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この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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フィギュアスケート特集

ザ・アイスで真央&ジェフが競演! 音楽を募集中

Mao2e6979  ドリームオンアイスでは赤と黒の衣装をまとい、タンゴで新境地を見せてくれた浅田真央選手。世界チャンピオンとして迎えたアイスショーシーズンも、いつもとかわらない真央スマイルで、ファンを楽しませてくれている。
 来る7月26日から始まる名古屋・モリコロパークでのアイスショー、「ザ・アイス」でも、浅田真央ファンお楽しみの仕掛けが盛りだくさん! まずは姉の舞選手と姉妹競演するナンバー「Dream Girls」が披露される予定だ。こちらの振り付けは宮本賢二さん。「Dream Girls」といえば、昨年のザ・アイスで姉妹そろってフィナーレで踊ったナンバー。お客さんだけでなく、浅田姉妹も楽しくて仕方がなかったというあの雰囲気を、今年、もう一度味わえそうだ。
 そしてすでに話題になっているのが、カナダのジェフリー・バトルとの世界チャンピオン競演! 昨年も安藤美姫&高橋大輔など、めったに見られない組み合わせでファンを驚かせたフィナーレで、今年はふたりの世界チャンピオンがコラボレーション!
ザ・アイスでは現在、真央&ジェフ、夢のペアに滑ってほしい楽曲を募集中。「ジャンルは気にせず、ぜひいろいろな音楽をリクエストしてください」と、振付担当の坂上美紀さん。

 応募は官製はがきに郵便番号・住所・氏名・年齢・「リクエスト曲名・アーティスト」を明記し、
〒460-8612 『中京テレビ ザ・アイス リクエスト係』
 宛てに。締め切りは7月4日なので、お早めに。

 応募の詳細、公演概要、出演選手などの情報は下記のサイトにて。
 真夏の氷上祭典2008 THE ICE公式サイト 

 ふたりの現世界チャンピオンだけでなく、エヴァン・ライサチェク、ブライアン・ジュベール、サーシャ・コーエン、ダン・ツァン&ハオ・ツァン、そして安藤美姫など、世界のメダリストが集結! さらに中野友加里、長洲未来、小塚崇彦と、これからチャンピオンを狙うメンバーたちも元気な姿を見せてくれる。
 まだ2年目のザ・アイスだが、出演メンバーが豪華なだけでなく、インタビューコーナー、華やかなオープニングやフィナーレ、選手たちとお客さんが一緒に踊るダンスなど、氷上と客席が一体となって楽しめるアイスショーだ。「見に行く」というより「参加する」アイスショー。まずは音楽リクエストに応募し、ショーを作り上げる、その感覚を体験してみよう。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 


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エキシビション終了後、浅田真央選手コメント「部屋の掃除もしなきゃ!」

Mao_f6i4660  ――世界女王となって初の演技、いかがでしたか?
真央 一番になると、すごく最後の方で滑るんですよね。いつも滑る前はエキシビションでも緊張するんですけど、「優勝したし、あんまり恥ずかしい演技はできないな!」って、いつもよりすごく緊張しました。でも今日はお客さんも盛り上がってくれたし、ああ、優勝したんだなーって。気持ちを確認しながら滑りました。

――ジャンプの失敗、ちょっと惜しかったですね。
真央 失敗するかなあ、と思ってたら、ほんとに失敗しちゃいました(笑)。フリーで転んだところは大丈夫です。痛みはもうないし、意外とスムーズに動けました。

――昨日は男子の試合も見に来ていましたね。
真央 男子のフリー、見ました! 女子の方が早く終わる大会は久しぶりだったので、男子の試合をゆっくり見るのも久しぶり。自分が滑るみたいにに緊張して、見ていてすごく力が入っちゃいました。

――これでやっと、世界選手権も終わりました。
真央 はい、エキシビションが終わらないと試合も終わった気がしないんです。だからこれで、すべて終わりきった! って感じ。今思えば、早かったなって思います。日本に帰るのが楽しみです。日本に帰ったら家でエアロとこまちとティアラに会って、あと、部屋の掃除もしなきゃいけない! それからおいしいもの、食べに行きたいです。

――練習はしばらくお休みできますか?
真央 すぐにジャパンオープンが始まるので、あんまり休めないです。でもしばらくはリラックスしながら、ストレスを感じない練習をしたいと思います。

――少し早いですが、来シーズンに向けて、力を入れていきたいところは?
真央 まずジャンプ、特にルッツで加点をもらえるように、質を上げていきたいです。もちろん他のジャンプも。もうひとつ、次のシーズンは表現や表情の面をがんばってみたいです。ローリーにもタチアナにも(振り付け師のローリー・二コルとタチアナ・タラソワ)言われてるんですけど、表情は鏡を見たりして、自分でも研究して。ジャンプの質と表情、そのふたつで上手くなることを目標にしたいです。

――コーチは未定とのことですが、振付師はどうですか?
真央 ローリーとタチアナ、両方にお願いするのはたぶん変わらないと思います。今シーズンは、タチアナの作ってくれたショートの方が難しかったかな。自分のイメージにはない感じ、大人っぽいスローな曲で最初は試合でも苦戦したし。ローリーの作ってくれたフリーはテンポの速い曲で、得意な音楽です。楽にプログラムになじめました。

――これで、オリンピックまであと2年、となりましたが。
真央 2年、まだまだあるので(笑)。オリンピックまでに毎年毎年、上達できるようにがんばって、オリンピックで最高の演技ができるようになれたらいいなーと思います。

――ところで今日のヘアスタイル、素敵ですよ。
真央 あ、これ、この会場でタダでやってもらいました(スカンジナビウム内にあるメイクアップサロンの宣伝ブース。誰でも無料でセットをしてもらえるサービスがあった)。

――彼(某新聞記者)も真央ちゃんと同じところでセットしてもらったんですよ!
真央 え、本当ですか? 記者の人、ふつうはそういうことしないですよね? えー、すごーい(記者の方を興味深げに見て)あっ! もしかして選手だと思われたのかもしれないですよ!

