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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

フレンズオンアイス2008レポート(1)

Foto219s  先週のドリームオンアイスに引き続き、今週のフレンズオンアイス。
 2週続けてこんなゴージャスなショーを見てしまって、罰が当たらないだろうか? 

 もちろんふたつのショーは、大きく違う。ドリームオンアイスは前のシーズンに結果を残した選手だけに参加が許されるショー。スケーターたちはその名誉を噛みしめ、そこに立つ誇りを感じながら滑ってくれる。
 フレンズオンアイスは、荒川静香というメダリストを中心に、その仲間たちが作り上げるショー。選ばれたスケーター、というよりも、自ら集まったスケーターたちによる、ぐっとフレンドリーなアイスショーだ。
 オープニング、名前をコールされたスケーターたちは、荒川静香を中心にくるりとまわり、彼女と親しげに目を合わせ、選手ではなくキャストとして紹介される。
「また来年も見たい、というお客さんの声に支えられて、今年で3回目のショーができました。また、ショーは私ひとりでは成り立たないもの。集まってくれるスケーターがいるからできるものです。みんながここまで短い期間でひとつのショーを仕上げてくれて……。参加したスケーター同士が、この場に集まったことでまた高めあえるショーでありたい。またこの場にいることで、スケーターたちが楽しくリラックスできるショーでもありたい。そう願っています」(荒川静香)
 
 そんな彼女が「3年目だから、06年から連続で出演しているショーのオリジナルメンバーといっしょに、何かできないか」と考え、作り上げたのが、グループナンバー「オペラ座の怪人」だ。
 ショーの中盤。天井から吊るされた豪華なシャンデリアを中心に繰り広げられたのは、仮面をつけた宮本賢二の妖艶な滑り、恩田美栄、本田武史、田村岳斗と、同じ時代を戦い抜いた3人のコラボレーション。続いて中野友加里と荒川静香が純白の衣装で登場すると、二人そろってのダブルイナバウアー! そしてビールマンスピンをする荒川静香の周りで中野友加里がジャンプ。中野友加里のドーナツスピンの周りで荒川静香がジャンプ!
「作り出すのはひとつのナンバー。でもその中で、出てくれるスケーター、ひとりひとりのいいところを存分に引き出せる演出、ひとりひとりの個性がしっかり発揮できる演出を考えてみました」
 白いふたりのクリスティーヌが夢のような時間をつむぎだしたかと思うと、おなじみの音楽とともに現れたのは、怪人・髙橋大輔! あの2007年東京ワールドを沸かせた「オペラ座の怪人」のステップを、あの衣装で、久しぶりに見せてくれた。
「実はこの演目を選んだのも、大ちゃんの『オペラ座の怪人』のステップがとても好きで、それをうまく生かしつつグループナンバーができないかな、と思ったからなんです。ミュージカルも映画も見て、音楽もCDを5枚くらい駆使して構成したんですよ」
 1年以上を経て、怪人・大輔は一段と迫力を増していた。力強い足さばきや自在な上半身。身体の動きも表情も、すべてにおいて一層の凄みを帯びて見えたのは、ワイルドなヘアスタイルやボーカル入りのドラマチックな音楽のせいだけではないだろう。ステップの後にはジャンプもスパーンと決め、ここで一挙に美しいプログラムを引き締める。
「彼も友加里ちゃんも、アマチュア。でもショーを見ると、もうこの人たちプロだな、と思います。その姿に刺激を受けて、私たちプロももっとがんばらなきゃ! と思ってしまう」
 後半には、本田、田村、荒川、中野と、4人がいっせいにイーグル。美しいこの技をそれぞれに極めた4人。試合ではいつも大きな拍手をもらっていたこの技を、4人が一度に見せてしまうのだ。仕掛け人の荒川静香は、スケートファンが何を見れば喜ぶかを、本当によく知っている。
 最後は恩田、髙橋、宮本の3人が戻ってきて、華やかにフィニッシュ。
 
 フィギュアスケートのグループナンバーは、プリンスアイスワールドやスターズオンアイスなどでおなじみだ。フレンズオンアイスの「オペラ座の怪人」は、それに比べればぐっとシンプルな構成。しかしこのうえなく煌びやかな作品だった。
 こんなに美しいものをみんなで作り上げられる幼なじみ、仲間たちとは、いったいどんなものだろう? ジャンプが得意なスポーツ少年少女たちが競い合って成長して、大人になって、また自らの意思で集まって。「オペラ座の怪人」は、彼らからスケートファンに送られた、素敵なプレゼントだ。

 他にも、振付けを担当したシェイ・リーン・ボーンと荒川静香が競演した「ある晴れた日に」。一般公募の子供たちによるキッズスケーティングのコーナー。ファンからリクエストの多かったナンバーを次々に滑る荒川静香メドレーなど、フレンズオンアイスならではの見どころがたくさん。
 中庭健介は3年前のEXナンバー「ロミオとジュリエット」、小塚崇彦は噂の新SP「Take Five」、中野友加里も同じく新SP「ロマンス」と、現役選手たちがドリームオンアイスとは別のプログラムを滑ってくれたのもうれしい。

 フレンズオンアイスは本日6日も2公演を実施。当日券も発売される予定だ。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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振付師、宮本賢二 自作を語る

_mg_0168daisuke_4  明日からドリームオンアイスが開幕! 来月にはフレンズオンアイス、ザアイス、プリンスアイスワールド東京公演と次々開催され、スケートファンにとってはうれしい夏のアイスショー月間が始まる。
 ドリームオンアイスでは、今シーズンの新ショーナンバー披露が楽しみ。今年も、安藤美姫選手や南里康晴選手、中庭健介選手ら、たくさんのスケーターの振付けを担当しているのが、宮本賢二さんだ。
 宮本さんが現役を引退したのは2006年。それからたった2年で、阿部奈々美さん、樋口美穂子さん、佐藤紀子さんらとともに、日本を代表する振付師のひとりに。
 この春発売された『別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート 2007-2008メモリアルブック』でも、世界のトップスケーターたちへの「こんな振付けしたい!」コーナーが話題になった。今年はトップスケーターたちの競技用プログラムも手がけており、振付師としてますます注目を集めている。
 今回は「男子シングルメモリアルブック」に収録できなかった「宮本賢二、自作を語る」の一部をお届け。選手を影で支えるアーティスト、振付師にも注目しつつ、夏のアイスショーシーズンを楽しんでみよう。

