で本田武史は初出場の95年以降、これまでにNHK杯に9回出場、今年はちょうど10回目となり、伊藤みどりの9回(83~91年)を抜いて史上最多出場選手となる。織田信成にとって今大会が初めてのNHK杯ならば、今季限りの引退を表明している本田武史にとっては、これが最後のNHK杯。3度表彰台(98年2位、2001年優勝、2002年2位)に立ったこの大会への愛着は、どの選手よりも強いだろう。

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高橋大輔は昨年、NHK杯を客席で観戦した。「プレッシャーの少ない海外の大会で、まずは経験を積ませよう」という日本スケート連盟の方針から、初出場の2002年以来、NHK杯には縁がなかったのだ。最も注目の集まるこの大会、「人に見られるのが、好き。目立つことが大好き!」という彼が出たくないはずがない。昨年は「俺も出てー!」と客席で叫んでいた高橋大輔。トリノ五輪代表権がかかっている、そんな緊張感に負けることなく、まずは念願の舞台に立つ喜びを存分に味わって欲しい。

写真は上から高橋大輔、本田武史、織田信成。いずれも30日の公式練習より。

Photo by M.Morita


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祝・織田信成 スケートカナダ銅メダル! 日本男子フィギュアスケートオフィシャルファンブック「Cutting Edge」発売!

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スケートアメリカでの高橋大輔初優勝に続き、スケートカナダでも織田信成がグランプリシリーズ初参戦、初表彰台! ケガから復帰した本田武史も第4位!
たったひとつのトリノ五輪男子シングル出場枠をめぐる戦いも、いよいよヒートアップしてきました。
またジュニアのグランプリシリーズでは、柴田嶺がアンドラ大会で優勝、小塚崇彦が岡谷大会で優勝。ふたりがファイナル進出を決めました。

そんななか、日本を代表する男子シングルスケーターのフォト&インタビュー集「Cutting Edge」がダイエックス出版より発売されます。
登場する選手たちは総勢9名!

織田信成 
「目指すスケーターはいない。自分が誰かに目指されるスケーターになる!」
高橋大輔 
「人に見られるのが好き。氷の上に立ったら、他の人じゃなく、俺を見て欲しい」
南里康晴 
「うまいやつらがみんなが着ていたジャパンジャージ。最初は、あれが欲しかっただけ」
岸本一美
 「男らしいスケートだと言われること――それを誇りに思っている」
本田武史 
「どんなに苦しんでも、ケガをしても、スケートを嫌いになることはできなかった」
中庭健介
 「満場のお客さんの前でいい演技ができたときの快感。あの瞬間のために、スケートをしている」
柴田嶺  
「氷の上で自分をどれだけ表現できるか、それがフィギュアスケートの醍醐味だと思う」
小塚崇彦 
「怪我をした時に思った――自分はやっぱり、スケートやってないと何もないんだなあ」
小林宏一 
「もう僕にはスケートしか考えられない。遊んでいても、常にスケートのことが頭を離れないんです」

フィギュアスケートという悪夢と快楽にすべてを賭けた男たちの言葉にぜひ耳を傾けてみてください。
城田憲子日本スケート連盟強化部長インタビュー、村主章枝選手&恩田美栄選手からの応援メッセージも収録。
11月下旬、全国書店にて一斉発売。NHK杯会場でも販売予定です。

日本男子フィギュアスケートオフィシャルファンブック「Cutting Edge」
ダイエックス出版刊
B5判 96ページ
定価1800円 (税別)

*ついでに宣伝です。ライター青嶋とイラストレーターさのともこさんの本『大人の社会科見学』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)も発売になりました。フィギュアスケートとは何にも関係ないはずの本ですが、どさくさにまぎれてスケートのことも少しだけ書いています。スケートファンの方もぜひ読んでみてください


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祝! 高橋大輔スケートアメリカ優勝。長光歌子コーチインタビュー

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 高橋大輔がついにやってくれた。
 グランプリシリーズ初戦、スケートアメリカにて日本代表選手の先陣を切って登場した彼は、ショートプログラム1位、フリー1位の完全優勝。しかも昨シーズンの世界選手権メダリスト、エヴァン・ライサチェク(アメリカ)や04年ヨーロッパ選手権チャンピオン、ブライアン・ジュベール(フランス)、またソルトレイクシティ五輪銅メダリストのティモシー・ゲーブル(アメリカ)ら、強豪を抑えての優勝だ。
 グランプリシリーズでの優勝はおろか、表彰台も初体験という高橋大輔。昨シーズンの全日本選手権6位、世界選手権15位の彼に、いったい何が起きたのか?
 オフシーズンに聞いた長光歌子コーチの話から、読み解いてみたい。

――この時期(8月)の高橋選手のトレーニングの状況を教えてください。
長光 今は氷の上でのトレーニングももちろんですが、陸の上でのトレーニングで基礎体力をつけること。まずそこに重点を置いてやっています。比率で言うと、去年はオンアイス80%オフアイス20%くらいでしたが、今年はそれが50%50%、いやそれ以上に陸の上でのトレーニングを重視していますね。

――まずは体力!
長光 そうですね。やはりニュージャッジングシステムが始まったことで、どのエレメンツもレベルを上げていかなくちゃいけない。特にスピンなどはより難しいポジションを取らなきゃ点がもらえないということで、体も柔らかくしたい。そのあたりを考えても、やっぱりいちばんに彼の体力の器を大きくしなてはと思っています。それを今年の夏、9月の真ん中あたりまでの目標にしています。

――じっくりと焦らず、時間をかけての取り組みですね。トレーニングはアメリカでも積んでいるとか。
長光 はい、振付師のニコライ・モロゾフのところで。彼はアイスダンサーでしたが、かつてはシングルの練習もかなりやっていたようで、コーチングのセンスもある。いいアドバイスをもらっているようです。

――プログラムもショート(タンゴfromムーラン・ルージュ)、フリー(ラフマニノフピアノ協奏曲第2番)ともともにモロゾフさんの振付。高橋大輔×モロゾフの組み合わせは、意外にも初めてなんですね。
長光 そう、今期のプログラムは、大輔本人がとても気に入っているんです。野辺山サマーフェスティバルでは靴の調整でごたごたしてあまり調子がよくなく、お見せできませんでしたが……。でも彼自身が気に入って練習できているのがいちばんですよね。