 今シーズンは、世界中どこに行っても浅田真央の人気に驚いた一年だった。
 彼女の愛らしさ、純粋さ、素朴さは、どんな精神文化を持った人にも伝わる魅力なのだと、改めて感じる。共同インタビューでも、質問した記者の方にきちんと顔を向けて話してくれるし、がんばって真央ちゃんの記事書くぞ! という気持ちに、みんなをさせてしまうのだ。
 
photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 
*写真はエキシビションオープニング。リボンを持って登場する浅田真央選手


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女子フリー終了 浅田真央選手コメント「食べたいもの、全部食べます」

Mao_12e6798 ――滑り終えた瞬間は、どんなことを考えていましたか?
真央 まずほっとしました。でもアクセルが跳べなかったので……それが悔しかったです。

――ああいったアクセルの転倒の仕方は、よくあるんでしょうか
真央 初めてです、あんなコケ方は。練習でもしたことがないので、すごくびっくりしました。自分でもどうして転んでしまったのかわかりません。一瞬のことなので……。でも、踏切がすっぽ抜けたので、踏切が原因だと思います。

――今朝は公式練習の曲かけでも、トリプルアクセルは失敗していましたね。
真央 曲をかけると音楽を聴いてしまって、ジャンプに向かう気持ちに迷いが出る……そんなことはあるかもしれないです。でも今日のフリーは跳ぶしかない! って思ったから、迷いはなかったのに、こけてしまいました……。

――失敗はありましたが、見事初優勝ですね。
真央 それはすごくうれしいです。すごくいい思い出になると思います!

――どんなふうに今日の優勝をお祝いしますか?
真央 えーっと、いっぱい食べます(笑)。

――どんなものを?
真央 食べたいもの、全部です。
コストナー ティラミスがおいしいよ、食べるといいよ!

――去年は安藤美姫さんが優勝、今年はあなたが優勝。日本からはなぜこんなに強い女子スケーターがたくさん生まれるのでしょうか。何か秘密はあるんですか?
真央 秘密はわからないけれど……。日本には安藤選手、中野選手の他にも、たくさん素晴らしい選手がいます。世界に出る前に、日本のなかでも刺激し合いながら練習できるから、上達していくんだと思います。

――今回はコーチ不在での世界選手権でしたが、今後はどうするか決まっていますか?
真央 コーチのことは世界選手権が終わってから考えようと思っていました。これからいろいろ決めていくことになると思います。

 メダリスト3人がそろった記者会見でも、たくさんの質問が浅田真央に寄せられた。チャンピオンとしてふさわしい力を持ちながら、05年のグランプリファイナル優勝以来、世界ジュニア、ファイナル、世界選手権と、大きな大会の金メダルを取り逃してきた真央選手。やっと誕生した世界女王・浅田真央なのだ。 

photo/Sunao Noto  text/Hirono Aoshima 


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SP終了後、浅田真央選手コメント

Maop1000633 「今日はジャンプは良かったと思います。フリップは降りた時に回りすぎそうになって、次のループが危なかったんですけど、うまくいって。終わった瞬間は、ミスなくできて良かったなー、と思いました。

 ショートに対するプレッシャーはなかったです。プレッシャーとかじゃなくて、うーん、自分の中には『去年の失敗を取り戻したい!』って気持ちがありました。だから『行くしかない!』って思って。

 でも、スピンでレベルが取れなかったのが、すごく悔しいです。自分では回転数、数えたつもりだったんですけれど……。ジャンプは良かったのにスピンがダメだったから、採点すると70点か60点……。 コストナーの演技は見ていないけれど、自分がレベルが取れていなかったので、2位になったのはそのせいだと思います。

 シーズンベストスコアも出たけれど、スピンでレベルが取れてたら、もっと高く出たのかなあ。でもシーズンベストが出せたことは、明日につながるんじゃないかな。

 1位とは点数もすごく僅差なので、フリーへの気持ちも去年に比べたら楽だとと思います。明日はもうエレメンツひとつひとつ、取りこぼししないように。スピンのレベルは、大丈夫です。しっかり考えて回れば、それでいいので。

 コーチの先生はいないけれど、連盟の方が先生と同じように見てくださるので、特に問題はないです。試合の2週間前から連盟の方と一緒に練習してきたし、いつもと変わりなくできたと思います」

 SP終了後は、スピンのことをさかんに気にしていた浅田選手。実はスパイラルシークエンスもレベル1だったのだが、「これから映像を見て、明日はレベルを取れるようにがんばりたいです」とのこと。一晩で対策を取るのは大変だが、レベルを気にしすぎないで、のびのびと滑ってくれれば!

text/Hirono Aoshima


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女子シングルSP終了、浅田真央2位 

Mao_12e2512_2  コンビネーションと単独ジャンプ。前半のふたつのジャンプが無事に決まったとき、「あ、これで浅田真央の優勝は決まったかもしれないな」と思った。
 それほどにイエティボリでの浅田真央は調子が良く、それほどにSPに向かう彼女はナーバスに見えた。
 SPさえ無事終えてくれれば……。そんな思いが、見守る人々、特に今シーズンの彼女をよく知る日本のファンには大きかっただろう。

 演技が始まり、ジャンプを踏み切る刹那にも、彼女の緊張感が矢のように見ている人に突き刺さるほど。こんなにも緊張していたら、普通のスケーターならば跳躍のタイミングをを乱しているだろう、と思うほど、強張った表情でジャンプに向かっていく。
 久しぶりにクリーンにSPを滑った全日本選手権後に、「ショートを克服できました!」と笑っていたけれど、世界選手権、グランプリシリーズ、ファイナルと立て続けに失敗したSPへの苦手意識は、やはり相当のものだったのだ。
 でも浅田真央は今夜、暗く長かったトンネルを、きちんと自分の力で抜けだした!
 ふたつのジャンプをきっちり跳び、特にトリプルフリップ-トリプルループは、ただの3回転-3回転というだけでは足りないほど、高さがあって華やかな、浅田真央本来のジャンプ。
 この、最大の難所を越えたのだから、もう浅田真央は大丈夫だ。
 あとは長い脚を思い切り上げてビールマンスピンを回り、スパイラルもステップも、堂々と思うとおりに見せればいい。
 彼女自身も、心の底からうれしかったのだろう。「あとは今の真央を出すだけでいいんだ!」、そんないきいきした気持ちが、見ている人々みんなに伝わってくる。特に印象的だったのは鳥の羽ばたきをイメージしているというストレートラインステップのモーション。ほんとうに鳥のような自由さで舞う姿を持て、もう、こんなふうに腕を動かせること、こんなふうに体を波立たせられること、これができること自体が、浅田真央の宝物だ、と思った。いや、彼女だけの宝物ではなく、フィギュアスケートを愛する者みんなにとって、浅田真央のスケートは宝物だ。