●宮本賢二、「バチェラレット」(髙橋大輔)を語る
「髙橋選手が『僕、あれ好きなんですよ!』って、ずっと真似して踊ってたのが、中野友加里選手に振り付けたエキシビションナンバー、『リトルナーレ』。で、『僕もあんなん、やってみたいなあ』って彼が言うので、探した曲が『バチェラレット』です。
 音楽も不思議なのがいい、っていうから、いろいろ聞いたんですよ。トランスとか、ハウスとか、ぐにゃぐにゃしてるよくわかんないやつも(笑)。そのなかで、やっぱり僕も好きなビョーク、あの声だなって思ったんです。この曲には髙橋選手も一発OKでしたね。聞き終わった瞬間に、『これやね!』って。イメージしてたの、まさにこんな感じだ、って言ってくれた。2人で聞いて、もうこれしかないね、って。
 僕も曲を選んだ瞬間から、頭の中でずーっと髙橋選手が踊ってるんです。コスチュームも僕がイメージしたものを着て、踊ってる。で、氷に乗って、その動きをひとつずつ彼に伝えていくわけです。でも氷の上に立てば立ったで、頭で考えていたのとはまた違う動きが出てくることもある。ごめん、やっぱ変えるわ、なんて言って、そんなんしてたら、最初のポーズだけで1、2時間かかったりもして(笑)。時には、これがええわってポーズを絵に描いて彼に見せたこともありましたね。
 色々細かいところは悩んだんですが、大筋のコンセプトは、『拍手が出ないプログラム』。お客さんには、『わあっ!』じゃなくて、『しーん』としててくれていい。で、終わった後、今の、髙橋大輔よねえ? って。全体的に、ちょっと気持ち悪い雰囲気でしょう? 気持ち悪かったけど、でも、今の髙橋大輔だったんだよね、って思われながら、ゆっくり拍手が起こればいいなって思ったんです。
 でも……やっぱり彼が客席に近付いたときには、『キャー!』って声が出ちゃうんですよ。あれは、うーん……。でもまあ、目の前に大ちゃんがいたら『キャー!』言うのもしょうがないか(笑)。でもほんとは、滑り始めから終りまで、拍手なしで見てもらうのが理想なんです。
 何せあれ、イメージが人間でも動物でもないから。なんというか、無機質。肉じゃない感じ! 人形か何か、魂のないものに何かが乗り移った感じ。で、乗り移られた何かが動きまくって、踊りまくって、そんなイメージです。でも、このイメージを髙橋選手に説明する方法が、わからなくてねえ(笑)。最初は妖怪とかなんとか言ったかな? 妖怪なんていうと鬼太郎が出てきちゃいそうで、そういうんでもないんやけどなあって……ちょっと迷いました。
 でね、このプログラムはひとつひとつの動きに意味があるんですよ。最初、乗り移ったかなあ、って感じで動き出して、やがて完璧に入って、動き出す、みたいな。で、木が伸びて枯れて、とか、羽が生えて、どうなって、とか、全ての動きに一応意味があるんです。でもそれを説明しだしたら、あと1時間くらい話さんと(笑)。
 で、そういう動きを、面白いことにふたりでほとんど会話することなく、作り上げていったんです。あんま喋らずに、『こういう感じで』って僕が伝えたら、彼はすぐに、そのまま動いてくれた。だからほとんど会話がなかったんですよ。『じゃあ、もう1回最初から』『賢二先生、鬼ですね……』とか、しゃべったのはそれぐらいです。
 で、出来上がってみたら……かっこいいですよねえ。もう、髙橋大輔、すごいねって感じ! そりゃあ、あんなん滑られたら嬉しいですわ。作らしてもらって、ありがとうって思います。時々こけたりするとね、終わった瞬間にとんできて、『賢二先生、ごめーん!』って言う。でも『いいよいいよ、かっこよかったよ』って(笑)。ねえ、かっこいいですよねえ!」

photo/Sunao Noto  text/Hirono Aoshima

『別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート 2007-2008メモリアルブック』では、宮本賢二さんが語る小塚崇彦、南里康晴、中庭健介各選手のショーナンバー(07-08シーズン)振付け秘話が掲載されています。

*ドリームオンアイス会場にて販売の公式パンフレットには、シニアの日本人シングル選手全員のミニインタビューを掲載。安藤美姫選手や鈴木明子選手、無良崇人選手らが今シーズンの宮本賢二振付け作品について語っています


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別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート~2007-2008メモリアルブック~ 本日発売!

Kadokawa 髙橋大輔、ジェフリー・バトル、ステファン・ランビエールなど世界の男子シングルスケーターを特集したメモリアルブックが、本日発売になりました。

別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート~2007-2008メモリアルブック~ 
発売日:2008年4月19日
価格(税込):1800円
A4判  オールカラー112ページ
発行:角川ザテレビジョン
発売:角川グループパブリッシング
※ジャパンオープン2008会場、アイススペースブースなどでも数量限定販売
※書店ではスポーツ誌コーナーのほか、テレビ誌のコーナーでも販売

【contents】
巻頭特集30ページ 髙橋大輔

10000字独占インタビュー

トップスケーターへのインタビュー
ジェフリー・バトル、ステファン・ランビエール、ブライアン・ジュール、ジョニー・ウィアー、エヴァン・ライサチェク、小塚崇彦、南里康晴、中庭健介、羽生結弦

スペシャル対談
髙橋大輔VS中野友加里
南里康晴VS小塚崇彦
長光歌子VS河野由美
長久保裕VS田村岳斗

インタビュー 
宮本賢二、佐藤有香、アントニオ・ナハロ、アレクセイ・ミーシン、村主章枝ほか

「バンクーバー五輪、いちばん楽しみなのは男子の戦い」と、ニコライ・モロゾフ氏も語るように、今もっとも目が離せない種目、男子シングル。来シーズンの開幕が今から待てないファンの皆さんにお送りする一冊です!

*スケートまったく関係ありませんが、写真家板東寛司さんとライター青嶋の本、『逢いたくなっちゃだめ』『誰かいませんか』が文庫になりました。ついでにこっそりおすすめです。


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男子フリー終了 髙橋大輔6位、総合4位 「諸刃の剣」

Dai_f6i3505_2  なぜ、こんなに強くなったの? 
 なぜ、今回負けてしまったの? 
 まったく異なるふたつの問いかけに、今、髙橋大輔が答えるとしたら、その答えはまったく同じになるだろう。
「勝ちたかったから」

「勝ちたい!」
 そう思う気持ちが、彼を強くした。
 トリノ五輪の前後、国際試合の表彰台に手が届き始めたころから、彼は「すべての試合で優勝する」ことを常に目標にしてきたという。「たとえプルシェンコがいたとしても」そう付け加えた時もあった。もう、誰にも負けたくないから、練習にも集中したし、4回転ジャンプも跳べるようになった。強さの源は、試合の結果やライバルを強く意識する、熱い闘争心だったのだ。
 しかし今回は、勝ちたい気持ちが彼の足元をすくった。「絶対優勝したかった。その思いが大きすぎて……気持ちばかりが前へ、前へと先走ってしまった」。彼は泣いたあとの顔をゆがめて、歯噛みした。