――日本での練習の拠点は大阪。生活は地元・岡山を離れ、大阪の長光先生のお宅に下宿中ですね。
長光 コーチと家でもリンクでもいっしょというのは、彼もかわいそうだけれど……。初めはやっぱり、一人暮らしがしたかったみたいですよ(笑)。でもこのオリンピックイヤー終わるまでは、ひとり住まいなんてとてもできないし、経済的にも楽になりますから、うちにいるべきじゃないかってことになりました。海外での合宿にも今年はずーっと私がついて行ってますが、来シーズンからは少し突き放そうかな、と思っているところです。顔つなぎに私も初めは行くけれど、すぐ日本に帰ってきてしまおうと。あとは自分ひとりで、自力で海外での生活も、トレーニングもできるようになりなさい、と言ってるんです。やっぱりそろそろね、自分自身でいろいろなことをこなす経験もして。またそれが、競技の上での強さに繋がって行くと思いますから。

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――氷の上ではとても素敵な高橋選手。素顔はどんな選手でしょうか?
長光 ふだんはまあ、ねえ(笑)。なんだか私も、いつもそばにいすぎて外からどう見えているのかわからなくなっていますが、でも、面白い子ですよね。基本的には素直でとても優しい男の子。でもその優しさが、競技者として大きな試合に出ていく場合に、弱さにつながった部分もあったかもしれません。でも最近は、調子の悪いときには遠慮しないで、よくこっちにあたってくれるようになりました。それもまあ、いちばんそばにいるものの務めかな(笑)。

――そういった普段の彼の魅力もふまえて、これから先、どんな高橋大輔をみせていきたいと思われますか?
長光 やはり彼自身しか出せない味のあるスケート。男の色気というのかな、そんなものを見せたいですよね。最近はちょっとなよっとした感じの、ユニセックスな雰囲気のスケーターが男子にはけっこう多いでしょう? 彼らとはまた違った魅力を、大輔は出せるんじゃないかな。男らしい、男としての色気を感じさせてくれる、そんなスケーターになって欲しいと思います。その人だけの持ち味、独特のカラーを持つことは、世界で戦えるひとつの大切な要素だと思いますから。

 ジャンプさえ安定すれば、誰よりも輝くスケーターだと、ずっと言われてきた高橋大輔。
 今期はオフシーズンの練習がしっかり積めたこと、とても気に入ったプログラムを滑れていること。そんな精神面の充実が、今まで無かった自信を彼に与えてくれたのだろう。

 ところで彼は、優勝したスケートアメリカの演技に、満足しているだろうか? 
 フリーでは転倒などの目だったジャンプミスは無く、構成点(PCS)も、ひとりオール7点台という高い点数を獲得できた。しかし世界大会の表彰台を目指すのに必要なトリプルアクセルや4回転は、この試合、まだクリーンには入っていないようだ(訂正:トリプルアクセルはコンビネーションで成功)。
「僕、理想は高いんです。これまでの演技で満足のいったものって、数えるほどしかない」
 かつて、そう語っていた彼。このスケートアメリカの優勝にも、きっと心からは満足していないのではないだろうか。
 初日のショートプログラム1位も、トリプルアクセルでの転倒があっての1位。たぶんその悔しさが、彼の緊張の糸をとぎらせず、フリーの1位につながったはずだ。
 11月のNHK杯、そして12月のグランプリファイナル、全日本、そしてさらにその先へ。まだまだ満足をする機会はいくらでもある。今回のアメリカでの演技が、次の満足、本当の満足につながるものであればいいな、と思う。

この試合の模様は10/28 20:10~21:00 NHKBS1にて放送される。

Photo by K.Asakura 
*写真は10月1日ジャンパンインターナショナルチャレンジでの演技
*「頂点目指す」――8月、長野県野辺山での日本代表合宿にて、今シーズンの決意を語ってくれた

*高橋大輔選手へのインタビューは、11月下旬発売の「日本男子フィギュアスケートオフィシャルブック Cutting Edge」(ダイエックス出版刊)に掲載予定です

*高橋大輔選手に関するこれまでの記事
2005世界選手権特集
男子シングル日本勢展望
高橋大輔予選6位通過
本田、高橋、日本男子シングルの今後
男子シングルショートプログラム 高橋大輔、孤軍奮闘高橋大輔、フリー直前!
男子フリー終了 フリー18位、総合15位 高橋大輔の試練
オフリンクのチームジャパン


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世界選手権閉幕 クロージングバンケットの選手たち

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 エキシビション終了後、メジズナローズナヤホテルで開催されたバンケットにて。
 ドレスアップした安藤美姫選手と荒川静香選手。安藤選手はカメラマンのデジカメをのぞみこみ、撮れた写真をしっかりチェック。「あーん、美姫ふけてる……」。それは「大人っぽくなった」って言うんだよ!
 荒川選手は急遽サンクトペテルブルクで開催されるアイスショーへの出演が決まり、この日バンケットを中座して電車でサンクトへ移動! お疲れさま。

fumidai 日本チームでただひとりエキシビションに出演した村主章枝選手。バンケットでも晴れやかな笑顔。
 美しいレディたちにかこまれてもにやけたりしてません、高橋大輔選手。
 
Photo by K.Asakura


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オフリンクのチームジャパン

fumieoffショートプログラム終了後、ドローでの村主章枝選手。最終グループ入りは逃してしまったが淡々とした表情。

shizukaoff 投げ込まれたオレンジ色のクマさんを抱いて、ロシア人ファンと記念撮影に応じる荒川静香選手。サインを求めるたくさんのファンにも気さくに応えていた。

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 ホテルに向かうバスの時間に間に合わない、と急ぐ安藤美姫選手。たくさんサインを求められたけれど「イズビニーチェ(ごめんなさい)」とロシア語で対応しつつ外へ。

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 フリーから一夜明け、リラックスした表情の高橋大輔選手。日本から駆けつけたファンの元へ遊びにきたついでに、チームメイト応援のための日の丸を借りていた。