 間違いなく今季最高の演技だったショートプログラム。
 しかし、スパイラルシークエンスのレベル1、ルッツのエッジエラーなどがあって、わずかな点差で順位はコストナーに次ぐ2位。
 この結果に対しては、海外のメディアも「マオは点数がおかしいとは思わないか?」と彼女に問うたほど、ちょっとした物議をかもしだした。
 演技後には明るかった彼女の表情も、ちょっとだけ「2番なのか……」とがっかりした色を見せてる。
 せっかく鬼門のSPを乗り越え、彼女自身も自信をつけたはずなのに、厳しいレベル判定でちょっと水を差されたような気持ちが、正直に言えば少しした。

 でも、できればレベルを取りこぼししたことよりも、SPが無事終わったことだけを考えて。あとは得意のフリーだということだけ、考えて。
 ただ好きなように、浅田真央自身が滑りたいように、フリーは滑ってほしいと思う。
 待っているのは、様々な思いと経験を経て作り上げた今の浅田真央を、世界中の人に見せる、最後の舞台、とっておきの舞台なのだから。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima


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女子シングル開幕直前 浅田真央はコーチ不在でどう戦うか?

Maocol_mg_4243_4 「スケートのコーチはね、技術を教える指導者であるともに、心理学者でもなければならないんですよ」
 そう語ってくれたのは、日本人初の世界選手権メダリストで、現在はコーチとして多くの選手を育成している佐野稔さんだ。
「技術なんてのは一度教えて選手ができるようになれば、そこまで。大事なのは試合で、緊張してガチガチになっている選手たちに、どう声をかけてあげられるか、なんです」
 佐野稔コーチのリンクサイドでのひとこと。話題になったのは、03年冬季アジア大会で荒川静香選手が優勝した時のことだ。ここで彼女は3回転-3回転-2回転というビッグジャンプを成功させたのだが、直前に佐野コーチかけた言葉はこうだ。
「遊んできなよ!」
 練習では軽々と難しいジャンプを跳んでしまう荒川さんが、本番ではなかなか本来の力を発揮できないでいたころ。「遊んできなよ!」のひとことが、彼女の心を楽にし、フリーでは会心の演技。金メダルをも呼び込んでしまった。
 また、田村岳斗さんにかけたこんな言葉も印象的だ。
「トリプルアクセルは跳ばなくてもいいぞ!」
 選手時代、4回転はひとつのプログラムで2回決められる力をもっていながら、トリプルアクセルはどうしても苦手にしていた田村さん。試合前はいつもアクセルに大きなプレッシャーを感じてきたという。でも佐野コーチのこの言葉で、すっと気持ちが軽くなり、トリプルアクセルの代わりに4回転-3回転-2回転の高難度コンビネーションを着氷! 史上数人しか跳んでいないジャンプの成功は、「トリプルアクセルは跳ばなくてもいいぞ!」、そんな言葉をはずみに生まれたのだ。
 佐野稔コーチは、試合前の選手にかけた言葉を、大切にノートに記録してあるという。メンタルサポートの難しさは、何年やっても変わらないから、と笑って教えてくれた。

 コーチの仕事、特に緊張感いっぱいの、試合に向かう選手の精神的なケアは、どんな優秀なコーチでも完璧にこなせるものではない。選手との相性だってあるだろう。
 ラファエル・アルトゥニアンは素晴らしいコーチだ。アメリカにわたってから、浅田真央のスケーティングは格段に磨かれたし、「ダバーイ!」(行けー!)というアルトゥニアンの熱い言葉は、彼女の背中を強く推してもくれた。
 でもジュニアの注目株から一気に世界のトップスケーターに上りつめ、どんな大会でも極限の緊張感にさらされてきた浅田真央。彼女は、いちばん気持ちが張りつめているとき、また、ありえないようなミスをして落ち込んでいるとき、日本語で何か言ってくれる人が欲しかったのだ。
 その役割を今シーズン担ってきたのは、日本スケート連盟強化部のスタッフたちだ。たとえばトレーナーの加藤修さん。浅田真央はめったに、「誰かがこう言ってくれたから」という類のことは、インタビューでは言わない。そんな彼女が、06年世界ジュニアでキム・ヨナに敗れた時に語ったこんな言葉が、耳に残っている。
「人間は機械じゃないんだから。時にはうまく動かないときだってあるよ、って加藤先生が言ってくれたんです。それでちょっと、元気になったかな」
 07年グランプリファイナルの公式練習の時も、浅田真央のリンクサイドにいつも加藤トレーナーが立っていることについて、彼女に尋ねてみた。
「加藤先生がいてくれると、真央が安心するから。だからいてもらってます」
 四大陸選手権にも、いつものように加藤修トレーナーが来ていることを確認して、私は安心した。彼をはじめ、顔なじみの連盟スタッフたちがかけてくれる言葉があれば、世界選手権の浅田真央も大丈夫だろう。

 チームメイトだって、ともに競いながらもきっと浅田真央の支えになってくれる。
 これも06年世界ジュニアでの出来事だが、男子シングルで優勝した小塚崇彦が、表彰式後に記念のブーケを観客席に投げた。このとき「真央、もらいなよ!」と声をかけたのはチームメイトの澤田亜紀や武田奈也。小塚崇彦もしっかり浅田真央に向けて、勝利の花束をトスしてくれた。銀メダルで落ち込んでいる彼女に、チームメイトみんなで見せた気遣いだ。
「四大陸メンバーも、真央に美姫、崇彦と、いつもいっしょに中京大で練習してる仲間が多かったんですよ。だから普段の練習みたいな雰囲気で、オフの時間からリラックスできたかな」とは、四大陸選手権での中庭健介選手の言葉。
 練習リンクを名古屋に戻したことで、そんな仲間たちとの親しさも、さらに増したことだろう。