 試合前のインタビューでも前面に出された、積極的にライバルの存在を口にし、自らを高めようとする髙橋大輔の闘争心が私は好きだ。「自分の演技をしたい」ではなく、「戦って、勝つ!」という気持ちを堂々と口に出す彼は、アスリートらしいし、男らしい。
 しかし今回は、他者を気にしすぎて、必要以上に緊張して、本来の力が発揮できなくなってしまった。「勝ちたい気持ち」は、諸刃の剣なのだ。
 こんなことになってしまうのなら……多くの選手が言うように、人を気にせず、結果を気にせず、「自分の納得する演技」を目指した方がいいのだろうか? たとえばランビエールの言うように「勝つためではなく、自分の芸術を見せること」を一番に考えたり。日本の女子選手たちが言うように、「人に勝つのではなく自分に勝つ」ことを考えたり。髙橋大輔にも、意識改革が必要なのだろうか?

 今回の彼のコメントで一番印象的だったのは、ずっと調子の悪かった4回転ジャンプをなぜ一本にしなかったのか、という質問への答えだ。今大会、上位陣で4回転ジャンプをクリーンに決めたのは髙橋とジュベールだけ。2本以上決めた者は、誰もいなかった。ジュベールでさえ安全策を取り、トライしたクワドは一本。ジャンプ以外にも高い加点が得られる髙橋ならば、4回転もトリプルアクセルも一本に抑え、クリーンにプログラムをまとめたら、確実にメダルには手が届いていただろう。モロゾフコーチも、4回転は一本にすることをすすめたという。
 しかしシーズン最初に、「勝つために」設定した目標通り、2本のクワドを跳ぶことを、彼は選択した。その理由は「逃げたくなかったから」。
 ここまでの「負けたくない!」気持ち、むき出しの闘争心。本当に素晴らしいと思う。
 もう、こうなったら、彼はこのままで、いいのではないか。ライバルを認め、ライバルを強く意識する。勝つためならば何でもする。やはりそれが、髙橋大輔の強さだ。この強さをとことんまで磨き抜けば、いつかきっと、彼の諸刃の剣をも使いこなせるようにしてくれる。

 フィギュアスケートは、やはりスポーツだ。髙橋大輔自身も、「今、男子シングルはものすごく面白いですよ。トップクラスに個性の強い選手がたくさんいて、それぞれの力が、近い」。それぞれの違った魅力を楽しんでほしい、そして、誰が勝つかわからない試合の行方を楽しんでほしい、と、彼は大会前のインタビューで語った。
 彼の言うとおりだ。フィギュアスケートは、勝負がつくからこそ面白い。強く美しい選手たちが、「勝ちたい!」思いでぶつける、技と美を楽しみたい。自分の芸術を見せるためでなく、勝つために本気になる男たちを見たい。
 バトル、ジュベール、ウィアー、髙橋大輔、ランビエール、ヴェルネル、ライサチェク。そしてこれから伸びてくる、たくさんの選手たち。男子シングルがたまらなく面白かった時代の選手たちとして、確実に後の時代に語り継がれる男たちだ。彼らの意地と誇りをかけた戦いは、バンクーバーまで、まだまだ続いていく。
 髙橋大輔には、技も、美も、強い心も、すべてで先頭を切って。この時代を駆け抜けていってほしい。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 

*髙橋大輔選手へのインタビューは、発売中の週刊ザテレビジョンに掲載されています。4月発売予定の月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムックにも掲載予定です


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男子シングルSP終了、髙橋大輔3位 「白鳥の湖」、終演

Daimma_5154s  間違いなく今シーズンのフィギュアスケートシーンを代表するプログラム、ヒップホップ「白鳥の湖」。
 その、試合では最後となる滑りを生で見ることができる幸せを、髙橋大輔をよく知る日本のファンは、噛み締めていた。でもそれは私たちだけではなく、スカンジナビウムに集ったたくさんのお客さんも、同じだった。

 北米や日本で開かれる世界選手権とヨーロッパ開催の世界選手権の大きな違いは、客席でありとあらゆる国の国旗がたくさん揺れていることだ。アジアやアメリカではどうしても、やって来られる国の人々は限られている。でもスウェーデンなら、フランスからも、イタリアからも、ドイツからも、もっと小さな国々からも、たくさんの人々が集う事が出来る。そして集まったスケートファンは、各国の旗を盛んに振り、自国選手や近しい国の選手に大きな大きな声援を送る。もちろん、とびきりお客さんが力を入れて応援するのは、ヨーロッパ各国の選手たちだ。
 これは、髙橋大輔にとっては予想以上に厳しい、アウェイの戦いになりそうだ――ペアや女子の試合を見て、そう感じた人は多い。これは、一つのミスでも足元をすくわれる、完璧にやり遂げなければ、並みいるヨーロッパのライバルたちに勝てないだろう、と。

 しかし髙橋大輔に限っては、そんな心配は杞憂だったのかもしれない。
 ヒップホップ「白鳥の湖」――ちょっと気合を入れてフィギュアスケートに注目している人ならば、誰もが知っている名作になってしまったこの作品が、今日スカンジナビウムで「上演」されることを、多くの人が知っていた。彼の演技が始まろうというとき、明らかに「あれが来るぞ!」という期待に満ちた雰囲気が、すでにできあがっていた。
 そして、トリプルアクセルのハンドダウンという失敗がありながらも、リミッターが解除されたように激しい後半のステップシークエンスや、氷の上にいることを忘れさせる自由自在な彼のダンスに、スタンドを埋め尽くしたすべての人が大喜び! 
 拍手や歓声の大きさだけでなく、ミスがありながらも3位という得点の高さに、ジャッジもまた彼の「白鳥の湖」を楽しんでくれたことがわかった。ここは、髙橋大輔にとってアウェイなどではなかったのだ。会場もジャッジも、高橋大輔の味方で、彼のファン。そして試合が始まる前からこの場所を彼の舞台にしていたのは、他の誰でもなく髙橋大輔と、彼の「白鳥の湖」。他の何でもなく、今年、この素晴らしいプログラムをひとつひとつの試合で滑り続け、スケートファンを楽しませ続けてきたことだ。