Photo by K.Asakura


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男子フリー終了 フリー18位、総合15位 高橋大輔の試練

takahashi01 高橋大輔の世界選手権が終わった。予選とショートプログラムで決めた4回転ジャンプ失敗、トリプルアクセルこそコンビネーションと単独で2度入ったものの、後半のループ、ルッツ、フリップなどことごとく回転不足や転倒。「悪い時の大輔」がもろに出てしまった演技だった。
「緊張しました。調子は悪くなかったのに、気持ちだけが焦っちゃいましたね……」
 それでも美しいスケーティング、スケート連盟関係者も「世界一」と絶賛するステップワーク、そして日本人離れしたドラマチックな感情表現は健在。彼のスケートを、大観衆とともに生でこの場で見ていられることの幸福を感じてしまう。どうしてあんなふうににきれいに手が動くんだろう? どうしてあんなに激しい視線を放てるんだろう? スローパートで美しいポーズをとって静止した瞬間には、時間がそこで止まってしまうかとさえ思った。
 夏の野辺山合宿で、ダンスの陸上練習をのりのりでこなしていた彼のことを思い出した。女子で世界トップの荒川静香や安藤美姫が照れながらこなす動作も、彼はほんとうに見せる気満々で踊っていた。アスリートである前に天性の表現者としての資質を備えた人なのだ。
 ジャンプはたくさん失敗したけれど、見せ場のストレートラインステップでは、ロシアの観客が彼を後押しするように手拍子を送った。彼もそのリズムに応えるように鮮やかに舞った。
 4回転もトリプルアクセルも跳べる、踊りやスケーティング技術も十分ある。ほんとうにあとは、気持ちだけの人なのだ。

 滑り終えた高橋大輔に観衆はあたたかな拍手を送ったけれど、それは本来彼が得るべき熱狂の拍手ではなかった。そして彼が受け取るはずだった大喝采は、彼がおじぎをしてリンクサイドに退場しようとしたときに起こった。
 高橋大輔にではない、次に滑る地元ロシア人選手、アンドレイ・グリアゼフを迎える拍手だ。リンクをあとにしながら、高橋大輔は少しだけ喝采を送られた主のほうを振り返った。もう、このリンクは彼の居場所ではないのだ。
 グリアゼフへの大喝采のなか、リンクのビッグビジョンには高橋の転倒シーンが映し出された。キスアンドクライで得点を待つ間も、大音響のロシアコールは鳴り止まない。
 そこにいるのは辛いだろう。苦しいだろう。もう満場の観衆は、一瞬にして大輔のことなど忘れてしまったのだ。
 彼の不本意な得点が出た瞬間、また割れんばかりの大歓声が起こった。リンクの上で、ウォームアップ中のグリアゼフが、美しい四回転を決めたのだ。

*フリー終了後の共同インタビュー

――残念な演技でしたが、昨日つった脚の影響はありましたか?
「いえ、途中から思うように足が動かせなくなったけれど、ケガは関係ないです」

――やはり緊張しましたか?
「かなり緊張しました。予選とショートはまだ次の試合もある、と思ってらうまくいったけど、今日これで最後、ちゃんとしなきゃと思ってしまった。
 最初の4回転失敗で『予選とショートで2回入ったのに、なんでフリーで!』って結構あせっちゃって。あれはタイミングを焦って跳べなかったんです。次のトリプルアクセルは入ったけれど3回転-3回転は入ってない。どうしよう? いつ入れよう? ってあちことで頭を使いすぎちゃった。ステップでもちょっとつまづいて、『あ、やばいな』と思ったし、それから急に脚が動かなくなって……。もっと落ち着けばよかったです」

――本田選手棄権でひとりで戦ったことは?
「ひとりは結構辛いです。自分が悪くてももうひとりががんばってくれると、気持ち余裕ができるんだけれど……。でも自分しかいない、自分がやらなきゃっていう状況は辛いです。いつでも本当は自分だけが便りってことは、どんな試合でもいっしょのはずなんですけどね。
 来年の出場枠のことも考えないようにしてたけど……。もう自分ひとりだし、今の順位(ショートプログラム7位)を守ろうと思って、硬くなりすぎたかな。プルシェンコが棄権という話を聞いた時にも、『これでいっこあがる!』とか自分の順位のことばっかり思っちゃった……」

――いまどんな心境ですか?
「落ち込んでいます……。自分なりにがんばってきて調子も上げてこれたけど、最後の最後にいい演技ができなくて……。せっかく予選とショートが良くても、最後が締まらないとダメですね。3本持たせられなかったのが悔しいです」

――今回の失敗を来年にどういかしますか?
「テンションのあげ方をきちんと身に付けたいです。今日は朝から寝坊したり、いろんな準備も少しずつ遅れ気味だったりで、コンディションが整ってなかった。アップの時も周りが気になってしまったし……。前に滑ってる選手の音楽が聞こえたり人の行動が目に入ったりして集中できなかったんです。あせってそわそわしてたけど、自分には『緊張してない、してない』って言い聞かせたりもして……。先生に「焦らないで」って言われたから、まわりにも伝わっちゃってたんでしょうね。こういう時の気持ちの持ち方をもっと考えたいです。
 あとはシーズン最初からやるべきことをきちんとやって、最後のほうはもうちょっと気持ちを楽に持てるように。今年みたいに、やっと1月にシーズンが始まったね、っていうんじゃなくて、10月くらいにはもうできあがってるようにしたいです」

――これから何か新たに取り組んでいきたいことはありますか?
「体をやわらかくしたいです。柔軟性が身につけば踊りももっと踊れるし、今よりもっと楽に踊れるから。僕はストレッチをちゃんとしていないので、ほんとに体が硬いんです。このままだとスピンのレベルも上がらないし、肩が硬いとスケーティングも辛い。やわらかくなればもっと手も上に上がるし、もっと体も大きく見えるのに。僕は三日坊主でいろんなことが続かないけど、柔軟だけはこれから続けていきたいです。
 今はちょっとだけ休んで、全部忘れて。仕切りなおしですね。地道に練習して……オリンピック行けるようにがんばりたいです」

Photo by M.Morita


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高橋大輔、フリー直前!