 来シーズンの彼女のコーチがどうなるかはわからないが、技術指導のみならず、精神面で彼女を支えられるような人がうまく見つかればいいな、と思う。安藤美姫の場合は、オリンピック後、モロゾフコーチ、門奈コーチと、信頼できる指導者に恵まれ、着実に成果を上げてきた。
 浅田真央にも、そんな人が見つかるのだろうか。
 あるいは、それより先に、彼女が自分の力で強くなってしまうだろうか。

photo/Sunao Noto   text/Hirono Aoshima 
*写真は全日本選手権記者会見にて


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女子SP前日、浅田真央選手コメント

Maocom1p1000582 ――ショートプログラムの滑走順、抽選ではちょっとアクシデントがありましたね。
真央 そうですね。結局45番目ですけど、グループの4番目なので、6分間目一杯練習しても休憩ができる順番。いいんじゃないかなーと思います。でも滑走順のことも含めて、ショートのことは気にしないで、自分の演技をしたいです。っていうか、気にしてないです(笑)。でもすごくショートプログラムは肝心な試合だと思うし、フリーのことよりも今はとりあえずショートのことを。集中して滑りたいと思います。去年の世界選手権では、してはいけない大きなミスをしてしまったので……しっかり考えていきたいです。

――公式練習を見ていても、調子はいいようですね。
真央 すごくいいです。なので、これから本番までの間にジャンプをもう一回確認して、このまま調子を落とさずに行けるようにしたいな。

――衣装はこれまでのもので滑りますか?
真央 ショートは全日本で着たものと同じです。フリーはちょっとだけ変えたんですけど……たぶんどこが変わったかわかんないと思うんです(笑)。見た感じの変化はちょっとだけかから……。デザインは前のと一緒ですけど、部分的に生地が良く伸びるように、体にフィットするようにしてもらいました。でもどこが変わってるか、すごくよく見たらわかるから……見てみてください(笑)。

 ショートプログラムといえば、やはり思い出してしまう昨シーズンのジャンプミス。そしてシーズン前半にも続いた失敗。「気にしていません」という言葉を聞くと、かえって「気にしているのでは?」と心配になってしまう。「気にしていません」も「調子がいいです」も、我々への返答というより、自分自身に言い聞かせている言葉のように聞こえた。


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女子フリー終了、浅田真央優勝&安藤美姫3位 風とカルメン(2)

Id7e0931   対する安藤美姫の演技は、浅田真央とは面白いほど対照的に、人間的だった。
 滑り出しのマイム、ごくごくナチュラルな投げキッスの色気! 
 なんだか同性の私でもくらくらしそうなほどだ。
 うん、今日の彼女は、気持ちが入っている! 3−3、4回転と、冒頭の大事なジャンプにミスが続いても、大丈夫、彼女の真骨頂である滑りの力強さはしっかりキープしている。
「4回転が回転さえできなかったことが一番くやしいけれど……最初のふたつのジャンプ以外はきちんとできました! いつもの練習で自分のものにしたことを出せるよう、しっかり集中していたから」
 その言葉通り、後半は次々決まるジャンプも、気持ちをたっぷり込めてパーンと足をあげるスパイラルも、軽やかで、かつ色っぽさに満ちたステップも、何をしてもソウルのお客さんが沸いた。
 特に安藤美姫独特の、凛々しくかまえてソリッドに跳ぶジャンプ! このジャンプこそが、今日はカルメンの熱い恋心を表しているようで、なんだか感動してしまった。一流のジャンパーは、感情も、伝えたい何かも、ジャンプで表現できる。ジャンプでプログラムを彩ることさえもできるのだ。
 きっとこういう安藤美姫を、ソウルのお客さんは見たかっただろう。安藤美姫自身も、見せたかっただろう。
 これからが見せ場のステップ、というその瞬間には、「見ててね!」という彼女の声が聞こえたような気がした。「見ててね!」——これは、ちょっと甘えん坊の彼女が、恋人に語りかけるような言葉。そうか……きょうの安藤美姫はきっと、誰か大切な人に、この「カルメン」を見てほしくて滑っているのかもしれない。だからこんなに人間的で、こんなに女っぽくて、こんなにかわいらしいのだ。

 おそらく、少なからぬ数のソウルのお客さんを恋に落として。
 安藤美姫のカルメンは、最後のレベランスさえも、大好きな人にするようにキュートに決めて、オウリヌムリのリンクを去って行った。

 実に対照的だった日本のふたりの演技、どちらにより心を奪われるかは、人それぞれだろう。
 もしどちらかをあげなければならないとしたら、私は今日は、安藤美姫の「カルメン」に軍配を上げたい。
 もし浅田真央の演技の風のそよぎのなかに、生き生きした鳥の羽ばたきのようなものが垣間見えたら。少しでも血の通ったものの生命力が感じられたら、また違ったかもしれない。
 冷ややかに広がる氷の上で、人の身体がどんなに美しく動くか。それだけではなく、地上ではありえないスピードで疾走しながら、人の心のどんな動きを彼女たちの身体が伝えてくるかを、私はフィギュアスケートで見たいのだ。

 リンク入りした時からにこにこと機嫌がよさそうだった安藤美姫と、体力がいつもより無かったという浅田真央。コンディショニングによって、また違うものを見せてくれる時も、もちろんあるだろう。
 安藤美姫が恋する心を忘れてただのジャンパーに戻ってしまうことだってまだあるし、浅田真央がはじける笑顔をいっぱいに銀盤に咲かせることだって、またある。
 結局、ふたりともまだ、17歳と20歳。
 氷上を吹きわたる風も、恋するカルメンも、どちらも発展途上中の、でも確実に素敵な、もっと素敵になりそうな、日本の誇るエースだ。
 すでに世界の頂上で戦うトップアスリートで、試合のたびに、メダル、ライバル、ジャンプ対決……と騒がれてしまうけれど、時には彼女たちの年齢や素顔を思い出して。
 これからまだまだ、日々成長していくふたりの姿を、ゆっくり楽しみたいと今夜は改めて思った。
 私たちも楽しむから、ふたりにも、もっともっと滑ることを楽しんでほしいと。

photo/Takayuki Honma text/Hirono Aoshima 


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女子フリー終了、浅田真央優勝&安藤美姫3位 風とカルメン(1)