 昨年あたりから、髙橋大輔は世界のトップスケーターとして、誰もが認める存在になっていた。
 しかし彼の存在を世界のスケートファンにはっきりと印象付けたのは、今年のショートプログラム「白鳥の湖」だろう。
 素晴らしいのは、このプログラムを生み出したニコライ・モロゾフのアイディアと想像力。そして「最初は乗り気じゃなかった」のに、完璧にひとつの作品に作り上げた髙橋大輔の技術と心と努力だ。
 07-08シーズン、世界中、どのアイスリンクでも、どんな観客にかこまれても、「白鳥の湖」は必ず人々を熱狂の渦に巻き込んだ。今シーズンの国際試合、国内試合、合わせて6試合、すべてでそれをやり遂げたことに、最大の賛辞を髙橋大輔に贈りたい。
 そしてもう二度と、試合の場で「白鳥の湖」を見ることが、私たちにはできないことが、たまらなくさびしい。
 こんなプログラムが、かつて氷上に存在しただろうか?
 
photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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「きれい系が続いたあとに、僕ですか」 男子SP直前! 髙橋大輔選手コメント

Daisuke_12e3678_2 (日本の記者たちの前に、海外メディアの取材を受けて)

髙橋 もう英語、しゃべりたくないです(笑)。

――では、日本語で(笑)。

髙橋 でも、こうして海外の人にも取材してもらえてありがたいですよね。英語、勉強しなきゃなあ、と思ってます。

――滑走順が決まりましたね。

髙橋 ジョニー、ジェフときれい系が続いて、僕で若干むさくるしくなりますかね。どうしよう(笑)。まあ、あまり気にせず。ジェフの後だと、彼への歓声が多い中で滑らなきゃいけないのは分かってます。彼は世界のどんな場所でも歓声が大きいですし。それは承知の上で、気にせずに! あと後ろがジュベールなので、僕のあと、確実に4回転を入れて来ると思いますし。ジャンプ以外のところで見せていかなきゃ! でもステファンは4回転も、ステップも他の部分でも見せられるので、彼がパーフェクトに決めたら、きわどいかな。ジャンプやスピン以外のところでもアピールしないと。

――リンクの雰囲気はどうでしょう? お客さんが近い方がのれる、と言っていましたが。

髙橋 僕は好きです。ここのリンク! こういう感じが(手で、客席の傾斜の具合を示して)。雰囲気的にいい感じだと思います。氷はまだプラクティスリンクでしか滑っていないので、メインリンクの具合は分からないんですが。  いつものように、ライバル選手の名前を次々に、なんのてらいもなくあげてくれた髙橋選手。「自分の演技」ではなく、相手がいる戦いに挑む気満々だ。SP前日の公式練習で滑った「白鳥の湖」でも、自信に充ちあふれていたいい動きを見せる。 ペアや女子の結果を見ても、明らかに彼にとってはアウェイの戦い。しかしここで勝てたら、彼は本物のチャンピオンだ。

*髙橋大輔選手へのインタビューは、発売中の週刊ザテレビジョンに掲載されています。4月発売予定の月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムックにも掲載予定です

photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima 


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世界選手権直前! 田村岳斗の男子シングル大予想(2)

Patimg_5564 ――来るとしたら?
田村 ランビエール選手! 彼はほとんどの試合で4回転を2本、跳んできます。コンビネーションで3-3もしくは4-3も跳べる。でも彼は……トリプルアクセルが苦手で、1本だけなんです。この点を考えると、やはり大輔選手有利は変わりませんね。ただランビエール選手は、ジャンプはここまでかもしれないけれど、スピンが抜群にいいので……スピンの加点でジャンプを補って来ることも考えられます。やっぱりジュベール選手も、ランビエール選手も、一度世界タイトルをとってる人たちは、怖い。大輔選手、ランビエール選手、ジュベール選手……表彰台のメンバーは今年も変わらずだと思うんですよ。あとは今シーズン、ジュベール選手の病気(エリック・ボンパール杯、インフルエンザで欠場)などがありましたよね。そういったアクシデントが誰かにあれば、トマーシュ・ヴェルネル選手がメダル争いに絡んでくる可能性は高いと思います。大輔選手は健康でいてくれよ、と(笑)。

――表彰台争いは昨年と同じメンバーと予想。では、その他の選手で田村さんが注目している選手もぜひあげてください。
田村 カナダのパトリック・チャン選手ですね。

――あの若さで今年はファイナルにも進出! 田村さんは昨シーズンからチャン選手を推していましたが……。「ステップなど、難しいことをしすぎているから今はジャンプが入らないけど、プログラムの難易度を下げればジャンプは跳べる。または難しいプログラムでもジャンプが跳べるようになりさえすれば、すぐに勝てる選手」と。
田村 それが今シーズン、言ったとおりになっちゃったんですね! びっくりです。適当に言ったのに(笑)。でも今年も彼には注目でしょう。4回転がまだ試合で成功していないから、今すぐ表彰台、というわけにはいかないけれど……。でもバンクーバー五輪のころにはきっと! 地元開催で開催でしょ。しかも今、まだ16歳? 今年17歳? じゃあ4回転なんか、若さですぐに跳んできますよ。そんなに癖のある跳び方もしていないですし、彼はいっちゃうと思いますね。

――田村さんのお好きなジョニー・ウィアー選手はいかがですか。
田村 ジョニー選手、好きなんですけどね……。彼はここ何年か、あまり良くなかった。日米対抗でもそれほどいいとは思わなかったのに……チャイナカップではランビエール選手に勝っちゃいましたね! 彼も4回転を入れなくてもけっこう点が出る選手だから。でも、いくらすごいといっても、もう4回転がないとこれ以上順位を上げるのは、難しいかな。トップの選手が、ただ4回転を跳ぶだけでなく、2本、3本跳んできてますから。

Yamatosenseip1000223 ――今年の世界選手権も、オリンピックに向けても、やはり鍵は4回転ですね。今跳べていない選手も、これから身につけられるかどうかがポイントになって来る。日本の選手も苦しんでいます。日本屈指の4回転ジャンパーだった岳斗先生が、彼らに教えてあげるわけには……。
田村 みんなそれぞれ素晴らしいコーチについているので、僕が余計なことをしたらおかしくなっちゃいますよ(笑)。小塚崇彦選手はイタリア合宿で跳んでるのを見ましたし、みんな少しずつ挑戦しているところです。あ、世界選手権の注目選手をもう一人、ぜひ!

――あげてください!
田村 フランスのアルヴァン・プレオベール選手! 彼は来るね! 何かしら、してくれると思う。

――そのこころは?
田村 彼のスケートは、面白いから好きなんです。ただそれだけ(笑)。いやいや、僕の予想なんて、単純に好き嫌いだけですよ!