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 ショートプログラム後に一日間があり、昨日は女子の予選を観戦するなどリラックスした表情を見せた高橋大輔選手。トップスケーターとしてすっかり認知されたようで、スタンドで女子選手に声援を送る合間に、ロシアの女の子からサインをせがまれることも。

 会場で高橋大輔の試合を固唾を飲んで見守っていた元男子シングル選手に、彼に対するコメントをもらった。

――高橋選手、世界選手権はなかなかいい調子できていますが、グランプリシリーズや全日本では信じられないミスの連発でした。こうした好不調の波の激しさには何か原因があるんでしょうか?
「フィギュアスケートの選手は年間を通して10ぐらいの試合に出ますが、全部に全力投球はできません。重要な大会はどれか、照準を合わせその試合に向けて目標を立てる、といった取り組み方をします。彼の場合は3月の世界選手権にしっかり合わせて練習してきたため、いい演技ができたんでしょう。
 でもこのレベルの選手だと10のうち、7~8試合は満足の行く滑りができないとおかしい。確かに彼の場合は波が激しすぎますね(笑)。ただ彼は、新採点にあわせてすごく難しい内容のプログラムを滑っているし、今は試合の数もかつてに比べると増えている。その点で選手にとっては身体的にも精神的にも負担が大きくて、いい演技を見せることが難しい時代なのかもしれません。これは高橋選手だけに限ったことではないのですが」

――ではその状況のなかで、世界選手権という大切な試合で力を発揮できているということは……。
「今回のようにどうしても勝たなきゃいけない試合に勝てるのは偉い! と思います。やはりほんとに実力のある選手ということですね」

――ショートプログラム7位ということでフリーに臨みますが、さらに上を狙っていくには何が彼に必要になるでしょうか?
「やっぱり演技全体がもっと大きくならないと! まだ少し気持ちがおどおどしている、自信がない、という部分が演技に出てしまっています。もっと『俺がリンクを支配する!』という気持ちが必要。それを得るためには、まず来シーズン、日本のチャンピオンにならないとね」

Photo by M.Morita


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安藤美姫、「火の鳥2005」で予選2位通過

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 落ち着いた、だが鮮烈なワインレッドに、ところどころあしらわれた緑。袖口は細かに裂かれ、火の鳥の燃えさかる羽を思わせる。去年より少しゴージャスな衣装に身を包み、予選Bグループ15番目の滑走者、安藤美姫は現れた。
「美姫がんばー!」客席から声を掛けたのは高橋大輔。6分練習が始まり、彼女がジャンプを成功させると「うめえ!」とひとこと。これから何年も先まで、それぞれレベルの高い別の場所で戦っていくだろうふたりが、惜しみない声援を送り合う。

 名前がコールされ滑り出す前の安藤美姫は、少しナーバスに見えた。いつも必ずしているリンクサイドでの屈伸が、今日はとりわけ深く、長い。足を曲げてしゃがみこんだ姿勢のまま、なかなか立ち上がろうとしない。そんな彼女の右手を、佐藤久美子コーチがそっと握った。
 滑り出しは快調。3回転-3回転-2回転も入れられるコンビネーションジャンプが3ルッツ-2トウループでとまり、固唾を飲んで待った4回転サルコウは最初から3回転を跳んだが、手堅い構成のジャンプはほぼノーミス。最後のアクセルを決めると日本チームの関係者からは「良し!」という声が上がった。ただ、3フリップー2トウループでぐらつくなど、安藤美姫本来の、勢いのあるジャンプではなかったかもしれない。
 新しい衣装は、動くと袖が揺れてとてもきれい。彼女が手をふりかざすたび、赤い袖が空気の流れに彩を与えているようにも見える。衣装も力を貸したのかもしれないが、中盤のスローパートが特に繊細さにあふれ、スピンも速くはないが形の美しさで拍手をもらった。
 ただ最後のステップは、始まりこそ勢いがあって良かったが、後半は疲れを見せてしまったのが残念。話題になっていたシャルロットスパイラルからのトウループジャンプも、成功はしたが、調子が良ければもっと見栄えのする技のはずだ。
 とはいえ全体的に激しいだけではなく、とてもエレガントな火の鳥を見せてくれた。彼女の目指した「大人の火の鳥」までいけたかどうかはわからないが、17歳という成長中の女性のエレガントさがそのまま滑りに現れている。
「彼女はまだ若い。伸び代はいくらでもありますから、フリーまでの後二日で、まだまだ成長しますよ」とは強化部長城田憲子氏の言葉。
 キス&クライに落ち着いた彼女は、いつものあどけないファニーフェイスで手を振った。客席に知っている人の顔を見つけて喜んだり、はにかんだり、表情は普通の17歳。雑誌のグラビアなどを飾る彼女は「大人っぽい」と良く言われるが、こんな表情を見せる高校生に、世間の人々は何か違う虚像を重ね合わせようとはしていないだろうか?
 自分のできる演技、等身大の「火の鳥2005」を演じた安藤美姫。明後日、フリーでの「等身大」がどこまで大きくなっているか、楽しみだ。

予選終了後の共同インタビューより

――予選を滑ってみてどうですか?
安藤 終ってうれしいです。できは、まあまあ(笑)。足(左足首)の状態も思わしくなくて、プログラム通しての練習ができてなくて不安でした。100%じゃなかった。実際滑ってみたら動きがかたくて、ジャンプも切れが良くなくて。ジャンプも3回転-3回転のところ、朝の演習でしっかり軸がとれていないと思ったので、後ろをダブルにしました。

――気持ちの上ではどうでしたか?
安藤 世界選手権も2回目ってことで、もうただ出られてうれしいだけじゃなくて・・・・・・気もちが少しシニアになったのかな? でもロシアのお客さんからもたくさん拍手がもらえて、楽しんで滑れたのが良かったです。(ここで緊張がほどけたためかちょっと涙ぐみ、スケート連盟関係者から囃し立てられる)

――「火の鳥」で滑ったことはどうでしたか?
安藤 気持ち良く滑れました。それが前のプログラムとの違い。鳥だし、勝手に飛んでってくれる気がしてすごくやりやすいんです。

――改めて「火の鳥」を踊るにあたって研究したことは?
安藤 バレエのビデオを見たり、バレエの先生にいろいろ聞いたり。その先生は今もイギリスのロイヤルバレエで勉強してる人で、自分もまだ学んでるっていう意識があるから、先生っぽくない人で気が合うんです。そんな先生に見てもらったりしていいプログラムになりました。

――試合会場の雰囲気はどうですか?
安藤 ロシアはすごく好きな国だし、お客さんの雰囲気も良くてやりやすいです。バレエがすごく盛んな国なので、「火の鳥」はロシアの人々も受け入れてくれるんじゃないかな。
城田 エレメンツのレベル、上がってたわよ! 
安藤 ほんとうですか! もうそれで満足です!
城田 今までほとんどレベル1だったのに、スピンもステップもレベル2になってる。キャメルスピンだけまだ1だけど。
安藤 それでいいです。うれしい! やった!(両手を軽く万歳)。でも自分ではバージョンアップしてるかどうかってわからないんですよ。
城田 でも今日はスピードはなかったね。もうちょっと練習しようよ。あとは「4」だね。
安藤 え、レベル4にするの?
城田 違うわよ、4回転!(一同爆笑)。でもあなたは、レベル4にしようと思うくらいがんばればちょうどいいんじゃない?

