この特集では、浅田真央選手、安藤美姫選手をはじめとする注目選手の活躍や最新情報など、フィギュアスケートにまつわる様々なレポートを写真とともにお届けします。
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2009年04月18日
国別対抗戦2009男子シングルフリー 小塚崇彦
「団体戦はやっぱり少し責任感があって……いつもとはちょっと違う種類の緊張もありました。でも、ここでまた新しい経験ができて、良かったと思います」 そんな言葉に、小塚崇彦の日本男児らしい真面目さを改めて感じた。 たとえば海外での練習や試合が多い時期でも、彼はしっかりネットスクーリングで課題をこなして、きちんと高校を卒業しようとする。たとえば社会人になったのだからと、ふだんはニックネームで呼ぶ選手を公の場では**選手と呼ぶように努力する。 いたずら坊主が成長して、まっすぐにスケートに打ち込む青年になって、その姿勢にみんなが心惹かれている。 でも時としてその真面目さが、スケーターとしての輝きを奪ってしまうこともあるようだ。
「今シーズン、特に前半は、自分でも予想しなかったほどいい成績が出ました。でも後半はちょっと……」 そう、シーズン前半の小塚崇彦の快進撃は素晴らしかった。ただただ夢中で試合をこなして、どの試合でも思った以上の結果が出て、もう、怖いものなし。 グランプリファイナル2位という、一流選手と呼ぶに十分な結果も得た。全日本選手権では会場を総立ちにさせるエモーショナルなプログラムを滑ることもできた。前半戦、ひたすら自分のために滑っていた小塚崇彦は、ほんとうにまぶしかったのだ。
しかし2度目の世界選手権の代表が決まり、オリンピック出場枠獲得という課題が、その肩に重くのしかかってから。小塚崇彦の真面目さに、彼のスケートは縛られてしまったような気がする。前半自らが出した結果に恥ずかしくない演技をしなければ、という重圧も、シーズン後半には常にかかってきたのだろう。 絶対に3枠を取るために、世界選手権では4回転挑戦をやめ、演技もちょっと硬くなってしまった、 最後の最後、安藤美姫らがリラックスしてのぞめている国別対抗でも、真面目すぎる彼はチームの勝利のためにという緊張感で、やはりコチコチに。 「フリーはジャンプにミスが多々あった。それが今日の一番ダメだった部分です。ケガの影響ですか? ケガって言うほどのものじゃないですし、そんなことは試合が始まってしまったら、関係ない。 今回はシーズンの最後の最後に、がーんと頭を殴られたような感じです」
ほんとうに、彼にとってはあっという間のシーズンだっただろう。普通の選手が一年かけてスターダムに上り、もう一年かけて壁にぶつかる。そのくらいの出来事を、彼は1シーズンですべて経験してしまった。 それならば、来年はもうプレッシャーにつぶれることもなく、何の責任を背負うこともなく、ぜひ、自分のためのシーズンに! もっと自由に、自分自身を解き放ってくれる、そんな一年になるのではないだろうか。 シーズン最後の「ロミオ」。終盤に2度目のアクセルを失敗し、そこで吹っ切れたように最後のトリプルルッツをきれいに跳び、深く深く身体を倒したイーグルをたっぷり見せ、得意のスピンでプログラムを締め……そのあたりでやっと、いつもの小塚崇彦の動きが見えたような気がした。 きっと、ここから。シーズン後半、ロミオの濃紺の衣装の中に閉じ込めてしまったたくさんのもの。次に氷の上で会うときは、すべてを解き放った自由な小塚崇彦を、きっと見せてくれる。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima
2009年03月29日
世界選手権こぼれ話(3)オフリンクの選手たち 男子シングル編その2
女子のショートプログラムがまだ始まらないころから、男子選手たちは試合が終わった解放感でいっぱい。会場のあちこちでうろうろしている選手たちを見かけます。 まずは四大陸選手権でもおなじみ、右からジャスティン・ピーターセン選手(南アフリカ)、ルイス・ヘルナンデス選手(メキシコ)、ケビン・エルビス選手(ブラジル)。実は男子フリー後半、我々の真後ろで大騒ぎしながら見ていたのは彼らなのでした。
青い空がよく似合う爽やかな笑顔は、スウェーデンのクリストファー・ベルットソン選手。東京世界選手権の大活躍で、日本ではもおなじみに。今大会は振るわず、スウェーデンの五輪出場枠は残念ながら1枠になってしまったけれど……「バンクーバーで会えるといいね!」 そしておなじみ、日本男子のおとぼけ3人組。織田信成、小塚崇彦、無良崇人各選手は、スペシャル対談収録のため、会場の隣にあるロサンゼルスコンベンションセンターでフォトセッション中。 「おれ、今日までにIDカード、2回忘れた!」 「僕は衣装のボタン、全部外したままリンクに出そうになった!」
……はたして座談会では、日本の未来をしっかり語ってくれたでしょうか?
text/Hirono Aoshima *3選手のスペシャルフォトセッション&座談会は、『Cutting Edge 2009 SPRING(仮・スキージャーナル刊)』に掲載予定。南里康晴選手VS鈴木明子選手の社会人対談なども収録。ご期待ください!
2009年03月28日
男子シングル総評 吉岡伸彦強化部長&小林芳子チームリーダー
(小林芳子チームリーダー) 小塚選手、リンクを降りての第一声は「ようやったー!」、って自分自身にむけて(笑)。ほんとうはもっともっと点数を取れる選手かもしれません。でも、この最終グループで滑ってここまでできたことは、収穫。来年は4回転にもチャレンジしてくるでしょうしね。今回、男子シングルは24位までの選手が全員、トリプルアクセルをフリーで入れているんです。もう、アクセルは跳べて当たり前のジャンプ。このなかで4回転を持っていれば、大きな武器になるでしょう。 無良選手は初めての世界選手権としては、上出来。あの大きなアクセルもちゃんと2回跳べましたし、彼は「トリプルアクセルの無良」ってニックネームがついてもいんじゃないかしら(笑)。彼はちょうど一年前、最後の世界ジュニアでずいぶん苦しみました。そこからよくここまでがんばって、シニアにすんなり上がれてきたものだな、と感心しています。課題の5コンポーネンツは、これから伸びていく選手でしょう。まずはここで経験を積んで、名前を売って帰ることもできましたね。 織田選手はやはり4回転の成功! しかもいきなり4回転-3回転。彼は降りさえすれば、すぐに後ろのジャンプ付けられるんですよ。ジュニア時代、トリプルアクセルが跳べた年もそうでした。キッチナーの世界ジュニア(05年)で、彼だけが練習グループの中でトリプルアクセルが跳べなかったのに、公式練習中に目で覚えて跳べるようになると、すぐにコンビネーションにしてしまった。4回転もこれからは、きっとコンスタントに跳んでくれると思います。 まさに3人のチームワークで取った3枠。ふだんから3人はとてもいい雰囲気です。小塚選手と無良選手は中京大学のナショナルトレーニングセンターでいつも一緒だし、織田君はあのキャラですから、誰とでも仲良くできる。素晴らしいチームでしたね。 (吉岡伸彦フィギュア強化部長) 今回の試合でわかったことは、総合得点で250点くらい出さなければ金メダルには届かないということ。そのためにはフリーで4回転は必須ですし、場合によってはショートとフリー、両方で必要になるかもしれません。また、5コンポーネンツに関しては、日本人はどうしても8点近く出すのは難しい。それよりも技術の部分で高いところを目指すことが、今まで戦ってきた日本のやり方かな、と思っています。 そうなるとやはり、髙橋、織田から、まだ若い無良まで、この先のことを考えても、やはり4回転は大事。トップを目指すスケーターが4回転に挑まずに済む時代は、そう長くは続かないと思います。たまたま、去年と今年、そうした選手の優勝が続いただけ。スケーターはアスリートですし、より高いところを目指していく。それは当然の流れになると思います。
text/Hirono Aoshima *写真はフリーから一夜明けて、取材のためメディアセンターを訪れた無良崇人選手、小塚崇彦選手
2009年03月27日
男子SP終了 吉岡伸彦強化部長のコメント
――ショートプログラムが終わり、小塚5位、織田7位となりましたが。 吉岡 5と7で足せば12。簡単ではないけれど、3枠に向けて十分可能性はありますね。明日またがんばります!
――3人それぞれにまずまずのスタート、でしょうか。 吉岡 今日は3人とも、それぞれに緊張していた部分がありました。無良選手は6分練習の途中まで硬かったけれど、途中から硬さもとれて、彼なりにきちんとできましたね。織田選手はもう、スタート前まで緊張しすぎです(笑)。でも曲がかかってからはいい動きができていた。だからジャンプの転倒はなんとももったいない……。クレーンカメラを動かすためにリンクフェンスが一部切れているんですが、その部分がよく見えなかったらしいデスネ。練習ではいつもまっすぐ真ん中で跳んでいるジャンプ、今日は少し斜めに行ってしまいましたし……。でも織田君も、明日は気持ちを切り替えて、きちっとやってくれるでしょう。
――小塚選手は、日本勢最上位の5位でした。 吉岡 彼は3人の中ではいちばんリラックスできていました。ただ、フリップで慎重になってしまったのかな。ふだんはもう少しきちんと跳べています。やっぱり3人とも、それぞれきちんとできたけれど、もう少しずつできただろうな……という感じもあります。欲を言えばもう少し上の順位を、という気持ちもあるかもしれない。でも、世界選手権という場で、大きなミスもなくこの結果。明日もまたそれぞれががんばってくれれば、日本チームとしての目標も達成できると思います。
――チームとしての目標、どのくらいの成績で3枠を、と考えていますか。 吉岡 3枠、そう簡単に取れるものではない。6+7でも、3+4でも、もちろん1+2でも、取れるものならばどんな順位でも、と思っています。それぞれがきちんとやるべきことができれば、可能性は十分ありますしね。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima
2009年03月27日
男子SP終了、小塚崇彦5位 ―今シーズンの収穫―
「とりあえずご飯食べて、寝て、起きたらシャワー浴びて。他の種目の試合を見て、身体動かして、落ち着いて。最後に部屋で忘れ物をしないようにチェックして、部屋の片づけして、電気を消して、ホテルを出てきました。あ、最後の最後にもう一回、信夫先生と忘れ物確認をして(笑)。それが試合前にやること、ひととおりです」 無良崇人とは違うスタイルで、世界選手権2度目の小塚崇彦もまた、落ち着いていた。 そんな彼のショートプログラム、ジャンプやスピンの美しさや精度については、もう言わなくてもいいだろう。それよりもすっかりおなじみなった「テイク・ファイブ」。シーズン最大の舞台で、さらに一段と味わいを増して見せてくれたのがうれしい。 スタート時点で「うん」とうなずく表情からすでに、見る人をぐっと引き込む。すーっと滑るスケート、その滑りがごく自然に止まり、ふっと美しいポーズを取る、その流れ。ジャンプの後、ステップの直前、エレメンツを引き立たせる動きが入ることで、質の良い技も見る人の心にさらに深く残る。 エレメンツ、つなぎ、表情、空気……そんなものが一体となった「小塚のテイクファイブ」は、このスタンダードナンバーを身体の動きに変換するとこうなるのか、と、ダンスの小品として評価したくなるようなプログラムにまでなってしまった。 「今シーズンは、自分がコレをして、アレをしてって決めたことを目いっぱい練習して、それが試合で出せてきました。今日もいつもの試合どおりにできたと思います」 スタンディングオべーションも、当たり前のように起きた今日の「テイク・ファイブ」。しかし公式練習での「テイク・ファイブ」は、さらに凄かったのだ! あの淡白で無表情だった小塚崇彦から、色気を感じるような「テイク・ファイブ」。その色気がスケーティングに乗り、リンク全体にふりまかれるような「テイク・ファイブ」。何のストレスも無い状態ならば、そこまでの表現ができるスケーターに、今年の小塚崇彦はなってしまった。そうなってくると楽しみなのは、フリーの「ロミオとジュリエット」だ。 「明日は4回転はやらないってことに決めていて……。でも後半のトリプルアクセルは、あります。4を抜いたからってアクセルを含めてノーミスでできるわけではないので。ジャンプの時はジャンプに集中して、他の部分もひとつひとつ集中を途切らさないようにしたいです。オリンピックの3枠は……終わるまでは分からないですね。まだまだ、見えてきたようで、見えていない」 26日のフリー、彼の関心は、どうしても順位、それに伴って得られるバンクーバー五輪出場枠に行ってしまう。メディアからの質問も、どうしてもその点に集中しがちだ。もちろん、それもとても大切なことなのだが……。 でも私の最大の関心は、彼の順位でもジャンプでの出来でもなく、公式練習で見せているような極上の「ロミオとジュリエット」を、シーズン最大の舞台で見られるかどうか、だ。 スケートアメリカ優勝、ファイナル2位といったメダルの輝きとともに、今年の小塚崇彦最大の収穫は、彼の代名詞になるほどのプログラムを得られたことだ。その「ロミオ」を、最後の最後、いつまでも語り継がれるような名演で締めくくってほしいのだ。 スポーツの楽しみ方としては、王道ではないかもしれない。でも、今の小塚崇彦の楽しみ方としては、これが一番ではないだろうか。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshim
2009年03月26日
世界選手権こぼれ話(1)オフリンクの選手たち 男子シングル編
昨シーズン最終グループを滑った6人のうち、4人が引退、ケガなどでエントリーしていない今大会。男子シングルはいったいどうなってしまうのか? などと危ぶまれていたのが嘘のように、今年の男子はおもしろくてたまりません。 熱戦のレポートの前に、選手たちのオフアイスの表情を少しだけお届けします。
まずはショートプログラムを終えたばかり、ドロー会場での小塚崇彦、無良崇人、織田信成3選手。 どんな試合でもどんなメンバーでも、3人仲良く席に並んでいる日本の男子選手(08年の四大陸ではこんな感じ)。
織田選手は最終前グループの3番滑走というクジを引き、「ええとこ引いた!」とご機嫌。3人ともこの表情なら、フリーはリラックスして臨んでくれるかも? 3選手のインタビューは『PASSION2009 フィギュアスケート男子シングルフォトブック』に掲載されています。
記者会見後にカメラに目線をくれたパトリック・チャン選手と、フランスメディアのインタビューに答えるブライアン・ジュベール選手。試合前には、4回転をめぐりコメントを応酬しあった、などと伝えられたふたり。記者会見では、「僕たちの戦う場所は氷の上だから」とジュベール選手。
text/Hirono Aoshima
2009年03月25日
大会初日(24日) 男子シングル公式練習レポート
ひとりやふたりならともかく、ひとつの国から3人も世界大会レベルで戦える選手をそろえるのは、とても難しいことだ。勢いがあって3枠を取った国でも、送り込む3人すべてが人目を引くような選手になることなど、めったにない。ましてやエースの髙橋大輔を欠いたチームでは……。 ところがSP前日、公式練習のリンクに立った日本勢3人は、これ以上ないほどの臨戦体制だった。4回転からのコンビネーションなどを跳び、「これを本番でやれたら、優勝しちゃうんじゃないのか?」と、報道陣を驚かせた織田信成。 4回転への挑戦は見送ったが、振り付けのひとつひとつを凛とした表情でこなし、できる練習はすべてやってきたという自信が垣間見えた小塚崇彦。 そして、「古事記」のメロディに乗って勢い良く動く姿は、初陣の若武者そのもの。緊張感は漲っているものの、力強く堂々とした滑りは、とても世界選手権初出場に見えない無良崇人。トレードマークの大きなトリプルアクセルも、たくさんのギャラリーの注目を集めていた。 日本男子3人は、今まさに3本の矢。3人が3人とも「お、いいね!」とうれしくなってしまう滑りを見せてくれている。ここまで粒ぞろいのスケーターがひとつの国から揃うとは。そしてそれが日本の男子シングルだとは! 今大会はきっと、「日本男子、すごいじゃないか」――そう、世界のファンが唸る大会になりそうだ。
text/Hirono Aoshima
2009年03月25日
世界選手権2009 男子シングル開幕直前 小塚崇彦、織田信成――吉岡伸彦強化部長の評価
――前哨戦となる四大陸選手権。男子シングルでは織田と小塚がメダル争い、という形になりましたが。 吉岡 フリーではふたりとも、「失敗できない!」という気持ちが少し強かったかな。丁寧に慎重に滑ろうとしてしまい、押して押して! という勢いが足りなかったような気がします。もしショートプログラムをきちんとやっておけば、こんなに慎重になる必要はなかったと思うのですが……。それでもショートに比べれば、特に織田は落ち着いていたな、と思います。ショートの際は、音楽も何がかかっているのか分からないくらいバラバラになっていましたから。フリーではきちんと音楽を聴いて、落ちついて表現できていた。ショートと同じ失敗をしなかったことは評価できると思います。彼も一年のブランクがあって、毎年大きな試合に出ていた頃には感じなかった難しさが今年はあります。とにかく試合を積み重ねながら克服していくしかないですね。
――小塚選手はフリーで順位を落としましたが、3位入賞という結果に。 吉岡 勢いは、ファイナルの時の方がありましたね。あの時はまわりが失敗したこともありましたが。しかしある程度試合ごとに波があるのは仕方のないことです。すべての試合で100%、高いテンションを維持するのは無理。ファイナル、全日本で緊張して、四大陸でも高いレベルを保ち、世界選手権でも……と4つも高い山はさすがに作れませんよ。最終的に世界選手権に合わせて、きちんともっていければいい。わざと調子を落とす、というわけではないけれど、小さな波があるのは当然、と思っています。
――ふたりともがチャレンジし、四大陸でも成功はならなかった4回転ジャンプに関してはいかがでしょうか。 吉岡 4回転、私は来年のオリンピックで必要になるものだと思っています。ただ今回の試合では、パトリック・チャンによって、4回転が無くても250点以上が出せることが証明されてしまった。これもひとつの方向かな? と思ってしまいたくなりますが……。でもそれだけではオリンピックでは勝てないでしょう。それに日本の選手の伝統でもありますから、技術でやはり他の国の上に立ちたい。小塚も織田も4回転は避けて通れないと思っています。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima
2009年03月05日
写真展「氷上の妖精たち」開催のお知らせ