Id7e0466_2  トリプルアクセルも3回転−3回転も決めた浅田真央が優勝。
 4回転に失敗し、3回転‐3回転も入らなかった安藤美姫は3位。
 単純に、ジャンプを中心に今日のふたりを比べればそうなる。
 でも、プロトコルの上の数字には出てこない部分、二人の演技の印象の好対照さこそが、今夜は際立っていたように思う。

 先にリンクに現れたのは、深いワインレッドの、少し大人びた衣装を着た浅田真央。気品あふれる王女のようにも、貴婦人のようにも見えて、大人になろうとしている今シーズンの彼女にとても良く似合っている。
 しかし音楽が始まり、アクセルも3−3もいきなり軽々と決めて見せると、華麗な衣装をまとうその身体は、ほんとうにスケートのために生まれて、スケートのために鍛え上げられたものなのだ、と今更ながらに感じた。
 ジャンプだけではない。ロシアのタラソワコーチやバレエの専任教師に仕込まれた、タメの良くきいたメリハリある動き。こうすれば美しく見えるよ、と教えられたとおり、自在に動かせる身体は、天性のリズム感とあいまって、そよ風のように軽々と音楽にのっていく。
 そんな今日の浅田真央は——少し、人間ではないもののようだった。
「冷静に、冷静にって考えながら滑りました。冷静にならないとジャンプも失敗してしまうのを知ってるから、焦らず落ち付いて! って思いながら」
 本人もそう語るように、感情を極限まで廃して、跳ぶべきジャンプを跳び、こなすべき動きを続ける、何か人間ではない、美しいもの。
 演技前には大歓声で彼女を迎えた韓国のお客さんも、大きなジャンプを跳び終えた後は、かたずを飲んで見守っていたように感じる。選手のみなぎるパッションや生命力に同調して、ウォー! と叫びながら見るのではなく、静かに掲げられた一幅の絵を、息を詰めて見守るように。
 いや、絵というよりもむしろ、今日の浅田真央の演技が生んだ感動は、風のそよぎや空の青さに心が洗われる、そんな感動に似ていたかもしれない。特に、表情をほとんどたたえず、身体の動きに合わせて時折大きくさまよわせていた視線。それはまさに、潔いほど心を持たない、氷上を吹きわたる風の視線だった。

photo/Takayuki Honma text/Hirono Aoshima 


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全日本選手権女子フリー終了 浅田真央優勝「気持ちの階段」

Maoimg_3420s  ショートプログラムで今シーズン初めてノーミスの演技を披露した浅田真央。誰もが「フリーも大丈夫」と思っただろう。しかし最初のトリプルアクセルがシングルになってしまった。「ちょっと消極的になってしまって。もっと気持ちを前に出せばよかったんですけど」

 練習ではトリプルアクセルも、トリプルフリップートリプルループのコンビネーションもちゃんと降りている。しかし試合では失敗してしまう。練習でちゃんとできていることが試合でできないのは、技術の問題ではない。浅田真央が言うように気持ちの問題だ。

 気持ち。この形の無いものに選手は翻弄される。練習ではできることが試合ではなかなかできない。それは、スケートを始めたばかりの子供でも、世界選手権でメダルを争う選手でも同じだ。できないからこそ選手は悩み、苦しむ。
 浅田真央は「何かを変えなければ」と思い、ショートプログラムの衣装を変えた。たったそれだけのことで何が変わるのかと思うかもしれない。でも、気持ちを変えるために、何かをしなければならなかったのだ。気持ちを変えるのには何かきっかけが要る。

 フリーではトリプルアクセルをミスしたことがきっかけになった。「トリプルアクセル以外の部分、ジャンプだけじゃなくて全部ちゃんとやろうと思って」気持ちを切り替えて、演技後半のトリプルフリップートリプルループも決めた。これで3回続けて試合で決めたことになる。「今回の試合で良かったことは、ショートプログラムを克服したこと」と語った浅田真央。克服というのはつまり、苦しんできたコンビネーションジャンプを跳べる気持ちを、ようやく持てるようになったということだ。

 浅田真央はちゃんと階段を上っている。といってもそれは技術の階段ではなく気持ちの階段だ。技術の階段はかなり上っているが、気持ちの階段は一気には上れない。ファンの頭には、ジュニア時代のミスをしない浅田真央が頭にあるので、完璧な演技を毎回要求されてしまうけれど、この気持ちの部分については成長を見守るしかない。なんといっても、まだ17歳なのだから。

text/Seiho Imaizumi  photo/Masami Morita    


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グランプリファイナル2007 エキシビション終了、浅田真央共同インタビュー「ジェラートはコーヒー味」

Maoimg_1761  とにかく楽しそうに、大きな動きでエキシビションナンバー「So deep is the night」を滑った浅田真央選手。泣いたり笑ったりの「真央ちゃん」に、トリノのお客さんもすっかり夢中だ。

――フリーから一夜明けて、グランプリファイナルはいかがでしたか?
真央 ショートプログラムでは初めて経験するようなことが起きて……。二度とこういう事がないように、トリノでのことをこれからに生かしたいです。やっぱり問題は自分の気持ち! 逆にフリーでの巻き返しは、すごく自信になりました。今年はずっとこのパターンで、最後は笑顔で終われてるから、いいのかな、悪いのかな……悪いですね(笑)。

――フリーは高得点も出ましたし、SP次第では総合得点200点超えも狙えそうですね。
真央 そうですね、昨日のフリーは今シーズン一番良かったし……。でもやっぱりショートを完ぺきに滑ることをまず考えたいです。それができたら、得点のことも考えられるかな。

――今日のエキシビションでは、いい笑顔が出ていました。
真央 試合と違って、自分でもすごく良かったと思います。でもステップで失敗しちゃったので、そのぶんダブルアクセルをたくさん跳んでみました(笑)。最後、音楽がちょっと足りなくなっちゃったのは、レイバックスピンのほかにもういっこ、張り切ってスピンを入れちゃったので、そのせいかな。

――トリノで楽しい思い出はできましたか。
真央 どこかに遊びに行ったりはほとんどできなかったんですけど、ショッピングモールでジェラートを食べました。荒川さんがオリンピック前に食べたっていうお店です。ショートの日とフリーの日、2回行ったんですよ。食べたのはコーヒー味!