――予選で四回転を、という気持ちは頭になかったですか?
安藤 今日はスピンやステップをレベル2にしたかったので、4回転じゃなくてそっちに集中してがんばりました。レベル2になってすごくうれしいです。もうこれでいいです、満足です。
城田 そんなこと言わないでレベル3にしようよ。
安藤 そんなの疲れて死んじゃいます! 美姫はスピンとかステップとか苦手でスパイラルも体が硬いから苦手で。ジャンプよりそっちのほうが体力使うんですよ。だからしーちゃん(荒川静香選手)とかスルツカヤはすごいと思います。

――新しい衣装、素敵でしたね。
安藤 はい!(うれしそう) 気に入ってます。これは自分で形とか雰囲気を考えて、デザイナーの方に意見を言って作ってもらいました。色もお母さんと一緒に決めて。

――袖のひらひらがきれいでしたよ
安藤 ここ! 美姫が考えたんです! あと色は少し緑色が入ってるんですけど、緑は私を引き立ててくれる色って言われていてとても好きな色。それを入れてくれたデザイナーさんとはとても気が合って、いい衣装になったと思います。でも衣装だけ大人っぽくなっちゃった!
城田 ショートも新しい衣装だよね。すごくかーわいいの。
安藤 ショートも新しい気もちで。シーズン最後の試合、せっかく世界選手権に出られたんだから、情熱的に! 滑りたいです。

 この日は日本の報道陣だけでなく、地元ロシアのテレビ局やアメリカのメディアなどもミックスゾーンにてインタビュー。英語での受け答えはまだできないが、「けがはどこ?」と聞かれ、テーピングした左足首をとんとんと叩いてみせた姿がかわいらしかった。

Photo by M.Morita


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男子シングルショートプログラム 高橋大輔、孤軍奮闘

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 まさか大輔まで!?
 一瞬、みなが凍りついた。ショートプログラムをほぼノーミスで滑り終え、「やった!」と思った直後、高橋大輔は痛そうに脚を抑え、リンクの上にうずくまりかけたのだ。ひとりでリンクサイドに戻ってはきたものの、脚はかばうようにひきずりながら。キスアンドクライでも氷で脚を冷やす姿が大きくビジョンに映された。
 演技は素晴らしかった。慎重に行くならば3回転-3回転にすることもできるコンビネーションを、きっちり4回転-3回転で決め、トリプルアクセルも成功! 見せ場のステップも感情がはじけんばかりの迫力で、会場は拍手の嵐。最後の変形スピンも美しく決めた。
 実は滑走前の会場の雰囲気は、決して彼に味方をしてはいなかった。予選とは比べ物にならない観客の数。前に滑っていたのはロシアでも大人気のジョニー・ウィアー。高橋が滑り出す直前まで、金切り声のようなジョニーコールが響き渡っていたのだ。日本の応援団からの「がんばってー!」という必死の声援も、それに比べたらなんともか弱い。
 そんな会場も、彼が滑り出し、中盤のステップにさしかかったころには、がぜん高橋応援モードに切り替わり始めた。ステップの最後で少しつまづいたのは残念。しかし「つまづいたのもステップのうちだよ!」と記者たちが言うように、全体の演技の雰囲気を壊すほどのものではなかった。
 ロシアの女性たちからは滑走前には影も形もなかった「ターカハシ!」コールがわきあがる。きっと彼女たちは、生まれて初めて「タカハシ」という名前を口にしたに違いない。そうさせるほど、高橋大輔は観客の心をつかんだ。
 ロシアのスケートファンは、高橋大輔を知った。フリーの滑走前には今日とはまるきり違う雰囲気が生まれているのではないだろうか。

 ミックスゾーンに集まった記者たちも興奮気味だった。「すごいな! 男だね」「4回転ー3回転、ほんとに入れたんだ!」「ひょっとしてこれは、フリー最終グループ入りもある?」「いや、最終より一つ前のグループで滑ったほうがプレッシャーはかからないよ」などと盛り上がる盛り上がる。
 しかし心配なのは痛そうに抑えていた脚。「脚はつっただけみたいですよ」そんな情報がスケート連盟関係者からはもたらされ、とりあえず安堵の雰囲気にはなった。ケアをしているのか、なかなかミックスゾーンに姿を見せない。しかし心配もつかの間、こちらがほっとするくらい晴れやかな顔で現れた彼の話を聞いてみよう。

――脚がつっていたそうですが、大丈夫ですか?
高橋 はい。テーピングで固めてた部分が最初の6分練習の前につりそうになっちゃって。でも「つりきる」までは行ってなかったので、先生には言わないで、とりあえず最後までもたそうと思って滑りました。もう日本人は僕ひとりだし、ここで滑るのやめちゃうっていうのは、世界選手権に来られなかったほかの選手に対しても・・・・・・。それに来年の枠のこともあるし、自分のために、と思って。

――じゃあ気持ちで乗り切ることができた?
高橋 でも最後までずっと「つりそう」状態が続いてて、なんだか嫌な感触。ジャンプもダメかも? と思った。でもとりあえず全部降りたんで良かったです。ステップはバランス崩したけど、こけなかったのは良かった。スピンも思ったより良くできて。

――ジャンプはその状態で4回転に挑んだんですね?
高橋 とにかく経験をつみたかったんで、失敗してもいーや! と思って跳びました。3-3にする考えはまったくなかったです。変に慎重になって逃げちゃうと、逆に失敗することもあるし。朝の練習でも、今日はいけるな、と思った。調子は上がってきてたので失敗する気はまったくなかったですし。絶対成功する、って自信過剰くらいになってた。そうしたら脚がこうなっちゃったんですけど(笑)。調子がいい、体のキレがいいとつりそうになることが多い。つったのも調子が良かった証拠ですね。