sports@niftyフィギュアスケート特集、立ち上げ時から写真を提供しております、カメラマンの森田です。 このたび、世界選手権を前に愛知の元気なフィギュアスケート選手を中心に写真展が開催できることとなりました。 ぜひ、名古屋のTV塔下にありますセントラルパークへおいでいただき、セントラルギャラリーまで足をお運びいただけますようお願いいたします。
セントラルパークギャラリーインフォメーション
http://www.centralpark.co.jp/gallery/gallery1.html
題 名:「氷上の妖精たち」~愛知から世界へ~ 場 所:セントラルギャラリー 地下鉄名城線・桜通線久屋大通駅 下車直結 地下鉄東山線・名城線栄駅 下車直結、名鉄瀬戸線栄町駅 下車直結 期 間:3月12日(木)~ 3月23日(月) 時 間:10:00~21:00 主 催:氷上の妖精たち実行委員会 後 援:中日新聞社 協 力:愛知県スケート連盟 *観覧無料
今月開催される世界フィギュアスケート選手権を前に、愛知県出身でおなじみの浅田真央選手、安藤美姫選手、中野友加里選手、鈴木明子選手、小塚崇彦選手らをクローズアップした写真展です。 女子選手の優美さ、男子選手の力強さはもちろん、フィギュアスケートの観戦の楽しさをより多くの皆さんに知ってもらうために、セントラパークのセントラルギャラリー壁面いっぱい(半切額66、全紙額8)に展示します。 またおなじみの選手たちだけでなく、今シーズンの全日本、全日本ジュニア、全日本ノービス選手権などに出場した愛知のジュニアたちも、フォトグラファーの目で紹介します。
photo&text/Masami Morita(写真は愛知在住で活躍が期待されるジュニア、渡辺真央選手、中村愛音選手)
2009年02月09日
男子シングル終了 小塚崇彦フリー4位、総合3位 (2)
「試合になるとジャンプの方にどうしても頭が行ってしまう、その傾向はなくなさなきゃ、と思ってはいるんですが……。スケートアメリカのころはジャンプが安定していたので、ジャンプ以外に気を向けることができていました。でも、ジャンプ以外に気持ちがどんどん向いて行くと、今度はジャンプがおろそかになってしまう。そこでまたジャンプに気を配って、それ以外がおろそかになって……その繰り返しなんです」 なるほど、こちらは簡単に「こんな演技が見たいのに!」などというけれど、やはり高難度ジャンプと繊細な表現の両立は、微妙な歯車次第のようだ。 「でも試合ごとに上がって、下がっては続いてもいいから、その中でちょっとずつでもジャンプ以外、表現面に気を向けるようになれれば、と思います。中京大学に新しいリンク、レインボーリンクができるんですが、そこはリンクの両面に鏡が貼ってあって、どこからでも自分の姿が見えるんです。上手く利用したら、ひとつひとつのポジションなどもしっかり確認できると思う」
さて、小塚崇彦の戦い、男子シングルの戦いは、ここからが見どころだ。 彼が世界選手権に持って行くもののひとつは、一度は勝つことができたライサチェクやチャンに敗れた悔しさ。昨年は四大陸王者の髙橋大輔と欧州王者のトマーシュ・ヴェルネルが世界選手権では悔しい思いをし、両者に敗れたジェフリー・バトルとブライアン・ジュベールが主役に躍り出た。去年の筋書きのように、悔しさを持って臨んだ小塚崇彦、世界選手権で大活躍……などということになればなれば、ほんとうに面白い。 しかしここまで考えて、気がついた。そんなトップ争いの筋書きのなかに、小塚崇彦は今、当たり前のような顔をしているのだな、と。そしてシニアのチャンピオンシップで初めてメダルを取ったというのに、おめでとうではなく、悔しかったね、の記事になってしまうのだな、と。 あまりにも急激にトップに上り詰めた小塚崇彦、そしてすでにトップにいることが当然と考えている私たち。状況は、あまりにも早く移り変わり、彼にのしかかるものも加速度的に重くなる。 19歳の青年に、ずいぶん酷なことをしているものだと知りつつ……やはり彼ならやってくれるだろう、と、期待せずにはいられない。
text/Hirono Aoshima *小塚崇彦選手のインタビューは2月18日発売の「PASSION 2009」に掲載されます
2009年02月09日
男子シングル終了 小塚崇彦フリー4位、総合3位(1)
ご存じのように、四大陸選手権の歴史は長くない。99年スタートだから、118年の歴史を誇る欧州選手権には並ぶべくもないだろう。そして始まってからしばらくの間は、日本やアメリカはトップ選手を派遣しないことも多く、世界選手権代表に選ばれなかった選手の経験の場として位置づけられてもいた。アメリカが国内トップを四大陸に送るようになったのは07年から。同じく日本は08年から。世界選手権の前哨戦として、欧州選手権に対抗しうる大会として機能し始めたのは、ほんとうにここ数年のことなのである。 グランプリシリーズから始まって、グランプリファイナルへ、各国国内選手権へ。そして欧州、四大陸選手権を経て、世界選手権へ。その流れの中に組み込まれて、やっと今年あたり、その存在の面白さが出てきた大会、といっていいだろう。 女子シングルでは、前半戦でキム・ヨナにリードできた浅田真央にとっては、世界選手権へのワンクッション的な試合だったのに対し、キムはぜひここで浅田に勝っておきたいと、全力でぶつかってきた。アメリカ勢でいえば、ワールド代表の座をつかんだシズニー(9位)やフラット(7位)が振るわなかったのに対し、惜しいところで世界選手権を逃したキャロライン・ジャン(4位)が頑張った。 男子シングルでは、前半戦と全米選手権で本来の力を出せなかったエヴァン・ライサチェク(2位)、ファイナルで悔しい思いをしたパトリック・チャン(1位)が盛り返してくる一方、ここまでファイナル、全米選手権と快進撃を続けてきたジェレミー・アボットが(5位)小休止、といった印象だ。 そしてシーズン前半を全力で走ってきた小塚崇彦。ジャンプのミスこそ多くはなかったが、ずっと高く評価されてきた彼らしさ、彼のスケートの長所は、今シーズンいちばん発揮できていなかった……そんな試合になってしまったようだ。 各エレメンツの精度、またポーズや振り付けの美しさには、練習の成果がよく出ていたと思う。特に印象的だったのは、恋愛の気配が濃くなるスローパートだ。恋を語るマイムは夢のように優しげ。また、後半のサーキュラーステップが始まる前の短い踊りなど、少年らしい初々しさがいっぱいで、ひきつけられてしまう。細かな動きも静止するポジションも、ほんとうに美しく、印象的に。全日本選手権以降、さらに徹底して身体に動きを覚え込ませてきたんだな、と感心してしまった。 ただ、この日の小塚崇彦に決定的に足りなかったのは、「流れ」だ。いつもの「ロミオ」は、プログラム全体をひとつの気持ちが貫き、思いと物語が卓越したエッジワークに乗って流れるように展開していく。そしてこの「流れ」こそが、小塚崇彦の今年のプログラムの魅力であり、最も大事な彼の宝物だと私は思う。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima
2009年02月09日
PASSION 2009 フィギュアスケート男子シングルフォトブック 近日発売!
2006年、2007年の「COLORS」、2008年の「男子シングルメモリアルブック」に続き、男子フィギュアスケートをフィーチャーしたフォトブック「PASSION 2009」が2月中旬発売になります。 PASSION2009 フィギュアスケート男子シングルフォトブック
出版社: 双葉社 発行年月: 2009年02月18日 ISBN:9784575301045 本体価格:2,200円 (税込 2,310 円)
髙橋大輔から羽生結弦まで、日本を代表するスケーターたち。そしてブライアン・ジュベール、エヴァン・ライサチェクら世界のトップスケーターたちの魅力を、インタビューやコラム、たくさんの美しい写真でお伝えします。
<CONTENTS> インタビュー・レポート――エヴァン・ライサチェクブライアン・ジュベール、ジョニー・ウィアー、パトリック・チャン、トマーシュ・ヴェルネル、エフゲニー・プルシェンコ、髙橋大輔、織田信成、小塚崇彦、無良崇人 他
メモリアルインタビュー&コラム――ステファン・ランビエール、ジェフリー・バトル
インタビュー――パスカーレ・カメレンゴ、佐藤有香、フィリップ・キャンデロロ
コーチ・インタビュー――ガリーナ・ズミエフスカヤ、佐藤久美子、無良隆志
スペシャル対談 大爆笑! 織田信成VS安藤美姫、 大暴露? 小塚崇彦VS中野友加里
コラム――「男子フィギュアスケーターの顔を読む」「スターたちの素顔 アイスショーの舞台裏」 「クワドラプルジャンプ伝説」 他多数
ジュベールが棄権したグランプリファイナルで得たものとは? 中野友加里が明かす小塚崇彦の素顔とは? アマチュア復帰をめざすプルシェンコの意気込みは? バトルとランビエール、引退後のそれぞれの変化とは? そして、リハビリ中の髙橋大輔が全日本選手権を見て思ったこととは?
伸びてきた者、ふんばる者、去っていく者、戻ってくる者、そして、復活の時を待っている者……。 それぞれのパッションが交錯する混迷のフィギュアスケート男子シングルを、多角的な視点から解き明かす一冊です。どうぞお楽しみに!
2009年02月07日
男女シングルSP終了 吉岡伸彦強化部長コメント
――浅田真央選手、フリー前日の練習の様子を見て、いかがでしたか? 吉岡 昨日の今日で、あまり変わってはいませんね。もっと自信を持って……と言っても、練習がきちんとできていなければ、自信を持つことも難しいかもしれないけれど。でも、なんとか技術面での不安を解消出来ればと思います。あとは自信を持って思い切ってやれば、できる選手ですから。
――織田選手は予想外の6位でしたが。 吉岡 彼は最終滑走の経験があまり多くなかったかもしれない。長い時間待っていると、どうしても気持ちが張り詰めて来ちゃうことがあります。それでもやるべきことはやらなきゃいけないのですが……。今日は緊張のために、動きがあまりにも硬かった。やはり試合から1シーズン離れていて……夏の小さな試合から順にこなしてきて感覚は取り戻しました。それでもISUのチャンピオンシップは、やはりちょっと違うのでしょう。でもここで経験をしておけば、ロスのワールドに生きてくると思うので。ある意味、ここでこれだけ緊張しておいて良かったかな
――小塚選手はSP3位。彼への評価は? 吉岡 やはり彼も本来の動きを考えると硬かった。緊張すると、エレメンツもGOEプラスをもらえるものではなくなってしまいます。硬くなりながらもそこそこはがんばった、と思うけれど……パトリックなどを見るとジャンプにもスピンにもプラス2がどんどんついて、ベースバリューから合計で10点も上がっているんですよ。そこそこのがんばりではかなわないくらい、今日はパトリックの方が頑張った。あれだけ崩れたファイナルとはもう、別人でしたね。カナダの選手はカナダの試合に強いな、と。昨日今日で思いました。
――カナダの試合でカナダの選手が強い。それはホームアドバンテージが多少はある、ということに? 吉岡 いや、僕自身がジャッジをしているときは、観客が騒いでいるかどうかは関係ありません。基本的にナショナルバイアスのようなものはない、と信じたい。パトリックは素晴らしい演技をしてそれにふさわしい、素晴らしい評価を受けた、ということでしょう。カナダだから点数が出すぎた、というわけではないと思う。小塚も織田も、誰が見てもパーフェクトな演技ができれば、カナダのお客さんも大きな拍手や歓声をくれたと思いますし、そういう勝負をしなきゃいけない。でも、レベルをきちんと取って、GOEもつくクオリティを保って……今の時代の選手は大変ですよね。その選手のがんばりに負けないだけのことを、我々強化部もしなければならないわけですが。
――フリーに向けて、男子選手たちに必要なものとは? 吉岡 平常心かな。全員が自分の力をきちんと出し切れる方向に、チーム全体をもっていなかなければいけないですね。ショートプログラムでは、確かに彼らは緊張していた。フリーでは少しでも彼らがリラックスできるよう、我々も考えなければ。
text/Hirono Aoshima
2009年02月06日
男子シングルSP終了、小塚崇彦3位 「無自覚の成長」
「今日はジャンプのことばかりが頭にあって……」 とは、本人の弁。 「ちょっと動きが硬かったですね。もっとGOEをもらえる力を、彼は持ってるはずだけれど」 とは、フィギュア強化部長吉岡伸彦氏の弁。
厳しくも「パフォーマンスとしてはいまいち」と評価された演技にも関わらず、今日の小塚崇彦の滑りはとても「素敵」だったと思う。 王子だのロミオだのと呼ばれるのは本人が照れてしまうかもしれないが、「Take Five」を滑る小塚崇彦は、とんでもなく端正な「貴公子」だった。以前から際立っていたスケーティングの美しさが、そのまま上半身の動きや身のこなしにも伝わってきた、足もとからじわじわとソフィスティケイトされてきた、とでも言えばいいのだろうか。 たとえばイーグルも、ただのイーグルではなく、頭上に悩ましくかかげる諸手の動きを伴った「魅せるイーグル」に。小さなターンひとつを入れるときにも、動きに合わせた目線をキッとつけることを忘れない。 シーズン最初のころは、「今年の彼は変わる予感がする」「もう一息、何かをつかめばきっと変わる」などと思ったり書いたりしたけれど、ファイナル、全日本、そしてスターズオンアイス出演を経て、今シーズンの小塚崇彦は、ほんとうに見るたびに、どんどん「素敵なスケーター」になって行ったような気がする。
それでも試合後のインタビューや記者会見は、質問も答えも、ジャンプの内容の方にどうしても向いてしまいがちだ。 ――トリプルアクセルがちょっとシェイキーになってしまったのが残念でしたね。 小塚 日本でもアクセルの調子は良くなかったので、不調の中での練習ができてたかな、と思います。バランスを崩しても、無理やり降りる、そんな練習をしてきたことが、今日は役に立ちました(笑)。ジャンプの小さなミスはあったけれど、まあまあの出来だったんじゃないかな。
――終わった瞬間は小さくガッツポーズが出ました。 小塚 そうですね、終わった安心感、うれしさ、それから、ちょっとアクセルが、うーん、という気持ち。いろいろなものが混じったガッツポーズでした。
――明日のフリー、4回転には挑戦しますか。 小塚 ちょうどあそこに先生(佐藤信夫コーチ)がいるので、どうするのか聞いてみてください(笑)。僕としては練習は積んできたので、入れるつもりでいますが! と、こんな調子。彼の振付けを担当している佐藤有香さんは、「どうしても試合になると、ジャンプをはじめ難しいエレメンツをこなさなきゃいけない。そちらに気持ちがいってしまって、練習でできている表現もおろそかになってしまいがちなんです」と、1年ほど前に話してくれたことがあった。 でも、ジャンプに気持ちを持っていかれながらも、自然に細かな動作にまで気を使えていた今日の「Take Five」。そこまでの練習をこの1年で、彼は積んできたのだろう。 全日本選手権のフリー「ロミオ」の時もそうだったが、自然に人を引き付ける演技ができていることに、たぶんまだ彼自身は気づいていない。意識することなく、本人も知らないうちに……小塚崇彦は新しいステージに上って行ってしまったのだ。
「フリーは滑ってみないとわからないけれど……一番に自分のベストを尽くすことを考えて。ショートでいまいちだったアクセルもきれいに跳べるように。それから今日、ジャンプのことばかり考えてしまった分、フリーではその他のエレメンツや表現することにも気を配って滑りたいです」 今日の「素敵」はまだまだだ、と彼は言う。自分はもっとできる、明後日の「ロミオ」ではそれを見せてくれる、と言う。SPが終わった瞬間から、一選手のフリープログラムを見ることが楽しみでしょうがない――こんなに強くそう思ったのは初めてだ。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima
2009年02月05日
四大陸選手権開幕直前 小塚崇彦選手コメント 「スピード出しすぎて、突っ込まないように!」
明日から競技開始となる3日のバンクーバー。 男子シングル日本代表の3選手は、プラクティスリンクとメインリンクで1度ずつ、それぞれ45分の公式練習に参加した。 昨年に続き2度目の四大陸選手権挑戦となるのは、小塚崇彦選手。 メインリンクでの練習では、トリプルアクセルも単独、コンビネーションときれいに決め、滑りのスピードも抜群。自由自在に身体を動かす様に見とれていたら、バランスを崩しておっとっと、とフェンスに激突、というシーンも。ショートプログラム2日前。手ごたえは、どうだっただろうか?
――カナダ入りして2日目。今日の練習はいかがでしたか? 小塚 体のキレはどちらかというといい方です。時差ボケと飛行機疲れもおさまってきたし、今日の朝よりもまた少し、ちょっとずつ良くなっていると思います。ここのリンクはすごく滑りやすくて……。カナダの氷って良く滑る印象がありますよね。アメリカもそうだし、北米のリンクは平均的に良く滑ると思います。
――日本のリンクと比べてもかなり滑りますか? 小塚 測ったわけではなく自分の感覚ですけれど、一蹴りでいつもの1.5~2倍くらい進むんです。だからすごく気持ちいい。いつもと同じ距離を進もうと思ったら省エネで少しの力で進めるし、いつもの力を使えば2倍くらい遠くまで進める。表現もいつもより大きく見せられるかもしれません。今日はステップでちょっと気持ちよく滑りすぎて、壁にぶつかってしまいましたが(笑)。
――リンクの横幅が狭い(アイスホッケーのNHLサイズ。国際規格より4メートル狭い)のが、気になりましたか? 小塚 いや、それはあまりに気にならないです。今シーズンはスケートアメリカもリンクが小さかったですし、フランス(エリック杯)は逆に大きかった。両方経験できているのでリンクのサイズは気にはしていないです。でも狭いからあんまりスピードを出すとぶつかる。そこは気をつけて、突っ込まないように(笑)。
――全日本選手権を終えて1か月。この間は、どんな練習を積んできましたか? 小塚 スターズオンアイスに出させていただいたので、そこで有香さん(振付担当・佐藤有香さん)に振り付けを多少いじってもらいました。でもそこまで大きくは変えていないです。ステップの滑りづらいところの角度を変えてもらったり、などですね。他にはフリー後半のトリプルアクセル、最近の試合ではタイミングが合わなかったりで転倒や失敗が多い。そこをうまく合わせられるよう練習してきました。あとは自分の全力をちゃんと出し切れるように、そのための練習をしてきたつもりです。いつも、どんな試合でも全力をつくすことを目標にしているので!
――このリンクは来年のバンクーバー五輪の会場にもなりますね。 小塚 そうですね。でもリンクのサイズも変わる(五輪期間中は国際規格リンクに)し、来年はまた違う雰囲気になると思う。四大陸は四大陸として、ひとつの試合として思い切って。全力をつくすつもりで行きたいです。
text/Hirono Aoshima (写真はメインリンクでの練習終了後、カナダのファンに囲まれて)
2009年01月17日
スターズオンアイス東京公演開幕(2) 小塚崇彦、カート・ブラウニングの衣装で登場?