*田村岳斗さんのブログ「田村岳斗―華麗なる舞」
*世界選手権男子シングル、J SPORTSの解説は田村岳斗さんです!
3月22日(土)15:00~17:00 男子シングル ショートプログラム 
3月22日(土)20:40~25:30 男子シングル フリー ★生中継!
「このインタビューでは色々な選手の名前を上げていますが、まずもう、大輔選手で決まりですね! いいなあ、現地にいる皆さんは、優勝の瞬間が見られて。本人にも伝えてありますよ。『解説やるから、変な演技したらぼろくそに言うからね!』って。彼は『ほめてほめて!』と言ってたけれど、負けたら『これは練習が足りないですね』って言っちゃうよ!」(田村さん)

photo(上)/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima 
*写真上は07年グランプリファイナルのパトリック・チャン選手
*写真下は日本代表イタリア合宿時、フランス・イタリア国境をまたぐ田村コーチと重松直樹コーチ(明治神宮外苑クラブ)


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世界選手権直前! 田村岳斗の男子シングル大予想

Daisukeimg_3080s  男子シングル読本『COLORS』などで、毎年男子の熱い戦いを展望をしてくれている、関西大学アイススケート部の田村岳斗コーチ。
 今年もメダル争いの行方が楽しみな世界選手権を前に、主な選手たちの戦力分析をお願いした。といってもこれはシーズン半ば、全日本選手権前に行われたインタビュー(遅い掲載でごめんなさい)。
 シーズン後半の髙橋大輔選手の活躍ぶりなど、すでに当たっている部分もあり、驚くばかりだ。
 昨年はベルットソン、ヴェルネル、パトリック・チャンらの躍進も予言した田村コーチ。今大会の予想にも大いに期待しながら耳を傾けてみよう。

――オリンピックも2年後にせまった08年の世界選手権ですが、今年、男子シングルで田村さんが注目している選手は?
田村 今年は、まず大輔選手ですね!

――まず大輔選手!
田村 大輔選手で優勝確定!

――確定、いきなりそう来ますか? 他にも強力な選手、多いですよ! ジュベール選手、ランビエール選手、ヴェルネル選手、ウィア選手ー……。
田村 もちろん彼らもいますけれど、やっぱりまずは大輔選手です。彼は今年、4回転2本を入れるそうですが、彼の場合は4回転だけじゃなく、トリプルアクセルも2本、さらに3回転-3回転も入れてくる。その上での4回転2本です! これはすごく意味があるんですよ。たとえばジュベール選手が4回転3本を跳んだ試合(06年ロシア杯 4回転トウ-2トウ、4回転サルコウ、4回転トウ)、あれが彼のフリーではベストの試合だったんですが、あのときでも彼はトリプルアクセルが1本。コンビネーションも3-3が入っていないんです。だから4回転3発とトリプルアクセル1発が大きなジャンプ。そうすると、基本の点数は高く出ますが、4回転のような難しいジャンプほど、リスクも高いんです。

――一方で髙橋選手が狙っているのは……。
田村 4回転が2本と、アクセルが2本。大輔選手のジャンプはきれいだし、流れもあるから、トリプルアクセルなどはプラスがつく。アクセルでも4回転に匹敵する点数がもらえますよね。6種類のジャンプに得意も苦手もない。ジャンプのバランスという点では彼が圧倒的だと思うので、4回転2本という彼の目標さえちゃんと達成できれば、心配ないと僕は思っています。

――髙橋選手はただ大技があるだけでなく、他のジャンプも跳べてバランスがいい。でも4回転2本……そう簡単ではないですよね(インタビューの時点では未だ成功なし)。
田村 簡単ではないです。でも、大輔選手だったらやるんじゃないですか! 去年までの滑りを見ていると、もう4回転以外のジャンプはステップみたいな感覚で跳んでますし。ちょっとプレッシャーを感じているのは、4回転だけでしょう。でも、それ以外は先シーズンまでと同じだと思うんです。4回転2本も、今はまだやったことがないから感覚がわからないだけ。今シーズン、日米対抗でも挑戦していますし、この調子で世界選手権の前までにちょくちょく跳んでおけばいい。そしたらもう、2本跳ぶための感覚なんて、彼だったらすぐ掴めると思います。

――去年の世界チャンピオン、ジュベールの力が去年のままだったら、今年の高橋大輔は勝てる、と。
田村 まあジュベール選手や他の誰かが、4回転を3本入れて、なおかつトリプルアクセルが2本で、コンビネーションも3-3を入れて来るとなったら……話が変わってきますが(笑)。それをやるには、相当なスタミナがないときついと思いますよ。ただ、あともうひとり来るとしたら……。

*髙橋大輔選手へのインタビューは、今週発売の「週刊ザテレビジョン」に掲載されます

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 
*写真は07年全日本選手権のSP


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世界選手権に向けて――髙橋大輔選手、小塚崇彦選手コメント

Takaimg_8409s  前哨戦となる四大陸選手権終了後、髙橋大輔、小塚崇彦の男子シングル代表に、世界選手権への思いを聞いた。

*小塚崇彦選手
「世界選手権代表に決まったときはうれしくて、がんばろう! ってすごく思ったんですけど……。四大陸までは練習場所の確保とか4回転のこととか、いろいろなことにふりまわされてしまったかもしれません。世界選手権までは、ただ練習のことだけを考えて、思いっきり練習して、練習したな! って思える状態で臨みたい。男子の3枠を何としても確保するよう……がんばります!
 スウェーデンに行くのは初めてです。どんな国なのかな? まだ何にも調べてない!」

 インタビュアーからはなかなか聞きにくい出場枠の話。でもこちらが聞く前に、彼の方からはっきり口に出してくれたのは、うれしかった。戦う気は十分。でも、佐藤有香さんも言うように、まずは結果を気にせず、ぞんぶんに初めての大舞台を楽しんでほしい。

*髙橋大輔選手
「世界選手権は……楽しめなさそう! だって、男子シングルの試合は全日程の最後じゃないですか! それが嫌なんですけど(笑)。それに、世界ジュニアで優勝した時に行ったノルウェイは雪ばかりで、北欧はあんまり明るいイメージがないな。でもノルウェイは魚がおいしかったから、きっとスウェーデンも魚がいけると思う。勝手なイメージですが(笑)。ご飯を楽しみにしたいです.
世界選手権までの時間は、緩めすぎてもダメかと思っています。日本に帰ったらもう一回追いこんで練習して、体力をつけて。あと、スピンの練習をもっとしたいですね。これから少し、スピンに時間を割いてみよう。
 世界選手権で勝つには……最低でも四大陸ぐらいの演技をしなきゃいけないですね。他のみんながどこまで上げてくるか、わからないですから!」