――最後のステップもその状態のまま?
高橋 ストレートラインステップの前、リンク際に来た時、先生たちもそばに来たんで「脚つったんだけど―!」って叫びました(笑)。そしたらなんか言われたけどよく聞こえなかった。
城田強化部長 「最後までやるのよー! 」って言ったのよ。私と長光先生で、まったく同じこと言っちゃった。明日は一日休みがあるから、ショートだけとにかく滑りきれば、ドクターに何とかしてもらえると思った。でも今日はほんとに偉かったわよ。あれだけのメンバーの中で滑ること自体大変なのに。

――そんなふうに演技中にリンクの外の人と会話が成立するってよくあるんですか?
高橋 ないです(笑)。いつも向こうがなにか言ってることはあるけれど。

――演技は満足ですか?
高橋 去年のショートよりは内容的に良かったです。でも、ちょっと悔しい。脚がつってなかったらステップももっと見せられたかも! ベストコンディションで滑りたかったのに、なかなか完璧にやらせてもらえないもんですね。ストレートラインはまあまあだけど、中盤のサーキュラーはまだ踊りきれてない!

 大勢の報道陣を前に、実に堂々とした受け答えの高橋大輔。昨日の「テレビカメラがあると緊張する」と笑っていた彼とは、また別の青年がそこにいた。

Photo by K.Asakura


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本田、高橋、日本男子シングルの今後

DSC_0037 明暗が別れる形になった男子シングル日本代表のふたり。
 来年のオリンピックがもし1枠になったら? 本田武史3度目のオリンピックはあるのか? これからの躍進が期待される日本男子シングルには厳しいスタートとなったプレシーズンの世界選手権。本田選手の不調には新採点システムの影響があるのでは、という声がスケート連盟関係者からは上がっている。
「非常にシビアな採点システム。ジャンプは跳ばなければ点数がもらえない、というこのシステムは、本田のような選手には非常に不利です。つまり、4回転という大技は持っているけれど、本番でうまくいくかどうかはいちかばちか、というタイプの選手には」
 では有利になるのはどんな選手か。たとえばジュニアの世界選手権を制した織田信成は、流れのあるスケーティング、という強みはあるが、それ以上にジャンプが確実なのだ。4回転はもたないものの、トリプルアクセルまでは試合でほぼ確実に決められる。加えてスピン、ステップなど新採点で要求されるレベルの高いものをきっちりプログラムに入れ、点数をもらうことができている。
「本田には4回転がそこまで確実ではないという弱みがある。また、『本田武史なのだからセカンドマークはもらえるだろう』という意識が残っている。でも今の採点システムは違う。彼の頭の中ではまだ6点満点法が残っているんです」
 だがかつて銅メダルまで獲得した選手が新採点法を前に足踏みしている中、日本の次世代は着実に違う意識の元、育ち始めている。前述の織田、先日紹介した南里、岸本、小塚……。
「彼らは本田と違って激しい競争の世代を勝ち抜いてきています。今の女子シングルと同じです。海外に出る前に国内の選手に勝たなければならない、という過酷な状況で、いい選手が育たないわけはありません。加えて彼らには、人に勝つ前に自分自身に勝たなければ、という意識もある」
 その世代の筆頭に、いま位置しているのが高橋大輔だ。
「しかし高橋は、確実性が乏しい、いちかばちか、という点では本田と同じです。代表二人がふたりともこれではきつい。ひとりは大技はなくとも確実にジャンプが跳べる、新採点に対応した選手を代表に選びたいところです。メダルまで行く可能性はなくとも安定していい位置につけられる選手、うまくいけばメダルも取れそうだけれど失敗も考えられる選手。この2タイプの組み合わせが理想的です」
 若手が育つ中、新採点への対応が遅れた本田武史にもう、活躍のチャンスはないのか? このまま若手の台頭を許し、競技生活に幕を引くのか?
 それを決めるのは他の誰でもない彼自身だ。約10年間、フィギュアスケートをがんばる日本のすべての男の子の目標だったはずだ。彼がこのまま終るとは思いたくない。本田武史の今シーズンは終ったが、まだ彼には来シーズン、オリンピックシーズンが残されている。
 もう「日本のために」「枠を取るために」などと考える必要はない。来シーズン、きっと力を付けた若手達が自分の力で自分の立つ舞台をもぎ取っていくだろう。
「あなた自身のために滑りなさい」
 予選滑走直前、滑ることを決めた彼に城田強化部長が言ったというこの言葉が、来シーズンの彼にはそのまま贈られるだろう。
 オリンピックシーズン、「このリンクに立てて幸せでしょうがない」
 そんな言葉をもう一度言って欲しい。それがどのリンクであっても。

Photo by M,Morita (今期、四大陸選手権でシニアデビューした岸本一美選手)


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高橋大輔予選6位通過

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 本田武史選手の棄権から約20分後。予選B組第二グループの6分間練習に姿をあらわした高橋大輔。すでに本田選手の棄権は耳に入っているはずだが、クリーンな4回転を何度か見せるなど、調子はよさそうに見える。滑りも相変わらず美しく、「あれ、いきなりきれいなスケートの選手が出て来たな」と思ったら高橋選手だった、というくらい。
 しかし本田選手が棄権してしまった分、見ているこちらの緊張は倍増だ。リンクサイドには城田強化部長と長光歌子コーチがさらに緊張した面持ちで立つ。そんな時響いたのが、
「大ちゃんがんばれー」
 聞き覚えのある声。緊張していた日本の関係者が思わずニコリとしてしまったその声を、高橋本人は聞いただろうか。声の主の姿は見えなかったが、ここにいる日本人なら誰もがわかる。女子シングル代表、安藤美姫の声援だ。女子の練習が夕方となるこの日、彼女は母親ととともにクレムリンに観光に出掛ける予定と聞いていたが、チームメイトの応援にしっかり駆けつけていたのだ。
 高橋大輔は力強いチアガールを背中にしょって「アランフェス協奏曲」を滑り出した。
 最初の4回転トウループ、OK! トリプルアクセルからのコンビネーションも成功。少し大事に滑ってるようにも見えたが、ステップや滑りはさすが。何より「えらい!」と思ったのは、一つサルコウジャンプを大きく崩し、「これは……」と周囲が凍り付いた後も、気もちを立て直しすぐに次のコンビネーションジャンプ(3ルッツ2トウ)を決めたことだ。今まではひとつのジャンプで失敗したことをきっかけに、気持ちの糸を切らし、その後のプログラムをすべて崩してしまうことが多かった。大丈夫、今日の大輔は強い! 思わず拳を握り締めたくなるコンビネーションだった。
 さらにさすが高橋大輔、と思ったのは、フリー滑走中、私たちの目を一度も自分からそらさせなかったこと。この会場には大きなビジョンがリンクの上に4つ、とても見やすい位置に設置されている。だから自分の体だけに観客の視線を吸い寄せることの出来ない選手の演技のときは、ついついビッグビジョンに目を遣ってしまいがちなのだ。
 ファンの声援も大きかった。日本のファンだけでなく、わざわざ予選から見に来る熱心な地元ロシアのファン、海外からのファンなどからも大きな拍手と歓声。
 滑り終えたあとには今まで聞かなかった応援ラッパの音が響く(このラッパが次に鳴ったのはプルシェンコ登場の時だった)。客席から彼のためだけに吹かれたラッパ、彼の時だけされた拍手。記者席のすぐ下、選手たちの観戦席ではハイスコアを要求する手拍子まで始まった。結果はまずまずの6位。本人は「とりあえずやれた!」という表情。リンクの外では長光コーチが目を潤ませ、城田強化部長は笑顔。 
 直後にミックスゾーンで語られた彼自身の声を聞いてみよう。