スターズオンアイスには、昨年に引き続きゲスト出演の小塚崇彦。一年前の公演では、まだ世界選手権にも出たことのない若手スケーター、だったけれど、今年は堂々、グランプリファイナル銀メダリストとして出演。一年前は少し伏せ目がちだった視線もしっかりお客さんに向けて、躍動感いっぱいの「ラストダンスは私に」を見せてくれている。 ところで今回の衣装、これまでのものよりも、ぐっとシックになった? 「実は新しいコスチューム、カート・ブラウニングさんの衣装なんです。スターズオンアイスの衣装さんが持ってるコスチュームのなかからお借りしたものなんですけど、ここに(襟のネームタグのところを指して)『Kurt Browning』って書いてあったんですよ!」 カート・ブラウニングといえば、スターズオンアイスで長くトップスターとして活躍した人物。そしてずいぶん前から、小塚崇彦一番の憧れのスケーターだ。昨年夏、初めてカナダのリンクで顔合わせがかない、今回披露しているエキシビションナンバーにもアドバイスをしてくれたとか。 「実際に会ってみて、僕にもすごく親しみをもって接してくれて、すごくいい人だなあ、って思いました。 今回はたまたま、衣装の人が『これがいいんじゃない?』って選んでくれたシャツが、カートのだったんです! ズボンはちょうど良かったけれど、シャツはちょっと彼の方が筋肉があるみたいで、少しダボダボ。それで毎回こうやって腕まくりをして着てるけれど、着心地もすごくいい。気に入っちゃったし、もらっちゃおうかなー(笑)」 今回は、トップバッターとしてショーの一番最初に出演の小塚崇彦。出番が終わった後は、ずっと他のスケーターたちの演技を楽しんでいるのだとか。
「スターズオンアイスはグループナンバーもすごく楽しくて……僕は特に、あのシマシマ衣装をみんなで着てるナンバー(「Sock Him in the Jaw」サーシャ・コーエン、シェン&ツァオはじめ、スターズオンアイスレギュラーメンバーが総出演)が好きです。僕らも日本代表のエキシビションで、みんなで合わせてオープニングやフィナーレで踊ることもあるけれど、やっぱり難しいんですよ。ひとりひとりががんばってるけどバラバラ、みたいになってしまう。そのへん、もちろんプロと僕らを比べたらダメだとは思うけれど、やっぱりスターズのグループナンバーはきちっと揃ってるし、同じ音できれいに動きを合わせられるし……さすが、プロは全然違うんだなあ! と思って見ています」
photo/Masami Morita
*スターズオンアイス東京公演 1/17、18 14時開演 東京・代々木第一体育館 *小塚崇彦選手へのインタビュー、そして小塚崇彦VS中野友加里スペシャル対談が、近日発売予定の『PASSION2009 男子ングルフォトブック』に掲載されます
2008年12月27日
2008全日本選手権レポート(4)男子シングルフリー終了、メダリスト決定!
織田信成、小塚崇彦、無良崇人。 表彰台で、ちょっと照れながらはしゃぐ3人の新メダリストたちを見て、こんな無邪気な少年たちを3人も、日本代表として世界選手権に送り込んでしまって大丈夫だろうか、などと思ってしまった。 もちろん、大丈夫だ。無良崇人はフリーでのミスこそ目だったが、トリプルアクセルの高さとパワフルさは世界トップクラスと言っていい。今日も大崩れはしたものの、トリプルアクセルを2度失敗して3度目にきちんと見せたところは、さすが。このままでは終わらないぞ、という男気を感じさせてくれた。 しかし気になるのは西日本選手権、NHK杯、全日本選手権と、舞台が大きくなるにつれて、緊張のために演技のスケールは小さくなってしまっていること! NHK杯のフリーは評価が高かったが、あの3倍はいい演技を、彼は見せることができる。世界選手権ではぜひ、大きな舞台にパワーをもらって、今季最高の演技を見せてくれるはずだ。
織田信成はついに全日本選手権王者として。日本の一番手として世界選手権に復帰する。もうすっかりおなじみの彼を、待っているスケートファンは世界中にいるだろう。 しかし練習での安定感、美しさ、そしてセカンドジャンプ、サードジャンプの精度もぴか一の4回転。それが決められず、優勝はしても悔しい表情は隠せなかった。試合に出なかった一年のブランクは、やはり大きい。だが4回転をあそこまで跳べるようになった身体作りも、練習も、この1年間で積み重ねてきたものだ。空白の一年間で失ったものと得たもの、どちらが大きかったのか……世界選手権でこそ、織田信成は見せてくれるだろう。
そして昨年同様、2番手として代表切符を得た小塚崇彦。「今年はオリンピックの出場枠がかかっています。自分が3枠とってくる。それは今シーズン初めから、目標にしていました」と、記者会見ではただひとり、気になる「枠とり」について、自ら口にしてくれた。ほんとうは優勝して、2度目の世界選手権に行きたかっただろう。ファイナルで2位に入った自信も、意地もある。銀メダリストではあるが、気持ちは1番手のつもりで。誰に言われるまでもなく、彼自身がそのつもりで、世界選手権の氷の上に立ってくれると思う。
表彰式が終わっても、彼らのマイペースなはしゃぎっぷりは変わらない。記者会見場に入る前、自分たちのことを語る伊東フィギュア部長の会見を面白げにのぞきこむ様子など、トップアスリートというよりも、廊下で立たされて教室をのぞきこんでいる少年たちのよう。「のぶりん」「むらむら」などと呼び合われたたら、メダリストが来るぞ、と身構えていたこちらのほうが気がぬけてしまう。 織田信成や小塚崇彦のことはすでに知っていても、こんな無邪気な3人組を送り込んでしまったら、ちょっと世界はびっくりするだろう。 「なんだこのジャパニーズボーイたちは! 3人もいるぞ!」 オフアイスでは彼らの素直さや笑顔が、愛されもするだろう。しかしこんなに頼りなさげで、こんなにらしくない男の子たちが、氷の上に乗ったらすごい! そんな驚きを、3人そろって世界の人々に見せてくれるに違いない。 愛されて、強い。こんなフィギュアスケートの男子代表チームは、世界にいない。どんなスポーツの日本代表にだっていはしない。
photo/Masami Morita text/Hirono Aoshima
*3選手のインタビューは、 『日本男子フィギュアスケートFan Book―Cutting Edge2009』(スキージャーナル刊)に掲載されています
2008年12月13日
グランプリファイナル2008 男子シングルSP終了 小塚崇彦1位!「珠玉の『Take Five』」
ほんとうに率直に言ってしまえば、男子シングル滑走直前の6分練習、いちばん会場からの拍手や声援が少なかった選手は、小塚崇彦だった。 とにかく世界のトップスケーター、ウィアーとジュベールへの声援が凄まじい。ヨーロッパチャンピオンのヴェルネルへの拍手も、それなりに。アボットやチャンは彼らほど、知名度も実績も高くないはず? いやいや、アボットは2月の四大陸選手権で5位。いいところを見せている。韓国での試合は初めてのはずのチャンも、7月のアイスショーでファンに顔見せをした。ユナ・キムのバナーが所せましと貼られている会場で、彼らのために韓国のファンが作った凝ったバナーも、あちこちに掲げられていた。 しかし悔しいことに……韓国のスケートファンは、まだ小塚崇彦を知らなかった。こんな状況を目の当たりにしてしまうと、なんだか悔しい。もう、こうなったらあのスケートを見せてあげなよ! などと思ってしまう。プログラムは、今の彼にこれ以上ないくらいはまった「Take Five」だ。あの素晴らしく粋で緻密なプログラムで、韓国女性たちをとりこにしてしまいなよ! などと思ってしまう。 「今年は世界選手権で最終グループに残り、世界のトップ6で戦うことが目標でした。それが少し早く、12月のこの大会で体験できた。いい練習にもなったと思います」 今回はそんな気持ちでファイナルにぶつかる、チャレンジャー。だからここは失敗したっていい、失敗しても観客は大いに沸いた、そんな演技を彼ができればいいな。そう思っていた。
それがなんと――ジャンプは全てクリーン、プログラムコンポーネンツも全選手中たったひとり、オール7点台。誰もが、本人さえも「あまり考えていなかった」、ショートプログラム首位発進! グランプリシリーズの一戦ではなく、ファイナルで、トップに立ってしまったのだ。 「プログラムが始まる前は、すごく緊張していて……。滑り出す前、信夫先生に背中をたたいてもらうまでは、本当に不安でした。でもジャンプをいくつか跳んだら、とても気持ち良くなってしまった(笑)。そこから最後までは、ずっと気持がよくて!」 点数まで気持ちのいいことに、2位のアボットにエレメンツスコアで4.5点、総合で5点以上の差をつけてのトップ。ジャンプはすべてGOE+1以上、美しかったルッツからのコンビネーションには+1.6までついている。スピンも、滑りも、一分の隙もないお手本のような2分50秒。特に後半、ストレートラインからサーキュラーへと連続して見せるステップでは、「なんだかこの人のスケート、気持ちがいい?」そう思い始めたお客さんに、これでもかとエッジワークを堪能させてくれる憎い構成だ。滑りだけでなく、まっすぐのびた手足も、姿勢も、何もかもが端正で美しい。珠玉の、「Take Five」だった。 「ジャンプの後にはリラックスして、ステップはもう、いつも以上でした。緊張は、すごくします。でも自分のやってきた練習を信じて、思い切ってできたのがよかったと思う」
さて、肝心のソウルのお客さんの反応は、どうだったのか? これも正直に言えば、決して「大盛り上がりだった!」とは言えない。ラストの高速のアップライトスピンなどでは大きな拍手をもらえたものの、端正な滑りのパートでは、じっと見守っているお客さんが多かったように思う。 しかし、これでいいのだろう。お客さんが大きな声を上げ、手を打ち鳴らしたのは、ジュベールの愛嬌たっぷりの氷上駆け足や、ヴェルネルの客席に視線を送りながら踊るダンス。滑り出す前の歓声のわりには、アボットやウィアーの演技中に「キャー!」の声が少なかったように、韓国のお客さんの賛辞の送り方には、ちょっと独特なものがある。 でも決して、小塚崇彦の背筋の伸びるような演技を、お客さんが評価しなかったわけではないだろう。あの滑りには、見るものの脳にじわじわとしみこむ快さがある。「なんだかよくわからないけれど、素敵」そんなふうに知らず知らずに、スケートに接して日の浅いお客さんの心にもしみこんでいくはずだ。 もしこれからの後、「滑りの巧さ」こそを第一に評価するファンが韓国にたくさん現れた時、彼らはこの夜の小塚崇彦の「Take Five」に、最大級の賛辞を送りながら言うのではないだろうか。「フィギュアスケートの見方を変えてくれたのは、タカヒコのショートプログラムだった」と。 見る人のスケート観を変えてしまうほどのものが、この日の「Take Five」にはあった。大げさではなく、そういい切りたい。
photo/Masami Morita text/Hirono Aoshima
2008年11月09日
2008 マイ・フィギュアスケート・オブ・ザ・イヤー発表 (2)
●クワドジャンパー・オブ・ザ・イヤー ケビン・レイノルズ選手
「史上2人目の4-3-3ジャンパー。しかもまだ17歳。彼にはジャンプを極めていってほしい」(千葉県 winnieさん) 「クワドジャンパーが減ってきているなか、果敢にチャレンジ。ジュニア世代で唯一、高難度が跳べる貴重な選手。4T+3T+3Loにチャレンジしたのは今シーズン彼だけ。更なる飛躍を楽しみにしている」(埼玉県 まりりんさん)
●チーム・オブ・ザ・イヤー カナダ選手団
「男子のバトル、チャン。女子のロシェット。ペアのデュベ&ディヴィゾン組。ダンスのヴァーチュー&モア組。まさにバンクーバーに向けて鉄壁の布陣」(東京都 きのこさん) 「今シーズンはカナダがとっても活躍したと思います。ワールドメダル3つでバンクーバー開催国として期待されているのも感じます。世界選手権への枠もダンスは減ってしまいましたが男子は3枠復活! ペアのレベルも高い国ですし、来期にさらにさらに期待です☆」(広島県 moonlightsonataさん)
●トランジッション・オブ・ザ・イヤー ジェフリー・バトル選手
「フリー『アララトの生母』に散りばめられたイーグルやイナバウアー、それに、片膝を氷に着いてターンする動きなど、得点にはならないつなぎの部分の滑りの美しさに感動しました。点数化されるエレメンツだけがフィギュアスケートではないことを改めて知らしめてくれた演技でした」(神奈川県 明さん)
●ナイスキャラクター・オブ・ザ・イヤー 武田奈也選手
「初グランプリシリーズでいきなりの表彰台というインパクトもさることながら、インタビューでの『牛タンを食べに行くとこだったので』や、TV番組での様々な面白発言にはつい笑ってしまった。何よりも、シーズンベストを更新した時の天真爛漫な笑顔が素晴らしく、こちらまで笑顔になった」(大阪府 ライラックさん)
●エキシビションコリオグラファー・オブ・ザ・イヤー 宮本賢二さん
「本当に数多くの、選手愛に溢れたエキシビジョンを振付けてくださいました。特に水津選手の『ナディア』はダンスが得意で美形な彼女の魅力を引き出していました。あれをテレビで見て、水津瑠美に興味を持った人も多いと思います。また織田選手の『Around the world』は彼のコミカルさをかっこよさに昇華させていてファンキーなプログラムでしたし、安藤選手の『ラ・ボエーム』は勝気で聡明な女性を演じることの多い彼女の、繊細で女の子らしい一面を引き出していました。これからも、もっとたくさんのエキシビジョンと、できることなら試合用プログラムの振付をしてください!」(東京都 Funnyさん)「個々の選手の新しい面を引き出す、素晴らしいEXプログラムやアイスショーの振付など大活躍でした」(福岡県 yukaleenさん)「個性的だったり選手の新たな面が出てきたりと、印象に残る振付けがたくさん見れました。特にバチェラレットとナディアが好きです。来シーズンも期待しています!」(千葉県 Kooさん)
●若気の至り・オブ・ザ・イヤー 世界選手権での小塚崇彦選手
「『若気の至り』は失礼な言い方かもしれませんが……。成熟した圧巻のスケーティングとは対照的な、ワールドでのガッツポーズ→転倒や、キスクラでの初々しさに、見てるこっちが照れちゃいました。そしてファンになっちゃいました」(茨城県 橘さん)
鉄壁の布陣を誇っていたカナダチームは、バトル選手が引退、ヴァーチュー&モア組が負傷。「若気の至り」な小塚選手はスケートアメリカ優勝、宮本賢二さんは今季、たくさんの競技用プログラムを振付け……。まだシーズン始めなのに、ずいぶんたくさんの動きがありました。
photo/Sunao Noto(写真は08年スケートアメリカでの小塚崇彦選手)
2008年10月20日
アイスダンス・イギリス代表 シニード・カー&ジョン・カー組インタビュー(2)[アイスダンス特集vol.2]
――今年はどんなふたりの「絆」が見られるか、とても楽しみ。シーズンの始まり、ファンが注目するのはグランプリシリーズですね。 シニード 今シーズンのグランプリシリーズはスケートアメリカとフランスね。もしファイナルにいけたら、夢のようだわ。コーチからはどちらの試合もトップ3に入ることを目標に、って言われてるんだけれど。
――スケートアメリカは3回目のチャレンジ、フランスには初めての出場ですね。どちらが楽しみ? ジョン そうだな、どちらかといえば……日本がいいな(笑)! シニード そうよね、NHK杯だったら最高だったのに。日本の運営組織はしっかりしてるし、人々は素晴らしいし。来年は来られたらいいな。でもまあ、パリも悪くないわね。スコットランドからも近いから、家族が見に来てくれたらうれしい。 ジョン NHK杯に出られないのは残念だけれど、スケートアメリカもフランスも、人気がある試合。ここでメダルをとってファイナルに進めたら僕達にとってすばらしい前進だよね。この目標を達成できたらいいな、と願ってるよ。
――ファイナルは韓国。日本のファンもたくさん見に行くと思います。ところでジョンは今回、ちょっと変わった相手とのダンスを見せてくれましたね。日本の小塚崇彦選手! ジョン そう! 彼とのダンスは楽しかったよ。でもこのあともう少し、ふたりで練習するんだ。残りのショーはもっといいものにするからね(取材は初日第一公演終了後)。もちろん男の子とカップルを組むのは初めてだよ(笑)。振付師さんに“俺達フィギュアスケーター”から得たアイデアで滑るって聞いたとき、これは楽しくなるなあ、とまず思った。でもスロージャンプは、僕が投げられる役じゃなくてよかったな。僕だったら投げられても、どうしていいかわからないもん(笑)。
――見ごたえたっぷりの「俺達フィギュアスケーター」でした。練習時間も短いなか、リフトまであって大変だったのでは? ジョン 全然平気だよ! 僕達のパフォーマンスでお客さんが喜んでくれたみたいだし、僕達もうれしい。それですべてOK! タカヒコはそんなに背が高くないから、一緒に滑るのにちょうどいいし、滑りやすかった。試合では男同士で滑ることはできないけれど、こうしてたまに、ショーで滑るのはいいね。でもふたりがあまり真剣になって、熱くなりすぎたら困るけどね! シニード ずいぶん楽しそうね。どうやら私はパートナーをとられちゃったみたい(笑)。
彼らのダンスそのままに、底抜けに明るいキャラクターのシニード&ジョン。ペアやアイスダンスの選手へのインタビューの場合、男女のどちらかが率先して応え、片方は促されてやっと話をしてくれる、というふたりが多い。しかし彼らふたりは、一つの質問に二人で競うように答えてくれたのが面白かった。きょうだいということで体型も似ているが、性格もまた、よく似ているようだ。 今シーズンはすでにシーズン序盤のフィンランディアトロフィーで優勝! 初のファイナルを狙うグランプリシリーズに向けても、準備万端というところだろうか。 アイスダンス特集では、彼らのコーチ、エフゲニー・プラトフのインタビューもお届け予定。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima *写真は07年NHK杯でのフリーダンス
2008年10月11日
『Cutting Edge2009』発売記念、男子シングルチームジャパンクイズ!
『Cutting Edge2009』、発売直前。 編集部より、インタビューに登場してくれた11人の選手に関する11問のクイズを出題します。 解答はすべて、『Cutting Edge2009』のどこかに掲載。昨年版より16ページ増の112ページ、答えあわせを楽しみながら読んでみてください。
Q 村主章枝選手に、マッサージ師さんを紹介してもらった選手は誰?
Q インタビューが始まるや否や、『Cutting Edge』の売り上げを心配してくれた選手は誰?
Q ほんとうは今シーズンフリー、「オペラ座の怪人」を滑りたかった選手は誰?
Q ジャンプを跳べたうれしさのあまり、氷の上を転げまわって喜んだ選手は誰?
Q 田村岳斗さんから小学生用計算ドリルをプレゼントされそうになった選手は誰?
Q 大切な試合の滑走直前、鼻血が止まらなくなった選手は誰?
Q 6人もの選手から、「あいつが一番器用」と言われた選手は誰?
Q 滑ってみたいプログラムは「髙橋大輔の剣の舞」という選手は誰?
Q 今年の色紙に「才能には限界がある。努力は無限だ!!」と書いた選手は誰?
Q マイブームが「みんなのGOLF」、という選手は誰?
Q インタビューで恋人募集をした選手は誰?
photo/Sunao Noto (ドリームオンアイス2008リハーサルにて)
2008年10月11日
『日本男子フィギュアスケートFan Book Cutting Edge2009』10/14発売、10/12先行発売決定!
今年で4冊目となる日本男子シングルのファンブック、『Cutting Edge2009』。 お待たせいたしました。来週火曜日、全国書店、インターネット書店にて発売です。 また10/12より、東京フィギュアスケート選手権大会会場(明治神宮アイススケート場)にて、先行発売も決定いたしました。 待ちきれない皆さんは、ぜひ会場にて!