――ジェラート食べて、元気になって。全日本が目前ですが、これからの予定は?
真央 アメリカで一週間練習してから、日本に戻ります。これからもう一度、スピン、ステップ、スパイラルをチェックして、ジャンプも毎日コンスタントに跳んで。全日本選手権でも3回転-3回転は2回、ファイナルと同じ種類を跳ぶ予定です。

――トリプルアクセルのさらに上のジャンプへの挑戦は、考えていませんか?
真央 うーん、全日本までは時間がないので、やるとしたらその先かな。新しいジャンプは練習を積んで、自分が自信を持てたら入れたいです。トリプルアクセルのコンビネーションも目標。練習でうまくいくようになったら、試合でも跳びたいです!

photo/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2007 女子シングル終了 浅田真央2位

Maoimg_0760  起死回生をかけた浅田真央のフリー。ジャンプを次々決めてスローパートに入ったとき、今夜の彼女の動きの優しさ、柔らかさは浅田真央の心そのままだな、と思った。
 一度でも浅田真央と接したことのある記者たちは、「真央ちゃん、いい子だよね……」とほんわかした顔をしながら振り返る。いつも笑顔で、一度でも会ったことのある人になら、「あ、こんにちはー!」と旧知の友人のように挨拶してくれる。そんな浅田真央の優しさ、気立てのよさが、今夜のフリーにはそっくりあらわれているな、と思った。
 ジャンプだってそうだ。すべての迷いをふっ切ったように跳ぶルッツ、アクセル、フリップ。どれを跳んでもプログラムの流れを決して途切らせない。流れるように助走して、リズミカルにタイミングをとって、氷と戯れるように楽しそうに跳ぶ。まったくの錯覚なのだろうが、「真央ちゃん」の優しい心がこのジャンプを跳ばせているのではないか、そんな気さえしてしまう。
 中野友加里の表現には、若く美しい女性の持つ気高さがある。ユナ・キムの表現も、彼女のゆるぎないプライドで満ち満ちている。それに対して浅田真央は、ふんわりやさしい「真央ちゃん」の心のスケートだ。たとえ彼女の気持ちが「はい、次のジャンプ!」「ステップしっかり動いて、レベル4!」とエレメンツのことで頭がいっぱいでも、手足は勝手に彼女の心を表わしていく。そんな演技が今夜はできていたのではないだろうか。

 アピール力は、他のファイナリストたちに比べてまだまだ足りない。昨日のSPの順位を受けての緊張感もあって、いい時の浅田真央の持つ勢いや生き生きとしたエネルギーも、今日は存分には感じられなかった。まだまだ彼女がこれから必要になるものはたくさんあるだろう。しかし何より人々を心配させたのは、今日の演技後の涙だ。
 これまでも浅田真央は、昨年の全日本選手権で、3月の東京世界選手権で、氷上で大粒の涙を見せたけれど、遠い異国の地での涙は、少し痛々しかった。こんなにたくさんの人が見ている前で感極まってぼろぼろに泣いてしまうほど、ファイナルの戦いはきつかったのだ。優しすぎる子は勝負に勝てない、ちょっとくらい勝ち気な子の方がチャンピオンになれるというけれど、見ている人々が心配してしまうほど、浅田真央の気持は優しくて、弱い。これから世界チャンピオンやオリンピックチャンピオンを目指していくというのに、こんなところで泣いていて、どうする? まだオリンピックでもなければ世界選手権でもない、シーズン前半のターニングポイントでしかない試合で! 強い人々はそう思ってしまうだろう。

 しかし、そんなに簡単に、人は変われるものではない。優しい人間が、一年や二年世界のトップ争いを経験したからと言って、あっという間に強くなれはしない。優しくて、まっすぐで、フィギュアスケートに一生懸命な浅田真央だからこそ、今こんなに苦しんでいるが、こんな真央ちゃんだからこそ、あの暖かくて見る人を幸せで満たす演技ができるのだ。柔らかで優しい今の浅田真央を失ってまで、気持ちの強い浅田真央はいらない、と私は思う。
 バンクーバーまで、さらに目指したいというソチ五輪まで、私たちは何度も、彼女のスランプに一緒になってやきもきし、復活するたびに一緒に涙するだろう。浅田真央は、そういうタイプのスケーターだ。彼女の演技を楽しみたかったら、やきもきや歯がゆさに付き合っていく覚悟がいる。

 キス&クライでもぼろぼろ泣いてアルトゥニアンコーチにあやされていた浅田真央は、大きなビジョンに写っている自分の泣き顔を見ると、ちょっと照れて笑顔を見せた。この涙でぐしゃぐしゃの笑顔が見られるなら、それでいいなと思う。本当に弱い選手だったら、今日のノーミスのフリーはできない。苦しんで苦しみ抜いた末に、必ず浅田真央はここにたどりついて、笑顔を見せてくれる。それを信じて、いつまでも浅田真央の一喜一憂につきあっていこう。

photo/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima


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グランプリファイナル2007 SP終了後、浅田真央共同インタビュー

 思わぬ結果で気落ちしていたにも関わらず、しっかり各国テレビ局の取材、ペン記者の囲み取材にも答えてくれた浅田真央選手。時間も短かったが、フリーを見据えた生の声を聞いてみよう。

――ショートプログラムは残念な出来でしたが。

真央 そうですね。全然だめでした。滑る前は緊張していて、でも滑りはじめたらリラックスできたんですけれど……。どうして失敗したのか、わからないです。

――ステップからのトリプルジャンプが跳べなかったのは?