「細かなミスは思ったより多く出てしまったんですけど……自分にとってはもっと上の演技ができたはずかな? でも結構緊張していたので、今はその解放感でうれしいです」
――緊張しましたか?
「昨日まではそうでもなかったです。ほんとにこれから世界選手権なのかな、って感じで。でも今日になったら凄く緊張してた。そんななかでも調子は良くなってたし、落ち着いていたので、これはいけるかな? と思って」
――本田選手棄権については知っていましたか?
「外国の人が『タケシが滑らない』って言ってるのは聞こえて……。何かあったのかな? と思った。でもとりあえず気にしないように集中して。自分のことでいっぱいいっぱいだったし」
――4回転、きれいに入りましたね。
「朝の練習では全然だめだったので……。ずっと4回転は調子が悪くて、不安で不安で。でもとりあえず降りられて(着氷できて)よかったです。今シーズン一番4回転を練習してきたので、それが自信になったんだと思います。今日はさらに、たとえ練習で跳べてなくてもいけるんだ、というのがわかった」
――ステップも決めましたね
「ほんとはジャンプのことしか考えてなかったんですけど……(笑)。ステップの前にお客さんから「がんばれー」って言われたのが聞こえたのでがんばりました。でも最後のステップでは鼻水どろーんと出てきちゃって(笑)。恥ずかしかったです。こうやって吹いたんですけど」
――わからなかったですよ(笑)。日本以外のお客さんの乗りも良かったですね。
「はい! それはびっくりしました。いい気もちで滑れました!」
――明日のショートに向けてはどうですか?
「あんまり欲を出さずに、練習してきたことを出せたらいいと思います。この調子でいきたいです」
――本田選手は棄権で、明日から日本選手は高橋さん一人ですが。
「けっこうプレッシャーですよね。ひとりで2枠取るってちょっときついんで。(本田選手がアクシデントによる棄権とみなされた場合、高橋選手10位以内で2枠獲得。本田選手が予選落ちとみなされた場合、高橋選手8位以内で2枠獲得→その後前者と判明)。自分一人で何枠とれるかは結果として……それとは別に自分のやってきたことを演技に出したいです。

「だめだあ、カメラがまわってると緊張してうまくしゃべれない」とおどけてみせることもあった高橋選手。全日本選手権では決してみられなかった笑顔がさわやかだった。

Photo by M.morita 後ろでは城田強化部長と長光コーチが見守る(本田武史選手も)


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男子シングル日本勢展望 

takeshim●男子シングル日本勢展望 日本スケート連盟城田憲子強化部長インタビューから

 女子シングルに話題と期待が集まりがちな今大会。
 しかしぜひ注目して欲しいのが、男子シングル日本代表、ふたりの滑りである。
「男子は本田武史、高橋大輔ともかなり調子を上げてきていますよ」と城田氏。
 本田武史はご存知の通り、中学時代から世界選手権に出場し、02、03年には銅メダルも獲得した日本のエース。しかし昨シーズンはケガのため、世界選手権代表メンバーからはずれていた。ケガから復帰した今シーズンも、過去制したことのあるNHK杯で7位と、復調をアピールする試合は出来ていない。昨年の全日本選手権こそ貫禄を見せて優勝したものの、世界選手権でかつてのようなメダル争いに加われるのか? 危ぶまれる声も出ている。
「しかし今の彼は、まわりがびっくりするくらいまじめに練習に打ち込んでいるようです。昨年の世界選手権代表から外されたこと、彼は辛かっただろうし、私たちを恨んだかもしれません。私たちも彼を出さないと決断することは辛かった。でも彼もこの一年で様々なことを悩み、気持ちを整理した末に、『自分にはやっぱりスケートしかない、スケートで成功したい』と気づいたんでしょう」
 ケガでの不調ばかりでなく、世界選手権代表からもれた悔しさ。しかしその経験が結果的に彼を奮起させたのでは、城田氏は言う。
「今の彼は滑ることでまわりの人に恩返ししたい、なんて言ってるみたいです。実際そんな気もちでがんばっていて、ダグ・リー(本田武史のコーチ。カナダ人)は『タケシはすごくいいよ。どんどん良くなってきてる。見たらびっくりするよ』なんて言うくらい。でもあの子は練習だけならいつも世界チャンピオン、本番に弱い『プラクティスチャンピオンだから』と笑うと、ダグは『もうそんなことないよ!』と。とにかく彼はいつものプラクティスチャンピオンのレベルまでは調子を戻してきた。あとは、真のチャンピオンにふさわしい演技ができるかどうかが課題でしょう」
 本田自身も「体もリラックスしてきて、いい方向に向いてきた。体のシャープさが戻ればステップも今まで通りできると思う。それに、以前は感覚だけを頼りに跳んでいたジャンプ。これも今は、軸が傾いても意識して取り戻せる力が付いてきた。そしてなにより『絶対跳んでやろう!』という強い気持ちがある。あとはどこまで自分を信じられるかが課題」と意欲的な発言をしている。
 全日本選手権後、記者に囲まれた彼が「この時期に怪我のことを悩まずにいるのははじめて。こうして滑れることが幸せでしょうがない。去年一年の分、今年は取り戻したい」と心底うれしそうに言っていたことを思い出す。
 自信と貫禄を取り戻した時の本田武史の演技は、一握りの一流スケーターだけが持つ輝きを放つ。彼自身が滑ることの幸せを感じつつ世界選手権の舞台に立ったとき、もう一度私たちはあの輝きを目にするだろう。