タイトル:日本男子フィギュアスケートFan Book Cutting Edge 2009 出版社:スキージャーナル
書店発売日:10月14日 会場先行発売日時:10月12日(16時~)、10月13日 定価:本体1800+税 ISBN:978-4-7899-6177-6 髙橋大輔ポスター付き!
【contents】 日本男子シングル11選手独占インタビュー
髙橋大輔 「落ち着いて、ゆっくりと。ちょっと賢く、一年を過ごしたい」 織田信成 「新しい自分になれたのは、去年のことがあったから」 小塚崇彦 「今までとは違う僕を見せられる、そんなシーズンになる」 南里康晴 「去年以上に厳しい今年。ひとつひとつ、結果を残したい」 中庭健介 「『頑張ってるね』じゃ、ダメ。『上手くなったね!』って言われたい」 無良崇人 「初めてのシニア、プラスになる経験を絶対にしたい。ひとつでも多くしたい」 柴田嶺 「生まれ変わります。レイジーな自分から、ストイックな自分へ」 小林宏一 「スケートは難しい。でも今、その難しさが楽しい」 佐々木彰生 「ただの踊るスケーターじゃなく、トップレベルにふさわしい技術を」 羽生結弦 「頑張ったノービスは、もう終わった時代。今年は一からやり直しです」 町田樹 「常に考えているのは、目の前の試合のことだけ」
スペシャルインタビュー 佐藤有香、田村岳斗、荒川静香
応援メッセージ 今泉清保、小川彌生、本田恵美、中野友加里、安藤美姫
コーチメッセージ 長光歌子、織田憲子、佐藤信夫、河野由美、石原美和、長久保裕、川越正大、樋口豊、阿部奈々美、佐藤亜希子、秦安曇、小泉仁
選手の皆さん、コーチの先生方をはじめ、たくさんの関係者のご協力により、今年も『Cutting Edge』、発刊にこぎつけました。史上最も日本男子シングルが熱い、今。 今を見逃したくない11人の選手たちの、冷たい氷の上に立ち続ける理由、 この場所で、この時代に、見せたいものとは? スケーターと、スケートを愛する皆さんのための、ファンブックです。
*女子シングルファンブックの詳細も追ってお伝えいたします。 *スケートまったく関係ありませんが、写真家板東寛司さんとライター青嶋の本、『まだ恋じゃない』(メディアックス刊)も発売中。ついでにこっそりおすすめです。
2008年08月10日
真夏の氷上祭典2008ザ・アイスレポート(2)
出演するスケーターは誰か? それが、アイスショーの一番の注目ポイントだ。 ファンはどんなスケーターが出るかを真っ先に知りたがるし、アイスショーに行くか否かの大きな判断基準にする。 しかしどんなに豪華なスターたちを集めても、そのショーがお客さんを楽しませてくれるとは限らない――ここ数年でアイスショーを観る機会がずいぶん増えた日本のスケートファンは、そのことに気づいているだろう。 次々とスターの演技が続く、それだけのショーでは、観客も、またスケーター自身も楽しめない。 この場に立てることがうれしい! そう思いながら出演者たちが滑れるような舞台を、演出陣が用意することも、アイスショーにとっては大切なことだ。
そういった点に、とことんまでこだわったアイスショーが「ザ・アイス」だ。 浅田真央、ジェフリー・バトルと、ふたりの世界チャンピオンが顔をそろえ、さらにオリンピックチャンピオンのアレクセイ・ヤグディンまで登場。でも、決して出演者の豪華さに甘えてはいない。 演技の合間には、毎公演違うメンバーでのトークショー。これは、普段なかなか聞くことのできないスケーターの肉声を聞ける楽しい時間だ。一部と二部の間に流れるビデオを見て簡単なダンスを覚えると、フィナーレでスケーターと一緒に踊れる、そんな楽しさも、ほかにはない。ショーの最後を彩る花火やエアーショットなどの演出も、見る人々を非日常の世界に来た高揚感でいっぱいにしてくれる。 とにかく最初から最後まで、「お客さんを楽しませよう!」という心配りでいっぱいなのだ。
何よりスケートファンのツボを心地よく刺激してくれたのは、ソロプログラムの合間とフィナーレで見られた、選手たちのコラボレーション演技。 まず前半には、イギリスのアイスダンサー、ジョン・カーと小塚崇彦が、映画「俺たちフィギュアスケーター」の音楽に乗って、男同士のペアを披露! 男性が男性を投げるスロージャンプなども楽しいが、ダンサーとともにステップを踏んでも遜色ない小塚崇彦のエッジワークに改めて感嘆したり、昨シーズン話題になったジョン・カーのキルト姿を再び見られてお得な気分になったり……。お客さんだけでなく、選手たちもこの趣向には大喜び。弟のナンバーを見守っていたシニード・カーは、「私のパートナー、取られちゃうかと思ったわ!」と、大絶賛していた。 また長洲未来、エヴァン・ライサチェク、サーシャ・コーエンという全米チャンピオン3人がそろった「We will rock you」などは、本場アメリカでもなかなか見られない豪華競演だ。3人とも、特別難しいものを見せるわけではないけれど、とにかく3人が同じ音楽で滑るだけで、とんでもない迫力、そして華が生まれる。なるほど、全米チャンピオン。スケートのテクニックでもなく、見せるテクニックでもなく、ただただ華があること。それも、このタイトルを得る者に求められる条件なのか、と改めて思った。
photo/Masami Morita text/Hirono Aoshima
2008年08月02日
真夏の氷上祭典2008ザ・アイス レポート 鈴木明子・タンゴの快感
フィギュアスケートは、時に観客をさまざまな場所へと連れ出してくれる。 水鳥がなめらかに漂う湖上へ、オペラやミュージカルが繰り広げられる劇場空間へ……。 ザ・アイス第1部での、鈴木明子、カー&カー、小塚崇彦へと続くショーの流れは、観客をボールルームへと誘い、それぞれのダンスの空気感で会場を満たした。
カー姉弟は昨シーズンのオリジナルダンス「Auld Lang Syne(蛍の光)」を、ショーナンバーにアレンジして披露。彼らの故郷スコットランドの民族衣装・キルトが目に入った瞬間、このプログラムをもう一度見られる嬉しさでワクワクしてくる。日本人にも馴染みの深いメロディーに乗った、力強く、かつ軽やかな、ふたりの滑りは、スピード感あるフォークダンスを楽しませてくれた。そして、一緒に踊っているような高揚感が、さらに観客を盛り上げていく。 小塚崇彦は今シーズンのEXナンバー「Save The Last Dance For Me(ラストダンスは私に)」。この曲を演じる彼は、まるで初めてのダンスパーティーに胸を高鳴らせているような初々しさを感じる。ダンスの楽しさを知った小塚崇彦が、愛する人の手を取って踊る幸せを観客にも体感させてくれる──そんなひとときを作り出していく。
そして、この流れの冒頭でボールルームの空間を一気に作り上げたのは、鈴木明子の「リベルタンゴ」だった。 スポットライトが当たると、もうそこにはダンサーに変身した鈴木明子がいた。背中の大きく開いた衣装からのぞく真っすぐな背筋は、色香とともに凛とした女性の強さを感じさせる。その背中と肩越しに見つめる視線が、会場中の緊張感をぐっと高めた。 アイスダンスのようにパートナーがいるわけではないのに、ふたり分のエネルギーをも感じるダイナミックな振付け。エッジに乗って、トレースがカーブを描き続けるような全体構成。振付けの宮本賢二は今季、高橋大輔のショートプログラム「eye」でもタンゴを振付けているが、「リベルタンゴ」では、より王道のボールルームダンスらしい表現が前面に出ていた。 スローパートから後半のステップへの盛り上がりでは、ここがスケートリンクだということを忘れてしまう程に、メリハリの利いたタンゴの足さばきが目を奪う。彼女のタンゴには、どんなに手を伸ばしても触れることを許してくれないような気高さが宿っているように感じられた。そして、観客が彼女の足さばきに目を奪われている間に、頬をそっと撫でられたような──残り香のような快感だけを置いて、彼女は行ってしまうのだ。 観客がその快感に酔っている間に、見事なツイズルとともにクライマックスを迎え、ダンスは幕を閉じた。もっと快感を味わい続けたい……そんな余韻を残しながら。
鈴木明子は、もともと音楽表現への評価が高いスケーターだ。けれど、リンクに立つだけで放つ、ここまでの存在感を、いつの間に培っていたのだろうか。その努力と自信が集結したような演技を、「リベルタンゴ」で見せてくれた。 まさに、機は熟した。いよいよグランプリシリーズに参戦する今シーズン、彼女の存在感を世界の舞台で示してくれることを願う。そして、ぜひ、グランプリシリーズNHK杯で、上位選手として、このタンゴをエキシビションで披露してほしい。
photo/Sunao Noto text/Yukiko Oshima
2008年08月01日
2008 コーチ・オブ・ザ・イヤー 推薦コメント(1)1位~4位
1位 ラフェアル・アルトゥニアン 94ポイント 「浅田真央、ジェフリー・バトルの世界選手権優勝に一番かかわった人物だと思う」 「(バトル選手がインタビューで)事情があってワールドに彼は来れなかったと言っていましたが、バトル選手・浅田選手という教え子2人の優勝は、ラファエルコーチのこれまでの指導の賜物といっていいと思います」 「残念ながら浅田選手とは師弟関係を解消してしまいましたが、今回の男女の世界チャンピオンを生み出した一つの要因は間違いなく彼の存在だったと思います」 「このコーチについた代表的な選手も山あり谷ありの劇的なシーズンでしたが、ラファエルコーチにとっても波瀾万丈のシーズンだったと思います。しかも、世界選手権で男女シングルの金メダリストが教え子だったにも関わらず、そのキスクラに座ることができなかったなんて……最後の最後にどんな思いをされたのかと考えると、胸がいっぱいになってしまいます」 「世界選手権の覇者は男女とも彼のコーチを受けている。なのに、どうして晴れの舞台に現れないんだ! 何かしらお礼の気持ちを伝えたい! この賞とか……」
2位 佐藤信夫 65ポイント 「教え子の中野選手・小塚選手が世界選手権でともに好成績。やはり、ここぞという時の安定感が、ベテランコーチだなと感じました」 「国外のコーチが賞賛されがちですが、日本の恵まれないリンク事情、環境の中で、ワールドにふたり送り込んだ佐藤ご夫妻はやっぱりスゴイと思います。コーチ選定で悩んでいる選手を見てから佐藤ご夫妻に大事に育てられている中野・小塚選手を見ると、なんだかホッとします」 「世界選手権での中野選手や小塚選手の堂々とした演技、清々しさや真面目な受け答えなど、スケーティングはもちろんですが、精神的な部分での教育もシッカリなさってるんだな~と思いました」 「長年コーチをしていらして、毎年大きな大会へ選手を派遣できる指導力の確かさを感じます」 「世界選手権でのキス&クライで点数の低さにブーイングが起こる中、中野選手ともども嬉しそうな表情だったこと。最高の演技ができた選手を温かく迎える気持ちが素敵だと思いました」
3位 ニコライ・モロゾフ 46ポイント 「一番の推薦理由は髙橋君にヒップホップをさせたこと。リッポン君をジュニアチャンピオンに導いたこと」 「技術だけでなくメンタルな面でもとても選手を上手に指導していると思う。情熱を感じる」 「昨シーズンに引き続き、髙橋、安藤を成長させてきたから。安藤は悩んでいたようだけれど、全日本での素晴らしい復活はやっぱりニコライのサポートがあったからこそ可能だったと思う」 「アダム・リッポンもジュニア選手権で優勝に導いたし、ここまで選手に付き添い、親身に指導、そして結果を出すコーチはいない」
4位 タチアナ・タラソワ 43ポイント 「コリオグラファーの立場にも関わらず、あどけなさの残る浅田選手の演技に見事『女性らしさ』を加えました。殿堂入りはさすがです」 「久々に魔法を使ったから! タラソワさんのフィギュアスケートへの情熱と、選手の能力を開花させる力は本当に尊敬します」 「真央ちゃんに、可憐さと美しさという武器を与えてくれた。あんな短時間で素晴らしい選手に育ててくれて、大感謝です!!」
*写真上は07年イタリア全日本合宿での佐藤信夫コーチ(右)と、ともに小塚崇彦を指導した小塚嗣彦コーチ
2008年07月02日
ドリームオンアイス2008レポート(2) 小塚崇彦・少年と青年のはざまで
今年は小塚崇彦、踊るつもりだな! ドリームオンアイスで滑る予定のナンバー、「ラストダンスは私に」の話を彼から聞いたとき、あまりに楽しそうに新しいプログラムのことを語ってくれるので、ずいぶん驚いてしまった。 憧れのカート・ブラウニング、そしてブライアン・ボイタノ。彼らの振付師として有名なサンドラ・べシックに、エキシビションのみだが振り付けをしてもらえることになって。彼女の元で、ひとうひとつの音を丁寧に拾うことの面白さ、見せる部分の楽しさと丁寧なスケーティングの両立の醍醐味を知って。 「カートにもこのプログラム、いいねって言ってもらえたんですよ!」 そう言って顔をほころばせる彼の言葉に、選手にプログラムの話を聞くのはほんとうに楽しいな、と思った。
思えばフィギュアスケートのプログラムは、贅沢なものだ。バレエなどの振り付けは、たくさんのダンサーに踊り継がれていくことが多いが、スケートのプログラムは、基本的にひとりの選手のためだけに作られる。一流の振付師、一流の芸術家が、自分のためだけの作品を作ってくれる――それはいったい、どんな気持ちがするものだろう。 小塚崇彦が今、本当に大切にしているナンバー「ラストダンス――」は、彼の思いの強さにたがわず、見るものを爽やかな心地よさに浸らせてしまう、すばらしい作品だった。 滑りの美しさが何よりの武器である彼が、音楽が鳴りだすと同時に見せたのは、ちょっと粋なマイム。両手を差し出すしぐさ、顔に手を当てる動き。今までならば少し照れが入っていた振付けも自然にこなし、それがちっともいやみな感じがしない。お客さんをのせるために作られたようなダンスナンバーに、まずは彼自身が自然にのると、客席からの手拍子もごく自然にわいてくる。 今年19歳。年齢的には青年といえるかもしれないが、まだちょっと少年の面影が濃い彼によくあった動き。迷いなく軽やかな、この時期の男性だけがまとい、放つことをゆるされる空気。 また、ポップに、キュートに、おしゃれに踊りつつも、スケートの信じられないような滑らかさも大事にしたプログラム。よくぞ小塚崇彦に、今この時期の小塚崇彦にこれを作ってくれた! とサンドラ・べシックに感謝したくなってしまった。
世界に、少年と青年のはざまの輝き、素直さを持つ男性は、たくさんいるかもしれない。でも彼らのなかで、こんなにスケートがきれいなのは、世界中できっと小塚崇彦だけ。「ラストダンスは私に」は、間違いなく彼だけの表現できる、彼だけの世界だ。 あまりに技術的な部分が巧すぎて、もう少し個性があれば、もう少し見せてくれれば……といわれ続けてきた小塚崇彦。今年はそれを、しっかりと見つけ、しっかり捉えていく年になるかもしれない。 でもすべてを見せ終えた後。カーテンの前で丁寧に一礼する彼を見て。やっぱりちょっと体育会系な、礼儀正しい「小塚選手」はそのままそこにいるな、と思った。まじめで、実はやんちゃで、ちょっと照れ屋な彼の本質はそのまま。そのまま新しい小塚崇彦に、無理することなく自然に変っていくのだろう。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima
2008年04月19日
別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート~2007-2008メモリアルブック~ 本日発売!
髙橋大輔、ジェフリー・バトル、ステファン・ランビエールなど世界の男子シングルスケーターを特集したメモリアルブックが、本日発売になりました。
別冊ザテレビジョン 男子フィギュアスケート~2007-2008メモリアルブック~ 発売日:2008年4月19日 価格(税込):1800円 A4判 オールカラー112ページ 発行:角川ザテレビジョン 発売:角川グループパブリッシング ※ジャパンオープン2008会場、アイススペースブースなどでも数量限定販売 ※書店ではスポーツ誌コーナーのほか、テレビ誌のコーナーでも販売
【contents】 巻頭特集30ページ 髙橋大輔 10000字独占インタビュー
トップスケーターへのインタビュー ジェフリー・バトル、ステファン・ランビエール、ブライアン・ジュール、ジョニー・ウィアー、エヴァン・ライサチェク、小塚崇彦、南里康晴、中庭健介、羽生結弦
スペシャル対談 髙橋大輔VS中野友加里 南里康晴VS小塚崇彦 長光歌子VS河野由美 長久保裕VS田村岳斗
インタビュー 宮本賢二、佐藤有香、アントニオ・ナハロ、アレクセイ・ミーシン、村主章枝ほか
「バンクーバー五輪、いちばん楽しみなのは男子の戦い」と、ニコライ・モロゾフ氏も語るように、今もっとも目が離せない種目、男子シングル。来シーズンの開幕が今から待てないファンの皆さんにお送りする一冊です!