 いつもの世界選手権では、トリをつとめる試合は女子シングル。しかし今年はヨーロッパ勢、男子に有力な選手が多いためか、男子シングルが最後の決戦に選ばれている。
 毎年試合後には女子シングルの応援(05年の記事)をするなど、リラックスしている髙橋選手。でも今年は、最後に控えた最もドラマチックな舞台に立つ。「嫌なんですけど」と笑いながらも、一番目立つ試合、一番注目を集める試合で戦うこと、楽しんでくれそうだ。

photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 
*写真は07年全日本選手権のフリー


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四大陸選手権こぼれ話(6) オフリンクの選手たち

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 記者会見会場での、素敵なツーショット2枚。
 まずはショートプログラム記者会見後の、高橋大輔&ジェフリー・バトル選手。
 今大会、お客さんの黄色い声を二分したふたり。
 がんばって英語で記者たちの質問に答えようとする高橋選手を、「がんばれ! 大丈夫だよ!」と励ましていたバトル選手の姿が印象的だった。高橋選手の方も、「僕の英語、合ってる? おかしくない?」と彼に確認を求めるように話す。
 この後の日本の記者たちとの対話では、「今回はジェフ君のような強い選手もいて緊張して……あ、違った、バトル選手だ!」と言いなおす高橋選手も、またキュート。

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 こちらはアイスダンスフリー終了後、準優勝のチャーリー・ホワイト選手とズウェアコーチ。チームマリーナ全員での写真をお願いしたのだが、「あら、私、チャーリーとふたりで撮りたいわ!」と、乙女のようにわがままを言うマリーナコーチ。ご要望に応えての、笑顔のツーショットです。

text/Hirono Aoshima


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男子フリー終了  髙橋大輔優勝! そして歴代最高得点更新

Id7e0651  全日本選手権に続き、またもや2本決めてしまった4回転の安定感。
 トリノ五輪以前、あれほど本番に弱いと言われ続けた彼の、心の成長ぶり。
 革新的なショートプログラムに続き、王道のフリーでもこれだけ見せてしまった、表現の幅広さ。
 ジャンプのGOEプラスが目立った要素点、8点台が当たり前になってしまった演技構成点、どちらもとてつもなく高かったジャッジの評価。
 そして、プルシェンコが06年トリノ五輪で出した世界歴代最高得点、2年ぶりの更新……。

 オウリムヌリアイスリンクの観客を総立ちにさせた演技が終わり、熱狂の渦を抜けて記者席でキーボードに向かい――。
 今、自分があの演技について何か書かなければならないことに、呆然としている。
 とにかくいろいろなことが頭の中に渦を巻いてしまい、何について記せばいいのか、わからない。
 いやそれ以前に、あの演技について私などが何か書く意味はあるのだろうか、と呆然とするしかないのだ。
 今夜の演技の意味するもの、価値、影響……。「書けること」はやまほどあるけれど、書かなければならないこと、書きたいことはたったひとつしかない。
 ただただ、2008年4大陸選手権の高橋大輔の演技を、「見られて良かった」。
 たったひとつ、そのことだけ。ただただ「見られれて良かった」と言うしかないし、書くしかない。そんな演技が、フィギュアスケートで見られたのだ。 
 
 2本の4回転と、トリプルアクセル。男子選手の多くが、ただ跳ぶことすら苦労するジャンプを、あまりに美しく跳んでしまうことに驚く。
 冒頭の3本のジャンプを決め、観客が興奮しながらもほっとした瞬間、髙橋大輔のロミオに魂が入った、その刹那の空気の変化に驚く。
 十字を切る動作も、何かに手をさしのべるしぐさも、振り付けのひとつひとつがくっきり目に焼きつき、見ていて自然に涙が出そうになっていることに驚く。
 最後のコンビネーションジャンプ、トリプルフリップ-トリプルトウを決めた瞬間、「うん!」とうなづいて見せた彼の、自信に満ちた不敵な表情に驚く。
 ストレートラインステップがこれだけ激しいのに、これだけ気持ちがあふれていて、髙橋大輔自身の必死さも、ロミオという青年の苦悶も、同時に感じさせてしまったことに驚く。

 4分30秒の最初から最後まで驚きの連続で、一瞬たりとも見逃すことのできなかったこの演技を今、ここで見られたということ。今、この演技が私たちの目の前に確かにあったということ。その事実の前には、世界記録更新も、どんな数字の上での大きな記録も、すべてがどうでもいいことになってしまう。
 もっと俗なことをいえば、これでまた彼の取材が取りにくくなるかな、とか、彼の優勝の影響で新しいフィギュアスケートの企画は通りやすくなるだろうか、とか、そんなこともすべて、どうでもよくなってしまう。

 今日、ここで髙橋大輔の演技を見られたという事実があれば、他には何もいらない。
 彼がこうして氷の上に立っている時代に生まれてきたことが幸せだし、こうして彼の演技を見に来る機会を得たことが幸せだ。
 どうか、少しでも今日の演技を見て心が動いてしまった人は、彼がここにいるうちに、テレビの前ではなく、早くこの場所に来て欲しい。
 幸い、髙橋大輔の体はまだまだ元気に動くし、試合でもアイスショーでも、彼を見る機会はたくさんある。
 時間もお金も体力も、すべてをかけてリンクにやって来る価値が、髙橋大輔にはある。髙橋大輔と、彼が選んだスポーツ、フィギュアスケートにはあるのだ。
「疲れも緊張感もあったなか、この演技ができたことがすごくうれしいです。今までこんな点数をいただいたことはなかったし、こんなに高く評価されたこともとてもうれしいと思う。でも、最高の演技だったとは、自分では思わないから……今度は、もっとできると思います! もっと自信を持って、もっともっと練習しますから!」
 ほら、今からでも遅くはない。今夜が彼のマックスではないことは、彼自身が保証してくれたから。
 髙橋大輔の目撃者になる機会が、私たちにはまだまだたくさんある。

photo/Takayuki Honma   text/Hirono Aoshima 


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四大陸選手権こぼれ話(2) 髙橋大輔、韓国でも大人気!