真央 ルッツはステップでひっかかってしまって。今までにこんなことはなかったです。ショートプログラム、今シーズンはまだ一度もクリーンに滑れていないので、今日もノーミスでできなくて残念です……。

――でも点数は、それほど上位の選手に離されていはいないですね。

真央 自分でも思ったより点数は出てるな、と思いました。これでちょっとは明日のフリーで挽回できるんじゃないかと思います。

――今回はロシアからタラソワコーチも駆けつけていますが。

真央 はい。タラソワ先生からは特にアドバイスはないんですけれど、がんばれ! って応援してくれてます。


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グランプリファイナル2007 女子シングルSP終了 浅田真央6位 ショートプログラムの呪縛

Maotorinosp  あんなに調子が良くても、あんなに笑顔を見せていても、失敗してしまうのか――。浅田真央のショートプログラムを見て、呆然としてしまった。
 練習であれだけ気持ちよく決まってうれしそうだった3回転-3回転は、フリップでバランスを崩し、無理やりつけたループでお手付き。ルッツに至っては「助走のステップで引っ掛かってしまって」跳ぶことさえできなかった。ショートプログラムに苦しんでいたグランプリシリーズを象徴するかのように、ファイナルの一日目、浅田真央は信じられないミスを連発してしまった。
 本来の浅田真央の実力をもってすれば、難しいことなど何もないはずのジャンプ構成だ。トリプルアクセルが入っているわけでも、新しく挑戦中の3回転フリップ-3回転トウが入っているわけでもない。練習では10回やって9回はクリーンに滑れる構成だろう。前日や当日朝の練習ぶり、体のキレを見ていたら、ああ、もうこれは絶対大丈夫だ、と思っていた。それでも、浅田真央は失敗してしまうのだ。
 
 ショートプログラムはかつて、「絶対にミスが許されない」と言われていた。新採点システムが始まる以前、3つしかないジャンプをミスすれば、6.0満点の技術点は否応なく下げられてしまったころ。また順位点というものがあり、SPで順位で落とすとフリーでどんなに頑張っても自力では勝てなかったころ。そんな時代のことだ。あの伊藤みどりさんがアルベールビル五輪で、絶対的な実力を誇りながらも銀メダルにとどまったのは、ショートプログラムでミスをして4位、フリーでどんなに高得点を出そうと自力優勝が不可能な状況になってしまったからである。
 でも今は、違うのだ。最終順位は順位点ではなく、ショートとフリーの総合得点で決まる。ショートでどんなに低い順位をなっても、フリーで素晴らしい演技をすれば、いくらでもごぼう抜きができる。実際、今回のSPも、6位の浅田真央から1位のユナ・キムまでの点差はわずか5.58点。2位から5位までの5名、フリーの出来いかんで誰にでも優勝のチャンスはある。だから伊藤みどりさんのころほど、ショートプログラムを恐れる理由はないはずだ。それでも彼女は、ショートプログラムに苦しめられる。

 実は浅田真央ほど大きなミスではなかったが、1位のユナ・キムもコンビネーションジャンプ、3回転ルッツでお手付きし、セカンドジャンプは1回転に。中国カップに続いて、彼女も難しくないはずのショートプログラムでミス。浅田真央もユナ・キムも、昨日は同じように肩を落としていた。彼女たちにとって、もはや順位も点数も関係ない。ふたりとも、ショートプログラム程度のかんたんなジャンプでミスをしてしまった自分が、許せないのだ。ユナ・キムは「マオは私以上にミスしたのか、よかった」とは思っていないだろうし、浅田真央も「キムちゃんもいっこミスしたのか、よかった」とは決して思っていないだろう。ただただ、彼女たちは自分のやったことが、悔しくてたまらないのだ。

 新採点システムが始まったばかりのころ、「もはやショートプログラム、やる意味はあるのだろうか」と国際審判の資格を持つ人が言っていたことがある。順位点がない今、フリーでいくらでも挽回できる今、「絶対にミスが許されない」わけではないショートプログラムの存在意義は、確かに薄れつつある。
 でもこうしてSPの呪縛に悩まされている、実力はあるが若い選手たちを見ると、思ってしまうのだ。ショートプログラムは自分との戦いだ、と。フリーで挽回できることがわかっていても、彼女たちは気楽に臨めない。フリーで挽回して勝てたとしても、ショートプログラムで失敗した悔しさは消えない。
 勝負を制しても自分との戦いに敗れたことに忸怩たる思いを抱きながら、次の試合ではもっと! と彼女たちは思う。浅田真央は今シーズン、ショートプログラムに2試合とも失敗しながら優勝し、「結果は出しているけれど不調」と囁かれているが、実はその力はどんどん上げてきている。これは、ショートプログラムの悔しさをバネに、どんどん練習を積んで、どんどん上手くなっているからだ。
 いまはショートプログラムの呪縛に、苦しんでいる。でもこの呪縛を乗り越えたら、もっと強くなっている、そんな新しい仕組みを、フィギュアスケートの神様は才能あふれる彼女たちに与えてくれたのかもしれない。

photo/Dave Carmichael   text/Hirono Aoshima 


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グランプリファイナル2007 女子シングル公式練習レポート

Torinoday100339  女子シングルも13日、14日と二度の公式練習を終了。2日間で選手の表情にも微妙な変化が表れている。

 非公式の練習でのびのびとした滑りを見せていたキャロライン・ジャンは、13日も習得したばかりの3回転-3回転を素晴らしいスピードと勢いで着氷。やはり14歳、どんどん上手くなっている様子が楽しかったが、本番を目の前にした14日は、ちょっとだけ硬い表情に。ジャンプも崩れがちで、緊張感と疲れが見えてくると、堂々と戦ってきた彼女もまだ14歳なのだと気付かされてしまう。

 中野友加里も公式練習が始まってから、少し笑顔が小さくなってしまったようだ。ショート前日はジャッジ席に素敵な笑みを見せながらステップ。スパイラルでもしっかり客席に目線を送っていたが、14日は少し焦っている時の滑りの慌ただしさが見えた。練習終盤には佐藤コーチとしっかり対話。誰よりも経験豊富な彼女のことだ。本番にはしっかり合わせてくることを期待したい。また14日の公式練習では、カナダ国立バレエ団に制作を依頼した新しい衣装を着用。ピアノの音色に合わせてきらめくようなニューコスチュームもお楽しみに。