*スケートまったく関係ありませんが、写真家板東寛司さんとライター青嶋の本、『逢いたくなっちゃだめ』『誰かいませんか』が文庫になりました。ついでにこっそりおすすめです。
2008年03月25日
男子フリー終了 小塚崇彦8位、総合8位「初陣の香気」
「絶対3枠を取ってきます!」 小塚崇彦が四大陸選手権後、力強くそう宣言してくれた時。 今は、そう言い切ってくれる気持ちさえあれば、それでいいな、と思った。 自ら口に出してまで宣言してくれたのだから、たとえ3枠を、2番手である小塚崇彦のせいで逃してしまったとしても、彼の健闘をたたえよう、と。 今シーズンのグランプリシリーズや四大陸選手権での成績を考えて、そんなことを思ってしまっていたことを、今は彼に謝らなければならない。 小塚崇彦は、宣言通り男子の3枠を掴み取ってきた。そして、彼自身と日本男子の、さらなる可能性を世界に見せつけてくれた。
小塚崇彦、イエティボリでの4分30秒。まずいつものように、60×30メートルの隅々までが自分の場所だと確かめるように、大きく、素晴らしいスピードでリンクを一周する。 最初のジャンプは惜しくも3回転-1回転。でも続くトリプルアクセルに、3回転トウをつけて3回転-3回転を挽回! 「3-3のコンビネーションは、できれば最初に決めたかった。それが抜けてしまったので、やむを得ずトリプルアクセルに3をつけました。昨日、3-3が3-2になってしまったことで、今日は絶対3-3! って気持ちがあって。どこで跳ぶか、もう、迷ってる場合じゃなかったです」 ほとんど練習していなかったというアクセルからの3-3に続き、もう一本のトリプルアクセルも成功! これはすごい! 体も昨日のSPに引き続き、のびのび動いている。 小塚崇彦は、表情や手の振り付けなどではなく、ブレードに感情をこめて滑るタイプのスケーターだ。まだまだ笑顔は硬いし、氷上で物語を語ったり、風景を描いたりしたりする術も、まだ知らない。でも、今は派手な表現ができなくても、ここまで自在に氷をつかむスケートがあれば――これから自分の表現手法やスタイルを見つけた時、スケートで見せたいものが見つかったとき、どんなにダイナミックな演技ができるかを、ジャッジもよく知っている。期待の表れは、高いスコアにもしっかり表れた。 「でも今日は、コンビネーションをどこで跳ぶかを変えたので、ジャンプの構成を考えなおすことに気持ちが行ってしまった。そのことで、身体の呼吸が少し乱れたかもしれないです。演技への集中が最後の方、少し途切れてしまった……」 そんな戸惑いなど、見ていて気付かないほどスケートは良く滑っていたはずだが、ジャンプは3-2-2、続いて今シーズンずっと失敗していたトリプルループと決めて、いいぞ、このまま! と思った矢先。トリプルサルコウ転倒。続くトリプルルッツも転倒……。 あまりにも、初陣ながらSPで好位置につけた選手らしい試合展開、だったかもしれない。 タカヒコいいぞ、行け、と、昨日彼を覚えたお客さんもみんなが彼の滑りを喜んで、残るジャンプもあと少し、もうちょっとだ! と思った矢先の、ふたつの転倒。 あまりにも若い、これからの選手らしい失敗だ。 演技を終えると、小塚崇彦は天を仰いで、キッと唇を噛みしめた。その姿がまた、あまりにも「これからの若者」らしくて、スカンジナビウムの観客たちは微笑みながら、心から暖かな拍手を彼に送った。
「ます、2本転倒したことがすごくくやしいです」 演技後、ミックスゾーンにやってきた小塚崇彦は、報道陣を前にまず深々と、本当に深く頭を下げて、「ありがとうございました」と静かに言った。そのあとに、苦手でも何でもないジャンプを転倒した悔しさをゆっくりと口にした。 彼自身が、一番悔しいだろう。でも、彼には悪いが、会場のお客さんも、記者も、彼自身ほどはこの転倒を悔しがってはいないのだ。それはもちろん、年齢的にも資質的にも、明らかに小塚崇彦はこれからさらに伸びるスケーターだし、この悔しさを挽回するチャンスがいくらでもあることを知っているからだ。 「世界選手権、簡単じゃないってこと、すごく実感しました」 そう、このくらいの苦い思いこそが、きっと次に繋がる力になる。 それに、ふたつも転倒があったというのに、134.24という得点、8位という順位。 これは、クリーンに滑ればトップスケーターに仲間入りできる結果だったということ。来年の出場枠3も、彼の活躍のおかげで見事にキープした。 小塚崇彦、これから行けるじゃないか! たくさんの人が日本男子のこれからに、明るさを感じたはずだ。 今持てる力は見せられて、ジャッジからの評価も得て。 でもふたつの転倒で、悔しさと大舞台の怖さも知って。 小塚崇彦はイエティボリで、得られるはずのもの、すべてを得た。 19歳。最高の、世界選手権初出場だ。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima
*小塚崇彦選手へのインタビュー&スペシャル対談は、4月発売予定の月刊ザテレビジョン別冊フィギュアスケートムックに掲載予定です
2008年03月22日
男子シングルSP終了、小塚崇彦8位 滑りの申し子
やっと、見たかった小塚崇彦が見られた! そんな満足感でいっぱいにさせてくれたSP、「キャラバン」だった。 滑り出しから、誰よりもスムーズで素晴らしい一歩を、彼のスケート靴は、すーっと踏み出す。 タカヒコ・コヅカ? 知らないなあ、と思っていたお客さんも、きっとこの一歩目で「おっ?」と目を見張らずにはいなかっただろう。それほど、滑りそのものに人の目を奪う力が小塚崇彦にはあるし、今日の彼の滑りはことさらだった。 ジャンプも、3回転-3回転が3-2になってしまったけれど、トリプルアクセル、トリプルフリップとともにOK。特に3つ目のフリップをタシーンと軽く、力強く決めた後は、右手で小さくこぶしを作り、笑顔の佐藤久美子コーチの前を「やった!」という氷上で駆け抜けていく。 スピンもさすが、佐藤チームで鍛えられたスピードと安定感。ひょっとしたら、勘のいいお客さんだったら、彼のスケートやスピンを見て、昨日最後に滑った女の子とおなじコーチのもとで育って選手だ、と気づいたのではないだろうか。少し古いファンならば、さらにコリオグラファーの名前にユカ・サトウの名を見て、膝を打ったかもしれない。 そんなことを思うほど、今日の小塚崇彦の若くてしなやかな身体には、スケートを愛した先人たちの技術の結晶が、しっかり息づいていた。そしてとびきりクオリティ高いスケート技術を携えて、今、氷上を疾走しているのは、彼の若くて無垢な魂だ。磨き抜かれた古き良きものと、まぶしいほどの若いエネルギーが結びついて、初めて生まれるかけがえのないもの。それがこの日、小塚崇彦が氷上で見せてくれたものだ。 最後は、超高速のアップライトスピンで客席をわかせ、大喝采の中、堂々のフィニッシュ。 これがあの、「滑走順にびびって」歯をガチガチ言わせていた青年だろうか?
「今日はなんでか知らないけれど、今まで味わったことのないほどの滑りのなめらかさを、6分練習の時に感じていたんです。その滑りの感覚のおかげで、張りつめた気持ちもやわらいでいって……出ていく時には『がんばっていくぞ!』って気持ちになってました」 滑りの申し子のような小塚崇彦が、「今まで味わったことのないほどの」自分のスケートのなめらかさに驚いている? そんなことは、あの佐藤有香さんでさえ、年に一度か二度、あるかないかのたぐいまれな感覚だ。ひょっとしたら私たちは、とんでもない瞬間に立ち会ってしまったのではないだろうか? それはそのままスケーティングスキル7.04という、高い得点にも現れていた。 「7点台が出てますか? (ポイント表に目を向けながら)あ、ほんとだ、すごい!! でも今日の出来のことは、今夜しっかり寝て、もう忘れて……。明日はもう一度、一からスタートしたいと思います」
世界選手権に新人賞のようなものはない。でも、その大会を機に一気に躍進していく若い選手が、毎年必ず現れる。98年のプルシェンコだったり、06年の織田信成だったり……。今年はきっと、小塚崇彦! 世界のスケートファンが、彼との出会いを忘れない大会に――きっと今日のフリー、タカヒコ・コヅカはしてくれる。
photo/Masami Morita text/Hirono Aoshima
2008年03月21日
「正直びびってます」男子SP直前! 小塚崇彦選手コメント
男子ショートプログラムの滑走順が決まった直後、記者の質問に答えてくれた日本の3選手。 改めて、取材すべき日本男子が3人もいることがとてもうれしい。どうしても注目は髙橋大輔選手に集中するけれど、3者3様、個性豊かな日本男子のスケートと戦いぶりを、ファンの皆さんにもぜひ楽しんでほしい。まずは3人中、最年少。初出場でSP最終グループ入りと、とんでもないスタートを切ることになった小塚崇彦選手の声をどうぞ!
――滑走順(最終グループ4番。おなじグループで、髙橋、バトル、ジュベールが滑る)が決まって、頭をかいていましたね。 小塚 まさかあそこに入るとは思っていなかったので……。まだ、歯がカタカタ言っています。正直びびってます(笑)。
――でもまだ、すぐには始まりませんよ(抽選はSPの2日前)。 小塚 もう、すぐに始まるんじゃないかって気になっちゃってます……。抽選がすすんでいって、リストに選手の名前が埋まっていって、まわり(高橋、南里選手や日本チームのスタッフ)が「これは絶対、崇彦後ろ(最終グループ)だよ!」って言いだしてから、もう緊張しだして……。ほんとに最終グループって決まってしまって「ああー、あそこに自分が入るのか……」って。でも落ち着いて、気持ちを立て直して試合に向かいたいです。
――このグループで滑ることは、予想していませんでしたか? 小塚 来る前は、もっと前のグループで滑るはずだったんですよ。(小塚選手は、世界ランキング順で並べれば参加選手中13位で、上位12人で滑走順を引く最終2グループには入らない予定だった。それがアメリカのエヴァン・ライサチェク選手の欠場で12位に繰り上がり、急きょ最終12人入り)。でも、こういうグループで滑れることは、とてもうれしいことなので。
――歯がカタカタ言うほどの緊張感、どう対処していきますか? 小塚 とりあえず今日の夜、練習をして、良く寝て、良く食べて、気持ちを落ち着かせて。
――コーチの佐藤先生たちはこの滑走順、どんな感想を持っているでしょう。 小塚 先生はまだ知らないんです。いったいなんて言われるか……。でも伊東さん(伊東秀仁強化部長)いわく「相手にとって不足なし!」だと。 伊東 お前がそう思わないとだめなんだぞ(笑)。 小塚 もう開き直るというか(笑)、時間をかけてこの気持ちを変えていくしかないと思います。当たって砕けろじゃないけど、思いきっていきたいです。このメンバーと公式練習で一緒に練習できることもいい機会だし。
――順位など、目標は何か定めていますか? 小塚 今は順位どころじゃないですよ! 滑走順のことでいっぱいいっぱいです!
本当に「びびってます」という様子だった小塚選手には悪いけれど、記者も、日本チームスタッフも、コーチたちも、みんなこの滑走順、喜んでいるはずだ。これは日本のホープが成長するための、またとないチャンス! 韓国でもお客さんの大声援に「びびって」しまったという小塚選手。ここで一発、男らしいところを見せてほしい!
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima
2008年03月18日
世界選手権に向けて――髙橋大輔選手、小塚崇彦選手コメント
前哨戦となる四大陸選手権終了後、髙橋大輔、小塚崇彦の男子シングル代表に、世界選手権への思いを聞いた。
*小塚崇彦選手 「世界選手権代表に決まったときはうれしくて、がんばろう! ってすごく思ったんですけど……。四大陸までは練習場所の確保とか4回転のこととか、いろいろなことにふりまわされてしまったかもしれません。世界選手権までは、ただ練習のことだけを考えて、思いっきり練習して、練習したな! って思える状態で臨みたい。男子の3枠を何としても確保するよう……がんばります! スウェーデンに行くのは初めてです。どんな国なのかな? まだ何にも調べてない!」
インタビュアーからはなかなか聞きにくい出場枠の話。でもこちらが聞く前に、彼の方からはっきり口に出してくれたのは、うれしかった。戦う気は十分。でも、佐藤有香さんも言うように、まずは結果を気にせず、ぞんぶんに初めての大舞台を楽しんでほしい。
*髙橋大輔選手 「世界選手権は……楽しめなさそう! だって、男子シングルの試合は全日程の最後じゃないですか! それが嫌なんですけど(笑)。それに、世界ジュニアで優勝した時に行ったノルウェイは雪ばかりで、北欧はあんまり明るいイメージがないな。でもノルウェイは魚がおいしかったから、きっとスウェーデンも魚がいけると思う。勝手なイメージですが(笑)。ご飯を楽しみにしたいです. 世界選手権までの時間は、緩めすぎてもダメかと思っています。日本に帰ったらもう一回追いこんで練習して、体力をつけて。あと、スピンの練習をもっとしたいですね。これから少し、スピンに時間を割いてみよう。 世界選手権で勝つには……最低でも四大陸ぐらいの演技をしなきゃいけないですね。他のみんながどこまで上げてくるか、わからないですから!」
いつもの世界選手権では、トリをつとめる試合は女子シングル。しかし今年はヨーロッパ勢、男子に有力な選手が多いためか、男子シングルが最後の決戦に選ばれている。 毎年試合後には女子シングルの応援(05年の記事)をするなど、リラックスしている髙橋選手。でも今年は、最後に控えた最もドラマチックな舞台に立つ。「嫌なんですけど」と笑いながらも、一番目立つ試合、一番注目を集める試合で戦うこと、楽しんでくれそうだ。
photo/Masami Morita text/Hirono Aoshima *写真は07年全日本選手権のフリー
2008年03月18日
世界選手権直前! 佐藤有香さんからのエール(1)
アイスショーで活躍しながら、アメリカ・デトロイトのリンクでは振付師、コーチとしても実績を積んでいる佐藤有香さん。日本からも多くの選手が、彼女のもとに振付指導、スケーティング指導を受けにやって来る。今回世界選手権代表として出場する小塚崇彦選手、南里康晴選手、中野友加里選手も、有香さんの影響を大きく受けている選手たち。自身も世界選手権を制したことのある佐藤有香さんから、期待の3選手にエールを送ってもらった。
――小さな子供たちからオリンピックチャンピオンまで、コーチや振付師としてたくさんの選手と接してきた佐藤有香さんに、おなじみの選手についてお話を聞きます。まずは今年で3回目のワールド出場となる中野友加里選手。彼女はデトロイトのマリーナ・ズウェアさんにずっと振付けを依頼していますし、佐藤信夫コーチのもとに移ってからは有香さんとの関わりは深いですね。 佐藤 そうですね、彼女は私の両親(佐藤信夫・久美子コーチ)についていることもあって、いつも家族のように応援しています。がんばってほしいな! ふだんの友加里ちゃんはね……優等生なんですよ(笑)。毎年わりと賢く、きっちり練習してきますよね。でも試合になるとちょっとかたくなって、練習の時よりも演技が小さくなってしまうところがあって……。本番でも練習と同じスケールで滑れるようになるといいな、といつも思っています。
――練習では、もっともっといい演技ができている? 佐藤 はい。でも私自身も経験していることですが、試合のあの場所で体がすくんでしまうのは、当たり前のこと。そんなに簡単に克服できるものではないんです。それが最近の彼女は、緊張感で調子の悪いスタートをしてしまっても、それを演技途中で立て直せるだけの精神力を培っている。それが素晴らしいな、と感心しています。結局は、あの練習量が本番でもものを言うんでしょうね。
――年を追うごとに演技もどんどん深みを増していますしね。 佐藤 そう、友加里ちゃんは……なんとなく不思議な魅力を持った選手なんです。日頃はこれといって派手なところを見せないんですが、試合に出てくると、氷の上に立つだけでスッとした雰囲気を出すし、滑りにもなんだか独特のおもしろさがあるなあ、と。彼女の演技、いつも楽しませてもらっています。
――中野選手と同じく佐藤コーチ夫妻に師事している小塚崇彦選手も、世界選手権初登場です。 佐藤 タカのことは小さい頃から見ていますが、本当に大きくなって(笑)。いま19歳。全日本選手権で代表が決まって、世界選手権までの数か月は、練習すればするほど伸びる、いい時期だったと思います。スターズオンアイスのようなショーにも出ましたし、人前でパフォーマンスをすることもすごく大きなステップになったんじゃないかな。ほんとうに成長期、いい時期ですよね! トレーニングすればするほど、身体も強くなるし、間の取り方など様々な呼吸もつかめてきているはずです。あとはとにかく健康で、風邪などひかず、ケガもせず、世界選手権を迎えてくれれば。
――初めての大舞台、年齢的にもいい時期に迎えられるということですね。 佐藤 世界選手権そのものが、彼にとってすごくいい練習になると思いますよ。今回いい演技ができればそれはそれでうれしいけれど、結果を気にするよりもとにかく、若いので色々な経験をしてほしいです。大ちゃんみたいに一生懸命練習をする先輩も隣にいますし、彼らと一緒に遠征に出ることも、すごくいい勉強になるはず。上の選手に少しでも近づけるようにって、思いますからね。
――今回で大きな結果を出すというよりも、今後のためにいい世界選手権にしてほしい、と。 佐藤 そう、せっかく今年、大きなヤマを一つ越えて、やっとつかんだ世界選手権代表です。思い切りあの場を体験してほしいな。きっと彼は、世界選手権が終わった時にこそ、また一つ大きくなって帰ってくるんじゃないかと思います。将来性も高い選手なので、あの場を経験して、もっともっと器を大きくしてくれるでしょう。
photo/Sunao Noto text/Hirono Aoshima *写真は08年全日本選手権SP
2008年02月23日
四大陸選手権アフターレポート 小塚崇彦フリー6位、総合8位 根ざし始めた「夢」
小塚崇彦のスケーティングは優しい。ジェフリー・バトルの、正確無比な外科医が、肌に垂直にメスを入れるようなスケーティングとも、高橋大輔の、獲物のちょっとした隙を目ざとく見つけ、牙で躊躇なく肉を抉り、消えない印を刻むようなスケーティングとも違う。 小塚崇彦のスケーティングには、さりげなく手相の上を爪でスーッとなぞるような優しさと柔らかさがある。
フリー「ビートルズ・コンチェルト」は、よくよく見ると非常に凝ったプログラムだ。4分30秒の間、彼の足はステップを刻み続け、後半のジャンプの直前直後には美しいポジションのイーグルやハイドロブレーディングも入っている。サーキュラーステップは、コンビネーションジャンプを降りたと思って気を許すと、あっという間に始まりあっという間に終わってしまう。 これほど難しいことをやっているのに、あまりそのすごさが伝わらない理由。それはもちろん、彼の技術の確実さやスケーティングの滑らかさもあるだろう。しかし、もう一つの大きな理由は、彼の上半身の使い方だ。
フリーの後、小塚崇彦はこう語った。 「ジャンプを失敗してしまったことが一番痛いですね。アクセルが……。ループも全日本と同じ失敗で悔しいです。他のことはできているので、あとはジャンプだけです」 この四大陸選手権では、全日本の時よりも、ジャンプの軸は細くなりランディングも流れていた。ループがシングルになった後も、全日本に比べて落ち着いていた。学習能力の高い彼のことだ、自分で認識している課題は、世界選手権までに調整してくることができるだろう。
だが、本当にそれだけか? 四大陸選手権の「ビートルズ・コンチェルト」では、彼の滑りの端々でストーリーが見えた。 エリナー・リグビーという孤独な老女が、人生で一番大事で神聖な少女時代の思い出を夢に見る。遠くから見ていた憧れの男の子、成就しなかった淡い初恋の甘酸っぱさや切なさ。彼女は、その大切な思い出から抜け出してきた男の子に導かれ、新しい居場所へと旅立つ。 こういったイメージが少しずつ小塚崇彦の4分30秒から漂いだした。なのに、もう少しで完全にそのストーリーに入り込めそうな所で、彼のちょっとだけぶっきらぼうな腕のあげ方、ほんの少しだけ力みが残る肩に気を取られ、夢から醒めてしまうのだ。 あの足元の特筆すべき優雅な柔らかさがあるからこそ、上半身の使い方のちょっとした硬さが、どうしても目立ってしまう。彼なら上半身だってもっと優雅に動かせると思う。だからこそ、もったいないし悔しくなる。
ISUシニアチャンピオンシップ初参戦となった四大陸選手権。オウリムヌリでの小塚崇彦を見続けていると、この場に流れる独特の緊迫した雰囲気を肌で感じ、世界のトップを目指すために必要な、「戦う気持ちの作り方」や「自分の個性のアピールの仕方」を理解しつつあるのが伝わってきた。
彼のブレードに宿る優しいエナジーが、演技中ずっと全身に行き渡り続けた時、私達は彼の滑りに「夢」を見ることができる。それができた時、小塚崇彦は本当の意味で「シニアスケーター」になる。 今回、結果こそ満足には残せなかったかもしれない。しかし、今の彼に必要な経験、化けるための糧は揃った。今までとは違う小塚崇彦を見られる日は、もう間もなくだ。
text/Koyori Kirishima photo/Takayuki Honma
2008年02月17日
四大陸選手権こぼれ話(5) オフリンクの選手たち
世界選手権に向け、来シーズンに向け、決意を新たにした日本選手たちの表情をご紹介。 小塚崇彦選手&佐藤信夫コーチ。試合の後にはきっちり反省会をする佐藤コーチチーム。その反省会直後のワンショット。初めての世界選手権に向け、気持にゆるみはない。
 ショートプログラム終了後の中庭健介選手。自分の演技を終えた後には、高橋大輔選手の「白鳥の湖」を観戦。ステップ中、二人は何度も目が合ってしまったとか。

キャシー・リード&クリス・リード組。アイスダンスの試合は3日間とも日中に行われた。大きな窓の下のミックスゾーンは彼らが出てくるときはいつも日差しが強く、「マブシイ!」と笑いながら記者たちの質問に答えてくれた。「ケガの再発には気をつけています。アイシングを続けて、ストレッチも入念に!」(クリス)「このあとはアメリカに帰って、もっとパワフルに滑れるように練習します。3月の最初にはヨーロッパ入りの予定です」(キャシー)
text/Hirono Aoshima
2008年02月14日
男子シングル SP終了 ジェフリー・バトル3位、小塚崇彦7位(2)
ジェフリー・バトルの演技に沸きに沸いた場内、次に出てきたのは日本の小塚崇彦だ。この雰囲気での滑走は、初めての世界選手権を前にした彼にとっては大きな経験! それを彼自身もわかっているのだろう、引き締まったいい表情で登場し、バトルに負けないくらい気持ちのいい滑りを見せてくれた。
今年初めて全日本のメダルを手にした19歳。しかし彼だって、スケーティングやステップの巧さは、五輪メダリストのバトルに決して引けを取らない。トリプルアクセルでの転倒は惜しかったけれど、凝った振り付けではなくスケートそのものの滑らかさ、スピード感で、さーっとお客さんの前を横切るたびに「おおっ!」とどよめきが走る。得意の高速アップライトスピンでは、大きな大きな拍手ももらえた。
バトルの後に見て改めて思ったが、小塚崇彦のスケート、スピン、ステップ。これらはひとつひとつがほんとうに質の高い一級品だ。どれをとっても、バトルに劣るものはなかったと思う。でも、バトルの後だからこそ、この素晴らしいパーツをどう組み立て、どう作品として仕上げていくかが、これからの小塚崇彦にとって必要なことなのだ、と感じた。
滑ること、氷上での動きに対する高いセンスの持ち主が、実直に練習を重ねることで、ここまでの技術をまず身につけた。そしてここからは、「自分のスケートを作り上げていくんだ!」という強い意思、そして「自分はどんなスケートを見せたいのか」、誰でもない小塚崇彦自身の描くビジョンが、きっと必要になって来る。
それは、ちょっと照れ屋で体育会系の彼にとって、難しいことだろうか?