Darkswansp1000457_2  お手製の選手資料を手にしたファン。南半球出身の、グランプリシリーズにも出ていない選手のこともよく知っていて、名前を呼び掛けるファン(また彼女たちの注目した選手は、無名なのに素敵な滑りを見せるのだ!)。韓国のスケートファンは決して数は多くないけれど、とても情熱的だ。そんな彼らが作ってくれた髙橋選手の応援バナーが、これ。ゴージャスな黒い羽根をまとった「白鳥の湖」バージョンの他に、凛々しい「ロミオとジュリエット」バージョンもある。

「ソウルの高橋大輔ファンクラブの名前は『Dark Swans』なんですよ!」と、バナーを張り付けていたお姉さんはニコニコ。

 彼がジャンプを決めるたびに「ウォー!」と叫び、パーフェクトの演技を終えた時には立ち上がってバンザイをしてくれたお兄さんは、ちょっとたどたどしい日本語でこう話してくれた。「2年前のNHK杯から、彼のファンです。彼はサイコウのアーティストだと思う!」

 彼らの熱狂ぶりには、髙橋大輔本人もびっくり。
「え、ファンクラブがあるんですか? 3年前に韓国に来たときにも熱狂的なファンの方はいてくれたけど、こんなにたくさんはいませんでしたね。ちょっと驚いています。うれしいです! 今日はお客さんの数はそれほど多くなかったけれど、声援がすごく大きくて……。ほんとに応援してもらえてるんだ、って感じました。それだけでもう、楽しかった! 」

text/Hirono Aoshima


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全日本選手権男子フリー終了「泣く者と、笑う者と」(1)

Ajdaisuke_mg_3759  高橋大輔は圧倒的だった。声援の大きさや応援バナーの数、そして何より演技の内容がずば抜けていた。世界の舞台で一番になるために何が必要かを考え、この全日本選手権では「4回転を2つ」という目標を掲げ、見事にそれを達成した。
 高橋大輔が別格の演技を披露した。そのことが、残る2つの枠を争う選手の心に少なからず影響を与え、そして与えなかった。

 小塚崇彦はトリプルループがすっぽ抜けてシングルになった以外は、ほぼ自分の力を出し切り、演技が終わると力強いガッツポーズを見せた。滑走順は最終グループの1番目。高橋大輔の演技を見ることなく自分の演技を終えることができた。
 もちろん、小塚自身はこのことをまったく意識していないだろう。自分の演技に集中して結果を出しただけだ。自分の演技に集中する。この一見当たり前のことがフィギュアスケートではとても難しい。

 小塚の次に登場した高橋大輔がすばらしい演技をして、観客のほぼ全員が立ち上がって拍手をおくった。得点が出るまでの間も、高得点をうながす拍手が続き、さらに表示された得点の高さに観客からはどよめきが起こった。
 その間ずっとリンクにいた南里康晴は「体がガチガチになってしまった」という。最初のトリプルアクセルは力が入ってしまい大きくステップアウト。次のトリプルフリップはなんとか降りたものの、トリプルループで転倒してしまった。
Ajkensuke_mg_4148  この転倒ですこし肩の力が抜けたように見えた。トリプルアクセルートリプルトウループのコンビネーションを含め、残るジャンプを決めて演技を終えたが、その表情に笑みは無かった。

 中庭健介はフリーで4回転を跳ぶことを決めてはいたが、心の片隅に迷いがあった。その時、控え室のモニターテレビで高橋大輔が4回転を2度成功させたことを知る。
「4回転は今シーズンものすごく不安で、正直逃げ出したくなりました。他の選手の出来具合で、最初に3-3を持ってくるということも考えたんですけど、高橋選手が果敢に4回転を2回、すごいプレッシャーの中で成功させたので、そういう高いレベルで戦うためには逃げてちゃダメだという気にさせてくれました」
 そしてリンクに現れた中庭健介は「今までで一番緊張していて、出番が近づくたびに体が震えるような状態だった」という。最初の4回転は着氷が乱れてオーバーターン。トリプルアクセルは決めたものの、その後のジャンプで細かい着地ミスが続いてしまう。必死に転倒だけはこらえたが、演技を終えた中庭の顔にもやはり笑みはなかった。

photo/Sunao Noto   text/Seiho Imaizumi 


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グランプリファイナル2007 エキシビション終了、髙橋大輔共同インタビュー「やっぱり4回転、2本!」

Daisukeimg_0073  エキシビションでおなじみ「バチェラレット」を披露した直後の囲み取材。「真央は今、靴脱いでるんで……インタビュー、僕からお願いします」と、待ち構える報道陣に気遣いさえ見せてくれた。

――フリーから一夜明けましたが、気持ちは落ち着きましたか。
大輔 いや、時間が経てば経つほど悔しいです。悔しいし、全日本も近いので今日のエキシビションの練習は本気モード! おかげで本番、バテちゃいました(笑)。

――エキシビションナンバーでも大きな拍手をもらっていましたね。
大輔 いやあ……今日はねえ、お客さんが遠かった! ずっと下を向いているプログラムなので、客席が遠いと”気”を飛ばすのが大変なんです。今日は難しかった。でもできるだけ入り込めるよう、がんばりました。

――SP同様、意欲的なショーナンバーですが。
大輔 最初から最後まで、ひとつのつながりがあるプログラムなんです。全体を通して、なんだかよくわからない、くらーい感じを見てもらえるといいですね。でも今日はやっぱり練習をがんばりすぎた……。

――練習を見ていたら全日本選手権が楽しみになりましたが、プログラム構成などに変更の予定は?
大輔 変えるほどの時間はないので、今やっていることそのままで練習していきます。4回転は2本入れるつもりで、調整していきたいです。

――2度の4回転への意欲は、変わらず?
大輔 やっぱり4回転2本、やってみたいですね! 入れる入れるって言っておきながら、まだ入れられてないんですが(笑)。でもこれからの試合、きっとステファン、トーマス、もちろんジュベールも跳んで来ると思いますし、いやでも今後は入れていかなきゃいけない。自分の気持ち的にも、いつでも2本跳べるようにしておけば、不安もなくなりますし。

――練習を見ていると4回転の安定感も増していますね。
大輔 はい、調子のいい時はまず失敗しません。疲れてさえいなければ跳べるジャンプです。成功率は先シーズンより確実に上がっていると思います。

――全日本選手権での好演技、期待しています。
大輔 ありがとうございます。休みはあまりとらず、かといって追い込みもせず、うまく調整をして。このまま調子を落とさないように持っていければ。……次、真央ですよね? 呼んできますね、真央ー!