daisukem 02年、日本人としてはじめて世界ジュニアチャンピオンとなり、「日本男子シングルは本田だけじゃない」と誰もが期待を寄せた若手、高橋大輔。昨年は世界選手権初出場ながら11位と健闘。しかし豊かな才能を持ちつつもメンタル面の弱さから、今シーズンはグランプリシリーズ(トロフィーエリックボンパール11位)、全日本選手権(6位)でジャンプが決まらず絶不調。しかし今年に入ってからはユニバーシアード優勝、四大陸選手権3位。やっと火が入ってきたかに見える彼だが……。
「高橋大輔も、ここに来て調子を上げてきています。彼はジャンプを安定させるため、全日本選手権後はずっと地元に近い大阪周辺で練習を積んできました。大阪、広島、そして安藤美姫のいる名古屋のリンクでも。練習の中心はプログラム各要素のレベルをチェックし、上げていくことです。そのためにテクニカルスペシャリストである、天野真さんの力も借りています」
 テクニカルスペシャリストとは、選手の跳んだジャンプ、スピン、ステップなど各要素を「*回転ジャンプ」「レベル*のステップ」と判定していく役割を担う専門家のこと。新ジャッジシステムのスタートを受け、新たに審判団に配置されるようになった。現役を退いて月日の経っていない選手たちが難関の試験を突破してこの仕事をする資格を得ている。長野五輪にペア代表で出場した天野真氏は、いまのところ日本人でただ一人のテクニカルスペシャリスト。男子シングルの未来を担う高橋大輔二度目の世界選手権に向け、国内のリンク、専門家がおしみない協力体制を組んでいるようだ。
「彼はショートプログラムを国体以降、今年の『剣の舞』から去年の『MI2』に戻しましたが、世界選手権では新しい衣装で滑るのでお楽しみに。
 高橋大輔――彼は本物です。3回転半も4回転もすべて完璧に跳べたら、プルシェンコだってびっくりするハイレベルなパフォーマンスになるでしょう。見ている人をほんとうにぞくぞくさせてくれるスケーターです。彼が彼の出来ることをすべてやったら、フィギュアスケート界をひっくり返す、それだけの力がありますよ」
 今シーズン、日本国内の試合ではいいところを見せられなかった彼だが、全日本選手権後のエキシビション「メダリスト・オン・アイス」では乗りに乗った演技を見せ、ジャンプも完璧。「何故それを試合で見せてくれない?」と多くの人のため息を誘った。滑りの質、スピード、演技、表情、何をとっても世界チャンピオンレベル。あのエキシビションでの輝きをモスクワのリンクで見られたら……誰もが高橋大輔のまだ見ぬベストに期待している。

 女子選手に勝るとも劣らない実力と可能性を持つ男子シングル日本代表の二人。このふたりはそれぞれが最良の演技を見せることとは別に、ある使命を背負って今大会にのぞんでいる。
 今大会はトリノ五輪前最後の世界選手権。今年の成績次第で、各国のオリンピック代表選手枠が決まるのだ。現在女子が3枠を持っており、おそらく来年の3枠も堅いチームジャパンだが、できれば男子も今ある2枠をもう一枠増やしたいところなのだ。
「いえ、男子の3枠獲得は『できれば』ではなく、必須条件です。去年は本田不在の中、田村岳斗と高橋大輔が健闘し、ひょっとしたら1枠になってしまうか、という予想を覆し、2枠キープしてみせた(高橋11位、田村21位)。今年はそのいい流れを繋いでいくためにも、本田高橋の二人で3枠をとらなければ! そのつもりでがんばれ、と言ってあります。ほんとうは二人のうちどちらかにはメダルを取って欲しいところだけれど、欲張ったことは言いません。それよりはオリンピックの3枠が欲しい」
 城田氏が、そして関係者やファンがそこまで男子3枠獲得を強く願うのはなぜか? それは、先日の世界ジュニア選手権で優勝した織田信成をはじめ、五輪出場を夢見る若手選手が、男子にも山のように控えているためだ。
 カナダ留学でエンターティナーとしての魅力を身に付けジュニアチャンピオンとなった織田信成、織田とともに世界ジュニアに出場し6位に入った南里康晴。誰よりも美しく安定したトリプルアクセルが武器の岸本一美、スケーティングの美しさが光る16歳の小塚崇彦、男子選手ながらビールマンスピンを持ち、優雅な演技で魅了する柴田嶺。昨年NHK杯に出場した小林宏一や、浅田姉妹とともに山田満知子コーチの元でトレーニングを積む前川忠義も、独自の世界を持った「魅せる」スケーターだ。そして彼ら若手より少し年齢は上だが、高橋大輔と最後まで世界選手権出場を争った中庭健介も、芸術性とジャンプのバランスの取れた選手。どの選手も世界の舞台に披露したい逸材だ。
「もうすぐ男子シングルも女子と同じくらい層の厚い、黄金時代が来るともいますよ」
 城田氏がそう語ったのは昨年だったが、すでにその時代の足音は聞こえ始めているようだ。
「今年は大輔に3枠を取ってきてもらって、来年はその出場権を僕がいただく!」
 そう語っていた選手もいた。
 本田、高橋も彼らの成長にうかうかしてはいられない。自身のトリノ五輪出場のためにも、出場枠は増やしておきたいところだ。

*日本男子が出場選手枠3を獲得するための条件は、高橋大輔と本田武史の順位が足して13位内であること。3位と10位、6位と7位などならばぎりぎりOK。2位と12位、5位と9位など合計が14以上ならば2枠のまま

*取材チームは本日無事モスクワに到着しました。明日からいよいよ試合開始。まずは男子シングル予選からスタートです

Photo by M.Morita


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