演技を終え、キス&クライで得点を待つ小塚崇彦は、佐藤コーチとともにスクリーンに映った自分が、違う方向に向かって微笑んでいることに気づいた。すると、「あ、カメラこっちですね!」とでも言うように、今度はきちんと場内のお客さんに向き直って、手を振って見せた。「こういうのが、大事なんですよね」と、日本の記者がつぶやいていたが、まさにそのとおり。
上手くなること、ジャンプを跳んで勝つこと。それにプラス、人に見られることを彼自身が楽しみ、見せることで人を楽しませるんだ、という意思。彼はきっと、大事なものをつかみかけているはずだ。
photo/Dave Carmichael text/Hirono Aoshima
2007年12月28日
全日本選手権男子フリー終了「泣く者と、笑う者と」(1)
高橋大輔は圧倒的だった。声援の大きさや応援バナーの数、そして何より演技の内容がずば抜けていた。世界の舞台で一番になるために何が必要かを考え、この全日本選手権では「4回転を2つ」という目標を掲げ、見事にそれを達成した。 高橋大輔が別格の演技を披露した。そのことが、残る2つの枠を争う選手の心に少なからず影響を与え、そして与えなかった。
小塚崇彦はトリプルループがすっぽ抜けてシングルになった以外は、ほぼ自分の力を出し切り、演技が終わると力強いガッツポーズを見せた。滑走順は最終グループの1番目。高橋大輔の演技を見ることなく自分の演技を終えることができた。 もちろん、小塚自身はこのことをまったく意識していないだろう。自分の演技に集中して結果を出しただけだ。自分の演技に集中する。この一見当たり前のことがフィギュアスケートではとても難しい。
小塚の次に登場した高橋大輔がすばらしい演技をして、観客のほぼ全員が立ち上がって拍手をおくった。得点が出るまでの間も、高得点をうながす拍手が続き、さらに表示された得点の高さに観客からはどよめきが起こった。 その間ずっとリンクにいた南里康晴は「体がガチガチになってしまった」という。最初のトリプルアクセルは力が入ってしまい大きくステップアウト。次のトリプルフリップはなんとか降りたものの、トリプルループで転倒してしまった。
この転倒ですこし肩の力が抜けたように見えた。トリプルアクセルートリプルトウループのコンビネーションを含め、残るジャンプを決めて演技を終えたが、その表情に笑みは無かった。
中庭健介はフリーで4回転を跳ぶことを決めてはいたが、心の片隅に迷いがあった。その時、控え室のモニターテレビで高橋大輔が4回転を2度成功させたことを知る。 「4回転は今シーズンものすごく不安で、正直逃げ出したくなりました。他の選手の出来具合で、最初に3-3を持ってくるということも考えたんですけど、高橋選手が果敢に4回転を2回、すごいプレッシャーの中で成功させたので、そういう高いレベルで戦うためには逃げてちゃダメだという気にさせてくれました」 そしてリンクに現れた中庭健介は「今までで一番緊張していて、出番が近づくたびに体が震えるような状態だった」という。最初の4回転は着氷が乱れてオーバーターン。トリプルアクセルは決めたものの、その後のジャンプで細かい着地ミスが続いてしまう。必死に転倒だけはこらえたが、演技を終えた中庭の顔にもやはり笑みはなかった。
photo/Sunao Noto text/Seiho Imaizumi
2007年11月30日
日本男子フィギュアスケート オフィシャルファンブック『Cutting Edge2008』 発売!
 「オフィシャルブックまだですか? はやく読みたい!」と、無良崇人選手もお待ちかねの日本男子フィギュアスケート オフィシャルファンブック『Cutting Edge2008』、まもなく発売です。 『Cutting Edge』、『Cutting Edge2007』に続き3冊目となる今年は、16歳の無良崇人選手から26歳の中庭健介選手まで、8選手のロングインタビューと多数の写真を収録。オンアイス、オフアイス、様々な表情の彼らに出会えます。
タイトル:Cutting Edge2008 日本男子フィギュアスケート オフィシャルファンブック 価格:1800円(税抜) 全国書店での発売日:12月5日 ※NHK杯会場にて、先行販売中!
【contents】 髙橋大輔 金メダルのその先へ 織田信成 鳥のように飛べ 南里康晴 情熱は月の光のように 中庭健介 とどまることなき、意思 小塚崇彦 本当の1年目が始まる 柴田嶺 新たなる覚醒 町田樹 多面体の輝き 無良崇人 羽ばたく日のために
インタビュー 平松純子日本スケート連盟フィギュア部長 応援メッセージ 村主章枝、中野友加里 コーチインタビュー 長光歌子、織田憲子、河野由美、長久保裕、佐藤信夫、川越正大、秦安曇、重松直樹
佐藤信夫コーチの語る全日本選手権、日本最高の男たちの戦い
2007年11月26日
小塚崇彦健闘! ロシアカップ5位 小塚嗣彦コーチインタビュー
 グランプリシリーズはあっという間に第5戦まで終了。ロシアカップでは中野友加里が2位に入り、2年ぶりにファイナル進出を決めるうれしいニュースが舞い込んできた。男子シングルでは、同じ佐藤信夫門の小塚崇彦も大健闘! ウィアー、バトル、ランビエールと強豪ぞろいの中、フリー4位の総合5位に。しかもフリーの技術点は74.83点と、参加12選手中、最高得点をマーク。 全日本ジュニア選手権で仙台を訪れていた小塚嗣彦コーチに、早速話を聞いた。
――小塚選手、ロシアカップフリーで大健闘のニュースが伝わってきました。 小塚 そのようですね。まだ順位しか聞いていなくて、みなさんにいろいろ様子を教えていただいていたところです。
――スケートアメリカでは8位と少し振るわなかったようですが、落ち込んだ様子などは? 小塚 敗軍の将のように落ち込むことは特になかったな。「もうちょっとこれを、こうすればなんとかなるんだ……」などと、いろいろ考えてぶつぶつ言っていたようです。直接は聞いていませんが、思うところはあったようで。アメリカから帰ってきて、次の試合までは2週間しかない。この間は、がんばっていましたね。とはいっても、親父から見れば……まだまだ取り組み方が甘い! 競技というものはもっと厳しいものなんだぞ、と言ってやりたい気持ちです。やってできないヤツじゃない、それは感じているんです。だからこそ、今のがんばりもまだまだ、「彼は良くやっている」とは思えない! もっともっと自分に厳しくしてくれること、それができたとき、どこまでのものを見せてくれるかを期待しています。
 ――あたたかくも厳しい喝が入りましたが、最近は小塚選手、大学の近くで一人ぐらしをしているとか。 小塚 そうなんです。私は名古屋から中京大学に通っているので、リンクで会って、別々の家に帰っています。ひとりの部屋で、ご飯を炊いて、おかずはすぐ近くのデパ地下で買ってきて……いろいろがんばっているようですよ。
――私生活でも少し大人に。スケートの面でもブロック大会で4回転にチャレンジするなど、次のステップを見据えているようですね。 小塚 4回転、練習ではちょこちょこ降りていますね。でもまだまだ、それじゃあダメ! トウループだけでなく、これから2種類も3種類も跳べるようにならないといけない。そのためにも、普段の練習からもっと厳しいところに自分を置いて、自分自身を追いつめていってほしいですね。
どの方向に話題を持っていっても、「まだまだ!」「甘い!」の言葉に戻ってきてしまう小塚嗣彦コーチ。厳しいお父さんに「良くやったな」と言われるのは、小塚崇彦にとってスタンディングオーベーションより難しいことなのかもしれない。 次に彼の演技が見られるのは全日本選手権。更なる成長を待とう。
Photo/Masayuki Kojima(上) Text/Hirono Aoshima *写真上は07年中部選手権のフリー、写真下はクールマイヨールでの小塚嗣彦・佐藤信夫両コーチ。氷河をバックに微笑む偉大なるオリンピアンふたり *小塚崇彦選手のインタビューは近日発売予定の『Cutting Edge2008』に掲載されます
2007年02月25日
COLORS2007 フィギュアスケート男子シングル読本 2月27日発売!
 2007東京世界選手権でいちばんエキサイティングな種目は、男子シングルではないだろうか――? それでもメディア情報は、どうしても女子シングルに偏りがち。 お嘆きの男子シングルファンの皆さんに、今年も『COLORS』をお届けいたします。 昨年の「フォトブック」から「読本」へ。 今年は写真に加え、記事ページもさらに充実の内容です。
■巻頭言「チャンピオンのあるべき姿」 本田武史
■トップスケーター10人のフォト&インタビュー 高橋大輔 ステファン・ランビエール ブライアン・ジュベール エフゲニー・プルシェンコ ジェフリー・バトル 織田信成 ジョニー・ウィアー エヴァン・ライサチェク エマニュエル・サンデュー 小塚崇彦 *リラックスしたオフショットや少年時代の貴重な写真も満載!
■注目5選手紹介 アルバン・プレオベール 中庭健介他
■さらに注目! 国内外36選手紹介 南里康晴、セルゲイ・ドブリンから、羽生結弦、アルトゥール・ガチンスキーまで
■気になるあの人が男子シングルの現在と未来を語るインタビュー 藤森美恵子、リー・バーケル、田村岳斗、岡崎真、濱田美栄、薄田隆哉
「COLORS2007 フィギュアスケート男子シングル読本」あおば出版 2007年2月27日発売 定価 1900円+税 サイズ B5判 オールカラー 128P
*同じくあおば出版の猫+俳句コラボレーション写真集『誰かいませんか』『逢いたくなっちゃだめ』(写真:板東寛司 選と文:青嶋ひろの)もこっそりおすすめです
2007年02月07日
日本男子フィギュアスケートオフィシャルファンブック『Cutting Edge2007』発売中!
 昨年に引き続き、日本男子シングルトップスケーター10名のインタビューと写真を収録したファンブック『Cutting Edge2007』が1月、発売されました(予定より大幅に発売が遅れましたことをお詫びいたします)。
CuttingEdge2007 日本男子フィギュアスケートオフィシャル ファンブック ダイエックス出版刊 A4判 定価 1,890円(税込)
■インタビュー 高橋大輔 「氷の上に立つからには、ナルシストでなくちゃいけない」 織田信成 「なにごともスケート中心。その点は僕、すごいですよ」 中庭健介 「まだまだやりたいことはたくさん。今、スケートがほんとうに面白い」 小塚崇彦 「最後まで絶対にあきらめない。この気持ちだけは大事にしたい」 南里康晴 「欲しいのは力強さ。伸びたり縮んだり柔らかくなったり硬くなったり、自在な強さ」 神崎範之 「研究を続けながらフィギュアスケートも続けてこられた、そのことは僕の誇り」 無良崇人 「スケートをやめちゃったら、今の友達もなくなっちゃう。今の自分もなくなっちゃう」 柴田嶺 「リンクに立つときは、完璧じゃないとイヤなんです」 小林宏一 「もう、人のことは気にしない。自分のできることをやれば、結果は必ずついてくるから」 岸本一美 「期待をかけられること、早く演技見たいといわれることが、辛かった」
■荒川静香、日本男子スケーターのここをチェック! ■応援メッセージ FROM 恩田美栄/本田武史
選手たちの考えていることや感じていることを知れば、演技の見方は変わるでしょうか? スケートだけを純粋に楽しみたい方には、オフアイスの素顔やオフシーズンの裏話など、ひょっとしたら邪魔になってしまうものかもしれません。 でも、あのきらきらした演技を見せる彼は、氷の上で何を考えているのか? どんな練習をしたら、あんなに気持ちのいいスケートを滑れるのか? 彼らのスケートを見ていたら、色々なことを聞いてみたくなって、この本は生まれました。
言葉と写真で伝えられることは、彼らの魅力のほんの一部にすぎません。 インタビューを読んで「がんばったんだなあ」と感じたら、その何10倍、選手たちはがんばっています。 「辛かったんだな」と感じたら、その何10倍も辛かったのでしょう。 そして、「なんて素敵な選手なんだろう」と思ったら、その100倍、彼らは素敵な選手たちです。
『Cutting Edge2007』を読んだ方の心なかで、選手たちを応援する気持ちがちょっとずつでも大きくなるといいな、と思っています。
*女子シングルオフィシャルファンブックも、予定とは少し違う形になりますが、発刊が決定しました。 こちらも大変お待たせしてしまったことをお詫びいたします。詳細が決定次第、お知らせいたします。
2006年12月09日
グランプリシリーズ終了 ファイナルに向けて(3)男子シングル
 男女シングルに関しては、トリノオリンピック女子金メダリストの荒川静香が現役を引退し、男子金メダリストのエフゲニー・プルシェンコ、銅メダリストのジェフリー・バトル、女子銀メダリストのサーシャ・コーエン、銅メダリストのイリーナ・スルツカヤが欠場。男子銀メダリストのステファン・ランビエールもNHK杯を欠場するなど、トリノを熱くさせたスケーターたちのいないグランプリシリーズとなった。トリノでフィギュアスケートに魅了されたファンにとっては少し寂しく感じたかも知れない。しかし、今季のシリーズはバンクーバー五輪までの次世代スケーターたちを見比べる、非常に面白い大会だったともいえる。
男子シングルは、フランスのブライアン・ジュベールがエリックボンパール杯とロシア杯を制し、一気にファイナル王者へと近づいた。今まではプルシェンコやバトル、ランビエールに隠れていたジュベールだが、五輪メダリストのいないグランプリシリーズで、ついに2大会完全制覇。ショートプログラムにて4回転+3回転のコンビネーションに成功。フリーでもトウループとサルコウの2種類の4回転と、4回転トウループ+2回転トウループのコンビネーションを決めるなど、アグレッシブに攻め続け、他を圧倒した。
日本の高橋大輔と織田信成は、ともにひとつずつ優勝と2位を獲得。 織田が初戦のスケートアメリカで見せたのは、猫のように柔らかいジャンプと、細部まで気を配った演技だ。SP3位、フリーで1位に立ったライサチェクの追随を退け金メダルを獲得。NHK杯では風邪をひいて体調は最悪の状態だったが、ディフェンディングチャンピオンとしての意地を見せ、ジャンプやスピンを次々と決めた。ジャンプの流れを殺さない、膝を柔らかく使った着氷は素晴らしいの一言。織田自身も「満足できるスケートができた」と語るように、順位は2位だったものの、完成度の高い滑りでファイナル進出を決めた。ファイナルでは4回転ジャンプをプログラムに取り入れる意欲も見せ、さらに高いレベルへと挑む。
一方、高橋のグランプリ初戦は、スケートカナダにて昨年の世界王者ステファン・ランビエールとの一騎打ち。SPで1位に立つも、SP7位のランビエールがフリーで驚異的な演技を見せ、わずか2ポイントの差で逆転を許した。NHK杯ではランビエール欠場により、またも高橋は織田との一騎打ち。スケートアメリカですでに優勝している織田に、負けるわけにはいかない、とばかりの気迫を見せ、ショート、フリー共に完璧に近い演技を日本のファンに披露した。スピンの回転数など課題は残るものの、見事NHK杯初優勝。4回転ジャンプ、そして上体は激しく動いているにも関わらずエッジが氷に吸い付くような完成度の高いステップ。これらは、グランプリファイナルにおいて、ブライアン・ジュベールの2種類の4回転に匹敵する武器になるだろう。
そして、このNHK杯で注目を集めたのが、今年シニアデビューを果たした小塚崇彦。 グランプリ初参戦のエリックボンパール杯ではショートプログラム11位と出遅れ、総合6位に終わったが、NHK杯でのショートプログラムは中国の4回転ジャンパー、チェンジャン・リーに次ぐ4位スタート。フリーではほぼノーミスの演技を披露し、風邪による体調不良とスタミナ不足で順位を落としたリーをかわして表彰台に登った。表現の面では未だ照れが見え隠れするものの、高いスケート技術を持つ小塚の今後に期待したい。
ジュベール、高橋、織田以外にファイナル進出を決めたのは、エヴァン・ライサチェク、アルヴァン・プレオベール、ジョニー・ウィアーの3名。初戦のスケートアメリカで完璧なフリー演技を見せたライサチェクは、中国杯で優勝し早々とファイナル進出を決めた。ブライアン・ジュベールと同じフランスのアルヴァン・プルオベールは、まるでアイスショーを見ているかのようなプログラムで一躍人気者に。このジュベールとプルオベールは、歳は1つ違いだが、誕生日が同じ9月20日。浅田真央もユナ・キムも9月生まれだ。偶然の一致に過ぎないが、グランプリファイナルは9月生まれに注目してみたい。
文/Niki Yamamoto 写真/Masami Morita(06年世界選手権でのエヴァン・ライサチェク)
2006年12月04日
NHK杯男子シングル終了 高橋優勝、織田2位、小塚3位!(1)
 「フィギュアスケート、日本は男子もこんなに強かったんですか?」 日本の3人が表彰台を独占したNHK杯が終了して、たくさんの人にそう聞かれた。 そう、強かったんです。 ランビエール不在、チェンジャン・リーの風邪、いくつかの要因が重なったとはいえ、全員がほぼノーミスでショートとフリーを終えた日本男子3人。海外の有力選手がいたとしても充分戦えていただろうし、大会前から期待された女子以上のエキサイティングな戦いを、3人の日本男子は見せてくれた。