 呼んできてくれるのか、いいやつだな……と、ベテラン報道陣も驚く好青年ぶり。人に優しく、自分に厳しい日本のエース、彼が世界の表彰台の一番上に立つ日の記事を、私たちも早く書きたい。

photo/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima


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グランプリファイナル2007 フリー終了後、髙橋大輔共同インタビュー

Daisukep065 ――グランプリファイナル、惜しくも2位という結果でしたが……。
大輔 やっぱり優勝しにここに来たので、こういう結果になって悔しいです。1本目の4回転と後半のサルコウのパンク……。4回転が3回転になったときは「やっちゃった!」っていう気持ちが大きくて。ここで失敗したから、後半プラスがつくはずの構成が、うまくいかしきれなかったですよね。サルコウの失敗も普段まずしないことなのに、本番でしてしまって……。

――1本目の4回転の失敗、やはり演技に影響しましたか。
大輔 はい、途中で「4回転、どこかで入れなきゃ」と考えながら滑ったり、ステップで失敗して頭が真っ白になったり……。気持ちはずっと落ち着いていなかったかもしれない。また昨日からの疲れが残っていて、朝から体が重かったんです。このあと全日本が控えているので、時差を完全にこちらに合わせたくなくて……。現地にもぎりぎりに入って試合に臨むっていう、いい経験ができました。でも……悔しいです。優勝したかった。

――しかし2本目のジャンプで4回転、見事成功しましたね。
大輔 4回転は、もともと1本で行く予定でした。でも「これは4回転入れなきゃ勝てない!」と思って、とっさに2度目を入れたんです。あそこで4回転が跳べたことは自信になったかな? ニコライにも、今日は演技の出来よりも、急に構成を変えて4回転を入れられたことが大きい、といわれました。でも次は最初から2本入れて、両方成功できるように、がんばります。

――時差調整や4回転。世界選手権前にここで試合をした意味は大きそうですね。
大輔 そうですね。エヴァンとはアメリカで試合してますが、ステファンやジョニーたちがどこまで仕上げて来ているか、一緒に練習をして、ここで知ることができた。とりあえずトップクラスの今年の雰囲気がつかめたのは良かったです。自分も飛ばしていこう! って気持ちになりました。試合はまだ誰の演技も見てないんですが……。ステファンは完璧ではなかった? そうか、ずっとiPodを聞いていたけれど、それでも歓声が大きかったから、いい演技なんだ、と思ってました。でも僕も完璧じゃなかったからな。僅差か……。やっぱり自分に対して情けない……。がんばれよ、何してんだ! って感じです。(隣でインタビューを受けるランビエールを見ながら)イケメンですね……。

――髙橋選手も、イケメンですよ。
大輔 いやいやいや、全然勝てません……。あ、でも見て(プロトコルの最後のスピンの箇所を指しながら)。すごい、レベル4! レベル3、3、4……。2がひとつもないよ! イェイ!

――得点だけでなく、すごいことですよ。トリノ五輪以降、1位か2位しかとっていない。2位でここまで悔しいと思えるようになってしまった。
大輔 そうですね……。4回転がパンクした時も「これで負けたかな?」と思ったけれど、気弱にならずに「まだ後半あるぞ!」って、すぐに攻める気持ちになれました。試合ごとの波も、大きなものはなくなったかな。オリンピックのころとは、心構えは違うと思います。もちろん不安はいつもたっぷりあるけれど、それを超えるやる気が、今はあるから!

 いつもしっかりした言葉で演技を振り返ってくれる髙橋選手だが、この日はいつになく饒舌。悔しさがあふれてあふれて仕方がないようだった。この気持ちをぶつける機会は、この先まだまだある。次回はうれしさで饒舌な髙橋大輔に、会いたい。

photo/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima 

*髙橋大輔選手のインタビューは発売中の日本男子シングルオフィシャルファンブック『Cutting Edge2008』に掲載されています


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グランプリファイナル2007 男子シングル終了 髙橋大輔2位 

Daisukeimg_9824  髙橋大輔のグランプリファイナル、フリー。
 この試合を、私は心から楽しんだし、彼が勝てなかったと知った時は、心の底から悔しいと思った。スケートを見る楽しみも、競技の興奮もこんなに味わえたのは、久しぶりだ。

 髙橋大輔の滑走前には、エヴァン・ライサチェクとステファン・ランビエールのふたりが、ジャンプミスはあったものの素晴らしく気迫のこもった演技を、まずは見せてくれた。でもこのあとに、私たちはまだいいものが見られるのだ。しかも彼らに負けない演技を見せると期待され、最終滑走で滑るのは、日本の代表なのだ! かつては彼が滑る時には必ず抱いた不安、「大輔、大丈夫かな?」という気持ちが、今日はまるでない。ほんとうに彼の演技が見られることがうれしくて、心の底からわくわくしてしまう。見ている人をそんな気にさせるスケーターに、オリンピックから2年も経たずして髙橋大輔はなってしまった。

 冒頭にぜひ跳びたかった4回転は、残念ながら3回転に。この時点で本人は「やっちゃった! もう勝てない!」と思ったそうだが、すぐさま予定していなかった4回転をもう一度入れてしまう試み、そしてその成功に、見ているこちらはたちまちヒートアップ。「大輔、すごい!」 続くトリプルアクセルも、もちろん成功。アクセルからの3連続コンビネーションも難なく着氷! ここでもう、見ているこちらの緊張の時間は終わってしまう。大丈夫、もうきっと失敗などしない。あとは髙橋大輔の滑りを存分に楽しめばいいのだ。
 強く、自在に体が動くサーキュラーステップは今日も素晴らしかったし、スローパートの振り付けの見せ場では、青年が何かに身を捧げるさまを描いているよう。「物語は気にしないで、僕なりのロミオとジュリエットを滑れたら」と語っていたが、この日のフリーはフィギュアスケートに身も心も捧げている髙橋大輔自身の魂を表しているように見えた。
 いいなあ、素敵だなあ……。よく滑るスケートも、手足だけでなく頭や上半身までよく動くステップも、これが試合であることも優勝がかかっている大事な演技であることも忘れて、心底楽しませてくれるものだった。
「でも大きなミスはなかったけどサルコウがパンクしたり、小さなミスは続いてしまって……。何してんだ? って感じです」と本人は首を横に降る。
 確かに、もっとやろうと思えば、もっとこの人はできるだろうな、と思った。昨日のSPで感じた「こんなもんじゃないのに!」という思いとは少し違い、「この人なら、もっともっと楽しませてくれるだろうな!」と、さらにわくわくするような気持ちだ。「自分の演技ができなかった」というけれど、4回転に2度チャレンジして1度は成功し、トリプルアクセルも2度入れて。ここまでやって、スケートも誰よりも伸びて、わくわくさせてくれて、彼はもう間違いなく、世界の髙橋だ。
 オリンピック以来、久しぶりに生で彼の演技を見るトリノの人がいたら、さぞやびっくりしただろう。「いつの間に彼は、こんなチャンピオンの滑りをするようになったんだい?」と。

「今日は……かなり緊張してたんですよ。足なんてガクガクで、ステップも全然体が動いてなかった。緊張した理由は……久しぶりの大一番だったからかな。集まっている選手たちがもう、グランプリシリーズとは違いましたから。世界選手権以来、久々に大きいの来たな! って。でもこれだけ世界のトップがほぼ出揃って2位。この結果を、プラスにしていけたら」
 シーズン前、今年は一戦一戦試合のたびに何かを得ていきたい、と話していたが、本当に