 カロリーナ・コストナーは、地元でのファイナルということで、思いもひとしおだろう。公式練習中も頭上の大きなビジョンに、彼女の出演しているCMや、トリノ五輪でイタリアの旗手を務めている姿がひっきりなしに流れていた。映像のなかでゴーカートに乗ったりトランポリンで跳びはねたりしている明るい女の子が、すぐ下のリンクではジャンプが抜けたりお手付きしたりと、プレッシャーに苦しんでいる……。メンタルの弱さが指摘されがちな彼女だが、この大一番を無事に超えられたら、ひとつ強くなれるのではないだろうか。

 本番直前になって表情がいきいきしてきたのは、キミー・マイスナー。06年に世界チャンピオンになってからの伸び悩みが心配されてきたが、今シーズンはスケートアメリカで優勝、初めてファイナル進出も果たした。14日朝の練習で見せた「The Feeling Begins」では、顔つきからも体の作るきりっとしたラインからも無理のない自信が感じられた。キム・ヨナ、浅田真央と戦いが決して楽ではない状況は続いているが、いい意味で気持ちをふっきって、自分の演技を極めて行こうという姿勢が今日はうかがえた。

 キム・ヨナの今シーズンの好調ぶりは聞いてたが、生で見るとここまでか、と驚くほどだ。トリプルルッツ、トリプル-トリプルなど、トリノ入り直後からジャンプは美しく決めまくる。プログラムの通しも気を抜かず、表情も振り付けもきちんとつけながら、ジャンプもしっかり跳んでしまうのだ。音楽に乗っての躍動感たっぷりの動きには、コーチのブライアン・オーサーも体をゆらして見守っているし、リンクにいた他の選手も自分の練習を中断して見入ってしまうほど。オーサーコーチは、「トレーニングは良くできているし、彼女の到達できるはずのレベルはとても高い。何の問題もないね!」と、自信たっぷり。しかし、グランプリシリーズ絶好調で、優勝候補筆頭と目されての戦いは、精神的に決して楽ではない。ショートプログラム「こうもり」の曲かけで、イナバウアーからのダブルアクセルにちょっと躊躇している様子も気になった。

 SP直前の今日、気持ちも滑りも一番いい状態にあったのは、おそらく浅田真央だ。現地に入ったばかりの前日の練習では、思ったよりもいい調子のトリプルアクセル、何度も完璧に着氷した3回転‐3回転に満足気。試合前にこんな明るい笑顔を見せるのは久しぶり、と思うほどご機嫌だった。今日も練習が始まる前、リンクサイドに立った時からなんだか楽しげで、滑りだせば目を見張るほど伸び伸びしたスケートを見せる。3回転フリップ-3回転ループは、セカンドジャンプの方が高い好調ぶり。この日のSPでは跳ばないトリプルアクセルも、後ろにダブルトウループをつけて成功させてしまった! プログラムを滑れば四肢の動きは他選手と比べ物にならないほど大きいし、気持よく足の上がるスパイラルも、複雑だけれど無理なくスケール感を感じさせるステップも、びっくりするほど素晴らしい。公式練習だというのに、見ていてちょっと感動してしまったほどだ。シリーズ2試合、少し納得のいかない出来だった今シーズン。自分は挑戦者だという気持ちでこのトリノにはやってきたのだろう。優勝することや他選手のことは気にせず、自分のスケートを見せたいという気持ちが、今日の浅田真央の滑りには表れていた。リンクサイドではアルトゥニアンコーチに加え、ロシアから駆け付けたタチアナ・タラソワコーチも身を乗り出して愛弟子を見つめている。

text/Hirono Aoshima

*写真はキミー・マイスナー選手 


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グランプリファイナル2007 公式練習後、浅田真央選手共同インタビュー

Mao366  カリフォルニアから昨夜トリノ入りしたばかりの浅田真央選手も、公式練習に元気に参加。
 共同インタビューでも明るい表情を見せてくれた。

――初めてのトリノ、いかがですか?
真央 最初に来たときは、わあ、すごい、ここでオリンピックをやったんだ! って思いました。アップをしてたら荒川さんや木戸さん(荒川静香さん、木戸章之さん)がオリンピックの時にしたサインを見つけて、ここでみんな書いたのかあって。でも滑ってみたら普通のリンクで、オリンピックのリンクで特別、って感じはしませんでした。

――このリンクでのジャンプの感触は?
真央 初めてのリンクなので、まだちょっと変な感じ。でもトリプルアクセルも明日の練習ではちょっと良くなると思うし、次の日はまた少し良くなって、試合に持ってければいいなと思います。あと、今日はトリプル-トリプルの調子が良かったかな! トリノに来る前のアメリカの練習でも、3-3は結構決まっていたので、このままいけたらいいです。

――フランス大会から少しプログラム構成を変えてきましたか。
真央 はい、まずスピンのコンビネーションの種類を2種類くらい変えました。それからフリーでは、ジャンプで2種類のトリプルートリプルを入れる予定です。前半に新しくトリプルフリップ-トリプルトウを。後半にはやりやすいトリプルフリップ-トリプルループを。これでポイントを稼ぎます(笑)。

――グランプリファイナルということで、何か意識して準備してきたことは?
真央 ファイナルに出る選手、全員のグランプリシリーズの演技を見てきました。スピンのうまい人、ジャンプのうまい人、いろいろ……。女子だけじゃなく、勉強になるから男子の演技もよく見るんです。男子のジャンプ、すごいなーって。女子でも、ユナ・キム選手はジャンプもすごい。真央がこれから跳びたいトリプルフリップ-トリプルトウも高くきれいに跳ぶので、自分もあれくらい跳べたらなーって思いながら見てました。

 2年前のチャンピオンだが、挑戦者の気分でのぞむファイナル。ジャンプが思うように決まらなかったシリーズ2試合を吹き飛ばすように、3回転-3回転にもトリプルアクセルにも、強い気持ちでむかっていくつもりだ。

text/Hirono Aoshima