優勝した高橋大輔は4回転やトリプルアクセルの成功も素晴らしかったが、ジャンプ着地後すぐさま滑り出すスケーティング、そのスピードに圧倒させられた。ステップはいつも興奮を呼ぶ終盤のストレートラインだけでなく、中盤のサーキュラーからダイスケワールド全開。プログラムのどの部分にもすべてに思いを込めた演技で、今季最高の「オペラ座の怪人」を見せてくれた。 「でもジャンプは跳べたけど、スピンやステップは雑だった。そのあたりが今後の課題かなと思います。今回は相当疲れていて……ステップではもう、体が動いていなかったんですよ」(高橋) 誰もが至福を感じた演技、本人はまだまだ満足していないようだ。
試合前、声もかけられないほど緊張し、滑りだす前もガチガチの顔をしていた織田信成。いつものことだが、この人は音楽がかかった途端、別人のような安定した滑りを見せてしまう。 コンビネーションで決めたトリプルアクセルももちろん素晴らしかったが、トリプルルッツ-ダブルトウで見せた信じられないほどの飛距離と、着地後の流れ。この人のジャンプは本当に絶品なのだと改めて唸ってしまう。 「こういう演技をいつでもできるって自信を、今はつけなくちゃいけないと思います。そんな意味でもNHK杯はいい大会になりました」(織田) 脚上げのアップライトなど複雑な形も、スタンダードなポジションも。得意なスピンはどんな形でも速度を落とさない。ジャンプだけでなく技のすべてが端正で、ジャッジの評価も+1、+2が続々とついていく。 ただ、マイムや派手な演技のない、クラシック曲の美しさを表現する今年のフリープログラム。まだまだ織田信成だけの魅力は出し切れていないかもしれない。今のところはコミカルな動きを交えたSPの方が彼本来の持ち味が出ているよう。しかし日々進化をやめない彼のことだ。世界選手権のころには、フリーでこそ、真のノブナリが出せる、そんなプログラムに仕上げてきてくれるだろう。
3位の小塚崇彦は、先輩ふたり以上に、初めてのNHK杯を楽しんだのではないだろうか。 序盤のトリプルアクセルを成功してからは、俄然勢いを増し、軽やかでなめらかな滑りには見入ってしまうほど。ほぼ確実に決めたジャンプ、評価の高いスピンやステップもさることながら、彼のプログラムで注目したいのは、採点されるエレメンツではない部分だ。ピアノの調べに乗り、後半にゆったり見せるイーグルからスパイラルへのムーブインザフィールドなど、何げない動き。そんなところにまで心配りが出来ている、とてもシニア一年目とは思えない完成度の高さだ。 ノービス時代から敵無し。クラスをまたいで4年間全日本ノービスを制覇し続けた逸材が、高校3年生にして早くもNHK杯の表彰台に駆け上がっていった。おそらく今大会で初めて演技を目にした人もいるだろう小塚崇彦、この名をぜひ、多くの人に覚えてもらいたい。
写真/M.Morita 文/H.Aoshima
2006年11月01日
2006 ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤー 推薦コメント集
 1427名の投票者の皆さんからのコメント、その一部をご紹介します。
1位 小塚崇彦 「ジュニアグランプリファイナルと世界ジュニア、2冠を獲得したのはすごい! 彼の明るさと流れるようなステップは、シニアでも十分通用します」 「男子にもっと注目してほしいです。小塚選手のスケーティングは見ていてとても気持ちがいい」 「世界ジュニアのエキシビションでのスケートは驚いた。あんなに柔らかく滑れて、ジャンプもかっこよくて、しかも踊れる。今後が非常に楽しみなスケーター」 「和製トッド・エルドリッジとも呼べそうな彼のスケーティングとエッジワークにうっとりしました。あれほどの技術の持ち主は、シニアにもそうそういないのでは?」
2位 ユナ・キム 「世界ジュニアで初めて見たとき、鳥肌が立ちました。長い手足、小さな顔。若いのに優雅な舞でその存在をアピールしていました」 「これからは真央とキムの時代! そんな予感をさせてくれました」 「初めて見たときはビックリ。ほんとに指の先まで使って演技をしてるって感じでした。ジャンプも一つ一つ正確!」
3位 武田奈也 「全日本で見たジャンプの軸の美しさ、そして力づくでないスケーティングの美しさで将来を予感させる」 「世界ジュニア4位おめでとう! すごい躍進でビックリしました。彼女は何だかミュージカルのシカゴ! みたいです。表情もステキ♪」 「エキシビが特に気に入っています。愛らしさに加えて少しオトナっぽさが出てきたら、これからもっと素敵なスケーターになると思います。がんばって欲しい」
4位 浅田舞 「妹の真央もすばらしいスケーターですが、全日本の舞のスケーティングは見るものをうっとりさせました」 「山田コーチが白百合のような美しさと表現。本当にこれからも楽しみです」
5位 テッサ・バーチュー&スコット・モア 「昨シーズンの世界ジュニアから気になっていました。今シーズンはさらに確実に伸びてきたように思います。16、18でこれだけ美しく滑ることのできるアイスダンスの選手は今までいなかったのでは」 「愛らしくて清潔で、とにかく魅力的です」
6位 澤田亜紀 「はちきれそうな笑顔がとても印象に残っています。頑張って欲しいです」 「JGPFで準優勝したのは嬉しかった。彼女はいいときも悪いときも元気で輝いているスケーターだと思う」
7位 エレーネ・ゲテバニシヴィリ 「高さのあるジャンプ、驚異的な柔軟性など、将来に期待の持てる選手です。また年齢の割に大人びた雰囲気があると思います。オリンピックという大舞台において、最終グループ入りする精神力の強さにも驚かされました」 「ゴムまりのような跳躍感が素敵でした」
〔その他の選手への推薦コメント〕 *柴田嶺選手 「ここまでしなやかなのか! と思うほどの身体の柔らかさ、表現の豊かさ。『この人は必ずくる!』と確信し、応援し続けています」 *無良崇人選手 「ワールドジュニアではジャンプをよく飛んで気持ちいいなと思いました。将来4回転にチャレンジしてくれればいいな」 *北村明子選手 「小柄なのにとても大きな滑りで、感動してしまいます」
写真/onotch(onotch.jp)
2006年10月31日
2006 ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤー 投票結果発表
 1位 小塚崇彦(男子シングル 中京大中京高校) 202ポイント 2位 ユナ・キム(女子シングル 韓国)196ポイント 3位 武田奈也(女子シングル 日本橋女学館)52ポイント 4位 浅田舞(女子シングル 東海学園高校)34ポイント 5位 テッサ・バーチュー&スコット・モア(アイスダンス カナダ)25ポイント 6位 澤田亜紀(女子シングル 京都外大西高校)24ポイント 7位 エレーネ・ゲテバニシヴィリ(女子シングル グルジア)12ポイント
*投票者はひとりにつき1選手を投票。1票1ポイントで換算しています
昨シーズン、ジュニアのグランプリシリーズに出場したすべてのフィギュアスケーターの中からもっとも輝いていた選手を選ぶ「ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤー」。 やはりジュニア世界選手権優勝を果たした高校2年生(当時)小塚崇彦選手が初代ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤーに。女子シングルのジュニアチャンピオン、ユナ・キム選手は僅差で迫ったが、あと一歩及ばなかった。 小塚選手、キム選手ともに今年からはシニアのグランプリシリーズに参戦。それぞれ第4戦エリック・ボンパール杯、第2戦スケートカナダで初登場するのでお見逃しなきよう。
男女シングルにどうしても票が集まりがちな中、アイスダンスのジュニアチャンピオン、テッサ・バーチュー&スコット・モアがベスト5に。濃いフィギュアスケートファンからの注目度の高さがうかがえる。この組も今年のグランプリシリーズではシニアデビュー。スケート・カナダとエリック・ボンパール杯に参戦する。
上位に入ったほとんどの選手が昨シーズンでジュニアを卒業したが、上位陣ではただひとり、ジュニアに残るのが日本の武田奈也選手(3位)。飛躍の一年を経て、今シーズンは2代目ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤーに輝くか否か。すでにジュニアグランプリシリーズではルーマニア大会で優勝、台湾大会で2位。ファイナル進出も決めている。
<受賞した小塚崇彦選手よりメッセージが到着!> 「投票してくださってありがとうございます。今回はジュニアで選ばれたんですけど、来年はシニアで選ばれるようにがんばりたいと思います!」
オフィシャルファンサイト Go! Takahikoもオープン。 シニアでのますますの活躍を祈ります!
写真/Keiko Asakura
2006年10月31日
Sports@nifty フィギュアスケートアワード2006 発表
 5月に読者の皆さんから募集した「sports@nifty フィギュアスケートアワード2006」。 PCサイト携帯サイト合わせて1427名というたくさんの方々から投票をいただき、ほんとうにありがとうございました。 「フィギュアスケーター・オブ・ザ・イヤー」「ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤー」「コーチ・オブ・ザ・イヤー」「コスチューム・オブ・ザ・イヤー」「プログラム・オブ・ザ・イヤー」の各賞が決定いたしましたので、ここに発表させていただきます。 集計・発表が大変遅くなりましたことを、受賞されたスケーターの皆さん、投票してくださったファンの皆様にお詫び申し上げます。
●フィギュアスケーター・オブ・ザ・イヤー 荒川静香(女子シングル・プリンスホテル)
●ジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤー 小塚崇彦(男子シングル・中京大中京高校)
●コーチ・オブ・ザ・イヤー ニコライ・モロゾフ(ロシア・荒川静香らのコーチ)
●プログラム・オブ・ザ・イヤー 荒川静香 フリープログラム 『トゥーランドット』 (振付/ニコライ・モロゾフ)
●コスチューム・オブ・ザ・イヤー 荒川静香 フリープログラム 『トゥーランドット』(トリノ五輪での衣装)
トリノ五輪金メダリストの荒川静香さんが3賞を受賞。コーチ・オブ・ザ・イヤーにも荒川静香さんを指導し、『トゥーランドットの』振り付けを担当したニコライ・モロゾフ氏が選ばれました。 小塚崇彦さんのジュニアスケーター・オブ・ザ・イヤーは、女子シングルに続いて男子シングルも日本勢活躍の兆しを感じさせる受賞です。 投票結果の詳細は、追って本特集内で発表させていただきます。
写真/Keiko Asakura
2006年03月13日
世界ジュニア選手権小塚崇彦優勝! 佐藤久美子コーチインタビュー
 トリノ五輪では門下生の荒川静香選手が優勝。そして続く世界ジュニア選手権でも、小塚崇彦選手が優勝。今月20日からの世界選手権にも村主章枝選手、中野友加里選手に帯同するという佐藤久美子コーチは、今シーズン世界で最も忙しく、最も元気のいいコーチだ。 小塚崇彦選手の優勝直後、彼のこれまでのこと、今後のことについて、話を聞くことができた。
――フリーの滑走前、小塚選手にはどんなアドバイスをされたんですか? 佐藤 昨日のショートの前も同じだったんですが、主人(佐藤信夫コーチ)からの伝言を伝えました。あんまり結果を恐れないで、思い切っていこう! って。今回限りじゃない、まだいくらでもチャンスはある、と。主人はここのところ毎日のように言っていましたので、とにかくそのことを伝えました。あとは、のびのびしようね、と。彼はどうしても身体が縮こまってしまうことが多いですから。
――そんなアドバイスの甲斐あって素晴らしい結果でしたが、今日の演技はどのように評価されますか? 佐藤 滑りとしては昨日(ショートプログラム)の方が良かったですよね。でも、冷静に最後まで滑りきったと思います。今日はきちんと自分をコントロールできていました。
――大躍進だった今シーズン、小塚選手も大きく変化しましたね。 佐藤 体つきもちょっと大人っぽくなりましたし、だいぶ精神的にも……欲が出てきたかな。この優勝で、やっとスタートラインに立てたかな、って気がします。今まではただの男の子(笑)。
――彼にも難しい時期はありましたか? 佐藤 そりゃあもう。いくら言ってもスピンの練習もしないし、何を言っても「ジャンプ跳んでればいいんだろう?」って感じで……。私たち(佐藤コーチ夫妻)とはそれほどでもなかったけれど、お父さんお母さんとは喧嘩もだいぶしたみたいですね。うちの主人のことは、もう絶対的に怖いみたい(笑)。怖がっている間は大丈夫かな。でもいつでもハイハイということをきくわけじゃない。こっちもいちいちキーキー怒ってたら、だめなんですけど。
――そんな彼が、変わったきかっけは? 佐藤 採点方法が新システムになってから、変わりましたね。やっぱりジャンプだけ跳んでいてもだめだろう、と。今年はバレエの先生にもついて、踊りというよりも身体の使い方をしっかり習っています。そうした練習が、押し付けではなく、本人の意思で継続して出来たのが良かった。もうあれだけ大きくなったら、私たちが無理やりやらせようとしてもだめですから。
――それで、ジャンプ以外の部分も少しずつ身につけて、今日の優勝につながったわけですね。 佐藤 それでもまだまだ、もう一息ですね。これからは、シニアの上のふたり(高橋大輔、織田信成)に挑戦するわけですから! 優勝したことで、意識も変わっていくだろうな、と思います。「ジュニアチャンピオンだ!」って生意気にもなるかな(笑)。でもそれも、みんな通る道ですよね。これからは精神的なものが万全であってほしい。シニアに上がるにあたって、きちんとした選手意識をうえつけていかないと、と思います。まだ、ただのわがまま坊主ですから。
――シニアになっても、彼のスケーティングやステップワークなどは強みになりそうですね。 佐藤 滑るテクニックはほんとうに素晴らしい。彼のスケーティングは天性のものだと思います。子どものころ、ホッケーもしていたし、遊びながら自然に足首の使い方を覚えていったことがよかったんじゃないかな。習ったものじゃなくて、遊びのなかで身につけていったこと、それがこれから生かされていくと思います。あとは身体を鍛えて、アーティスティックな部分も磨いていければいいですね。
――佐藤コーチは、オリンピック金メダルに続き、世界ジュニア選手権でも金メダル。素晴らしいシーズンですね! 佐藤 すごくついてますね。怖いわ(笑)。日本に無事に帰れるといいんですけれど!
*11日、男子シングル表彰式終了後の共同インタビュー *佐藤信夫コーチ、久美子コーチの著書『君なら翔べる!』(双葉社刊)、重版が決まりました!
写真/中村康一(EOI Global)男子シングルメダリスト記者会見での小塚崇彦。右は2位のボロノフ、左は3位のポンセロ
2006年03月12日
おめでとう! 小塚崇彦選手 世界ジュニア選手権初出場初優勝!
 昨年の織田信成に続き、男子シングルで日本勢二連覇! しかも4年前の高橋大輔以来の、初出場初優勝というミラクルなチャンピオンの誕生だ。 「タカちゃんがんばれー!」 スタンドからは一昨日に試合を終えた日本の女子選手たちも大声援。 優勝が決まった直後、小塚崇彦は客席から手を伸ばした無良崇人と硬い握手! 年上のふたりといっしょに大きな試合に出られたことを、「すごく頼りになりました。生活面でもいろいろアドバイスもらったりして……」と語っていた無良崇人だが、小塚崇彦の優勝にもまた、大きな刺激を受けただろう。 「来年は無良君だね!」と声をかけられると、照れ笑い。 会場で一番はしゃいでいた日本選手団の喜びの声を聞いてみよう。
亜紀:すごいなあ。もう、最後は自然に立ち上がっちゃった! 滑る前はもうすごくドキドキして、でも途中から、これは1位だなって思いました! 結果が出たときはもう、うれしくて、手をたたきっぱなし! 真央:最後のステップのところで、これは優勝かなって思いました! 亜紀:私はサルコウ(4つ目のジャンプ成功)で確信したかな。 (リンク上では小塚崇彦が記念撮影中) 真央:おつかれー! 亜紀:メダルかじって! みんな:かじってー! 崇彦:あとあと!
 (きちんとした撮影を終えた後、小塚崇彦が2位のセルゲイ・ボロノフと3位のヤニック・ポンセロに「いっしょにかじろうよ」というしぐさ) みんな:やったー! かじった! 奈也:メダル食べちゃってー! もう大声出しすぎて、声がらがら! (でも滑り出す前は比較的みんな静かだったよね?) 崇人:これで最後の演技だし、集中してるだろうと思ったから、あんまり声、出せなかったよね! (佐藤久美子コーチ登場) 佐藤:あんたよう、がんばったねえ(無良選手に)。 (山田満知子コーチ登場) 山田:おめでとうございます! 素晴らしかった!(佐藤コーチに) あなたも!(無良選手に) (メダリストたちはブーケを持ってウィニングラン) 奈也:真央、もらいなよ! 真央:ブーケちょうだーい! (ポーンと客席に投げられるブーケ。真央選手、見事にキャッチ!) 真央:やったー! これで次は真央! みんな:花嫁のブーケじゃないんだから! こんな和気藹々とした雰囲気も、ジュニアの試合ならでは。 これからみんなそろって大人になる彼ら。きっといつまでも忘れられない時間がそこに流れていた。 シニアに上がっても、こんな日本チームがまた見られますように! (青嶋)
写真/中村康一(EOI Global) *キス&クライで佐藤久美子コーチと得点待ち。このあと、手に持つあひるのおもちゃを頭の上に乗せておどけて見せる余裕も(上) *応援する女子選手たち。右から長瀬彩華選手、浅田真央選手、武田奈也選手、澤田亜紀選手(下)
2006年03月11日
小塚崇彦 ショートプログラム2位 快心のsing sing sing!
 これが小塚崇彦の滑りなのか。 予選での彼が、まずまずの出来なのにちっとも満足していなかったのもうなずける。今日のショートプログラムを見て今更ながらに驚いた。本当に「滑っている」ときの小塚崇彦は、ここまで滑るスケーターだったのだ。 最初のトリプルアクセルは、少し着氷が乱れた。しかしすぐに立て直して、すかざずダブルトウループをつける。 「今日はアクセルがちょっと変だったけれど、そのあと動揺せずに、次のジャンプに行けました」 コンビネーションジャンプから続くストレートラインステップまで、もうあっという間。一瞬たりとも流れが止まらないし、この軽快極まりない音楽(sing sing singパート2)に、身体が無理なくのれている。いや、スピンなどは音にぴったり合いすぎていて、まるで彼の身体が楽器のようにも見える。これはすごい! 最後のステップにいたっては、こんなステップ誰も踏めてないぞ、という複雑さ。だが彼が滑るとちっとも難しいものではないように軽快に進んでいく! 小塚崇彦のスケート靴が作り出す明るい空気に、お客さんがわあっと沸く! 「最後のステップ、楽しんで滑れました。アクセルのことを考えても、きょうは80点か90点はつけられると思います」 小さなジャンプミスがあっても、演技後のこの表情の明るさ。彼の満足はジャンプにミスかあったかどうかではなくて、滑りの良し悪しにあるんだな、と改めて思う。これは村主章枝や高橋大輔らから時々感じることと、同じだ。彼らも、ノーミスの演技であっても納得がいかない顔を見せることがあるし、大きな転倒をしたショートプログラムのあとでも晴れやかに「滑りは悪くなかった」ということもある。 「昨日と違ってちゃんと『意識』があった。いつもと変わらず、いつもどおり滑ろう、という気持ちがありました。それがあったから、バテバテにならずにすんだ」 快心の滑りを見ていた報道陣も、ミックスゾーンで彼をなかなか放そうとしない。みんな今日の小塚崇彦の演技に、夢中になってしまったのだ。こんなスケートを見せてくれた彼のことを、もっと知りたい――質問は衣装のことや英語力のこと、父からの手紙のことにまで及んだ。 「スロベニアに来る前にお父さんが渡してくれたんです。『平常心でいつもどおりやれば大丈夫』って書いてありました。そんなの書いてくれるなんて、初めてですよ(笑)。その手紙ですか? 日本で読み終わったから、日本に置いてきちゃった」 そういうものは持って来いよ! とその場にいた人々みんなからつっこみが! いいものを見せてくれた選手を囲む、いちばんいい雰囲気の共同インタビュー。試合後の全てのインタビューがこんな雰囲気だといいのに、と思う。それはとても難しいことだけれど、できれば小塚崇彦とは、リュブリアナでもう一度、こんな時間をもてたらうれしい。 世界ジュニア選手権、最後の一試合。男子シングルフリーは、日本時間11日の21時30分に始まる。(青嶋)
写真/中村康一(EOI Global)
2006年03月10日
男子シングル予選終了(3) 小塚崇彦の初陣
 そして3人のなかで、いちばん悔しそうな表情を見せたのは小塚崇彦だった。 「タカちゃんがんばれー」「タカヒコー! ヤホー!」 日本の女子選手たちの応援に混じって、底抜けに明るい外国人からの声援も聞こえる。ジュニアグランプリファイナルで仲良くなった海外選手からの大きなエールだ。 でもそんな応援に包まれながらも、小塚崇彦はまるで小さな男の子のような心細げな顔をしていた。初陣といっても、無良崇人より2歳年上の高校2年生。グランプリシリーズにはもう何シーズンも出ているし、ジュニアグランプリファイナルの優勝者でもある。場数は踏んでいるはずの彼でも、やはりこれだけの緊張……。 しかし演技は、彼自身があとであれほど悔しがるのが不思議なほど、なかなかの出来に見えた。あっというまにリンクの端の方まで滑っていってしまう、確かなスケーティングは健在。その良く動くエッジにのって、トリプルアクセルも2度、かろうじて決めた。ルッツもループもも、少し着氷の流れはないが、次々に決めていく。 あとはもう少し、音楽に同化するところまで上半身が動けばいいのに……。と、みんながいつも思うとおりの小塚崇彦ではあったが、ガーシュインのダイナミックなオーケストラ曲が、彼の動きの素っ気なさを少し助けてくれてもいた。 何よりやはり、彼の滑りは気持ちがいい。大きなミスなく決まるジャンプと、流れが止まらないスケーティングで、プログラムの最初から最後まで爽快感でいっぱい、そんな演技だった。 そして圧巻は、フィニッシュの高速アップライトスピン! 同門の村主章枝を髣髴とさせる鮮やかな高速回転に、会場は大歓声に包まれた。 いい感じでしたね? そう、記者たちも問いたくなる出来。しかし彼は……。 「いや、そうでもないです……。今日の演技はあんまり気に入ってません。ジャンプが最初から最後まで、うまく流れていかなかった。着氷は全部、右足でなんとか踏ん張る状態だったんです。だから最後の方は右足がバテバテで。最初のコンビネーションもつけられなかったし、トリプルアクセルのあとにつける予定のトリプルトウも入らなかった。やっぱり緊張してましたね」 そこまで暗い顔をするほどの悪い演技じゃなかったよ、と囲む記者たちは誰もが思った。でも彼の冷静の分析は続く。 「ジャンプがいつもみたいにタイミングで跳べてなかったんです。硬くなりすぎて、力で無理やり跳んでた。後半に跳ぶはずだった3連続ジャンプのころにはもう、足に疲れがたまってて、跳び上がれる状態じゃなかった……。無理やり3つ跳んでたら、たぶんコケてたと思います。お客さんからの手拍子ですか? もう疲れてて聞こえなかった。それどころじゃなかったです(笑)」 彼自身がいちばん、今日の演技の足りないところを把握している冷静さ。まるでもう何度も何度も大きな試合を経験した選手のようだ。良く滑っている、と見えたスケートも、彼にとっては大きな不満の残るものだったらしい。 「今日はとにかく、滑れてなかった。スケートが滑れば、ジャンプも何でも跳べる。ショートとフリーは、がんばりたいです」 彼の冷静さに、NHK杯のショートプログラムで、大喝采を浴びた演技に対し、出来は60点と言った高橋大輔のことを、思い出した。 目指すところが、本当に高い。見ているものが賞賛しても、彼自身はなかなか満足しない。高橋大輔と同じだ。 小塚崇彦は、まだまだどんどん巧くなる――そんな可能性の大きさに目を見張った演技後の会見だった。
それにしても男子シングルも3人の日本代表。これはやはり、楽しい! 演技の持ち味もそれぞれに違う3人だが、緊張の仕方も、結果の受け止め方も、それぞれ違う。 フィギュアスケートへの向き合い方も、この試合にかける意気込みも異なる3人の挑戦を、それぞれ味わう楽しみがある。 早く、世界選手権やオリンピックでも男子シングルの枠が増え、いろいろなタイプの日本男児の笑顔や涙を見たい。いろいろなタイプの日本男子の演技を、世界に見せたい。 そういえば……今回出場の3選手、ひとつ共通点がある。彼らは3人が3人とも、報道陣に対してシャイで、口数が少ないのだ! 高橋大輔、織田信成、本田武史、中庭健介ら、わりと話好きな選手たちに接しなれてきた記者たちは、彼らの気持ちを引き出すのに、ちょっと苦労している模様! (青嶋)
写真/中村康一(EOI Global)
2005年12月24日
佐藤信夫 佐藤久美子著『君なら翔べる!』発売中
 村主章枝、中野友加里、小塚崇彦らを指導する佐藤信夫コーチにとって、今年の全日本選手権は通算50回目の記念すべき大会となります。選手として11年(うち10回優勝)、続いて一年も間を空けずにコーチとして39年(一年目の教え子は大川久美子)。連続50シーズン皆勤賞! そんな日本の誇るグレートコーチ佐藤信夫氏、そして妻でありコーチとしてもパートナーである佐藤久美子氏の著作、『君なら翔べる!』(双葉社刊)が好評発売中です。 信夫コーチの語る村主章枝キス&クライ秘話、久美子コーチの語る荒川静香プログラム作りのエピソード、そして二人が語る中野友加里急成長の秘密……。 現役選手たちとのエピソードはもちろん、この本では両氏が駆け抜けてきたフィギュアスケート黎明期の苦労話や初めて物語もたくさん収録しています。 8ミリもビデオもない時代、海外の選手たちのスケート映像を見るために、当時の選手たちがしたこととは? 日本にザンボニー(整氷車)のない時代、海外遠征に行った佐藤信夫に起きた劇的な変化とは? 佐藤信夫にアメリカフィギュアスケートの真髄を教えた謎の外国人とは?
全日本選手権をふたりで合計12回制し、それそれ二度のオリンピックを経験したトップスケーターとして。佐野稔、佐藤有香、村主章枝ら世界選手権メダリストを育てたコーチとして。氷の上で過ごしてきた半世紀をおふたりが様々な角度から語っています。 1.選手時代、2.コーチ時代初期から佐藤有香の世界選手権優勝まで、3.その後の10年と現在のこと。3つの時代を信夫コーチ、久美子コーチが交互に語り、最後には爆笑夫婦対談も!
選手たちのファン、信夫コーチのファンの皆さんのみならず、フィギュアスケートを愛する全ての皆さんに、そしてフィギュアスケートを好きになりかけているたくさんの皆さんにぜひ読んでいただきたい本になりました。 全日本選手権、メダリストオンアイス会場でも発売中です。
『君なら翔べる! ~世界を魅了するトップスケーターたちの素顔 』 佐藤 信夫・佐藤 久美子著
双葉社刊 B6判 / 254ページ 1680円 ISBN : 4-575-29864-6
*佐藤信夫コーチページと対談をライター青嶋が、佐藤久美子コーチページをライター白石和己がインタビュー・構成しました。 *写真家板東寛司さんとライター青嶋の本『逢いたくなっちゃだめ』も発売になりました。
2005年12月01日
ジュニアグランプリファイナルフォトレポート(5)男子シングル優勝 小塚崇彦
 驚きの初出場初優勝を果たした小塚崇彦選手、16歳。岡谷大会でジュニアグランプリシリーズは初優勝だったが、このときもキス&クライで子どものようにはしゃいでいた姿が印象的だった。「『やったやったー!』って、その様子が、小さいころの崇彦とぜんぜん変わらなかったんですよ」と佐藤久美子コーチも目を細める。 チェコに渡る一週間前は地元名古屋を離れ、新横浜にて佐藤信夫コーチの特訓を受けたが、彼が世の中でいちばん怖いものは「怒った時の信夫先生」(『Cutting Edgeより』)。ある日も、他選手に落ちた佐藤コーチの雷に、自分のことのように背筋を伸ばし、その翌日にはトリプルアクセルを含む完璧なフリーを滑って見せたとか。 トリノ五輪、男子シングルにもし3枠あったら……そんなことも考えてしまいたくなる今シーズンの躍進ぶり。シニアの選手たちが恐ろしいほどの緊張感を味わうだろう全日本選手権、昨年同様、小塚崇彦が若さのパワーで引っかきまわしてくれることを期待したい。
 写真は上から25日のショートプログラム、振付けは世界チャンピオンの佐藤有香さん。「有香さんが優勝した幕張の世界選手権は生で見ました。すごい感激した! いくつだったかな……94年ってことは11年前ですから5歳。5歳だったんだ!」。26日の表彰式、この笑顔を世界ジュニアでも! 24日の公式練習、父の小塚嗣彦コーチとともに。「目標はオリンピックに出て、お父さんを越えることです!」
Photo by M.Morita
*小塚崇彦選手に関するこれまでの記事 第7回プリンスアイスフェスティバルレポート(3)
2005年11月27日
小塚崇彦 ジュニアグランプリファイナル優勝!
 高橋大輔、織田信成らが奮闘中のシニアのグランプリシリーズ。しかし次代を担うジュニアのグランプリシリーズもこの週末、一足先にファイナルをむかえ、5人の日本選手が出場した。 男子シングルでは小塚崇彦、柴田嶺、女子シングルでは澤田亜紀、北村明子、浅田舞。いずれ劣らぬ「バンクーバー五輪の星」たちだが、5人の中で唯一初出場、また唯一世界ジュニア選手権出場経験のない小塚崇彦が優勝! 2004年全日本選手権ではショートプログラムで本田武史らを押さえて1位に立ち、注目を集めた彼だが、まだ高校2年生という若さ。今回もロシアの超新星ウスペンスキーを押さえ、ショート1位フリー1位の完全優勝。しかも日本男子シングルでは初めてのジュニアファイナル優勝という快挙だ。 ジュニアグランプリファイナルリザルトページはこちら。

Photo by M.Morita
*小塚崇彦選手に関するこれまでの記事 第7回プリンスアイスフェスティバルレポート(3)
2005年11月02日
祝・織田信成 スケートカナダ銅メダル! 日本男子フィギュアスケートオフィシャルファンブック「Cutting Edge」発売!

スケートアメリカでの高橋大輔初優勝に続き、スケートカナダでも織田信成がグランプリシリーズ初参戦、初表彰台! ケガから復帰した本田武史も第4位! たったひとつのトリノ五輪男子シングル出場枠をめぐる戦いも、いよいよヒートアップしてきました。 またジュニアのグランプリシリーズでは、柴田嶺がアンドラ大会で優勝、小塚崇彦が岡谷大会で優勝。ふたりがファイナル進出を決めました。
そんななか、日本を代表する男子シングルスケーターのフォト&インタビュー集「Cutting Edge」がダイエックス出版より発売されます。 登場する選手たちは総勢9名!
織田信成 「目指すスケーターはいない。自分が誰かに目指されるスケーターになる!」 高橋大輔 「人に見られるのが好き。氷の上に立ったら、他の人じゃなく、俺を見て欲しい」 南里康晴 「うまいやつらがみんなが着ていたジャパンジャージ。最初は、あれが欲しかっただけ」 岸本一美 「男らしいスケートだと言われること――それを誇りに思っている」 本田武史 「どんなに苦しんでも、ケガをしても、スケートを嫌いになることはできなかった」 中庭健介 「満場のお客さんの前でいい演技ができたときの快感。あの瞬間のために、スケートをしている」 柴田嶺 「氷の上で自分をどれだけ表現できるか、それがフィギュアスケートの醍醐味だと思う」 小塚崇彦 「怪我をした時に思った――自分はやっぱり、スケートやってないと何もないんだなあ」 小林宏一 「もう僕にはスケートしか考えられない。遊んでいても、常にスケートのことが頭を離れないんです」
フィギュアスケートという悪夢と快楽にすべてを賭けた男たちの言葉にぜひ耳を傾けてみてください。 城田憲子日本スケート連盟強化部長インタビュー、村主章枝選手&恩田美栄選手からの応援メッセージも収録。 11月下旬、全国書店にて一斉発売。NHK杯会場でも販売予定です。
日本男子フィギュアスケートオフィシャルファンブック「Cutting Edge」 ダイエックス出版刊 B5判 96ページ 定価1800円 (税別)
*ついでに宣伝です。ライター青嶋とイラストレーターさのともこさんの本『大人の社会科見学』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)も発売になりました。フィギュアスケートとは何にも関係ないはずの本ですが、どさくさにまぎれてスケートのことも少しだけ書いています。スケートファンの方もぜひ読んでみてください
2005年04月13日
第7回プリンスアイスフェスティバルレポート(3)
 新横浜のクラブにはまだまだ注目選手がたくさん。 全員をご紹介はできませんが、レポートの最後に来シーズン期待される若い3組をクローズアップ!
昨年の全日本選手権では、本田武史選手を抑えてショートプログラム1位。一躍注目を集めた小塚崇彦選手。お父さんの嗣彦さんはグルノーブル五輪男子シングル代表、おじいさんも日本のフィギュアスケート黎明期に活躍したスケーター、お母さんの幸子さんもコーチというスケート一家育ちで、親子二代でのオリンピック出場を目指します。見どころは何といっても両親、そして佐藤信夫コーチに徹底的に鍛え上げられた美しいスケーティング。この日は狭いリンクながらスピードもたっぷり。オープニングでは綺麗なトリプルルッツも披露しました。  ソロナンバーはアップテンポの男性ボーカル曲。小さなころからエキシビションなどに出演しているので、お兄さんお姉さんに混じって滑る小さな男の子、という印象が強かった彼ですが、手も足もすくすく伸びていつのまにか立派な青年に。陽気な音楽に乗ってトリプルアクセルも決めてくれました。最後の最後に転倒してしまったのは残念!
 世界トップクラスの選手がひしめき、超激戦だった04年全日本選手権女子シングル、みごと9位に入ったのが村主千香選手。ご存知村主章枝選手の妹さんです。雰囲気もどことなくお姉さんに似ていて「丸顔の章枝ちゃん」といった印象。 この日はタンゴのリズムにのって、大人のムードいっぱいの演技。美しいレイバックスピンやフライングキャメルのフライングにまで「情熱」を感じさせる滑りでした。村主章枝とは違う種類の、体から自然にわきでる情熱。でも、演技の最後の挨拶までしっかり丁寧で、気を抜かないところはお姉さんと一緒。おみごと! ちなみに衣装は村主章枝選手がアメリカのアイスショーツアー、チャンピオンズアイスで着用していたものでした(「日本女子フィギュアスケートオフィシャル応援ブック」35ページ参照)。
最後にご紹介するのはアイスダンス全日本ジュニア優勝の澤山璃奈・水谷太洋組。シングルに比べると日本では競技人口が少なく、なかなか世界のトップレベルには届かないアイスダンスですが、若い芽は着実に育っています。 この日は「オペラ座の怪人」のナンバーにのって仮面をつけた怪人とクリスティーヌを演じたふたり。リフトが豪快で安定感あり! また美男美女でアイスダンスには欠かせない「いい雰囲気」を持っているので今後が楽しみなカップル。まだまだ日本人らしい奥ゆかしさは残ってしまうけれど、少しずつでも客席に向かって微笑むような余裕が出てくれば、どんどん魅力を放っていきそう。 来シーズンは世界ジュニア出場が期待されます。
 そしてこちらは村主章枝らトップ選手を中心に、フィナーレで勢ぞろいした新横浜プリンスクラブのスケーターたち。たくさんの子どもたちの中には楽しく自分のペースでフィギュアを続けている子たちもいれば、先輩たちに続いて世界のトップで戦うことを夢見ている選手たちもいます。すべての子どもたちがフィギュアスケートというスポーツにとって欠かせない存在であり、このリンクはすべての子どもたちにとって必要な場所。 新横浜に限らず、日本中のアイスリンクに、ずっと子どもたちの笑い声が響き続けてくれることを祈らずにいられません。
*日本ではこの数年間、アイススケートリンクの閉鎖が相次いでいます。昨年も高橋大輔選手や織田信成選手らが練習する大阪の「O2スケートリンク」、本田武史選手や荒川静香選手が育った仙台の「コナミアイスアリーナ泉アイスアリーナ」が反対の声もむなしく閉鎖に追い込まれました。
スケートリンク閉鎖、存続運動関連リンク O2リンク閉鎖撤回を求める掲示板 宮城スケート競技を考える会 『 THE END OF 新松戸DOSCアカデミー 』 レポート -
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